お笑いバトルロワイアル〜No.10〜

1 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:00:19
お笑い芸人を題材とした、バトルロワイアルパロディスレッドです。
ローカルルールや過去ログ・関連スレッドは>>2以降を参照して下さい。

■お絵かき掲示板
ttp://w2.oekakies.com/p/warabato/p.cgi


3 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:01:17
■ローカルルール■

○書き手用○
・どのレスの続きかを必ず明記する事。文章の最初に >>レス番号 をつける。
・文中で芸人が死亡または同盟を組んだ、仲間になったなどの場合は、最後に必ずその旨を明記。
・文章が長くなる場合は、一度メモ帳やエディタで作成、確認してから連続コピペを推奨。
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨。
・これから書こうと思う人は、必ず過去ログに目を通す事。
 ※専属の書き手がいる芸人は無闇に動かさない。
 ※専属芸人の続きを書きたかったり、自分の話と繋げたい場合は、スレ内で呼びかけ確認を取る。
 ※長期間放置されたままで、明らかに前の書き手がいないと思われる場合は、新たな書き込み可。

○読み手用○
・コメント、感想、励ましメッセージ、注文などはsage進行で。
・書き手に過度の期待は厳禁。書き手さんだって、書けない時もあります。

○共通用○
・死んだ芸人は原則として復活禁止です。
・「あくまでもここはネタスレッド」です。まったりと楽しみましょう。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



4 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:03:09
■過去ログ・関連スレッド■
お笑いバトルロワイヤル
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1009/10099/1009967966.html
お笑いバトルロワイヤル vol.2
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1011/10111/1011108578.html
お笑いバトルロワイアル vol.3
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1011/10116/1011624868.html
お笑いバトルロワイアル vol.4(html化待ち)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1016703885/
お笑いバトルロワイアル vol.5(html化待ち)
http://corn.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1020393595/
お笑いバトルロワイアル vol.6
http://tv3.2ch.net/geinin/kako/1031/10318/1031834240.html
お笑いバトルロワイアル vol.7(html化待ち)
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1043249595/
お笑いバトルロワイアル vol.8
http://tv6.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1069244110/
お笑いバトルロワイアル vol.9
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1095916149/

お笑いバトルロワイヤル感想・要望スレッド
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1011/10111/1011122064.html
お笑いバトルロワイヤル感想・要望スレッド2(html化待ち)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1011833052/
お笑いバトロワ感想・要望スレッド3(html化待ち)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1018708636/



5 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:04:45
前スレの>981さんが
置いてくださったミラー。

お笑いバトルロワイヤル〜vol.4〜
http://pantomime.jspeed.jp/test/read.cgi/monament/1016703885/
お笑いバトルロワイヤル〜vol.5〜
http://pantomime.jspeed.jp/test/read.cgi/monament/1020393595/
お笑いバトルロワイアル〜vol.7〜
http://pantomime.jspeed.jp/test/read.cgi/monament/1043249595/
お笑いバトルロワイアル〜vol.8〜
http://pantomime.jspeed.jp/test/read.cgi/monament/1069244110/

お笑いバトルロワイヤル感想・要望スレッド2
http://pantomime.jspeed.jp/test/read.cgi/monament/1011833052/
お笑いバトルロワイヤル感想・要望スレッド3
http://pantomime.jspeed.jp/test/read.cgi/monament/1018708636/

こんなのも。どれでも好きな方を。

http://makimo.to/cgi-bin/dat2html/dat2html.cgi?http://tv6.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1069244110/&st=&en=
http://makimo.to/2ch/live19_market/1112/1112006236.html


6 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:06:07
コモさんのまとめサイト。
停止されることが決定したようです。
乙でした。

■ログ等まとめサイト(コモさん管理)
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Bay/5098/

8 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:12:10
保守もしながら、前スレのまとめも
コピぺしておきます。
補足は全てコピーした後します。
保守のために、まずたくさん置いておきます。

◇現時点で確認出来る生存者状況説明(50音順/予約分は含ず)◇
 <※付はコンビ・グループの未出の方>


あ行

浅草キッド 水道橋/玉袋 (ビートたけし追跡中・爆問太田の遺志を継ぐ?・3以降放置)
アメデオ 森枝 (フラット森と行動中、オレンジジュース前田発見・靴下所持)/ 大河原 ※
今田耕司 (DT松本一行尾行・ハリガネ待機中・トランシーバー所持・現在地E-5)
オジンオズボーン 篠宮/高松 (もうすぐ禁止エリアとなる場所で偶然再会・合流)
オレンジジュース 前田 (アメデオ森枝、フラット森と合流)/ 村上 ※


9 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:13:12
か行

COWCOW 多田 (仕掛けつきビデオテープ3本と今田から貰った長槍所持・
  ハリガネ大上を刺した後、中田カウス・ボタン一行に発見される・生死不明)
カリカ 林/家城 (磁石佐々木と行動中・普段通り変わらぬ様子・家城はチェーンソー所持)
カンカラ 入山/石田/松井/鈴樹/杉林 (男メンバー4人喧嘩中・
  鈴樹、元居た場所を思い出しテツトモを残し先に向かう)
木村祐一 (DT松本・田中と行動中・3で浜田に攻撃され右腕負傷・日本刀所持)
K2 堀部 (DT浜田と接触し正気を取り戻すが浜田に献上する為の食材探索中に
 幻覚・幻聴に襲われ再び発狂・出刃包丁所持・村田渚と対決 )
ココリコ 田中 (DT松本達と行動中)
五番六番 猿橋/樋口 (爆問田中達と行動中)
コント赤信号 石井 ※ / 小宮 ※

さ行

ザ・ドリフターズ 志村 (ダチョウ倶楽部肥後と行動中・銃器所持・チームを抜けようとした寺門殺害)
ザ・プラン9 難儀/ヤナギブソン (森の奥にあるログハウスに潜伏中・武器は小型銃と荒縄)
佐野ただひろ (元ピテカンバブー・桶田亡き後、村田と共に彼の遺志を継ぐ)
磁石 佐々木 (カリカの2人と行動中・未だ姿を確認できない相方を気にかける)
磁石 永沢 (正当防衛だが人を殺めたという罪の意識に苛まれている・土壁の横穴に潜伏中)
自転車こぐよ ゆうき ※
清水ミチコ(UNの死後行方不明)
18KIN 大滝 (S&W M36、ナイフ所持・感染症により
 命幾許も無いピートム桑原から自分を殺してくれと懇願される)
陣内智則 (麒麟川島(死亡済)の奇襲で共に居た千原等仲間達は全て死亡・
 一人生き残った空しさから自らも死を選ぼうとするがそれも叶わなかった・
 仲間達の死んだ場所に戻ったそこで川島の所有物だった妖刀村正拾得・頭の中で誰かの声が)
せんたくばさみ 能勢/加藤(感想・要望スレ3にて合流)/吉本 ※


10 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:15:09
た行

だいたひかる (ハマカン神田の殺戮現場を目撃・虫除けスプレー所持・ハマカン浜谷&モジハン肖田を尾行中)
ダウンタウン 松本 (キム・ココリコ田中を引き連れ南の廃校へ・
  「生き残れ 南にある廃校で待つ」と書かれたメモ所持)
ダウンタウン 浜田 (日本刀所持(切れ味は鈍っている)・食材を探しに行った堀部待機中)
たけし軍団 井手らっきょ/ガタルカナル・タカ/グレート義太夫/そのまんま東/
 ダンカン(顔に熱傷)/松尾伴内/(3から途中参戦・UN(死亡済)の襲撃で皆負傷している)
ダチョウ倶楽部 肥後 (志村けんと行動中・志村に命じられ上島殺害)
田上よしえ (ダンディ、ユリQ、北陽伊藤と行動中・喧嘩中のカンカラ男メンバー達を仲裁しに
 行く途中・虻川の死から完全に立ち直れていない伊藤を気遣う・ヨーヨー所持)
ダブルブッキング 川元 (元箱男・武器は細菌・人間不信)
ダブルブッキング 黒田 (ビーム吉野、マイマイカブリ高橋と行動中・武器はアイスピック・
 逃げてきたことで相方から受けるかもしれない復讐が怖い)
ダンディ坂野 (田上達と行動中・テツトモ達と先にカンカラメンバーの元へ向かっていたが
 窪に落ち置き去りにされ戻って来た・存在を忘れられがち)
テツandトモ テツ/トモ (カンカラ鈴樹から元の場所を聞く・田上達待ち)
電撃ネットワーク ダンナ小柳 ※
電通マン佐藤 (1でひたすら自分の未来について悩んでいた・その後放置)
友近 (中山功太(死亡済)と落ち合う約束をした小屋で彼を待ち続けている・
 修道院から逃亡途中、追ってきた天津向(死亡済)に襲われ腕と顔負傷)


11 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:16:26
な行

中田カウス・ボタン (ハリガネが去った後、カウス・ボタン対決?)
南海キャンディーズ 山崎 (ノンスタイル石田(死亡済)を武器の地雷で負傷させた後失踪)
ネゴシックス (地雷で片足を無くし瀕死のノンスタイル石田(死亡済)を手当て後
何処かへ消えていった・スケッチブック、ラジカセ、救急箱所持・いい人)
ネプチューン 名倉 (爆笑田中(と、憑依した太田)と一時接触・
 プログラムを終わらせるべく総元締めのいる本部を探索中・「正宗」所持)

12 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:17:37
は行

爆笑問題 田中 (太田憑依中・田中本人は気付いていない・
 立川談志(死亡済)を看取った後再び五番六番、冷中達と行動中)
ハマカーン 神田 (ヒロシ、ホリ殺害・武器は槍と金槌・時々意識が途切れる状態が続く)
ハマカーン 浜谷 (モジハン肖田と行動中・確証は無いが、相方が他に危害を
 加える側の人間となったことを知る・しかし信じたくはない)
ハリガネロック 松口/大上 (中田カウス・ボタン&メッセンジャーから分離、今田の元へ向かう・
  松口の記憶は依然戻らず・大上はCOWCOW多田に刺され腹部負傷)
ハローバイバイ 金成/関 (ハマカーン浜谷と一時接触・神田が他芸人を
 襲っていた現場を目撃したらしい・2人で共に行動中らしい)
ビートたけし (表向きのこのゲームの主催者・3から途中参戦)
ピーピングトム 桑原 (感染症による死の間際、大滝に自分を殺してくれと懇願)
ビーム 今仁 (武器は生卵1パック・怪力・マイマイカブリ五十嵐と行動中)
ビーム 吉野 (ダブルブッキング黒田と行動中・武器・ホットプレート)
130R 板尾 (千原jr.(死亡済)と接触後再び単独行動中)
冷やし中華始めました 高橋/能海/鈴木 (爆問田中と行動中・現実世界では解散)
フラット 森 (アメデオ森枝と合流・武器はでかい石)/ 船場 ※
プロペラZ キー坊/岩澤 (佐野に命ぜられ北回りルート巡回中)
ブロンクス 中岡/野口 (野口の仇を討ち、小屋に戻った中岡だが
 眠りから覚めた野口は記憶喪失+多重人格となっていた)
ヘッドライト 和田 (ブロンクス中岡&野口と分離、相方町田を探す・拳銃所持)/ 町田 ※
北陽 伊藤 (田上達と行動中・虻川の死から立ち直ったように
 振舞うもやはり無理をしている・刀所持)

13 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:18:15
ま・や・ら・わ行

マイマイカブリ 五十嵐 (ビーム今仁と行動中・武器・緑色をした煙草の箱・現実逃避気味)
マイマイカブリ 高橋 (武器・マッチ一箱・服用した謎の飴玉の効能で空に浮く・こちらも現実逃避気味)
マギー司郎 (審司と行動中・自分の秘密を知る長井を殺す為、攻撃を仕掛けるも返り討ちに遭う)
マギー審司 (司郎と行動中・一度死んだが師匠(司郎)の力によって復活(…))
村田渚 (自らの思い込みで桶田(死亡済)を手に掛けてしまうが
 坂コロ松丘の遺品の携帯と、今際の際の桶田の口から伝えられ真実を知る・
 佐野の説得で桶田の遺志を継ぎ計画を遂行する決意をする・K2堀部と対決?)
メッセンジャー 會原/黒田 (中田カウス・ボタンの対決を止める?・
 會原はエンバーミングセット(遺体保存の用具)所持)
モジモジハンター 肖田 (ハマカン浜谷と行動中・拳銃所持)/石井 ※
元ブラジル代表 小林/大渡 (佐野に命ぜられ東回りルート巡回中)
森三中 大島/黒沢/村上 (6-185で合流・6-794で黒澤、大島を銃撃(?)・村上逃走)
ユリオカ超特Q (田上達と行動中)


計99名(たぶん)


14 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:18:53
◇番外◇
小薮千豊 (元「ビリジアン」・バトロワで命を落とした仲間たちの仇を討ちたい・りあるキッズ保護?)
りあるキッズ (何者かの手により、ゲームのリストから外された・
 何故か新喜劇小藪の元へ2人ともかなり弱っている様子で辿り着く)
太田光代 (爆問太田(死亡済・田中に憑依中)夫人で事務所社長・このゲームを一刻も早く
 終わらせたい・芸人の妻達に連絡を取りバトロワの是非を問う、出版社に協力を得ての
 国会議事堂に入ってのデモ記事掲載などの計画を練る)
田中夏美 (爆問田中夫人・太田光代と共にゲームを終わらせるために行動を起こす)
長井美奈子(長井秀和夫人・光代に呼ばれ太田宅へ・バトロワ中止計画に賛成)
由香里(タイタン事務員・光代に呼ばれ太田宅へ・バトロワ中止計画に賛成)

15 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:20:36

◇本編未出芸人の一部◇

(若手系)
アンガールズ/キャン×キャン/さくらんぼブービー/チャイルドマシーン/
チャップメン/チョップリン/T・K・O/ニブンノゴ!/ハレルヤ/パンクブーブー/
ブラザース/ペナルティ/名刀長塚/ラバーガール/ラフ・コントロール

(中堅・大御所系)
大橋巨泉/チャーリー浜/野沢直子/間寛平/
歌丸・楽太郎・山田くん以外の笑点メンバー (円楽/小遊三/好楽/木久蔵/こん平)


よかったらどうぞ。キラー役から死体役まで(w

外の世界でもいろいろ動きがあるようなのでこんなのも載せておきます↓

◇プログラム参加芸人たちと近い場所に居る元・芸人その他◇

オークラ:元「細雪」。解散後はTVや舞台の構成作家に。ごく稀に自らも舞台に立つことも。
原田専門家:大阪NSC11期生(中川家、ハリガネ、陣内と同期)。
 卒業後、芸人・2丁目劇場進行を経て現在はCG・イラストデザイナーに。
 舞台やTV番組のポスター・チラシなどを作成する。主にうめだ・baseで活動中。
森詩津規:元「シンドバット」。解散後は舞台の構成作家に。Vol.3あたりで既出。
元「−4℃」上嶋祐佳(旧姓):96年、ますおか岡田との結婚を機にコンビ解散・引退。
 (当時の相方・松本美香はピンで活動。バトロワ未出)


ひょっとしたら何か力になってくれるかも。


16 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:21:10
◇現在判明している設定◇

−プログラム開始日−
・【2002年1月2日】(一応、初代スレが立ったのがその日なので)。
 結成/デビューがそれ以降の人たちを出させると年月的に
 矛盾が生じてしまうので書き手さんたちはお気をつけて。
 baseよしもとはうめだと分離前。現・卒業組のフジワラもハリガネも
 次長課長もこの話の中ではまだ在籍しています。

−プログラム参加者について−
・日本で活動する芸人全て。
・しかし福田哲平のように、本人の身体の事情で参加を免除されたものもいる。
・既に芸人を引退した者も本人の希望等で参加者の中に交じっていたりする。
・参加者には本部から食料・水・島の地図・筆記用具・
 そしてそれぞれ異なった武器の入った、リュックが支給されている。
・参加者全員に架せられた首輪は、無理やり外そうとしたり立ち入り禁止エリア※
 に踏み入ると爆発する仕掛けになっているが強力な電圧を加えて内部の回路を破壊すれば外せられる。
 しかし外した事が本部に知れるとその芸人は兵士たちに処分される(底ぬけA-L話参照)。
 (※時間が経過するごとに立ち入り禁止エリアは増えて行く)
 加えて、発信機が内蔵されていて本部が芸人たちの位置を確認している。
・死亡者発表は午前午後の6時と12時の1日計4回。

17 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:21:52
−舞台について−
・元は人が住んでいた、現在は無人の島。緑が豊か。
・しかし遊園地やスキー場といったレジャースポットなどがあったり
 住人も多く、割と栄えていた場所だったらしい。
・島の中央には昔の噴火の影響で生まれた火口跡がある。
・現在、故・元フォークダンスの桶田がプログラムを破壊すべく指揮を取り、故・坂コロ松丘や
 佐野ただひろに起こさせた疑似噴火による地震、そして山火事が続いている。
・携帯電話は、プログラム開始時には使えたが途中で本部に基地局を破壊され現在は使えない。

−舞台裏について−
・このプログラムは島の各所に設置されたカメラでTV中継され、
 各芸人には優勝者を賭けたオッズが付けられている
 (中には何十億単位の金額が付けられている者もいる)。
 これは国家ぐるみのプログラムであり、痛みを伴う改革のテスト、そして経済復興が目的である。
 そしてそれらは参加者たちには知らされていない。
・島には芸人たちの他、本部側が派遣した大勢の兵士たちも居て芸人たちを監視している
・しかし火山の小規模噴火(実際は桶田の仕組んだ疑似噴火)を見た総本部は
 大規模な噴火の起こる可能性を恐れ、島からの撤退命令を出した。

18 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:22:46
−妖刀村正・正宗について−
・「正宗」と「村正」はその刀を作った刀工の名に由来しており、正宗は村正の
 師匠だったが村正の作る刀があまりに禍々しかった為、破門したという伝説がある。
・村正を所有した者は刀に宿った魂に支配され殺人鬼と化し
 人を斬る度に理性を保てる時間が短くなる。切る相手が居なくなると最終的には刀の魔力で
 所有者が自殺する。解放されるには誰かに殺されるしか今のところ方法がない。
・村正に宿っている魂・女の精は持ち主が人を殺すことで美しく長らえているらしい。
・「負」の力を帯びた村正と「正」の力を帯びた正宗は互いに惹かれあうと言われている。
・これまでの持ち主の遍歴
 村正:ネプチューン原田→麒麟川島→陣内智則
 正宗:TAKE2深沢→ネプチューン名倉

たぶん他にもあると思います。間違ってる可能性もあるので
見つけた方は補足・修正よろしくお願いします。


19 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:23:31
Vol.6-769〜Vol.8-200あたりまでの死亡者
(過去ログからの再掲・時間を遡って書かれた話等、既に死亡者として
名前の挙がっている参加者分、本編とは別Ver.と認識されるものなどは省いております。)

足軽エンペラー 西田/山里、ウッチャンナンチャン 内村/南原、魚でF 須藤、
坂道コロンブス 松丘、三拍子 久保/高倉、自転車こぐよ あつし、末高斗夢、
ストリーク 山田/吉本、スピードワゴン 井戸田/小沢、ダーリンハニー 長嶋/吉川、
ダイアン 津田/西澤、高田文夫、千鳥 大吾/ノブ、つまみ枝豆、天津 木村/向、
富田哲平、中山功太、NON STYLE 石田/井上、ババリア 溝黒/三浪、ヒロシ、
元・フォークダンスde成子坂 桶田、ブロンクス 唐戸、ホリ、ママレンジ 健太/公平、
ラッシャー板前、ランチ 田口/風藤、レギュラー 松本、笑い飯 哲夫/西田

Vol.1からの死亡者総数 418人+α

20 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:24:03
◇専属書き手さんのいる芸人◇

・カリカ、磁石、ハマカーン、モジモジハンター、
 だいたひかる、(予約・タカアンドトシ):挙動不審 さん
・パラシュート部隊(予約):雪乃丞 ◆h//D5xSzUA さん
・アメデオ森枝、フラット森、オレンジジュース前田:@不法投棄 さん
・オジンオズボーン:ななせ さん
・ブロードキャスト(予約):>>154さん
・粋なり(予約):名無しさん@胃潰瘍。 さん

・太田光代、田中夏美・長井美奈子・由香里:奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo さん
・爆笑問題 田中、五番六番、冷やし中華はじめました:久々です さん

 爆問田中一行とタイタン妻話の書き手さんは別の方です。
 (田中一行の方の書き手さんは久しく姿が見えない状態ではありますが)


21 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:25:33
政府から送りこまれた新たなる刺客

ふかわりょう(高学歴なため、機械の扱いに慣れている。プラスティック爆弾所持。)
はなわ(ギターと見せかけている物の正体はアサルトライフル。)
長井秀和(毒舌スナイパーの異名だけに武器はPSG1所持。凄腕スナイパー。)
東京ダイナマイト 松田 ハチミツ(まさに人間爆弾。所持品はすべて高性能爆弾。ピンチの時の為に自爆装置搭載。)
パペットマペット(マスクの下にはガスマスクを装備。うしくん、かえるくんからは毒ガスを噴出。)



22 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:27:35
新・集計屋さんではないが、>>5〜15の補足
前スレ200以降から前スレ終わりまでで新たに登場した人達(生存)

か行

カンニング竹山(武器は大振りのスコップ。カンニング中島、どーよの2人と行動中。
        波田陽区(死亡済)の日本刀とヒロシ(死亡済)の拳銃も所持?) 
カンニング中島(武器は日本刀。カンニング竹山らと行動中。)
キシモトマイ(だいたひかる殺害後放置。武器は拳銃。女芸人を執拗に殺している。
       すでに数名の無名女芸人を殺害済み。) 

た行

どーよテル(武器はロバのぬいぐるみ。カンニングらと行動中。)
どーよケンキ(武器は俳句セット。カンニングらと行動中。)




23 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:28:06
続き
合体・分裂した人達
ソラシド水口、大浦梶大浦、けもの道中立→合体
カンニング、どーよ、ヒロシ→合体→ヒロシ脱退(脱退後死亡済)

新たな死亡者
自転車こぐよ(現ヒデヨシ) ゆうき
だいたひかる
T・K・O木下/木本
なすなかにし那須/中西
波田陽区
村田渚

新たな書き手さん
カンニング、どーよ:釜飯さん

放棄・キープ解除など
タカアンドトシ タカ/トシ
ネプチューン名倉
ダウンタウン浜田
森三中黒澤


24 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:29:40
合体、死亡者の修正です↓

合体・分裂した人達
ソラシド水口、大浦梶大浦、けもの道中立→合体
カンニング、どーよ、ヒロシ→合体→ヒロシ脱退(脱退後死亡済)
板尾創路、今田耕司→合体

新たな死亡者
オジンオズボーン篠宮
オーバードライブ石野/緒方
K2・堀部圭亮
自転車こぐよ(現ヒデヨシ) ゆうき
だいたひかる
T・K・O木下/木本
なすなかにし那須/中西
波田陽区
元ピテカンバブー佐野ただひろ
村田渚


25 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:30:10
訂正 
カンニング中島(武器は包丁。カンニング竹山らと行動中。)


26 :名無しさん :2005/04/24(日) 11:31:59

以上は、前スレの最初からコピペしたものです。
訂正など、少し時間がかかります。スマソ。
とりあえず保守。

35 :名無しさん :2005/04/24(日) 14:43:02
>シフクノタネ さん
それは、前スレのコピペです。
ややこしいやり方でスマソ。
新しい予約のやつ、今度自分が
来た時なかったら作るつもりです。
今はちょっと……調子が悪いので。

これだけ置いておきます。

前スレでの新たな死亡者

あべこうじ
Rマニア・中島ゆたか
大浦梶・大浦
k2・堀部
ジパング上陸作戦 加藤・チャド
セコンドアウト・溝田
ペナルティ ヒデ・ワッキー
北洋・伊藤さおり
安田大サーカス・団長・クロちゃん・HIRO

42 :よゐこ集団催眠編 :2005/04/24(日) 19:06:46
前スレで予約してたよゐこの話です


身体が動かないと言うよりも、動きたくないと言った方がいいだろうか。
ふわふわしてとても気持ちいい。ホントにここは地獄なのか?


がやがやと五月蠅い声が聞こえる。何やねん、もう。
やかましいなぁ。もうちょっと寝かせてくれや………。
ん?『寝る』?

がばっ

「うぉわ!びっくりした〜!!」
勢いよく飛び起きた俺の視界に入って来たのは、尻餅をついている親友の姿。

「…あかん、有野の幻が見えるわ」
目を閉じて、そのまま重力に任せシーツの上に倒れる。


「濱口っ!!」
ぼすんっ、と音がするくらいにその『幻』は俺の上に乗っかって来た。
思わず「ぐえっ」なんて間抜けな声が出る。
「何すんねん、このっっ!!!」


43 :よゐこ集団催眠編 :2005/04/24(日) 19:07:49
頭の下にあった枕を思い切りそいつにぶつけてやった。
綺麗に顔面にヒットし、そいつは二度目の尻餅をついた。
「おい、いい歳こいて枕投げなんかすんなって!」
「こっち飛んで来たやないか!誰や!?」
あちこちから笑い声や怒鳴り声が聞こえる。
完全に目が覚め、目をぱちくりさせあたりを見渡した。

「はあ?…どーゆー事やねん…」
無意識に腕をさする。もちろん脱臼になんかなってない。
訳が分からない。バトロワは?俺は死んだんやなかったんか?

「こーゆう事やっ!」
ばふんっ!!「あだっ!!?」
今度は自分の顔面に枕がぶつかる。豪快な音が響き、膝の上に落ちた。
「痛ったぁ〜…は、鼻が…」


44 :よゐこ集団催眠編 :2005/04/24(日) 19:09:19
涙ぐみ鼻をさすった。膝に乗っかっている枕を持ち上げ、
ゆっくりと確認するように顔を上げる。

「あ…………有野…?」
「おはようさん。濱口」

目の前では、自分が殺してしまったハズの男がいつもの朗らかな
笑みを浮かべて座っていた。
「…ぷっ、何やその顔。ははは…。あ、すんませーん。こっち起きたんで」
「はい。えーと、よゐこの濱口さんですね」
給食着みたいな服を着た女の人が来て、へんてこなワッペンを貼られた。
え…何なん?全っ然分からん。
相変わらず有野はにこにこ笑っているだけで。

「…有野…。そろそろ説明してや」
ひゅっ、と枕を投げると、有野はそれをキャッチした。
「あんな、これは集団催眠実験てゆーので、俺らはその実験台やったワケ」
そう言うと枕を投げ返す。
「しゅうだ…ん…何?」
また枕を投げる。
「ああ、濱口には分かりにくかったか?つまり、夢や。ぜーんぶユ・メ!」
投げる。



45 :よゐこ集団催眠編 :2005/04/24(日) 19:10:47
「……夢?」
夢だったというのか。あれもこれも、全部。生きてるんだ、皆…
受け取った枕を、ギュッと強く抱いた。
投げ返されないことを少し不思議に思ったのか、有野が顔をのぞき込んできた。

「おーい、濱口ぃ〜。……泣いとるん?」
「…っく……有野ぉ〜…」
今頃になって涙があふれてきた。恥ずかしくて、枕に顔を埋める。
「あ〜もう泣かんでええって。ほら、枕汚れるやろ」
俺から枕を取り上げると、ぽんぽんと頭を優しく頭を叩いてきた。
ああもう、止めろや。子供や無いんやから。
でも何故かもの凄く安心した。

「いい加減過保護が過ぎんじゃねぇか?有野」
どきん。
不機嫌そうな声が後ろから聞こえた。恐る恐る振り向く。


46 :よゐこ集団催眠編 :2005/04/24(日) 19:11:28
「か、加藤…さん…」
身体が固まった。自然と声が上ずる。
こんな時、何て言えばいいのか。だが、いくら考えても
何にも浮かんで来なかった。すると、

「ほらよ。腹減ってるだろ」
少し乱暴だが、貰ってきたらしいパンやジュースを渡してくれた。
そのままドカッと座り込み自分のパンをかじりだす。


「加藤さん、俺…」
「お前さぁ、俺より先に死んだ癖に遅えんだよ。起きんの」
にかっと笑い俺の頭を小突いた。頭をさすりながら横の有野を見ると、
さっきの笑みを絶やさず、おむすびを口いっぱいにほおばっている。

「うっまいわーコレ。なあ、濱口」
脳天気すぎる台詞。でも、それが、嬉しくて。
また涙が出てきた。



157 :◆bUk4YtvoE2 :2005/04/27(水) 00:43:32

以前、前スレではねトびメンバーの集団催眠偏を予約した者です。
11人もいるので連載に近い形になると思いますが、その辺は投下後の皆さんのご意見によると思います
では長文、駄文ですが少しでもこの投下が他の書き手さんの投下に繋がることを願って



158 :◆bUk4YtvoE2 :2005/04/27(水) 00:45:21


【集団催眠偏】

仲間って何?
生きるって何?
笑いって何?

跳ぶための扉は…鍵が閉まって開かない―。

━跳扉━

夢と現実の狭間で意識が揺れる。

夢と現実…?

これは現実じゃないのか?
血なまぐさいあの森も
何処かで響く銃声も
目の前で引き金を引いた秋山も
悲しそうに佇んでた馬場も打たれたときに感じたあの衝撃も

夢?

それとも―。

「ロバートの山本 博さんですね?お疲れさまでした」


159 :◆bUk4YtvoE2 :2005/04/27(水) 00:48:32
>>158続き

この人工的な部屋で
知らない男に話し掛けられているこの状況が夢?

「あの、夢ですか?」
「は?」

突拍子もない博のこの質問に給食当番を思わせる知らない男は戸惑った表情を浮かべたが直ぐに能面のような顔に戻した。

「夢…と言いますか国家規模で行われたプロジェクトでして、集団催眠です」

体を起こして頭を整理させる。今はめっきり減ってしまったパズルのピースを埋めるように。

「催眠…」
「すべて夢の中で起きた出来事として捉えて頂ければ結構です」
「夢…」

あれが夢……。

「では、これから言う質問に答えて頂きたいのですがよろしいですか?」

最初に埋めたい端っこのピースを探す前に与えられた選択肢。情報のないこの状況で断る理由はないだろう。

「…はい」

静かに頷くと給食当番は質問を始めた。
しかし男の質問は単調で混乱する頭に優しかったが、今の博に対するそれ以上にも以下にもならないような質問ばかりだった。

「…以上です。ありがとうございました」

160 :◆bUk4YtvoE2 :2005/04/27(水) 01:00:29

>>159
質問が終わると男は【失格】のワッペンを博の左胸に貼りつけ足早に去って行った。
その男を見送り未だ茫然とする自分を落ち着かせ、立ち上がった。そして、初めてゆっくりと辺りを見回し当たり前なことに気付く。

皆、芸人だ。

そして、自分の両隣には秋山と馬場の姿。
二人の間に腰を下ろし壁によりかかる。…手に今だ残る拳銃のリアルな感覚が自分の忌まわしさを増幅させる。

守りたかった。
守れなかった。
守らなかった。
裏切った。
殺そうとした。
だから
殺された。

人を怒ることができない。ましてや人を傷つけるなんて尚更、出来るはずのない博が下した決断。
例えあの場で出した決断が仕方のないものだとしてもそれを仕方がないで片付けられるほど彼は楽天的ではない。
自分が奪おうとした命。それは何よりも大切なものだと思っていたもの。

あの“ゲーム”が始まったとき、馬場と秋山に会ったのは偶然だった。あの偶然さえも恨みたい。
…分かってる。偶然を恨むなんて事間違ってる。
でも誰よりも分かってるはずなのに鮮明に主張を続ける“夢”の記憶が強すぎて…。
今にもこの場から逃げ出したくて仕方ない弱い自分がその存在感を鮮明にアピールし続ける。卒業することのない薄弱すぎな自分。
どうして俺はこんなに弱い?

169 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:33:13
さくらんぼブービーですが、>>156さんが書いているようなので番外編として。
まずかったら止めるので忠告してください。

 想像だけで培ってきた残酷な世界観が実現していた。小さなコントがいくつ集まって
も足りないくらいの長さがあり、中で繋がっていた意識の線は切れかけている。死体が
死体に見えなくなり、何故か現実を強く感じるようになった頃。相反した空は青く澄み
渡り、汚れを受け止めた雲の端が辛うじて黒くなっているだけだった。
 手にはよく研がれていた刺身包丁、付着してはいけないはずの人血は腕まくりまで侵
食している。どこか浅黒くなった液体は拭いもせず、さくらんぼブービーの木村が森を
歩いていた。特に辺りを気にするわけでもなく進む姿は、今まで咲いては散ってきた突
発的な異常者に似る。
 ゲームに飲み込まれた人間の一人だ。飛び道具があるわけでもないのに掠り傷で済ん
だ奇跡に感謝するわけでもなく、ショートコントの際に浮かべる無表情を張りつかせた
まま。知らない死体の横に落ちた銃を手に持ち、弾が入っていないか確認する。暴発を
恐れるわけでもなく銃口を覗き込むが、独特の圧迫感はなかった。軽く投げ捨てて木々
を掻き分ける。

170 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:34:30
 辛うじて一握りの理性が残っていた。仲が良い芸人が次々と死んでいく中で聞こえな
かった名前がある。あれだけ細く弱々しい相方が残っているという事実に首を傾げた。
どこかでひっそり隠れ続けているのかもしれない。
 考えごとは控えめに、手にした包丁を空中に舞わせてキャッチした。この短期間で身
についた危険な習癖である。実際にキャッチし損ねた傷が疼いて不快感を誘った。無造
作に転がっている死体と合わさって相乗効果が働く。太い眉を寄せた木村の視界、顔も
知らない芸人が狼狽えたように辺りを伺っていた。遠くからでも確認できる目の下のく
まが痛々しい。
 包丁を軽く握る。どこを刺せば死ぬかは漫画から得た知識で知っていた。相手の手に
は拳銃、関係あるか。息を潜めて目を緩め、相手の背中に目を合わせながら近づいていく。
 枝を折るなんて単純なミスはしない、射程範囲内に入った瞬間に動きを早めた。恐怖
で見開いた目が印象的だった、だから鼻筋に対して垂直に線を引く。薄く二つに分かれ
た黒目が光を失えば、相手が手にしている最高の武器でさえ意味を失った。しっかり引
き金を捉えた腕は、悲しいかな大きく空を仰ぎ、白いままの雲に向かって銃声を投げる。
それを合図にした木村は、体全体で相手を突き飛ばして倒れ込ませた後、マウントポジ
ションをとって相手を見下した。両目を押さえる手から血が漏れている。

171 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:35:46
「痛てえ、助けて、痛てえよ」
 懇願するような相手の口調は木村に届かない。こういった場所で一番いらないものを
知っているからだ。躊躇いさえなければいくらでも生き残れる、脳内で呟いて、包丁を
持った右手を高く翳した。
 日光で反射する刺身包丁はやはり赤黒い。いかれた芸術家の絵画のような、奇妙な光
だった。相手が目を潰されていなかったら、特殊な光、そして木村の無表情に身を凍ら
せていただろう。空よりも高く上がった包丁が光より早く振り下ろされる。
 鎖骨の中央にある窪みに深く。当然のごとく吹き上がる鮮血が雨に変わり、木村だけ
を照らす。とっさに引き抜けば流れが強くなり、茶色かった髪はほとんど赤くなってし
まった。顔に掛かった血液を鬱陶しそうに拭った後、相手の服で包丁を拭く。止まらな
い噴水は放って銃だけを確保し、隠しておいた荷物の元に向かうために身を翻した瞬間、
後ろから気配を示す森の音がした。ため息をつくわけでもなく振り返る。確認する前に
引き金を引く。
 だんだん勢いが弱くなっていく赤い噴水の向こう側にある、どこか奇妙な姿をした木
が少しだけ弾かれる。音に任せて飛び上がった相手を、やはり確認しないまま殺しかけ
る。撃った衝撃で捻った手首を放ったままで引き金を引き続けた。下手な鉄砲でも繰り
返せば死ぬ。

172 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:37:01
 奇妙で無防備な前向き志向が長く続くわけが無い。とっさに隠れた相手の頭上を走る
銃弾は尽きた。しかし特有の爆音がなくなったにも関わらず、木村は引き金を引き続ける。
屈んでいた相手がゆっくり上がってきたことで、漸く事態の急変に気づいたようだった。
軽く舌打ちして拳銃を投げ捨てる。
 生命の危険で引いていた相手が小さく笑ったのは同時だった。あごに少しだけ肉を寄
せて、口から歯がこぼれている。わりと控えめな笑い方は癖なのか、状況が状況だから
か。喉の奥の色は現れず、すぐに唇を結んでしまう。
「なんで男ばっかり」
 刺身包丁を持ち直した木村が聞いた、相手の呟きである。独り言かどうかも分からな
いが、女性であることは理解出来た。相手はひどくやつれていたし、性別を凌駕した荒
々しさを放っていたから、ただの塊としか捉えられなかったのだろう。頭を冷やした木
村が相手を眺めれば知った人間であった。森三中の黒澤である。
 顔から流れた視線は黒澤の手元で留まった。片方の手には拳銃、もう片方にはビニール
袋が握られている。袋に入ったものを判断するため目を凝らせば、間違いなく肉片であ
ることは理解出来た。人の指でも集めているのだろうか。

173 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:37:52
 興味には届かない微妙な感情を持て余す。ただ地面に立つだけの木村に対し、黒澤が
不快を浮かべた。
「男がいるから辛いんだ男ばっかいて私はいなくて死んでない死なない女でも死なない
 女だから死なない」
 はっきり届く独り言に非日常が混ざる。発散されたコンプレックスは食らわず、手に
した刺身包丁を握りしめる。すでに思考は飛んでいた、だから本能だけで動く。
 向かう木村と銃弾が交差し、眼鏡を曇らせた黒澤が作れない笑顔を浮かべた。響く銃
声に戸惑わずに進むには限界があり、目で追えない銃弾は首の横を掠った。初めて身の
危険を悟った木村が遠く意識を飛ばす。体に任せて動き、他人事のように死を意識した。
 水の波紋が見える。無関係の幻覚が違う銃声の波だったことに気づいたのは、笑って
いたはずの黒澤が目を見開いていたからだ。左肩から溢れる新たな血液の流れが、ビニ
ール袋に向かって緩やかに落ちていた。止まった時間が弾かれた音で再生し、自らの腕
に怯える黒澤が恐怖を漏らす。視線の先、遅れて首の向きを変えた木村は、唐突に吹き
出して企むような笑みを浮かべた。その間にも銃声は増え続ける。

174 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:39:09
 木村は自身がおかしくなっているのを何となく理解している。だから笑うしかなかった。
片方がおかしければ片方が支える、そんな暗黙の定説でさえ壊れてしまったわけだ。
 まさか、お互いに狂っていただなんて。
 壊れた機械のように荒らげていた。細すぎる体に付着した血液の多さを比べても五十
歩百歩、黒いジーパンで目立たない部分を足せば負けているかもしれない。元来培って
いた獣臭い目は血走り、とぎれもせず意味不明な声色を喚き散らしている。失意を連れ
て逃げる黒澤に数発銃弾を追わせて、相手が見えなくなっても口は閉じなかった。笑っ
ているようにも見える。
 吹っ切れ方にも個性はあるらしい。妙に冷めた木村の感想である。すでに包丁を握る
力は弱めて、いつか気づくだろう相方をぼんやり眺めていた。喉を枯らした鍛冶が木村
に気づいたのは数秒経ってからである。しかも、だ。
「あれ? 鍛冶くんじゃない?」
 この場に適わない頓狂な呼びかけの所作だった。例の返事はなかったが、相方だとは
理解出来たようだった。向かってこない銃口が証拠だ。にやにやと口を緩めてはいるが。
「きたねえなー」

175 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:40:20
 木村の服を指差す鍛冶は泥遊びをした子供に似る。木村も軽く笑い、人のこと言えな
いだろう、と愚痴る。体を焼く光に照らされているような、圧倒的な高揚感がある。高
校からの仲が延長されて、種類は違うにしろ同じ方向を選択した同士で向かい合う。こ
れは遊びだ、いつもと同じ。初期に作ったネタも二人善がりだった。舞台上でプロレス
をした頃に重なる。
 お互いの武器を向けた。歯毀れた刺身包丁が鈍く光った。下りていた銃口がゆっくり
木村に向けられた。何か合図があれば試合を開始するのだが、漫画のように葉が舞い降
りるわけでもない。やがて、長く空く間を埋めるために考え事をしていた木村は、思い
ついて刺身包丁を下ろす。
「ゲームしようぜ」
 甘い誘いに乗せられて鍛冶も銃を下ろす。戯れの企み笑いを浮かべてから、木村が両
肩を上げた。血がこびりついて固くなった髪を撫でる。
「たくさん倒した方が勝ち」
 主人公は二人いらないから、どちらかがラスボスになればいい。殺すも殺されるも非
現実的で、考える力を捨ててしまった木村には理解出来そうもない。最大のイベントを
後回しにした理由に躊躇は含まれていたのだろうか。

176 : ◆QDz7a77EcU :2005/04/27(水) 18:41:30
「そんなん、わかんねえじゃん」
 嘘で数の上乗せが出来るのに。そんな言葉が続きそうである。ルールを決めておかな
ければ終われない、しかし壮大なゲームを考え出すには発想が乏しい。とりあえずこし
らえた簡易ルールを何となく浮かべる。
「じゃあ変える」
「どうやって?」
「あー……じゃああれにしよう、標的絞る」
 言いながら誰かの姿を浮かべる。先ほどまであった失意の顔があった。
「さっきのやつ倒したら勝ち」
 相手もこちらを殺そうとしたのだから自業自得である。勝手に納得して鍛冶を伺った。
鍛冶は心底楽しそうに歯を覗かせる。返事代わりに頷いて、負けないと意志表明してか
ら消えてしまった。最後に見えた背中にあった鮮やかな赤が印象に残る。
 残された木村はとりあえず刺身包丁を投げた。キャッチしきれずに落ちた刃が腕を
掠って落ちた。ありがちなナルシスト少女のように刻まれた腕の傷がまた一本増える。
拾い上げてまた放り投げる。何となく黒澤がいそうな方向に向かって歩を進めて、途中
で落ちていた死体を踏み越えた。達成するべき課題が見つかったおかげか、動きが少し
明るくなる。
 納得した者同士の暇つぶしゲームが、前座を終えて始まった瞬間だった。

180 :心配性 :2005/04/28(木) 18:53:01
アンガ+流れ星の続き。中島さんの口調よく分からないけど頑張ります。
やばかったら警告してください。


気が付くと中島は堅い床の上に立っていた。
――あれ…ここ、どこだ…。
あたりを見渡す。真っ暗だ。生きているのか死んでいるのかの感覚もない。
痛みもない。
足下をよく見ると残骸の山。自分が今まで殺してきた芸人達だろうか。
てことは―――?
ああ、簡単な事だ。俺は死んで、地獄に堕ちた。
罪悪感なんて感じない。お互い命懸かって戦ってるんだからな。今度ばかりは
謝る気なんてない。だって俺は瀧上を守りたかっただけなんだから。

――そう言えば瀧上はどうなったんだろう。
一緒にいたはず…だったよな。
つーかこれでその相方まで死んじまってんじゃ割に合わない。
それでも必死になって探してしまうのは、最後まで守りきれなかったからなのか。

――瀧上………?


探していた人物は、すぐに見つかった。やっぱあいつも死んだのか…。





181 :心配性 :2005/04/28(木) 18:53:47
もっと生きて欲しかったな…
瀧上は俺に気づかないのか、すたすたと歩き出す。
――待てよ!
慌てて駆け寄ろうとしたが…
――!!?

突如足下にブラックホールみたいな大きな穴が開いた。
がくん、と身体が下がる。
――わ……っ
落ちないように必死にしがみつく。底には燃えさかる、溶岩。何か強い力で
身体はずるずると引きずり込まれてゆく。まるで見えない手で引っ張られている
かのようだ。
――ぁ……
恐怖で声が出ない。
――こんなとこに置いていくなよ!!!
相方は振り返らない。何で、何でだよ…っ!聞こえてんだろ!?
――助けてくれよ!まだ死にたくない!!一人にしないでくれ瀧上!!
  いやだぁ―――ッ!!!



182 :心配性 :2005/04/28(木) 18:54:36
「中島さん!!大丈夫ですか!?」
突然聞こえた大声に、中島は現実の世界に呼び戻された。


「………え………?」
夢?

ゆっくりと目を開ける。木漏れ日が差し込んできて眩しい。思わず目を瞑る。
「あ、起きた起きた!」
「いやぁ良かったね〜」

だんだん意識がはっきりしてきた。目だけをきょろきょろさせて、あたりを見る。
目の前にはマッチ棒の様に細長い体つきの男が二人。腕には下手くそに巻かれた
包帯。そしてここは、森の中。
―――――生きてる。
身体の痛みと、頬を滑り落ちる涙が、それを教えてくれた。
ごしごしと袖で乱暴に涙を拭う。夢で泣くなんて、馬鹿みたいだ。

「あ……俺は……」
「えーっと、中島さんが木に引っかかってるとこを、山根が見つけて…」
「落ちてきたのを、田中さんが助けたんですよ」
身振り手振りで大げさに説明した後、
なぁ?とお互い顔を見合わせて緊張感のない顔で笑う田中と山根。


183 :心配性 :2005/04/28(木) 18:55:20
「“落ちてきた”?俺が…」
「はい。……え、覚えてないんですか?」
……………あれ?俺、何で崖から落ちたんだ?必死に記憶を探るが、
一向に思い出せない。
瀧上と一緒に歩いていて、それから―――――…
何度思い返してみても、そのシーンで記憶の映像が途切れてしまう。
頭に手を置き必死に考えた。沈黙が続く。ちらりと前を見ると田中と山根が
こちらをじぃーっと見ているのに気づいた。
返答を待っているつもりらしいが、そこまで見詰められると思い出せる物も
思い出せない。
「あ、あのっ!!」
突然、山根が田中を押しのけ肩を押さえてきた。
「無理に思い出さなくていいですよ。ほらあの…頭痛くなりますから」

「あ、……知らない芸人に襲われたんだ」
「…えっ?」
「思い出したんですか?」


184 :心配性 :2005/04/28(木) 18:56:22
森の中を瀧上と歩いてた。その後、誰かが襲いかかってきて、
俺だけ近くの崖から落ちた。

…………あれ、ちょっと待て。つーことは今、瀧上は…
―――独り。
「ッ!!」
弾かれた様に起きあがる。だが、体中に鋭い痛みが走り、自分の身体を抱く
様にして前屈みに倒れた。

「えっ、え??ちょ、どうしたんですかぁ!?」
訳の分からない田中はただおろおろと慌てふためいていた。
くいくい、と後ろから山根が服の端を引っ張る。


「相方の瀧上さんを探そうとしてんじゃない?」
「え!?……あ、あぁ。それそれ」


185 :心配性 :2005/04/28(木) 18:57:59
このゲームが始まって、六日目。やっと「目的」と呼べるものが出来た。
中島さんと一緒に瀧上さんを探す事だ。

あのまま別れても良かったのだが、やはり怪我の治ってない中島さんは
心配だし、あてどもなくふらふらと歩き続けるのも嫌だったから、とりあえず
ついて行く。でも、ごねる山根を説得するのには骨が折れたなあ。


『田中さんど――――――しても行かなきゃ駄目?』
『事情知ったからには見捨てる訳にもいかないだろ』
『でもさ、俺脚遅いし。迷惑かけるって』
『中島さんだって怪我してんだから。ゆっくり行くよ』
『そ…そう…』
何がそんなに不満なのか知んないけど、もう決めたんだよ。
そう言って先に出発した中島さんの後を追いかけた。
『えーちょっと待ってよ……俺も行く!』
ついに観念した山根が立ち上がった。自分の名前を呼びながら走ってくる
山根の声を聞きながら、心の中で「勝った」とほくそ笑んだ。


186 :心配性 :2005/04/28(木) 18:59:21


そして、今に至る。
どれくらい歩いたのだろう。周りは相変わらず見渡す限り森・森・森。
迷ってしまったのか、それとも同じ所をぐるぐる回っているのか。
ああ、こんな状態が続くとそのうちノイローゼになっちゃうかも…。

「田中さ〜ん」
…で、やっぱり山根は休みたがる訳で。

「いい加減にしなよ山根。ホントは疲れてないだろ」
「疲れてる」
「疲れてないっ!」
「何でそんな怒るんだよぉ…」
「お前が怒らせるようなことしてんだよ!」
雲行きが怪しくなってきた。田中が怒れば怒るほど山根はしょげていく。
「……田中さんなんてもう死んじゃえ」
「ちょ、おいっ!何て事言うんだよ!シャレになんないって!」

心臓が飛び出るかと思った。まさか山根の口からこんな言葉が出るなんて
思いもしなかったから。
山根もしまったといった顔をして手で口を塞いだ。目が合わせられない。
数秒の沈黙。その何秒かが自分にはとても長く感じた。
それが耐えられないくらい重い。
「ごめん。悪かったよ。もう言わないからさ」
許してよ。と縋るような口調で項垂れた。


187 :心配性 :2005/04/28(木) 18:59:59
「はぁ〜。やっぱ、俺のせいかなぁ……」
そんな二人の様子を少し離れた所で見ていた中島は、罪悪感を感じ
始めていた。
このまま別れた方が、二人にとってもいいことだ。


193 :シフクノタネ:2005/04/29(金) 00:35:20
サカイスト+綾部祐二(ピン時代)編を書きました。
設定としては、アンタッチャブルが懸賞付き標的になった際に
デビが殺した無名芸人の中に彼らがいた、というかんじです。


ザクッ ザクッ ザクッ ザ …

静かな森に、地面を掘り起こす音が響く。
今風の、という形容詞が似合いそうな青年は、ただひたすら地面を掘っていた。

「ふぁー……」



周りには無数の遺体が転がっている。
腕がない、足がないなどはまだ序の口。
臓器が完全に露出している者、顔を含めた頭全体が原形をとどめていない者、もはやソレが人間であったのかすら分からない者…


そんな中、明らかに他とは異質な遺体があった。
大きな木にもたれかかるように座っている2体。
片方は顔全体が血塗れだが苦しんだ様子はなく、もう片方も全身に銃弾を浴びた形跡があるのに苦しみの表情ではない。


194 :シフクノタネ:2005/04/29(金) 00:36:22
「はぁ…はぁ…はぁ……一休みするか…」


穴を掘っていた青年は、額の汗を大きく拭い、2体の隣に座った。
そしてその後ろに隠してあったバッグからペットボトルを取り出し、一気に煽り溜息をついた。


「またきちはどうしてるかな…」

数時間前まで共に行動していた友人の名前が口をついて出た。

数時間前。

隣の2人も、まだ生きていた。




「綾部!!将芳!!もっと速く走れ!!」

ペースの落ちだした酒井将芳(サカイスト)と綾部祐二(ピン芸人)に、先を走る酒井伝兵(サカイスト)が声を張り上げる。
他にも大勢の若手芸人が奇声を発しながら走っており、ややもするとはぐれてしまいそうだ。

195 :シフクノタネ:2005/04/29(金) 00:37:18
「兄ちゃん、俺もう走れないって……」

「バカ、命懸かってんだぞ!!死ぬよりいいだろ!!」

ほとんど兄弟喧嘩に近い言い合いに、綾部は苦笑してしまった。
この状況になる前も、2人は言い争っていたからだ。
ピンの綾部には、羨ましい限りなのだ。


「もう少し行ったら、隠れられそうなとこ探すから」


しかし、隠れたところで、自分たちに差し迫っている状況からは逃れられそうにもなかった。

『誰か分からないけど、奇声を発しながら銃を乱射している中堅芸人がいる』

『既にかなりの若手が殺された』

逃げる最中に聞いた、他の連中の話だ。
その“中堅芸人”がデビット伊東であり、アンタッチャブルをターゲットにしていたものの、顔を知らないために若手を手当たり次第殺害していたということは、綾部は勿論サカイストも知る由はなかった。

204 :シフクノタネ:2005/05/02(月) 00:34:53
サカイスト+綾部祐二の続きです。


「将芳、これ飲んで少し落ち着け。綾部も」

人の波から少し外れた場所で、伝兵はバッグからペットボトルを取り出し、2人に手渡した。
後から後から、途切れることなく若手芸人の波は続く。
どこかで見たような人も、見覚えのない人もおり、こんなに大量の若手芸人がいたのかと思う程。
異様な光景の中、3人はただ呆然と眺めるしかなかった。




『ぎゃあああああ!!』


突然、近くから悲痛な叫び声が聞こえた。
物凄い近くだ。
それと同時に、ぱららっ、ぱららっ、という音や、がりがりと引っ掻くような音、言い表せないような音も。
辺りの混乱は一層増し、狂ったように叫ぶ声がこだまする。


「綾部、絶対ついてこいよ!!」

伝兵は将芳の腕を引っ張って無理矢理立たせると、そのまま全速力で走り出した。
綾部も自分のバッグを背負い直し、必死にその後を追った。

205 :シフクノタネ:2005/05/02(月) 00:36:05
「ぎゃあっ!!」
「助けてくれ……」
「誰かぁ!!」
「母ちゃん……」


将芳は、兄に掴まれていない方の手で耳を覆った。
自分までおかしくなりそうな叫びの数々。
すぐそこまで迫っている恐怖。
こんな時、師匠だったら何と言うだろう。

銃声が、将芳のすぐ後ろで聞こえた。



「綾部!!兄ちゃん!!」


人間、極限に達すると何をするか分からない、とはよく聞くけれど。
自分がそういう風になるとは、考えたこともなかった。
ただ、体が勝手に動いていた。



206 :シフクノタネ:2005/05/02(月) 00:37:15



ふと気付くと、綾部は低木の中に転がっていた。

「っつ……」

倒れた拍子に頭を打ったのか、軽い痛みがある。
どうやら、気を失っていたらしい。
どのくらい倒れていたのかは分からないが、静寂に包まれているところを見ると、かなり経っているようだ。

「げっ……」

綾部は思わず、口を覆った。
喉の奥から、すっぱいものがこみあげる感覚。
辺りは凄惨極まりない状態だった。


207 :シフクノタネ:2005/05/02(月) 00:38:10

その中で、誰かが必死に何かを揺らしている。
木漏れ日で金色の髪が光り、きらきらと輝いている。

「伝兵さん……?」

歩み寄った綾部が目にしたのは、血の気が失せた将芳と同じような蒼白の顔の伝兵だった。

「綾部……将芳、起こしてくれない…?いきなり覆い被さってきたと思ったらさぁ、こんなんなってやんの……」

首筋に触れてみたが、脈はもうない。
だが、将芳の手は服の裾をしっかりと掴んでいた。
まるで『どうもありがと』のように。

「俺…まだ締めてないのにさ、何で勝手に締めてんだよ……」

「………」

「俺が、ネタ考えられないの、知ってるクセに……」

「伝兵さん…」

綾部には、彼にかけるべき言葉が見つからなかった。
伝兵にとって、将芳はただの相方ではない。
相方であり、兄弟であり、良きライバル。
在り来りの言葉で、慰めることは不可能だ。

212 :シフクノタネ:2005/05/04(水) 00:56:12
サカイスト+綾部祐二の続き。まだ終わりません(汗


「俺の相方は、将芳しかいないのに……」


生きるための術も、生きることの意味も、伝兵は見失ってしまった。
自らの命を捨てて自分を助けた、弟と一緒に。



「……伝兵さん、将芳さんを弔いません?僕ら、2人で」

「弔う…?」

「このままじゃ、将芳さんかわいそうでしょ?」

綾部は自分のバッグから、農作業で使うようなシャベルを取り出した。
伝兵にとって酷なことを言っているのは、分かっていた。

「そう……だな」

将芳を北枕に寝かせ、2人は手を合わせた。
綾部はペットボトルの水をタオルに染みこませ、軽く唇を湿らせた。
伝兵はポケットに1本だけ残っていたタバコに火を点け、傍らの地面に刺した。

「将芳…ごめんな…ごめんな…」

伝兵は跪き、大粒の涙を流している。
この状況を将芳が見ていたら、「兄ちゃん小心者だよなー」とか言いそうだ。

213 :シフクノタネ:2005/05/04(水) 00:58:23
綾部は遺体に背を向け、大きな木の根本を掘り返し始めた。
大量の血が流れたせいか、地面が湿っているようだ。


「伝兵さんもやります?」

振り向いた綾部は、目を疑った。
いくらサイレンサーがついていても、多少の音は聞こえるだろうに。
掘り起こす音が、格段に大きかった訳でもないのに。


伝兵は将芳に覆い被さるように突っ伏していた。
硝煙立ち上る、1丁の銃を手に。

「でっ、伝兵さん!!」

214 :シフクノタネ:2005/05/04(水) 00:59:23
綾部が抱き起こすと、微かに目を開いた。
そしてうっすら笑みを浮かべ、やはり服の裾を掴んだ。


「ど………も、あ…り……がと…」


綾部の目の前で、サカイストの舞台は締めくくられた。
この世から、永遠に。





「まったく…本当に『待ったなしなし』で逝っちゃうんだからな…」

自嘲気味な笑いと共に、綾部は呟いた。

224 :シフクノタネ:2005/05/09(月) 00:09:38
サカイスト+綾部祐二編、完結です。


数時間前のことが、未だに蘇ってくる。
もしかしてドッキリなんじゃないか、自分を騙されているんじゃないか。
だが、2人の顔は明らかに生きている顔ではない。

「たったひとりの相方、か…」

綾部は、まず将芳を引きずるように穴へ移動させた。
続いて伝兵を担いで移動させ、将芳の隣に座らせた。

「向こうでも、漫才やってくださいね」

綾部は2人の手を服の裾から引きはがした。
そして、掌が正面を向くように固定した。
サカイストの出オチ、『待ったなしなし、ね』のように。

「俺も、またきち探しに行かなきゃな…」

2人を埋める間、綾部は涙を流すことはなかった。


【酒井伝兵(サカイスト)、酒井将芳(サカイスト) 死亡】

232 :心配性 :2005/05/11(水) 20:22:20
>>187の続き


中島はゆっくりと二人に近づいた。自分が居たことをすっかり忘れていたの
だろうか、先ほどの喧嘩の様子を見られていたのを悟った二人は少し気まず
そうな顔をして、ごまかすように力無く笑った。

「あ〜…えっと、さっきのは喧嘩じゃないですから。その…何て言うか」
「そうそう。ただの山根の我が侭ですよ。そーだろ?」
「はぁ!?……あ、いやいや。そうですよ中島さん」

バレバレの嘘を付く二人に、中島は苦笑した。特に焦ったとき頭を掻く癖の
ある田中の行動がそれを決定付けている。
しばらくの間沈黙が続いた。中島は腕を組んで何かを考えている。
田中が声を掛けようとしたその瞬間、


「っしゃ!休もうか!」
「は?」
ぱん、と手を叩きにっこりと笑ってその場に座り込む中島。先ほどまでの切羽
詰まった様子からの変わりように、田中は思わず素っ頓狂な声を上げた。


233 :心配性 :2005/05/11(水) 20:23:18
「だって山根君は歩きたくないんだろ?俺も疲れてきたとこだし。それに…」
これ以上歩いても意味無いから。そう付け加えると田中と山根の服を引っ張り
無理矢理座らせた。

「でも瀧上さんは…」
「瀧上が死んだなんて思ってないって。もしかしたら向こうも探してるかもし
れないし、ここでじっとしてた方が会えるかも」

何か吹っ切れたのか、その口調はいつもの明るい中島のものに戻っていた。

すると山根がリュックを引っ張りだし、ごそごそと中身を出し始めた。
時折独り言のように「どこだったっけ」と小さくつぶやきながら、リュック
を逆さまにして振った。
どさどさどさ、と重たい物が落ちる音。

「おお〜あった!」
リュックの底にあったであろうそれを拾い上げ付いていた泥を手で拭き取る。
「山根、それ…」
「ビール?…そんなモンまで入ってんのか」
山根が取り出したのは三本の小さい缶ビール。その一つを手にとり、プルトップ
を開ける。


234 :心配性 :2005/05/11(水) 20:24:03
「もっと後でゆっくり飲もうと思ってたんだけど…飲む?」
残りの缶をさしだす。田中も、中島も言われるがままそれを受け取った。

まさかこんな殺し合いの場で呑気に缶ビールを飲んでいる奴らが居るなんて
誰も思わないだろう。他人が見たらかなり滑稽に映るに違いない。

「これが最後の晩餐になるのかなぁ…」
「縁起でもない」
少し引きつった笑みで突っ込む田中に山根は冗談だよ、と返した。

死体のごろごろ転がる薄気味悪い森の中。
男が三人。その手には寝酒にもならないような缶ビール。
「よーし、明日も生きるぞ〜」

乾杯。という三人の声が森に響いた。


260 :254:2005/05/16(月) 18:47:57
ロザン・菅視点 集団催眠実験編です。
文才はことごとくないのですが、書いてみました。


死ぬってこんな呆気ないもんなんかな…。
たくさんの人間を殺してきたけれど、みんなもこんな気持ちだったんやろうか?
すべて終わってみれば、夢のような感覚。
死んだっていうよりか……眠っているっていう感覚に近いのかも。
「ふっ。」
思わず笑みがこぼれた。
俺……何してたんやろ?
たくさんの人間を手にかけて、死んでから後悔しているなんて。
もっと前に気づけばよかった。あんな行為に意味が無いこと。
…いや、気づくことなんて出来なかったかも。
あんな極限状態で正気で居られることなんて無に等しい。

―――そういえば、宇治原は?
真っ暗でなんも見えへん。何も聞こえへん。
俺をずっと追いかけて、そして俺よりも先に逝ってしまった宇治原。
宇治原に醜態を晒し、ひどいこともたくさんした。
…………もう合わせる顔なんてないわ。
俺何処行くんやろな?地獄?天国…なんて、行ける訳ないか。

このまま眠っていたい。
一生、夢の中で…俺の犯した罪がみんなの記憶から忘れられるまで。

ずっと、ずっと………


261 :254:2005/05/16(月) 18:58:46
『こいつ、いつまで寝てんねん。もう起きてもええ頃なのに。』
『まぁまぁ。別に菅さんも死んでる訳やないんですから。ゆっくり待ったらどうですか?』

遠くで聞き覚えのある声が聞こえてくる。誰やったっけ…。
目を開けようとしても、瞼が重くて開けられない。
体を起こそうとしても、体がだるくて起き上がらない。
随分と久しぶりに体を動かしたようで、筋肉が衰えた感じだ。

『でも…何かじっとしてられへんねん。あ、せや!
 俺こいつの分の飯取ってくるから!ちょっと見ててな?頼んだで!』
『えっ?あ、ちょっと…宇治原さん!……行ってもーたし。』

“ウジハラ”
その名を聞いた途端、俺の体は落雷を受けたかのように飛び跳ねた。
「宇治原!?」
「うわっ!菅さん、驚かさんといてくださいよー。おはようございます。」
キョロキョロと辺りを見回してみたが、そこには宇治原の姿はない。
代わりと言ってはなんだが、西野が隣で心配そうに俺を見つめている。
「西野…?」
「菅さん、お久しぶりです。」
ニヤリと西野が笑った。



262 :254:2005/05/16(月) 19:01:51

「えっ…ココ何処…?」
「菅広文さんでよろしかったですか?」
と、西野に質問を投げかけたその時、誰かが話に割り込んできた。
……給食委員?を思わせるような風貌の女性やった。
その女性は俺の体を軽く健診して、『失格』と書かれたワッペンを俺に手渡した。
「失格です。お疲れ様でした。」
「失格って…何がですか?」
「…集団催眠実験、としかお伝えできません。失礼します。」
そう言ってその女性は立ち去った。
「そのワッペン、付けるんですよ。貸してください、俺付けます。」
西野が俺の服に手早くワッペンを付けている。人に安全ピンで留めてもらうのってちょっとくすぐったい。
ふと、西野を見ると、西野にも同じようなワッペンが付けられていた。


263 :254:2005/05/16(月) 19:05:42

「なあ。これ、なんなん?」
全部が意味不明だった。体育館のような場所に集められた芸人たち。
寝てる人、起きてる人、知ってる人、知らん人、そして俺が殺した人。
俺はあのゲームで殺されて、死んだ。その事実がいっぺんにひっくり返ったようだ。
「俺もよーわかんないんすけど、あれ政府の実験で。全部作り物の世界やったみたいですよ。」
西野はそう答えた。……実際のところ、よくわからへんけど、
自分は生きてるってこと。西野も、宇治原も、他のみんなも生きてるってことだけわかった。
「西野…ちょっとええ…?」と西野の答えも聞かずに、ヤツの胸に手を沿わせた。
俺がナイフで付けたはずのキズがなかった。あんなに真っ赤に染まっていった西野の服。
それも、なんら変わりなかった。胸から西野の顔に目線を上げた。
いつもの…いつもの西野だ。
「菅さん、ほんまにすごかったすねぇ。何人殺したか覚えてます?」
冗談交じりに西野が皮肉る。
「俺…西野のこと殺してもぉた。」
ポツリと出してしまった言葉に西野は、「俺死んでませんて。」と、元気付けるように笑った。
罪悪感と、安堵感の入り混じったまま俺は西野に問う。
「ほんまに…現実の話やなかったん?」
「そうですよ。みんな生きてます。俺も、高井さんも、中川さんも。」
高井さん、中川さん。
裏切ったうえ、殺してしまった先輩の名前だ。
現実の世界じゃないとはいえ……。ああ、余計に罪悪感が…。

267 :254:2005/05/17(火) 18:33:36
>>263 の後半全部出します。

ふと、自分の目の前に座り込むやつの存在に目を向けた。
よく遊んでいる後輩。そして、一番初めに殺めた人間。西野亮廣。
死に際のあの歪んだ表情が、俺の頭の中で目の前の西野と交差する。
あー、もう何かどっちが現実でどっちが作り物なんかわからんわ。
「西野…。」
「はい?」
「俺に殺されたとき、どう思った?」
「殺されたとき、ですか?」
西野にこの質問するんは禁句かな、とも思ったけどやっぱ聞いておきたいもんな。
「…痛かったです。」
ちょっと俺は拍子抜けした。
それだけ…?西野、“俺に”殺されてどう思った?って聞いてるんやで?
「痛かった…って。もっと詳しく。」
「体も痛かったけど…心…って言うんかな?それも痛かったです。」
「…」


272 :254:2005/05/17(火) 19:25:29

西野はちょっと黙ってから話し出した。

「菅さんのこと、信用してたから…。菅さんならきっと助けてくれる、俺と一緒に居てくれる、って思った人に
 殺されてもぉたっていう…なんて言うんやろ?脱力感に似た感じの…。鈍い痛みやったんです。

 でも!いつも見てる菅さんちゃうかったし…今は全然大丈夫ですよ!
 そのおかげで醜い人間の争いや裏切りあい見なくて済んだし……、所詮あれは悪い夢やから。
 ほんまに起きたときは『なーんや』って拍子抜けした感じ。」

何も言うことはない。言っても嘘くさくなるだけやし。
「まだたくさんの人間が“生きて”ますね。これ、いつになったら終わるんやろ?」
西野が空気を察して話を変えた。
「菅さん、腹減ってるんちゃいますか?腹減ってたら、気分も暗くなるだけやし…。
 何か口に入れたほうがええと思いますよ。俺なんか取ってきますか?」


268 :254:2005/05/17(火) 18:35:47
「その必要はいらんで。」
ビクッとその声に体を硬直させる。振り向きたくない。振り向けない。
あいつの…あいつの顔なんて見れない。
「宇治…原……」
俺は目線をあいつに合わせずにその声の主に問う。
しばらくの沈黙が流れた。そして、
「菅。こっち向けや。」
と、冷静な声で答えた。
ゆっくりと宇治原に視線を向ける。
そこには、いつもと変わらぬ宇治原が神妙な顔で立っていた。
「う…宇治原…!俺…」
その言葉と同じくらいに俺のおでこに宇治原の長い指が音を立てて当たった。
―――ビシッ
「痛っ!」
……デコピン?
「いつまで待たせんねん、あほ。」
そう言い、宇治原はペットボトルのお茶と、パンを差し出した。
神妙な面持ちは、またたくまに笑顔へと変わっていく。
「…怒ってへんの?」
「……怒ってるけど、今のでチャラにしたる。次は…どうなっても知らん。」
西野は気を利かせて席を外し、俺ら二人だけになった。
「そんなん…する訳ない。」
「実際、してた。」
それを言われて何も言えなくなる俺。
確かに、極限状態になったら人間がどうなってしまうかって今回のことでよくわかった。
「ゴメン…。」
そう言って宇治原が渡してくれたお茶を口に含んだ。

269 :254:2005/05/17(火) 18:39:18

しばらくの沈黙が流れて、俺の口から漏れた言葉。
「くそ…結局政府に踊らされてただけか…。」
それを聞いた宇治原は諭すように言う。
「ほんまもんやないだけ、我慢せな。」
会話がうまく続かない。ポツリポツリと交わされる言葉。


「あのさ…宇治原。」
「うん?」


「―――もしまた、俺があんな風になったら…今度はお前が責任持って殺してな?」


宇治原がふっと口元を緩ませる。
「さあ、どうやろな?逆に今度は俺がおかしなったりな。」
「…その冗談笑えへん。」
「そう言いながらちょっと笑ってへん?」
そんなおぼつかない会話に、ちょっと笑えて、安心できた。
なんだか、久々に味わった幸福感。


270 :254:2005/05/17(火) 18:40:58
「なぁ、菅。」

「なに。」

「漫才、めっちゃやりたい!って、何日間かずっと思っててん。
 この実験終わったら、もうお腹いっぱいや!って思うくらい、漫才しよな?」

「…約束。」

「おう。」




あれは作り物ってみんな言うけど、あれも確かに現実やった。
紛れもない、あってはいけない現実。
俺はあの世界の中で狂って、数々の人間を殺した。
それも、すべて現実。

忘れちゃならない。今回のこと。
忘れろ、ってみんな言うけど、忘れたらまた繰り返してしまいそうやから。


でも、ちょっとだけ、

今の時間だけ、忘れてもええよな?


なんも考えんと、このささやかで幸せなひとときを楽しみたい。
それくらい…ええよな?


425 :403:2005/05/30(月) 20:51:00
集団催眠99編投下します。

怖かったわけじゃない。だったらあの場で殺されただろうから。
ただ、つきつけられた『相方が死んだ現実』が、その海に飛び込むまでの刹那の時間の間だけ。
その小さな身体に、そして心に焼き付けられただけだった。現実は変わらない。
目の前の先輩が相方を殺した事。相方がこの世にいない事。
絶えられないならば、この現実から消えてしまえばいいのに。それが、彼の最後の決意だった。
――――矢部〜・・・、お前は俺の相方としてようやったと思っとるぞ〜・・・。
呟きながら、眼下に広がる遥かな蒼さに引きこまれていった。
目を閉じたままはいった海の波がとたんに身体を引き裂いた。
蒼さに、自分の生み出した紅さが混じる。
だんだん薄れていく景色を、あぁ綺麗だなと彼は思った。
――――今いったる。せやから待っとけ。一緒にまた馬鹿騒ぎしようや。
不思議な事に痛みはない。それどころか水が暖かい。こんな事もあるんだな。
その暖かさは自分の血液かとも思ったがそうではないらしい。
そう、まるで体をすっぽりと包むように暖かさが高まる。
なんだか安らげるような、幸せなような、そんな暖かさだ――――。




426 :403:2005/05/30(月) 20:51:25
「岡村さ〜ん」
のんびりとした特徴的な呼びかけが聞こえる。
――――最後の最後に幻聴か。しかも相方か。俺幸せもんなんかなー、と彼は思った。
「岡村さん」
――――まだ呼んでんねんか、今いったるさかい待っとけよ。
「岡村さん?」
――――しつこいっちゅうねん。第一お前死んだんやろ。死人らしく静かに・・・。
「岡村さん」
――――何度言ったら気ぃすむねん、お前は。
そう言えば、俺も死んだのだった。つまりこれは天国への第1歩?
黄泉の国へいらっしゃい、なんて天使みたいなヤツに歓迎されるのか?
まさか、その天使が相方なんてありえない。
そんな風に、確かに死んだはずなのに暢気な思考が働く。
「岡村さん。・・・まだ起きないんかー・・・」
はぁ、岡村さんはまだあの戦場におるんか、可哀想やなー。
なんて声が聞こえてくる。天国の出迎えにしては手厳しくはないか?
・・・・・・そう考えていたら、自分の身体が動き、うっすら目を開けられるのに気付いた。
ここは・・・何処?天国なんか?せやたら・・・なんでこんなに狭いねん・・・。




427 :403:2005/05/30(月) 20:51:51
その男はゆっくりと覚醒した。
「まぶしっ」
顔をしかめながら、ついついでたのはこんな一言。
その声に反応したか、脇に座っていた男が
「あ、岡村さん・・・、あっさりやられてもうたんですかー?」
あいも変わらず暢気に言った。
「お前何しとんねん」
岡村さん、と呼ばれた男――――ナインティナインの岡村隆史がゆっくり身体を起こし、目を擦りながら言った。
それから、ゆっくり周りを見まわして、目の前にいる相手を見る。
岡村が言葉を投げかけた目の前の相手は、相方の矢部だった。
「・・・いや、何をしてるって言われてもね・・・」
矢部が何か言い淀んで、その背中の後方から女性の声で
「岡村さん・・・ナインティナインの岡村隆史さんですね?」
と呼びかけるのが聞こえた。
その女性は、見た目はごくごく普通の、表現が間違っていなければ、『給食当番』だった。
岡村のほうは、目の前に死んだ相方がいた上に、状況を掴みきれず混乱している。
「あ・・・、そうです」
「お疲れ様でした。今から少々質問に答えていただきます・・・」
ちょっとばかしの問診を受け、頭がだんだん冷静になっていく。
『給食当番』は問診を終えると、お疲れ様でしたと再び言って、『失格』と書かれたワッペンを岡村に渡す。
――――なんやこれ、しょぼっ。と言いかけたが、相方の胸にも同じものが付いていた。
付けておいてください、と言われ、岡村も習って右胸の、矢部と同じ高さ位にワッペンをつける。
そして、彼女は足早に立ち去ろうとした。岡村が、ふとその女性を呼びとめ、
「あの〜・・・、ちょっとすいません」
「はい?」
「これは〜・・・、一体どう言う状況なんかな〜と思いましてですね〜・・・」
言いづらそうに聞いてきた岡村に、女性ではなく矢部が答える。
「岡村さん、ちゃんと聞いて。さっきまでのは・・・、夢やったんや。」
「ユメ??」
呼びとめられていた『給食当番』は、すいませんこれで、とだけ言って立ち去った。
それから、ふたりで周りを見ると、多くの芸人達が眠っていた。
中には目覚めている者も・・・、そして暴れているものもいた(暴れているのは江頭だけだったが)。

428 :403:2005/05/30(月) 20:52:14
暫く辺りを見まわしていた岡村が、不意に矢部のほうへ向いた。矢部も自然と岡村を見る。
「あのな矢部さん」
「なんですのん」
「ユメ・・・ってどう言うことなん?」
「・・・そうやねぇ〜・・・」
それから矢部は、自分が知っている事を全て岡村に話した。
今回の『お笑いバトルロワイヤル』は全て夢だったこと。それが芸人達の集団催眠による実験だった事。
そして、矢部曰く『あっち(=夢の世界)』で殺された人は自然と目が覚めるらしい、と言う事だった。
それを聞いていた岡村が、ある男たちを見つけて、そこを凝視する。
岡村さん?と呼びかけた矢部も同じ方角を向き、そしてあっと小さく叫んだ。
ふたりより少し離れた所に、見たことのある先輩の姿がある。
――――あんなに信じてたのに、極限状態では人って変わるもんやね。
そう思った岡村の気持ちが分かるのか否か、そこにいるふたりは硬い表情を崩さず寝ていた。
「まだ・・・起きてへんのか」
「みたいやね・・・」
つまりふたりとも、死んでへん。それから一瞬経って
「あ〜あ・・・、俺もカッコ悪い最後やったわ・・・」
矢部が目を逸らし、頭を垂れながら呟いた。
「・・・鎌で・・・?」
「うん、しかも自分の鎌で」
「首をがーっと」
「・・・みたいっすわ」
「傑作やな」
「そうですね・・・ってなに言うてんですか!」
不謹慎やないですか岡村さん、と叫ぶ声が、辺りに聞こえた。誰も聞いていなかった。




429 :403:2005/05/30(月) 20:52:32
それからどれだけの時間が経ったか、正直岡村も矢部も覚えていなかった。
ただ、途中で矢部が「パンとか配ってるらしいから取りに行く」と言った。
そしてひとりで、芸人達が並んで寝ている場所をよいしょよいしょと進んでいった。
すぐに戻ってきて、手にふたり分のパンとペットボトルのお茶を持って帰ってきた。
それから、それを口にして「あれが夢だったなんて信じられない」と言う話ばかりした。
――――あぁ、矢部。ほんまよかったわ。お前が死んでへんで、ほんまよかったわ。
ふたりともその幸せを噛み締めていたのか、暫く夢中で話し合っていた。
「おい」
いきなりふたりの間に、男ふたりが割って入った。
「・・・藤もっさん・・・」
「・・・原西さん・・・」
岡村と矢部が、その呼びなれていた先輩の名前を呼んだ。
岡村側に立っていたのは藤本。矢部を殺した張本人で、岡村を見送ったその人。
矢部側に立っていたのは原西。相方藤本を殺し、そして一緒に身投げした人。
『向こう行ったらナイナイに謝ろな』
その言葉は、原西しか覚えていなかったが。
「お前らに謝りにきたんじゃボケ」
ぶっきらぼうに藤本が言った。相変わらずこの人たちは、と思って岡村がふっと笑った。
「しゃあないっすよ藤もっさん、あんなとこやったら皆狂ってまいますって」
それを言ったのは矢部だ。3人が驚いたようで矢部を見る。
「・・・生きてたんやし、チャラにしましょ。死んでないだけええやないすか」
「矢部〜・・・、俺が悪かった・・・すまんかった・・・」
「いやいや、いいですって藤もっさん」
藤本がその場に崩れ落ちて泣き出す。それを矢部が笑って励ました。
――――なんか何時もと違う気がすんねんけどな、立場とか。
そうは思ったが、それは一切口に出さずに。
岡村は再び、改めて目の前にいる男たちを見なおして、幸せやな、と呟いた。

437 :奥様は社長@リハビリ中 ◆lnkYxlAbaw :2005/05/31(火) 21:23:30
お久しぶりです。ここで書くの久しぶりなので文章力が落ちてたらすみません。

「ダメ元で社長に掛けてみっか」
 海の側で独りきりになった田中は、久しぶりに携帯の電源をつけて電話を掛けた。
「え? マジ? ここひょっとして掛けられないのか。あ、つながった」
 事情を話せば何とかなるかと田中は思ったが、電波が通じない状態だった。
「バカ、小僧。代われ」
 田中の意識が太田のそれに切り替わり、何度も繰り返すメッセージを聞いた太田は、もう駄

目だと携帯の電源を切った。
「みっちゃん。何やってるんだ」
 一言太田は言った後、今考えられる事を考えた。
 今は田中の中に間借りしているが、本来この世の人間でない太田は、お笑いバトルロワイヤ

ルのルールに関係ない以上、日本にいる妻の光代の所に行っても問題無いが、今度は自分がこ

の世にいる霊界のルールで、田中の体を使わない限り日本に帰ることは出来ないのも十分に分

かっていた。

438 :奥様は社長@リハビリ中 ◆lnkYxlAbaw :2005/05/31(火) 21:24:01
「こいつみたいにみっちゃん、アホなマネする訳ねえしな」
 自分が生きている時に相方である田中と好き勝手出来たのは、芸人であったのにも関わらず

、自分が才能あるからいいわとそれを止め、自分の舌禍で芸能界から干されていた自分と田中

を再び表舞台に出したのも妻である光代のお陰。
 酒が絡めば感情的になる嫌いもあるが、将棋の駒を一手、また一手進ませるように用心深く

物事を進ませていく光代の筈なのに何故だと太田は思った。
「まさか、俺が死んだからショックでぶっ倒れてるんじゃねえだろうな」
 まさかと思ってつぶやいた太田の一言は現実だった。


454 :心配性 :2005/06/09(木) 17:51:19
>>234の続き。流れ星サイド。


「…ん……ふぁ〜あ…」
むくり、と怠そうに上半身を起こしたのは中島だった。
どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。ここ何日も緊張で寝ていなかった
身体には、少量のビールでもよほど安心できるものがあったのだろう。
横を見ると、未だ穏やかな寝息を立てて爆睡しているアンガールズ二人の姿。
こんな森の中で丸腰で横になって寝るなんて、自分にもこいつらの脳天気さが伝染
したのか?なんて思いながら、中島は苦笑した。
とりあえず無造作に置いてあった田中のライフル銃を引き寄せる。
幸い、玉は何発か入っているようだ。

あたりは、すっかり夜になっている。

ガサッ…
「ぅわっ…!」
突然聞こえてきた、草をかき分ける音に身体が飛び跳ねる。同時に言いようのない
緊張感が生まれた。―――誰か、来る?


455 :心配性 :2005/06/09(木) 17:51:57
ライフルをぐっと握りしめる。田中達を起こさないようにゆっくりと立ち上がり音
のする方へそろそろ歩いていった。
足音は段々とこちらへ近づいている。心臓の音がばくばくと鳴って五月蠅い。

俺は、あいつらに助けられたんだ。今度は俺が守ってやんねぇと…。
あいつらを死なせちゃ駄目だ。
自分に言い聞かせるようにそう呟く。

闇の向こうに人影が見えた。どうやらこっちの存在には気づいていないようだ。
(誰だろ…)
ライフルを握る手にじっとりと汗が浮かぶ。もし敵だと判断したら、迷わずに撃ち殺そ
うと考えていた。
人影が月明かりに照らされ、はっきりと姿が映し出される。

黒髪混じりの茶髪に、細い身体。紛れもなくその人物は、中島の探し求めていた人物だ
った。
引き金を引く手が離れ、確かめるように目を擦ってもう一度見る。

今度は夢じゃない。
「瀧上!!」


456 :心配性 :2005/06/09(木) 17:53:02


瀧上もまた、森の中を歩いていた。極度の疲労と、独りになってしまった
恐怖心で、身体的にも精神的にもすでに限界に達していた。
瀧上は、中島を死んだものと思いこんでいた。
あの高さから落ちたんだ。まず助かる術はないだろう。
ふと、自分の手にこびり付いた血を見る。脳裏に「あの時」の映像が鮮明
に映し出される。

『見つけたぞ…うちの相方を殺しやがって!!』
『瀧上、下がってろ!』
『あ…仲英そっちは…!』
『死ね!』

「う……止めよ。考えたくね」
中島は不意打ちをくらって数十メートル下の林の中に落ちてしまった。
そしてあの忌々しい若手は、今度は自分を殺そうと襲いかかって来た。
だから殺してやった。中島からもらった銃で。
これは俗に言う「敵討ち」だ。

そういえば人を殺したのはアレが初めてだ。今まではずっと中島が代わりに戦って
くれてたから。大して強くも無いくせに。
自分が初めて殺した人間は、大切な相方を殺した奴。そう思うと何だかやるせない。



457 :心配性 :2005/06/09(木) 17:53:43
「さーてと…」

敵は討った。相方はもういない。やること無い。
イコール、もう生きてても仕方ない。

「死のうかな、そろそろ」
手に取りだしたのは、『睡眠薬』と書かれたラベルの貼ってある瓶。
ドラマとかで見たことがある。確か過剰に取りすぎると死に至る筈だ。
じゃらじゃらと手のひらに乗せると、そのまま一気に口に放り込んだ。水筒の水で
無理矢理喉の奥へ流し込む。

「げほっ、……はぁ…」
もうすぐ自分は死ぬんだ。こんな所で、誰にも看取られずに。
座り込んで頭を抱える。後はもう「その時」を待つばかりだ。
「仲英ぃ〜…」


458 :心配性 :2005/06/09(木) 17:54:21
「瀧上!!」

頭上から、望んでいた人物の声がする。
幻聴?…違う。恐る恐る顔を上げた。

「たきうえ〜!良かった無事だったんだな!!」
「え?何、どちら様?」
「あたま大丈夫かよ…。俺だよぉ。分かんない?」
「仲英…?」

涙ぐみながら中島は瀧上に抱きついた。腕を突っ張って身体を引き離し、まじまじ
と相方の顔を見る。

「お前さ、俺が死んだと思ってた?」
「うん。…でも生きてるな」
にっこり笑って頷く中島。はぐれてからまだ一日しか経っていないのに何故こんなに
その顔が懐かしいんだろう。

「助けに来てくれたのか?」
うっすら浮かぶ涙を擦り、力無く笑った。
当たり前だ。と中島は少しむっとした顔で立ち上がるが、すぐに元の優しい笑み
に戻り手を差し出す。
「今度は絶対見失わないようにしねえとな。ほら、行こ」


459 :心配性 :2005/06/09(木) 17:55:04
どきん、と心臓が高鳴る。そうだ…俺もうすぐ死ぬんだった。
差し出し掛けた手をさっと引っ込めてしまった。

「何だよ…どうしたの?一緒はもう嫌?」
「ちが…そんなんじゃ…」
そこまで言いかけると、急に目眩が起こり木にもたれかかった。
「おい、どっか怪我してんのか」
「ち、ちょっと眠いだけだから…気にしな…いで」
やや声が上ずるが、中島は気づかないようだ。
横に胡座を掻いて座り顔をのぞき込んできた。
「じゃあ暫く休もうか」
「うん…」
「あのさぁ、俺さっきまでアンガールズの二人とお前探してたんだぜ」
「え、あの二人と?」
「あいつらまだ向こうで爆睡してるけど。それがホント緊張感ない人達でさ」
「ふーん…あのさ」
「何?」
「アルコール臭いんだけど」
「い、いやその、これは……」
「酒飲んでた?」
「ちょっとだけだってば〜」
「そう」
嬉しそうに今まであった事を喋ってくる声に耳を傾け、小さく返事をする。


460 :心配性 :2005/06/09(木) 17:55:48
「あ、おい見ろよ空。…すっげえ数の星…」
「本当だ…」
「あのさ、死んだ人間は星になるんだよな」
「…ぷっ、」
止めてくれよ、ロマンチストって柄か?…でも本当にそうかもしれない。
こんな空一面の星、見たこと無いから。

「あー!瀧上、向こう!流れ星☆!」
くいっ、と小さくポーズをとって見せる。ああもう、いつ見てもだっさいポーズ。

多分いま俺は、幸せなんだろうな。まぶたが段々重くなって、意識も遠のく。
痛みはない。ただ、少しの後悔だけが残った。
身体が浮いてくるような錯覚さえ起きた。

眼が完全に閉じられる瞬間、一つの小さな星が尾を引いて空中に消えていった
のが見えた。それと一緒に満足そうな中島の横顔が見えた気がしたが、目の前
が真っ暗になって、そのうち何も分からなくなった。

「そうだな……何、願おうか……」



461 :心配性 :2005/06/09(木) 17:56:50




「瀧上?…………寝ちゃったのか…?」




【瀧上伸一郎(流れ星) 死亡】


475 :心配性 :2005/06/19(日) 14:57:51
>>461の続き。ちょいグロ?


やっと会えたと思った相方は、死んだ。それこそ、眠るように。


「……瀧上、死ん―――…」

そこまで言いかけて口を噤んだ。膝立ちになって呆然と亡骸を見詰める。
暫くの間、金縛りにあったように眼を反らすことが出来なかった。
強い風がひゅうっと吹き頬を撫でると、やっと思考回路が働き出す。

冷たくなっていく瀧上の身体にジャケットを被せる。
「言ったじゃんか。“こんな所に置いてくな”って…」
はは、と力無く笑う。涙はもう出なかった。

「ここは寒いよな。もう少し待ってろよ。綺麗な墓でも作ってやるから」
すくっと立ち上がり、満天の星空を見上げた。
チカチカと光って眩しい。よくもまああんなにも光を反射するものだ。
あんなに綺麗に見えた星空も、今ではあまり好きでなくなっていた。
木にもたれかかったまま動かない瀧上をちらりと見た。

「……」

何かを言おうとして口を開けた瞬間、

ひゅっ、
という音と共に何かが頬を掠めた。ぴりっとした痛みが走り、一筋の血が伝った。
手で頬を押さえ、ゆっくりと離すと。手のひらに血が張り付いていた。
そして前方に見えるのは、木に突き刺さった一本の矢。


476 :心配性 :2005/06/19(日) 14:58:49
「…だ…」

誰だ、なんて言う暇もなかった。
風を切る音が響いたかと思うと、肩に激痛が走った。敵は背後にいる。そして
明らかに自分を狙っている。さーっと絶望感が襲いかかってきた。
肩口が熱い。その熱は段々と痛みに変わってくる。

「痛えなぁ…」
するとまた、さっきと同じ音が二回聞こえた。一本は脇腹を掠めすぐそこの草むら
に突っ込み、もう一本は背中に食い込んだ。
血が逆流し、咳をすると赤黒い胆が飛んだ。


背中が熱くなり、生暖かい血がどくどくと流れ出てくる。その感覚が気持ち悪い。

――このまま、訳分かんないうちに殺されてたまるか!

木に立てかけてあったライフルに手を伸ばすと、見計らったかの様に再び矢が
飛んできた。手首を貫いたそれはそのまま木の幹に突き刺さった。
「う゛っ…ああ゛…」
味わった事のない激痛にその場にうずくまる。手首からは脈にあわせて血が
ボタボタと滴り落ちた。袖や背中がみるみるうちに赤く変色していく。



477 :心配性 :2005/06/19(日) 14:59:20
「たき…う…え…、手がいてぇよぉ…」
呪文のようにぶつぶつと既に亡骸と化した相方の名前を呼ぶ。

背中に、今までで一番強い衝撃が走った。

音もなく高速で飛んできた矢が胸を貫通し、肺に衝撃を与える。
その刺激に耐えられなくなり、身体ががくがくと震えた。
傷口から勢いよく血が吹き出された。その血が瀧上の服にもかかった。
口から漏れるかすかな吐息だけを頼りに生命をつなぐ。身体を引きずって瀧上
の元へ行こうとするが、手首ごと木に突き刺さった矢のせいで前に進めない。

足音が遠くなった。自分たちを襲撃した犯人は、もう助からない事を悟ったのか
さっさと何処かへ行ってしまったのだ。

身体からは、止める事の出来ない血が流れ続ける。
自由な方の手を必死に伸ばし、瀧上の手を掴もうとする。だが、ぎりぎりの所
で指先すら届かない。
誰がやった、かなんてもうどうでもよかった。とにかく今は…
もう一度名前を呼ぼうとしたが、口から出るのは血混じりのうめき声だけだった。


478 :心配性 :2005/06/19(日) 14:59:52
もう声もでないのか…?
(何てざまだ、俺…かっこわり…)

ぐっ、と渾身の力で足を踏ん張った。手首の貫通した部分が裂け、骨が突き出る。
だがそのおかげで瀧上の手を掴むことが出来た。
震える手で握りしめると、瀧上の手の平や服にも自らの血がべっとり付着した。
ああ、お気に入りの服、汚しちまったな。けっこうセンス良かったのに。
安心し、口元を緩ませた。
よかった、と言おうとするが、喉の奥からこみ上げてくる血液にそれすら叶わなかった。
吹き出してしまいそうになるのを必死で我慢する。
手の感覚がなくなり、そのままびちゃん、と赤い水たまりの上に落ちた。
相変わらず血は出続けている。
視界に広がるのは自らの毒々しい血の色。目の前に広がる赤赤赤……


どうして、ここはこんなに赤いんだ…


中島の意識は、そこでプツンッと途切れた。


479 :心配性 :2005/06/19(日) 15:00:58
朝――――。


田中は中島の姿が無いことに気付いた。
「あれ?中島さん?」
辺りを見回してみても何処にもいない。彼のカバンだけが残っていた。
「ちょ、ちょっとちょっと山根ぇ!」
隣でいつの間にか起きている山根を揺すった。
「そんなでかい声出さんでも聞こえてるっつーの」
「中島さんがいないんだけど…お前知らない?」
「さあ?」
山根は少しぼさぼさの頭を掻き、そっけない返事をした。
「ってゆうか何それ?何持ってんの」
「ボウガン。そこに捨ててあった。でももう矢もないみたいだし、捨てとくわ」
山根は立ち上がり、少し離れた崖に向かった。後ろでは未だ中島を捜す田中の声
が聞こえる。振り返って暫くその様子を見ていたが、すぐに踵を返して歩き出した。

崖からボウガンを力一杯放り投げた。くるくると円を描いて回りながら落ちていった
それは、森の中に隠れ見えなくなった。

ふーっ、と一つ深呼吸して山根は笑った。



「…しあわせでしたか…?中島さん」


481 :心配性 :2005/06/19(日) 15:03:46
あ、書き忘れ。スマソ

【中島仲英(流れ星)死亡】

496 :シフクノタネ:2005/06/30(木) 23:27:20
久々のシフクノタネです。
サカイスト+綾部祐二の続編、綾部祐二+線香花火編。


ふらふらと、アテもなく。
綾部祐二は、森の中を彷徨っていた。

(またきちはどこにいるんだろう…)

サカイストに別れを告げ、又吉直樹(線香花火)を探し始めて早数時間。
どこまで行っても、無惨な死体ばかり。
最初は吐き気を抑えられなかったが、そんな光景にも慣れてしまった。

(原が…またきちを見捨ててなきゃいいけど…)

『原が、いつまでも成長してくれへんねん』

いつだったか、又吉がそんな愚痴をこぼしていた。
原偉大(線香花火)は、東京NSC4期生の中で綾部と肩を並べるくらいのいい男。
そんな容姿も手伝い、少々周りから浮いているようなところがあった。

(ま、またきちがいなきゃ、ネタもできないしな…)

そんなことを考えながら、森の中を進んでいった。

497 :シフクノタネ:2005/06/30(木) 23:27:58
パーンッ

「!?」

気を緩めていた綾部の近くで、不意に銃声が聞こえた。

パンッ

短い銃声。
2度目は命中したようだ。
しかし、声は聞こえない。

(またきちじゃないよな…?)

綾部の脳裏を、妙な考えが過ぎる。
最悪な光景がイメージされている。

パンッ

(まただ!!)

胸騒ぎを抑えられない綾部は、銃声のした方に行ってみることにした。


509 :シフクノタネ:2005/07/13(水) 23:28:23
>>496-497の続き

(あ、あれは!!)

少し開けた場所に、銃を構えた原がいた。
興奮しているのか、肩で息をしている。

(原だけか?誰を攻撃した?またきちは?)

木陰から辺りを見渡すが、負傷している者も死んでいる者も、攻撃の跡さえも見えない。
しかし、先程の銃声は確かに命中した音。
綾部は更に注意深く辺りを見渡す。


「またきち!!」

ふと特徴的な髪型が目に入った。
ぐったりと地面に倒れ伏している。
慌てた綾部は、原が銃を持っていることも忘れ、そちらの方に飛び出してしまった。


「来たらあかん!!」

又吉の声で我に返った時は、一瞬遅かった。


パンッ

「っあ!!」

左肩に走る激痛。
痛みだけでなく、じんじんと響くように熱い。

510 :シフクノタネ:2005/07/13(水) 23:29:31
「ち……外したか」

「原!!同期のゆうちゃんやで!?撃ったらあかん!!」

原の目はどんよりとよどんでいた。
又吉の声も聞こえていないようだ。

「今度は外さない」

「……」

「俺は、無敵だ。俺は、不死身だ。俺は、最強だ」

狂ってる。
綾部は直感的に、そう感じ取った。
何があったか分からない。
でも、尋常な状態ではない。

「俺が生き残るんだ」

パーンッ

原は余裕の笑みを浮かべた。
恐らく、彼の中に『敗北』の2文字はなかったに違いない。


511 :シフクノタネ:2005/07/13(水) 23:30:20
「あ……!?」


ぐらりと、原がバランスを崩す。

「俺も、銃くらい持ってるんだよ」

綾部が懐から取り出したのは、伝兵が持っていたサイレンサー付きの銃だった。

「この野郎…!!」

パーンッ
パーンッ
パーンッ

綾部と原は銃撃戦を繰り広げる。
原は焦って闇雲に発砲し、弾丸は見当違いな方に飛んでいく。
対する綾部は、当たりはしないものの、掠るように原を追いつめる。

「くそぉっ!!」

「いい加減にしろ」

パンッ

「ぐっ…!!」

綾部が放った弾丸が、原を捉えた。
捉えた弾丸は、白いシャツの胸に当たる部分を赤く染めていく。

538 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/08/02(火) 12:19:24
大きな岩にもたれて唸り声をあげている1人の女性、――椿鬼奴。
鬼奴の左手は銃を打たれたのか、
貫通してポカンと黒い穴が開いていてそこからドクドクと血が流れている。


するとそこに「だ、大丈夫っスか!?」とチーモンチョーチュウの菊地が現れた。


「誰にやられたんすか?!」
「・・・・・知らないわよ。なんか包帯とか持ってないの。」
「あ、救急道具なら。」

菊地はカバンの中から包帯と消毒液を取り出して鬼奴の左手を手当てした。

「・・・・・・ありがとう。けど、よくあたしに抵抗なく話しかけて
傷の手当てなんかできるよね。」
「殺し合いとかよくわかんないし、何もみんなで人殺さなくたって、
これを企てた人を全員でなんとかすればいいじゃないですか。」
「・・・・・・。」

包帯を巻き終わった瞬間鬼奴は菊地の腕をぐいっと自分の方へ引っ張り、
菊地が鬼奴に覆いかぶさるような体勢になってしまった。

「ちょ、え、え、何してんス」

鬼奴は右手にこっそり持っていた銃を菊地のこめかみに当てる。

菊地はこめかみがヒヤリとした。


539 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/08/02(火) 12:23:17
「へ?!どういう・・・・」
チキ

「だまされちゃって。」
菊地の耳元でそう囁き銃を打った。

パン

弾丸は菊地の頭を貫いた。

大量の血しぶき。ガクリと頭を下げ、
鬼奴は菊地の腕を突き飛ばすように離し、
そのまま何事もなかったようにそこから立ち去っていった。

『バカじゃないの? みんなで企てた人を殺すんじゃなくてあたしが勝ち残ったらすぐに殺すのよ。こんな糞ゲーム 負けてたまるか。』

鬼奴は菊地に巻いてもらった包帯をほどいて捨てた。
さっき手当てしてもらったおかげで血は止まっているし、大して痛みはない。
左手にクッと力を込め、勢いよくナイフを左手の傷より下の方へ刺す。

痛みは感じない。勝ち残れるなら痛みなど関係ない。
刺した。――何度も何度も。 


540 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/08/02(火) 12:25:26
そしてまた大きな岩にもたれかかり、わざとらしく「痛い」とつぶやく。

―――そう、全部芝居である。流れ弾に当たって手を怪我したのをいいコトに。

女性が怪我をして無視をする男性はいない。
菊地以外の人間も同じような方法で殺してきた。

『みんなあたしが「痛い」と言えば、「大丈夫ですか?」 おかしい』

ピンク色の歯茎をちらつかせながら高揚に笑った。

しかし鬼奴には疑問が残っていた。
鬼奴が殺してきた人間はすべて吉本の後輩である。

後輩たちを殺してからそんなに場所は移動していない。
自分が今いる場所から、数人の後輩の死体が見える。

『・・・・・・どうしてこの辺は後輩しか来ないの?何かあるの?』

途端に左手の傷がジワジワと痛み出した。

「うっ」と眉間にしわをよせて右手で左手の傷を抑える。

左手の血液が固まってしまった部分のかさぶたをベリベリ剥がす。

『偶然、ただの偶然よ』  額にはぐっしょりと汗をかいていた。


541 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/08/02(火) 12:27:04
今日はこの辺で終了です。

書き忘れました;
【チーモンチョーチュウ菊地 死亡】

572 :シフクノタネ:2005/08/07(日) 23:11:14
これ以上の荒れ防止に投下しますね。
『綾部祐二+線香花火』の続編です。


「は……おもしれぇ」

「どうでもいいけど、お前弾切れじゃね?」

原の持っている銃が、かちりかちりと音を立てる。
ムダな乱射のせいで、使い尽くしてしまったようだ。

「………」

「そこで大人しくしてな。動いたってどうにもなりゃしない」

原がだらりと蹲る。
綾部は原から目を離さないまま、又吉の傍に寄った。

「またきち、どこ撃たれてる?痛いか?」

「膝…辺りやろか…左足が痛い」

「左足な」

確かに膝の辺りが湿っており、複数の穴が空いていた。
綾部は傷口に触れないようにジーンズを裂き、バッグから消毒液を取り出し振りかけようとした。

573 :シフクノタネ:2005/08/07(日) 23:12:42
「…あれ?」

「ゆうちゃん?」

左手が動かない。
自分の腕だという感覚はあるのに、綾部は左手から先を動かすことが出来なかった。

「そんなはずは…」

消毒液のフタに手をかける。
しかし、指が動かない。

「…肩、ケガしてるやん」

「肩…」

先程、原に撃たれた場所だった。
神経が高ぶっており、手先が動かなくなる程の痛みすら感じていなかったのである。

574 :シフクノタネ:2005/08/07(日) 23:14:03
「俺はえぇから、ゆうちゃん手当てせな」

「や、お前が先だ。お前の方がケガが酷い」

何とか右手のみで消毒液のフタを開け、傷口に振りかける。
本来は傷口にガーゼなどを当てるのが最良だが、入っていないようなのでそのまま包帯を巻いた。


「…サッカー、できなくなるかもな」

「ゆうちゃんかて、野球できんやろ」


又吉は木に寄りかかるように上体を起こし、自分のバッグを開いた。

「ごめんな、うちの相方のせいで」

「別にいいって。この状況でまともなヤツなんていねぇよ」

この状況でまともなヤツ。
それには綾部も含まれていなかった。
先に攻撃してきたのは原だったとは言え、反撃に出た瞬間綾部の中で何かが切れた。


575 :シフクノタネ:2005/08/07(日) 23:15:48
「ここからまともに出られるなんて思えねぇ。いずれ、どっかでくたばるだろうな」

「俺は、まだくたばれへん。夢、あるから」

「へぇ。M-1優勝とか?」

「もっと堅実。笑われるかもしれんけど…」


パーンッ

「「!?」」

又吉の言葉を遮るように、1発の銃弾が後ろの木にめり込んだ。

579 :シフクノタネ:2005/08/08(月) 22:54:17
「三文芝居見せやがって…何十年前の学園ドラマだよ」

不敵な笑みを浮かべ、原は銃を構えていた。
先程とは、明らかに形状の異なる銃。

「さっき拾ったんだよねぇ…俺ってば運がいいなぁ…」

綾部は再び銃を構えた。
しかし、形勢は完全に不利だ。
こちらには1丁しかないし、弾丸も少ない。

「綾部…今度はお前の番だよ…」

「上等だ」

パーンッ
パーンッ

綾部は立ち上がると同時に、原に向かって発砲した。
同じく原も綾部に向かって発砲する。

580 :シフクノタネ:2005/08/08(月) 22:55:25
パーンッ
パーンッ
パーンッ
パーンッ

かちっ

「しまった…」

綾部の銃が弾切れした。

「お疲れさん」

パンッ


原の不敵な笑み。
放たれた銃弾は、確実に綾部の胸を捉えていた。

「あははっ、言ったろ?俺は最強、俺は無敵だって」

綾部の体は、次第に重力に引かれていった。
地面で軽くバウンドし、そのまま動かなくなった。

581 :シフクノタネ:2005/08/08(月) 22:56:34
「さて……待たせたな、死に損ない」

目の前で動かなくなった綾部。
相方より大事な親友。
その綾部を手にかけたのは原。


「…お前は、何で生き残りたいん?」

俯いたまま、又吉は口を開いた。
原は怪訝な顔になる。

「はっ、俺のこと分かってくれようもしないお前に言う必要なんてねぇんだよ」

「分かってへんのはお前や」

「何だと!!」

パンッ

弾丸に右腕を捉えられ、顔を歪めるが、目線だけは鋭く原を見つめていた。
普段の又吉から想像もつかない、鬼気迫る表情。


582 :シフクノタネ:2005/08/08(月) 22:57:40
「俺は生きたい。夢を叶えるために」

「くだらねぇな。夢で飯が食えるのかよ」

「だから分かってへんねん。夢は目標や。目標もなくて、何のために芸人やんねん」

「女にもてるためだろ?他に何があんだよ」

線香花火を結成した時は、2人とも目標があった。
しかし、それをクリアしていくうちに、原と又吉の考えは相容れなくなってしまった。
純粋に夢を追いかける又吉、甘い誘惑に流される原。

「『線香花火』はもう終わりやな」

「やっと決心してくれたか」

原は又吉の頭に銃口を押し当てた。
硬い、鉄の感触。
勝ち誇った顔の原と静かに目を閉じた又吉。
対照的な2人に、風の音だけが通りすぎる。

「どこで間違ったんやろな」

「知るかよ。あの世で綾部に聞くんだな」

原は引き金に指をかけた。
覚悟を決めた又吉は、身動きしなかった。

587 :心配性 :2005/08/09(火) 17:46:55
アンガ編の続き

戻ってきても、何も知らない田中はまだ中島を捜していた。
「どう、居た?」
山根を振り返り、首を横に振る。
素っ気なく「あっそ」とだけ言うと、出発の準備のため、リュックの中身を整理し始める。
空になった三つの空き缶を拾い上げ、カコンっ、と草むらに向けて蹴り飛ばした。

「久しぶりにサッカーしてぇな〜っと」
最後の一缶は、茂みのなかにある小さな窪みに狙いを定める。
「シュート!」

―――パカンッ
蹴り上げた缶はあさっての方向へ飛んでいき、見事田中の脳天に直撃した。
「あ痛ってえ!あーもう、何してんだよ」
「ん?…ああ、ごめん。缶が吸い寄せられた」
「ええ〜何その言い逃れ…」
田中のその口調はいつも異常に羅列が回っていなく疲れた感じだった。
そのままぺたんと地面に座り込み、深い溜息を吐いた。
「ああ〜きっと俺らが不甲斐ないから、見捨てられたんだぁ…」
「まあまあ、そんなネガティブになんなよ。それならそれでいいじゃん。」

背伸びをしながら、田中から自分の顔が見えないのを良いことに、ふふん、と笑ってみせ
る。
(あ、そう言えば武器…)
山根は武器がないことにやっと気付いた。元々自分たちの物だったライフルは殺された中
島が持っていた事を思い出す。取りに行きたいところだが、田中について来られて中島と
瀧上の死体を見られたら色々と面倒くさい。


588 :心配性 :2005/08/09(火) 17:48:12
「仕方ないなー。田中さん、武器になる物探しに行こう」
いつの間にか大の字になってそこら辺をごろごろしている田中に声を掛ける。

「田中さーん。田中ぁー!」
つま先で寝癖だらけの頭を小突いてみる。
「痛い、痛いってば!分かったよ行くよ!」
渋々立ち上がって荷物を持ち上げる田中。
少し軽くなったリュックを担ぎ、二人は再び仲間となる人物を捜して歩き出した。
最も、それは田中の考えであって、山根の思考は定かではない。



「山根、俺変な夢見たんだ」
「何だよ、突然」
「何か広い部屋の中でね、…体育館みたいな建物かな。…」
田中はその夢をゆっくりと話しだした。


広い部屋に、所狭しと大勢の人間が居る。よく見るとそれは全員芸人で、売り出し中の
若手から、誰もが尊敬する大御所まで、数え切れないほどだった。
そこにいる人達は大きく二つに分かれている。寝ている人と、起きている人。
起きている人たちは、笑っていたり、何かを必死に謝っていたり、抱き合って泣いていたりした。
目下には、自分がすやすやと気持ちよさそうに眠っている。
その周りに、親しい若手達が集まって、物珍しそうな目で自分の顔をのぞき込んでいる。
悪戯で鼻をつまんだりして、何かを話している。
近くに寄って耳を澄ましてみた。



589 :心配性 :2005/08/09(火) 17:49:39
―――おい、こいつらまだ起きないぜ
―――マジで?二人とも?すっげー
―――…誰か殺したんかな…
―――お〜い、はやく起きろ〜

(起きろ…?どういう事……?)

そこで、映像は途切れた。


「へー、そう」
山根はさも興味が無さそうにあやふやな返事をした。
「もー、ちゃんと聞いてる?変な夢だったんだって、マジで!」
「聞いてるっつの。じゃあ何?今俺たちが居るこの世界の方が夢だって言いてえの?」
「そうじゃないって、ただ…」
苛ついたように腕を振り、言葉を紡ぐ。

「朝起きたとき、一瞬どっちが夢か分かんなくなった」
「ふーん?…田中さん、もしかしてコレ?」

頭の上で人指し指をくるくると回してみる。案の定田中は怒ってきた。

「そんなんじゃねーよぉ!!」
「ははははッ……あ、あれ見て」

「ああ!?」と半ばキレ気味に山根の指差した方向に目を向ける。
かなり離れていても嫌でも目立つ赤と青の原色のジャージが飛び込んできた。
「声、掛けてみよ!いいだろ?山根」
「…いいけど」

二人は目の前の人物に向かって駆けだした。


594 :シフクノタネ:2005/08/09(火) 23:26:01

「うらああぁぁぁ!!」

パンッ

急な衝撃を受け、原は思わず銃口を下げてしまった。
飛び出した銃弾は又吉の腿を捉えたものの、当の又吉も痛みどころではなかった。

原が振り返る。
有り得ない、といった表情で。

「今度、こそ…手加減、しなかった…から…」

綾部が、原の背中にナイフを突き立てていた。

「てめぇ…」

原は、それ以上言葉を続けられなかった。
引き抜かれたナイフと共に、大量の血が噴き出したからだ。
綾部に胸を撃たれた際の出血もあり、原の体は血液が不足していた。

595 :シフクノタネ:2005/08/09(火) 23:26:56

(将芳さんと伝兵さんのお陰…かな)

伝兵が持っていた銃に、将芳が持っていたナイフ。
地面に倒れ、びくびくと痙攣している原を見ながら、綾部は2人に思いをはせた。

「ごめん……」

こんなことになってしまったとは言え、仲間は仲間だ。
何百人の中をくぐり抜けてきた、何人もいない同期。
再び重力に引かれた綾部は、自然と謝罪の言葉を口にしていた。



【原偉大(線香花火)死亡】

614 :シフクノタネ:2005/08/10(水) 22:25:14
何か大変なことになってますが…これで終わりなんで投下させてください。


「ゆうちゃん……」

最早歩くことのできなくなった又吉は、這うように綾部の傍に行った。

「またきちかぁ…」

綾部はうっすらと目を開く。
視界がぼやけ、物の輪郭が曖昧に見える。

「またきちの…夢、聞き忘れたから…戻ってきたんだよ……」

いつもの、子供っぽい笑顔を作り、綾部は精一杯笑った。

「早く…教えろよ…」

又吉の顔は、もう鬼気迫る表情ではなかった。
いつもの、淡々として、どこかとぼけたような表情。

「あんな……ワイワイワイの、MCになりたいねん」

「へぇ……」

「それも、月曜日や。チャイマさんと同じ、月曜日」

「月曜日……随分、ハードル…高いな…」

綾部は思わず苦笑した。
チャイルドマシーン、通称チャイマ。
2人が尊敬する先輩だ。

615 :シフクノタネ:2005/08/10(水) 22:26:26
「で……ゆうちゃんに、一緒にやってほしい」

「俺…」

「ゆうちゃんがおれば、百人力や」

綾部の目には、既に何も映っていなかった。
だが又吉に頼りにされている今、何も怖いものはなかった。

「やろう…MC……休憩して…起きたら……先のこと、考えよう……」

子供っぽい笑顔のまま。
眠るように、綾部祐二は息を引き取った。


616 :シフクノタネ:2005/08/10(水) 22:27:05

「よかった…ゆうちゃんに断られたら、もう一緒にやる人おれへん」

綾部の寝顔に又吉は笑いかけ、隣に横になった。
又吉も、終わりが見えていた。

「俺も休憩しよ……ゆうちゃん、起こしてや…」



ゆっくりと目を閉じると、オレンジ色のセットが見えた。
エレベーター前の、ワイワイワイのセットだ。
溢れんばかりの観客の視線が、MC席に注がれている。
その席に座っているのは、スーツを着た綾部と又吉。

(あぁ……MCなれたんやなぁ…)

画像は段々薄れていく。
それでも、又吉は笑っていた。


【又吉直樹(線香花火)、綾部祐二(ピン芸人)死亡】

621 :心配性 :2005/08/11(木) 20:02:07
>>589

「テツさん、トモさん!」
後ろから突然声を掛けられたテツ&トモの二人は、ビクッと肩を震わせて振り向いた。

「あ、アンガールズだ」
トモが少々テツの影に隠れながら指を差した。そんな彼をテツが庇うかのように腕を横に
やり二、三歩後ずさりする。
「ちょ、ちょっと。俺たち、戦う気なんてありませんよぉ。なあ山根?」
「ん?…ああ、もちろん」
おろおろと身振り手振りで丸腰なのをアピールする田中といたって落ち着いた雰囲気を崩
さない山根。「もちろん」までの間が異様に長かったのは気になったが。

「何してたんですか?なんかキョロキョロしてましたけど」
「うん、カンカラのメンバーを捜してるんだ。田上さんやユリオカさんと一緒に…」
いつもの話し方、いつもの仕草。ここが戦場だということを分かっているのかと聞きたい
くらいの脳天気な声。
拍子抜けしたが、疑うことをしたくないテツは、ぎこちない笑みを浮かべて答えた。
「で、田上さんたちは?」
「それが…さっきまで一緒に居たんだけど、“伊藤ちゃんが居なくなった”つって様子見に行ったんだよ」
「北陽の?」
「みんなすぐどっか行っちゃって…俺たち怖くてここから動けないんだよ…」
トモの目はやや涙が溜まっている。




622 :心配性 :2005/08/11(木) 20:03:28
「…手伝いますよ?」

口を開いたのは山根だった。三人が一斉に振り向く。
今までずっと難しい顔をして黙りこくっていた山根が、何かを思いついたように、にこり
と笑い、「ねえ?」としゃがみ込んでトモの肩を叩く。
寒気がするくらい優しい笑顔。立っている状態のテツと田中にはその表情は見えなかった
が、トモだけはその顔に一瞬言葉を失った。

――何をたくらんでいる?
目だけでちらりと山根を見ると、今度は顔を背けられた。
「4人で迎えにいきましょうよ。多い方がすぐ見つかるでしょう」
「うーん、まあそうだな…。トモ、お前も良いだろ?」
その言葉にトモが頷いたかどうかはそこにいた三人にしか分からないが、山根は既にすた
すたと歩き出していた。その様子を呆然として見ていた三人だが、すぐに我に返り後を追った。
走り出す手前に、「何か雰囲気変わったんじゃない?」と小さな声で田中が呟いた。



「ここ、何か怪しくないですか?いかにもな感じで」
さっきの場所から少し離れた所にある廃墟。蔦が壁を這っていて、気味が悪い。
中に入ると、一気にカビ臭い空気が肺に入りこみ、吐き気を覚えた。
とりあえず、屋上まで一旦上ろう。とテツが提案する。

「屋上…もなーんも無いですねぇ…」
階段で頭にべたべたとくっついた蜘蛛の巣と格闘しながら田中が溜息を吐く。
「ここも駄目かぁ…。さっきのとこに戻ろう…。くそっ、何で見つかんねえかなあ」
苛ついた口調で頭を掻きながらテツが踵を返した。田中もそれに続く。



623 :心配性 :2005/08/11(木) 20:04:20
「あ、てっちゃん…!」
トモが慌てて追いかけようとすると、
「ねえねえ、トモさん」
と、山根に腕を掴まれた。
一瞬、それに気をとられ、再びテツの居た方向に目を向けると、すでに階段を下りていったのだろうか、姿は無かった。

「ほら、あれ見てください」
おそるおそる山根の指差した方向を見る。
屋上の端に、何か長いものが日の光を反射して光っている。
それは、手分けしてカンカラを探しに行く際、伊藤が所持していた刀だった。
「伊藤ちゃんの?…なんでここに…」
「…伊藤さんなら、ほら…トモさん。下、下」
山根が腕を組んだ状態で、人差し指でチョイチョイ、と崖下を指す。
まさか…!
バッと目線を下に向ける。

「うわあああっ!!い、伊藤ちゃん!?」
肘から先のない、血まみれの人形と化した伊藤が目に飛び込んできた。
足は折れ、首はありえない方向に向いている。だいぶ前に死んだのか、血はほとんど雨に
流されていた。
「そんな、嘘だろー…!?」
放心状態のトモの横で、山根は嬉しそうに手にした刀を眺めている。
なかなか切れ味は良く、握っただけでも肌が切れる。
「はは、これいいなぁ。銃でも良かったんやけどな」
「……やま」


624 :心配性 :2005/08/11(木) 20:05:31
「さようならっ!!」

どかっ
鈍い音が響き、刀がトモの頭にめり込んだ。
ほぼ即死状態であったが何が起きたか分からないのか、身体は突っ立ったままだった。
刀を刺したまま、片足でその身体を蹴飛ばす。
衝撃で刀が頭から抜け、トモの身体はそのまま伊藤の隣に落下した。
あっという間だった。

「はぁーっ、はーっ……」
荒い息だけが屋上に残った。持っていた刀は下に投げ捨てる。
刀はすとん、と綺麗に伊藤とトモの間の地面に刺さった。
「やりぃっ!」
山根は小さくガッツポーズを取ると、階段を下り始めた。



650 :名無しさん :2005/08/27(土) 19:08:10
>>649
「不思議な」で板リストぐぐってろ初心者丸出し厨

651 :心配性 :2005/08/28(日) 17:37:09
>>624
外に出ると、田中とテツが壁にもたれかかっていた。
「山根、遅かったじゃん。どうしてたの?」
「…山根君…トモは?」
相方の姿が無いことに気付き、小さな声でテツが尋ねる。
―――ちっ、やっぱり聞いてきたかぁ。
「さっき…伊藤さんが、この建物の裏で死んでました」
「えっ…」
二人は一瞬言葉を失った。
「で、トモさんが凄いショック受けて、早く行こうっつっても“先に行ってて”って…そ
の時は深く考え無かったんだけど、もしかしたら…トモさん…」
どうだろう、今までやってきた中でこれほどのリアルな演技が出来ただろうか。
「そんな、トモ…!」
テツが再び建物の中に入り階段を逆走する。
田中がそれを追いかけようとするが、山根に制止される。
「お前はここで人が来ないか見張ってて。俺が見てくるから」
「えー」
「はい、よろしくぅ!」
田中が返事をする間も無かった。山根はテツの後を追って階段を上る。
その顔は心なしか、笑っていた。


「トモ、何処だ…!」
屋上を見渡した。何もないただの広場だから、何処かに隠れているということは考えにくい。


652 :心配性 :2005/08/28(日) 17:38:18
テツはゆっくりとフェンスのない屋上の端に歩んでいった。ギリギリの所で立ち止まり、下を見る。
そして、恐れていた光景が目の前に広がった。
「あ……」
テツはその場に立ちすくんだ。後ろから近づく影に気付かないまま。

どんっ
背中に、軽い衝撃。身体がまるでスローモーションのように前のめりになり、足が地面か
ら外れた。
―――落ちる!
テツは一瞬のうちに空中で身体を捻り、背後から自分を突いた人物の腕を掴んだ。

「…なっ…あ、あ、うわああっ!?」
驚いたのは山根の方だ。テツの体重に引っ張られ、山根の細い身体はがくんと下がった。
「ぐっ、…この、離せっ」
山根はギリギリの所で身体をうつ伏せに地面に付け、落ちないように片手で少しの段差を
押さえていた。そして、もう片方の手首は、宙づり状態のテツがしっかりと握っている。
「山根君!?は、早く引き上げて…田中君呼んでよ!」
指が、腕に食い込み、骨が軋む。痛い。痛い痛い痛い…!!!
「うるさいっ!!痛ぇんだよ、離せーっ!!」


653 :心配性 :2005/08/28(日) 17:38:56
山根も必死になって叫ぶ。このままだと、引きづられて落下してしまうのも時間の問題だ。

「山根!!?何してんだよぉ!!」
そのとき、後ろから田中の声がした。ややテンパった高い声であったが、真っ直ぐ山根の
所まで走ってきて、落ちないよう腰を掴む。
「田中さん、助けて!この人俺と一緒に心中しようとしてんだよ!」
「なっ!?」
その言葉にテツは絶望の底に叩き落とされたように感じた。
「そんなことっ…」
嘘だ。そう言おうとしたその瞬間、テツにだけ聞こえる声で山根が言った。
「俺にはまだ田中さんいるけどさ、トモさんはいないでしょ、ほら、下で待ってますよ。相方の所行ってやらないと」
山根は、こっそり自由な右手で胸ポケットを漁り、ボールペンを取り出した。田中からは
死角になっているのかそれに気付いている様子はない。いや、死角で無くとも今は山根を引っ張るのに必死でそんなことに気付く余裕も無いのだろう。
カチリ、と鋭利なペンの芯が突き出る。

「止めろ…何で、…」
「あ、そうそう」
ペンを少し振り上げて、言った。
「トモさんは俺が殺しましたから」


654 :心配性 :2005/08/28(日) 17:40:21
「お前っ…!!」
山根の手が振り下ろされる。ずっと手首を掴んでいたテツの手の甲に芯が突き刺さる。
痛みに、一瞬テツの手が離され、重力に引っ張られ、あっという間に地面に激突した。
どしゃ、と嫌な音が響いた。
「あ、軽くなった…」
田中が一気に山根を引き上げる。
「はーっ、死ぬかと思ったあ!」
「も〜大丈夫?手首変な紫色になってるし…」
山根の手首にはテツ指の跡がしっかり浮いている。
「…むかつく」
「え?何、どうしたの?」
「いや、何もないよ。ここ離れよう」
二人は立ち上がって、崖下には目もくれず階段を下りていった。


【テツandトモ 死亡】

673 :rrr ◆iiErQ9C0HQ :2005/09/15(木) 10:36:13
微かに聞こえてくる波の音。古い先輩芸人からよく聞かされた台詞が脳裏に浮かぶ。
『観客の大爆笑は大波が押し寄せてくるみたいに迫ってきて会場が揺れるんや。
アレを一度味わったら、この商売を辞める事は出来へんやろうな。一種の麻薬や。』
そう言って下品に笑ったあの顔。
「…フン。そう言うてたアンタがここで真っ先に死んでもうとるがな」

浜田雅功はポン刀(模造刀)を杖代わりに歩き続けていた。最初ほどではないが、
時々見たこともない芸人が殺されにくる。助けを求めようが威嚇してこようが関係ない。
全身血みどろで刀を構え、相手を見据える浜田を見て平気なやつはいなかった。
腰を抜かすもの。背中を向け逃げ出すもの。ヤケになって向かってくるもの。
そんな相手に対して切れないポン刀の使い道は1つ。【刺す】に限る。
【刺す】という行為は味を占めると感触がたまらなく気持ちいい。
さほどの抵抗もなく体に吸い込まれる刃。いくら刃こぼれを起こしていようと、
体内に流れる血や体液が刃の滑りを良くしてくれる為、切る行為よりも力を必要としない。
それに殺せば殺すだけ武器が手に入る。ポン刀の他に園芸用の鉈、バーリングナイフ、
トカレフ(弾なし)、猛獣調教用らしい鞭が浜田に装備されていた。
自分の後ろに屍が転がる絵面を思い出しては快感に浸る。死体の数が勲章みたいなものだ。

674 :rrr ◆iiErQ9C0HQ :2005/09/15(木) 10:36:57
>>673

浜田は知らない。島の外では日本国民によって浜田雅功に100億を軽く越える掛け金が
積まれている事を。この殺し合いが日本中に生中継され、生死の情報や死闘ダイジェスト、
オッズの経過など逐一流され、国家規模の視聴者投票型番組である事を。
麒麟川島・ネプ原田・爆問太田がいない今、オッズは浜田の独壇場である。
浜田に次いで急激にオッズが上がっているのが正宗を持つネプ名倉と村正を持つ陣内。
松本のオッズも徐々に上がっている。国民の殆どはオッズに夢中だ。それを浜田は知らない。

と、木々の間から窺える無機質な街の色から鮮やかな青と緑の光が目に入ってくるようになった。
「やっと海か。」
少し足早に砂浜へと向かったが、見渡した時に、身を隠すような障害物がない事に気づく。
先ほど手に入れた戦利品のトカレフに弾がない以上、相手が飛び道具の時は万時窮す。
ナイフは至近距離でしか有効ではないし、鞭はさっき試しに使ってみたが、勢い良く撓った
本革が浜田の足にデカイ痣を作った。実は今も地味に痛かったりする。
前後左右を警戒しながら進む。血に染まった浜辺。少し遠くに何体もの死体が転がっていた。
浜田は躊躇なく死体に近づき見下ろした。そして、その場にしゃがみ込むと死体をつつく。
「Jr.に…、竹若か、これ。首ない奴もおるし。…この頭カチ割られてる奴は知らん顔やなー」
と、頭の割れている男の衣服をはがす。浜田の目的は防弾チョッキだ。

675 :rrr ◆iiErQ9C0HQ :2005/09/15(木) 10:37:56
>>674

数十発の弾がめり込んでいるが、強度はさほど落ちていないだろう。弾と汚れを落として装着する。
「着れん事もないけど、うんこみたいな臭いするやん。ごっつクサイわ、こいつら。」
目の前にある後輩達の亡骸をうんこ呼ばわりし、立ち上がろうと膝に手をかけた時、
スピーカーが大音量で怒鳴り始めた。その声アナウンサーの声に一瞬ビビッて、スピーカを睨む。
大音量で伝わる聞きなれた声に浜田は舌打ちし、鼻で笑った。
「あのアホ、JUNKでも噛まんと進行出来てんのかいな。暢気な声出しよってからに」
と、その暢気な声は何の躊躇もなく新たに死亡した芸人の名前を読み上げ始めた。

「――――ウッチャンナンチャン・内村光良、南原清隆…以上10名です。」

古い友人2人の死。名前を聞いた瞬間に心臓が1度だけ「ドンッ!」と体を揺らした。
簡単に死ぬ奴等だとは思っていなかった。ゲームの途中から、彼らの存在すら忘れてはいたが、
当初、浜田の計画では終盤で彼らウンナンと松本と合流、自らが考える、このゲームの終わり方を
話し合おうと計画を練っていたのだ。
「そんな早よ死ぬ思わへんがな…。おんの忘れてたけども。」
浜田の脳裏に浮かんだウンナンの顔は夢逢の頃の若い顔ばかりだ。
浜田はあの頃の事を懐かしそうに思い出していたが、1つ大きなため息を吐くと立ち上がった。
「ま、エエわ。死んだら終わりや。どうしようもない。」


・・・・・つづく

684 :660:2005/09/24(土) 13:34:54
それでは予約していた東京NSC七期生郡を投下させていただきます
投下の折、名前の横に「○班」と記入してありますが、
それは人数が多いので読み分けするのが難しいと思い記入してあるだけです

ちなみに、
A班:LLR福田
B班:LLR伊藤、子宝たか
C班:子宝ゆうま
D班:ミルクラ竹内、もう中学生(丸田)
E班:クールダウン、ミルクラジェントル(菊池)
となっています。

以下投下は初頭なのでグロ少な目です。あしからず

685 :660@E班 :2005/09/24(土) 13:35:40


空を見つめたまま傍らで感じる感覚が妙に可笑しく感じられる

森も森の草むらの様な所で木々達の間から覗く空を見つめている
木を支えに眠気でうとうとしている俺の傍らで
既に緊張感も何の欠片の無い相方が眠っている

いっぺん殺してやろうかと思わせるぐあいの無防備さに少し怪訝な顔を向ける
向けた視線の先、我が相方クールダウン長谷川

及び向こう側の木に腰掛けこちらからは様子が伺えないのだが
これまた眠っているのであろうミルククラウンジェントル
よくもまぁこういうメンバーになれたものよ、と深々と思ってみる

「……呑気だなぁ…まぁ俺もだけど」

溜め息を吐いて若干の年齢差にしょうがない気持ち反面
参戦してから結構な時間が経つと言うのに、
まだ危険な目にあっていないのも起用して危機感の無い状態が続いている

「……―――。――……」

空を見つめて一言二言。言葉にならない声で呟いてみる
それはある種も心許無いチャレンジであった訳なのだけれど
その後は眠気の波に押し流されて只単に眠った

筈だった



686 :660@E班独 :2005/09/24(土) 13:36:13


鈍い光を放つ鉄のフォルムに目を細める

両手で確りと握った其れは正しく独り一つ支給された武器、短銃
ずしりとリアルな重さを持つ其れは玩具の其れとは違う物を感じさせる
鈍い汗がじわりと米神辺りをなぞり、息を吐き呼吸を整える

「………っ」

自分の耳にも聞こえるか聞こえないかぐらいの声

背にしていた気の幹を盾に、横目で向こう側の世界を覗く
薄暗い森の木々達の一つに其々背を預け眠っている二人が眼に入る
荒い呼吸が続く中、手の内に持つ銃の重みが増してゆく感覚に襲われる

頭の中に一瞬流れる一文が恐怖を自分に植え付ける

『殺られる前に殺れ』
其れこそこのサバイバルで生きてゆく方法は無いのだと
冷たい鉄の感覚に全てを賭けて、
目の前に居るものに焦点を合わせてゆっくりとカチリ…と力を込める

自分が仕様としている行動に恐怖を覚え後悔の念が押し寄せた瞬間
目の端から急に流れた涙と共に口から出た一言

「……ごめんなさ…」

語尾が聞こえないぐらい自身の擦れたような声と共に
鈍い発砲音が響いた



687 :660@A班 :2005/09/24(土) 13:36:47


眼を閉じ頬に触れる柔らかい風を感じる
薄っすらと眼を開き、星も見えない暗い夜空を見つめる
遠くで戦場のような発砲音や爆発音が聞こえた気がした

ような、ではなく文字通りの戦場ではあったのだが
乾いた土に足を投げ、冷たいコンクリートに背を凭れる
LLR福田は溜め息を吐き膝に顔を乗せる

参戦して一体何日が過ぎたのだろうか

呆然とそんな事を考える
こういう生活をしていれば次第と時間感覚は麻痺してくる訳で
空が明るくなれば朝だなとか、暗くなれば夜だなとか、
そんな曖昧な時間の取り方に自然と塗り返されて行く

そういえば伊藤、元気かなー

参戦当初から一度も見掛けていない相方に気を掛ける
伊藤も同じように空を見ている様な気がして少し表情が緩んだ気がした
瞼が重くなってくる感覚を覚えコンクリートを背に顔を伏せ眼を瞑る

意識を手放す寸前、遠くではまだ鳥の羽音が聞こえていた



688 :660@E班 :2005/09/24(土) 13:38:10


ぱんっ…

気の抜けた発砲音が響く
木々に止まっていた鳥達が一斉に空に非難する音と共に
何故か小さな声で何かが掠めた

「何……?!」

その一瞬の出来事に隣で眠っていた長谷川も
眼を覚ましてしまった様だった
自身の耳にも急に至近距離で飛び込んできた発砲音

と共に肩に激痛

痛みと言うよりか方が燃える様に熱い感覚が繰り返し続く
あまりの痛さに意識は飛び掛け、声さえも出ない

「…ッ……!!」

只、横目で見た限りの肩の様子は止めど無く流れる血の性で
傷口は愚か後ろに凭れていた木さえも真っ赤に染まってしまっていた
肩を貫通して幹に刺さった銃弾は熱を帯びているようだった

「……くっ、桑原!!」

隣で聞こえる裏返った声に視線を向けると
眼を見開いて俺の方を凝視している長谷川が眼に映った



689 :660@E班 :2005/09/24(土) 14:01:57

ぱぁんっ…
もう一回発砲音が聞こえ、反射的に前方を見つめる
視線の先には銃口を此方に向け立って居るジェントルの姿が見えた
瞬間的に眼を見開きジェントルこと菊池の眼を見つめる

見間違いか、一線の涙の跡が見えた気がした
直ぐに視線を逸らした菊池は俺達に背を向け走ってゆく

「ちょ、まっ…待てって…おい…ッ!!」

呆然と落胆したかのように走り去る姿を見つめていた俺の耳に
長谷川の声が飛び込んで来た

長谷川は立ち上がるのもそこそこに
追おうとしていた菊池の背中に手を伸ばしかけていた
その手首を、肩を押さえていない手で掴む

「長谷川、」

俺に引っ張られてか、声を掛けられてか、
勢いよく此方に視線を送る長谷川に説得するかの様にして言葉を続ける

「追わなくて良い、此処は……そういう世界なんだから」

そう告げると相方は憤りを感じたかの様に俺から視線を外し
ジェントルの走り去った後をじっと見つめていた
只その眼は、心成しか動揺と恐怖で揺らいでいたように見えた



690 :660:2005/09/24(土) 14:03:41
to be conted

以上です。
若い芸人さんばかりなので、分かりにくいかもですが楽しんでもらえれば
それでは

693 :キャイーン編 :2005/09/27(火) 23:19:12
紫がかってきた空に星が輝き始めている。
ウド鈴木は常に自信に満ち溢れたその顔を不機嫌に歪ませ、
頬の返り血をアンダーシャツの袖で拭った。
「お前みたいな、こういう時にもへらへらしているような奴が、俺はこの世で一番嫌いなんだ」
返答は無い。辺りは静まり返っていた。
「地元にいた頃から、ずっとお前が気に食わなかったんだよ。思えば変な縁だな。えぇ?天野よ」
ウドの足元に蹲った天野は、何も言わなかった。
いや、言えないのだ。その首から、胸から、夥しい量の血を流し、
言葉など発することもかなわないのだから。
「何か言ってみろよ。んぁァ?俺を笑わせてみろよ、おら」
右手に持ったサバイバルナイフを弄びながら、ウドはごつっ、と天野の頭を蹴った。
微かなうめきが上がったが、ごぼこぼと血の泡立つ音に紛れ、
それはウドの耳に殆ど届かなかった。


694 :キャイーン編 :2005/09/27(火) 23:22:21
「結局お前には何もできねぇじゃねぇか。世の中、食い合いが全てなんだ。
デブキャラなんて必要ねぇんだよっ」
ひときわ強く頭を蹴上げられ、天野の上体はふうっと宙に持ち上がり、
それから、仰向けにアスファルトの上に倒れた。血がはねる。
「お前、悔しいだろ?自分のバッグに入ってた武器を俺に分捕られて、
しかもそれで殺されるんだもんな。…ったく、お前は本当にお目出たい奴だよ。
当たった武器がよりによって果物ナイフでいらついてた俺に、ほいほい話し掛けてくるんだから。
俺の性格を知らなかったわけじゃねぇだろうに」
天野はもう殆ど意識が無いのだろう。ウドの顔を見ることもなく、ただ血溜まりの中に横たわっている。
或いはもう死んでいるのかもしれない。
「…さてと。とどめはささねぇ。せいぜい苦しんで死ねよ。じゃあな」
それだけ言うと、ウドは自分のバッグと天野のバッグの二つを両の肩にかけ、
悠々と歩き出した。口笛など吹きながら。


697 :名無しさん :2005/10/04(火) 00:17:59
久々にスレを読み返したら、1つ投下し忘れていました。
パンブーetc編はもう少しお待ち下さい。

−−−−−−−−−−

派手な衣装の中年女性が2人。
森の中をさまよっていた。

「うっ…うえっ…」

もう、何度吐き気を催したことか。
その度に胃をひっくり返すような勢いで内容物を吐き出す。
しかし、今は喉を焼くような胃液が出るばかり。
それでも吐き気は止まらない。

「もう嫌や…!」

彼女たちがいるこの辺りは、特に悲惨な状況であった。
とある芸人が大量殺戮を行った場所。
それはもう数日前の出来事であり、辺りは凄惨極まりなく、腐臭が漂っている。

「ちょっと、休も」

「…せやね」

ふくよかな女性は、ずるずると気にもたれながら座り込んだ。
すると、木の皮がめくれていることに気付いた。
意図的にめくられた木に、何やら傷が付けてある。

698 :名無しさん :2005/10/04(火) 00:19:22
「これ、何やろ」

文字のようだが、薄暗いので目では確認ができない。
すると、スマートな女性があることに気付いた。

「ねぇ、ここ、もしかしてお墓ちゃうの?」

ふくよかな女性が座った反対側。
彼女の手が触れた、木の皮がめくれているところ辺りだ。

「ホンマや。ほじくった跡あるし、このシャベルが墓標代わりなんかもね」

そして、改めて木についた傷を解読しようと手を当てた。
書いた文字ではないから、相当荒れた文字であることは間違いない。

「タバコ供えてあるわ……これ、あの子が吸ってたのと同じやな」

「あの子?」

「弟の方や」

その瞬間、木の文字が手に取るように解読できた。
いや、信じられなかったことが、目の前にあるモノで確実になってしまったのである。

699 :名無しさん :2005/10/04(火) 00:20:21
「で、そこ何て書いてあるん?」

「………」

「どうしたん!?」

木を触っていたふくよかな女性は、呻くような声をあげて泣き始めた。
おろおろとうろたえる相方を前にしても、涙を止めることができなかった。
もう、長いこと人前で泣いたことはなかったのに。


「……『サカイスト 酒井伝兵、酒井将芳、ここに眠る』って、書いてあるわ…」

「う、ウソやん…?」

スマートな女性は、ふくよかな女性を押し退けるように木の前に来た。
そして、同じように触ってみる。
何度も何度も、その場所をか細い手が往復する。
どうか間違っていてほしい、という願いを込めて。

「ウソやん!ウソやん!あの子達がうちらより先に逝く訳ない!」

「でも、先に逝ってもうたんやね……」

悲壮な嗚咽が、いつまでも森にこだましていた。


700 :名無しさん :2005/10/04(火) 00:21:22



それからまた、さらに時間が流れた。


先程の中年女性2人は、倒れていた。
首の発信機が弾けており、頸動脈から出血した痕もある。

綾部が将芳のナイフで刻んだ文字は、飛び散った血液が凝固して読めなくなっていたが。

奇しくも、2人が倒れていた場所は。

それぞれ、似た体型の弟子の真上だった。



【今いくよくるよ 死亡】

704 :番 外編 :2005/10/07(金) 12:33:50
ふと顔を上げると、相方がこっちに走ってきた。
何か慌てている。

「おい、どうした…」

「あっちゃん逃げて!!」

そう言うが早いか、ばららららっと言う音が聞こえてきた。
そして、俺は激しく地面に叩きつけられた。
全身が重くて仕方ない。
しかし、倒れて尚、ばららららっという音は止まない。

「不意打ちしてんじゃねぇよ!!」

何とか動きそうな右腕を動かし、音のする方に銃を向ける。

パンッ パンッ パンッ

視界の端に、誰かが倒れるのを見た。
多分、命中したんだと思う。

705 :番 外編 :2005/10/07(金) 12:35:01
「つーか、何でこんな重いんだよ…」

腹に手を当ててみる。

べちょっととした感覚。
自分で触れているという感覚がないのに、何やらビクビクと動く。

「………うわぁ!!」

無理矢理体を起こして、初めて状況に気付いた。
重いはずだ。
成人男性が自分の上に乗っかっていたのだから。

「おいっ!!」

「あっ…ちゃん……」

苦しげな表情のまま、相方が目を開く。
俺にタックルをくらわせたにもかかわらず、眼鏡はまったくずれていない。
背中は一面、蜂の巣状になっていた。

「なっ、なっ…」

「……って……いい…?…セリフ……」

言葉の続かない俺を苦笑し、相方は何やら言葉を発する。
苦しい息を堪えて喋るものだから、途切れ途切れにしか伝わらない。

706 :番 外編 :2005/10/07(金) 12:35:49
「苦しいなら無理して喋るな!!」

「俺………いい…?……言って…」

軽く頭を振って、言葉を続ける相方。
俺には為す術がない。
次第に生気が抜けていくのも、痛い程分かる。

「お前、何が言いたいんだ?」

そう言った次の瞬間、やっと声が全部聞き取れた。

『俺、かっこいい?俺のセリフ、言って』

セリフ。
俺たちの決めゼリフのことを言っているのだ。

707 :番 外編 :2005/10/07(金) 12:36:47
「慎吾、かっこいい」

「あっ…ちゃ…ん、かっ……こ…い……い…」

俺が言った後、間髪入れずいつものセリフが返ってきた。
いつも以上に嬉しそうな顔で、いつも以上に通る声で。
でも、その言葉の先はもう聞くことがない。


「慎吾…?」

力の入らない体を支えきれず、相方は大きく仰け反るように頭を下げた。
どんなに動いてもずれなかった眼鏡は、主がいなくなったことにより、ばさっと地面に落ちた。

「お前かっこよくなんかねぇよ!!かっこよさのために…命粗末にしてんじゃねぇよ!!」

相方の体から、急速に熱が逃げていく。
主のいなくなった眼鏡は、あいかわらず地面の上だ。
怒りとも悲しみとも悔しさともつかない感情。
頭が割れるように痛かった。

708 :番 外編 :2005/10/07(金) 12:38:24





ジリリリリリリ…

バチン

「んだよ…寝覚め最悪」

中田敦彦は、不機嫌そうにベッドから降りた。
時計は起きなければならない時刻を10分過ぎている。

「昨日あんなの見たせいだな…」

数年前に、芸人を対象に行われたというバトルロワイヤル。
残虐で非道な行為の数々があったということを忘れないためのドキュメント番組を、昨夜中田は見ていたのだった。

(夢で死んだヤツは誰なんだ?確か『シンゴ』って呼んでたような…にしても、『あっちゃん』なんて呼ばれたのは何年ぶりだか)

一時は芸人を夢見た彼だったが、有名大学に在学していたので親の反対もあり、結局は普通に就職したのだった。
勿論、一流企業、と呼ばれる会社である。

(『シンゴ』……なんか懐かしい響きだな)

やや感傷に浸りながらも、中田はスーツに着替え、ネクタイを締め、会社へと出勤していった。

709 :番 外編 :2005/10/07(金) 12:40:20
通りすがりがお目汚し。
3年前彼らはまだ普通の大学生なので、
参加しなかったことにより命拾い&芸人にならなかったという設定です。

オリエンタルラジオ(中田敦彦)の番外編でした。

713 :403:2005/10/09(日) 22:32:32
99編かいたものです。さまぁ〜ずとくりぃむの集団催眠編を投下します。

ある1人の男が、広い体育館のような所で。
白い敷布団の上で上半身を起こし、その下半身にはまだ白いかけ布団がかかっている。
男は、しばしその場で呆然として、先ほど来た女性の話を飲みこもうと努力した。
あれは夢だった。夢だった。・・・夢だったんだよ!
安堵の表情で、パンやお茶を支給されて語らう芸人たちが男の前を通った。
そして、頭を掠めたのは、戦慄の記憶。
息を潜め、その戦いを傍観するだけの森林と、血走る瞳。
風よりも素早くそしてとても大きい音が、その男の意識を奪ったのだった。
まさか金属バットの一振りで、あんなに威力があるなんて知らなかった。
「おたくらのせいで・・・」
彼は静かに、しかし狂気が走るその言葉で、彼に死を与えた。
もし彼がこちらに戻ってきた暁には、殴ってやろうかと男は思った。
――――まぁ、あんなとこじゃあ・・・、しょうがねーか?
そう思うことにしよう。事実、あの場では人が殺し合う狂った場所だったのだから。
だから、そう思うことにしよう。
冷静沈着な男の、思考回路をおかしくした狂気がないだけ、いいじゃないか。
そこまで考えて、男ははぁと大きく溜息をつき、それからどうしようか悩んだ。
とりあえず・・・、タバコ吸うか。
男はそう考えると、ゆっくりと体を起こして外へタバコを吸いに出た。

その男は三村と言った。



714 :403:2005/10/09(日) 22:33:17
>>713つづき

ある1人の男が、広い体育館のような所で。
白い敷布団の上で上半身を起こし、その下半身にはまだ白いかけ布団がかかっている。
男は、しばしその場で呆然として、先ほど来た女性の話を飲みこもうと努力した。
夢・・・か。なんて趣味悪い夢を見せやがるんだよ、こいつ等は。
男はそう小さく悪態をついて、それから眼鏡をくいっと上げた。
まだ、あの幻想の苦しみが、男の胸に取り付いていた。
岩肌にべっとりとついたのは、自らの鮮血。あの恐怖は2度と忘れないだろう。
もう死ぬんじゃないか、そう思うのにまだ生きているあの苦しみ。
ヘビの生殺しとはよく言ったものだが、まさしくそんな感じだと男は思った。
そして、その目には冷たい光が宿る。
――――あの女・・・、魔女だな。
未だ彼が気に留めていた2人組と行動しているであろう女を思った。
自分に毒を持って致命傷を与えた彼女だった。
それから、水は一体どうなるのか・・・。それは男の知るよしもない。
まさかあの水で毒おにぎりと言う新種の凶器が生まれる事も、また同じだ。
やや蒼白な顔を男は上げた。周りに、安心した芸人が増えていた。
そして手には皆同じようにお茶や食べ物が支給されていた。
死んでないだけ、徳か。なんか食い物貰えるみたいだしな・・・。
そう思った男は、その場から起きて支給品を見に外へ出た。

その男は大竹と言った。



715 :403:2005/10/09(日) 22:35:00
>>714つづき

ある1人の男が、広い体育館のような所で。
白い敷布団の上で上半身を起こし、その下半身にはまだ白いかけ布団がかかっている。
男は、しばしその場で呆然として、先ほど来た女性の話を飲みこもうと努力した。
つうことは・・・、さっきのは嘘か・・・?これまたリアルだったな。
男は先程の殺伐とした殺害の場から離れたからか、冷静に考えた。
それから自分の両手の平を見つめ、熟考していた。
人の頭蓋骨を、凶器で思い切り殴って砕いた、人を殺す嫌な感覚。
あの人に別に非は一切無かった筈なのに、殺害理由欲しさで口走った言葉。
目の前で吐血して苦しむ、仲良くしてもらった先輩。
最後に見た、手に髪に視界にへばりつくどす黒い自分の血。
そして、残った胸の罪悪感。
――――あぁ、嫌だ嫌だ。あれが夢だとしても・・・辛い。
精神の苦痛に思わず顔を歪めた。どうしようもない事は分かっている。
殺せば殺される危険地帯にいた事がまだ目に焼き付いていた。
だからあいつ、俺の事も・・・。少しだけ悲しそうな目を、下に下げた。
周りには知る知らない関わらず、芸人が溢れていた。騒がしくしている。
・・・ダメだ、全然頭すっきりしねぇ。外行って風浴びるか。
そう決めた男は、その場から起きて出口へ歩き出した。

その男は上田と言った。



716 :403:2005/10/09(日) 22:36:01
>>715つづき

ある1人の男が、広い体育館のような所で。
白い敷布団の上で上半身を起こし、その下半身にはまだ白いかけ布団がかかっている。
男は、しばしその場で呆然として、先ほど来た女性の話を飲みこもうと努力した。
努力したが、未だよく分かっていないようだった。
とりあえずもう戦いが終わった事を、男は知ったのだった。
周りには放送で名前を呼ばれ、死んだと思っていた芸人達が歩いている。
そこではっとした。じゃああいつも・・・、と思考した。がそれは途中で終わる。
――――そうだよ、俺が殺したんだよ。あいつの事は!
硬い石が鈍い音を立てる。何か重いものが落ちる。それが、自分が殺めた人。大切だったはずの。
そして自分が取った行動はなんだった?
犬のきぐるみで力のある者に媚び売りに行って、殺された。
あぁ、人が死んで殺して、それを見てきたのになんてあっけないんだろう。そう思った。
自分の血はあまりにも赤く、バックに浮かぶ月は驚くほど綺麗だった。
俺の名前も呼ばれたんだろうな、と男は暢気に考えていた。
・・・どうしよう。謝らなきゃいけないよな。あいつに。大切な相方に。大切な友に。
そう思った男は、勢いよく飛びあがって外へ飛び出した。

その男は有田と言った。



717 :403:2005/10/09(日) 22:38:19
外で空を眺めながら、三村はゆっくりとタバコをふかしていた。こんなにも空が綺麗だったなんて、と改めて三村は思った。
・・・いつもはその美しさに気付かないのに。でも今だけは、とても美しかった。
白い煙が風に乗って流れていった。それを目で追うと、誰かが近寄ってきた。
「おう」
「・・・ああ」
そこにいたのは大竹だった。手にはペットボトルのお茶とパンを持っている。
「やっと会えたな」
「・・・そうだな」
ふたりは顔を合わせたのが、とても久しぶりのように感じた。
そして、不意に三村は大竹の手元に気付いた。
「なんだよそれ」
「そこで配ってた。」
「・・・へぇ」
「持ってくるか」
「・・・・・・自分で持ってくるよ」
三村は大竹にそう返事をしてから、煙草の火を地面で消した。それから建物にゆっくり戻る。
大竹はその場に取り残されていた。おもむろに空を眺める。小さな雲がゆったり流れていく。
それからどれだけの時間が流れたのかは分からない。ボーっとしていると、そこに見知った影が現れた。
「大竹さん・・・」
「あ?」
後ろからかけられた声に振り向くと、上田がいた。
「あ、お前も?」
「俺も」
「誰に」
「有田に」
「・・・運無いな、お前も」
「そうっすね」
ふたりは短い会話を幾つか交わした。
「三村おせぇな・・・知ってるか?」
「・・・向こう行ったかもしれないですけど」
「おうそうか、じゃ」
大竹はその場を小走りで離れていく。建物に向かって走っていった。

718 :403:2005/10/09(日) 22:39:03
今度は上田がその場に取り残された。
あの時はあまり見る事の無かった、空が広がっていた。とても蒼かった。
暫く無言で立ち尽くす上田の傍に、恐る恐る近づくものがいた。
「・・・上田」
「・・・有田」
お互いに顔を合わせて、それからちょっと驚いた。
「・・・あのさ、」
「気にすんなよ、俺も同罪だから」
「・・・いや、あのさ」
「・・・んだよ、まどろっこしい」
「ごめん」
「・・・」
「・・・」
ふたりとも黙ってしまった。それ以上なにも言えなかった。
暫く沈黙していると、そこに近づく2人組がいた。・・・さまぁ〜ずだ。
「よぉくりぃむしちゅー」
三村が言った。
「・・・あぁさまぁ〜ずさん」
上田が答えた。
「海砂利水魚卒業の準備できたか?」
大竹が聞いた。
「一回死んだら、新しいスタート切ってみようと思ったんです」
有田が返した。
4人はそれぞれの顔を見合わせて、暫く黙っていた。それぞれの目に飛び込んだそれぞれの姿は
『変なパジャマでしかも胸元に失格ワッペンがだらしなくついている』姿だった。
それを見ているうちに、誰とも無く笑いがこぼれていた。
体育館の外では、大の大人四人が笑いあってじゃれている光景があった。

731 :rrr ◆BUZGMDBAac :2005/10/12(水) 17:21:04
>>675のつづき

浜田が砂浜に転がる死体をいじっている頃、さっきまで浜田がいた集落の路上で
村田渚の死体を見下ろしている2人の男がいた。
そこに横たわるモノ。オブジェのような無機質感が伝わる。が、それは2人の良く知る男。
どれだけの血を浴びたらここまでどす黒く染まるのだろう。元の色が全くわからない。
皮膚の色、服の色、地面の色。赤と黒を混ぜただけの油絵のようだ。
「村田さん…」
しゃがんで村田に触れる大上。その無意識に漏れた声は松口の耳には届いていない。
「こいつとやりあったんかな…。」
大上が少し離れた所で死んでいる男をみやった。そこにはヒデヨシ・ゆうきの死体。
「……海行こう」
「はっ?なんて?」
松口の呟きを聞き逃した大上が松口を見上げた。太陽の逆光でシルエットしか確認できない。
「あっちや」
松口はジャリっと音を鳴らし踵を返し歩き出す。大上は一瞬何が起こったのか理解できなかった。
「お、おい!ちょ待て!」
松口の腕を掴む。松口は掴まれた反動で少しよろめいたが、足を止め、目を細めて海を見ている。
「何言うてんの?いきなり海て。村田さん放っとくわけにはいかんやろ」
「村田さん殺った奴、海にいてんねんて」
「なんでわかんねや」
「足跡」
そこには血で描かれた足を引きずって歩いたような線が2〜3m続いていた。

732 :rrr ◆BUZGMDBAac :2005/10/12(水) 17:21:56
>>731

「敵討ったらんと…」
「おい、松口!ちょっと待てって!考えもなしに行くん危険やって!」
大上は再び歩き始めた松口を止めようと前にまわる。松口の顔は笑っていた。
「…村田さん、このまま晒しとかれへん。小屋ん中に運ぼ。海はそれからや」
大上は松口にそう告げるのが精一杯だった。
この島に着いてからの時間。確実に何かが外れてしまった松口の言動と行動。
相方を見捨てたくなる衝動、相方を守るという決意。心身ともに限界を感じ始めていた。
大上は松口に村田を運ぶよう頼むと、自らの怪我をかばいながら、
ヒデヨシのゆうきの死体を引きずって小屋の中に入れた。
その度に腹の傷が疼く。松口はまだ村田の隣で跪いたまま…。
大上は村田を挟むように松口の前でしゃがむともう一度「運ぼ」と呟いた。
意を決したように村田を抱え上げた松口は大上の指示で狭い小屋の安定した場所に2人並べた。
「しっかし…、慣れって恐ろしいな。普通なら気絶してるわ。」
大上がわざと明るく話しかけてみたが、松口は無反応。
いつのまにか、死体を見ても怖くなくなった。血の量も水溜り感覚に近い。
まぁ、さすがに知り合いが死ぬ瞬間を見た時はショックが大きかったが・・・。
そういう感覚がまだ自分の中にあった事が皮肉にも嬉しかった。まだ人間でいられた。
「大上」
「な、なんやねん」
いきなり厳しい口調で呼ばれたため、思わず返事が裏返ってしまった。

733 :rrr ◆BUZGMDBAac :2005/10/12(水) 17:23:51
>>732

「もう世間では芸人はいらんのか」
「さぁ」
「1人になるまで殺しあうんやろ」
「全滅かもしれんけどな」
「いらん言うてるのと一緒違うか?」
「オレに聞かれてもやな。・・・答え持ってるモンなんてこの島にいてへんやろ」
「久しぶりに会うたのがコレ・・・て、どういう事やねんな」
松口の声が震える。
「生きて会いたかったな…」
「大上。俺等芸人はこんな死に方したぁアカンねん」
「お前、暴れたるとか言うてたやん。ちょっと前に」
「言うてないよ」
「言うてたよ」
「言うてへんわ」
「言うてましたー」
「………」
「でも…、会えただけでもラッキーや思わんとな」
「………うん」

734 :rrr ◆BUZGMDBAac :2005/10/12(水) 17:24:47
>>733

ゲーム開始から把握しただけでも死んだ芸人は軽く100人を超えている。
その頃からあたりから数を把握するのもやめた。今生き残っているのが誰かもわからない。
「もう行こ。いつまでもここにいるわけにはいかんし」
「移動て、どこ行くん」
「海」
「敵討ちか?」
「よう考えたら敵討ちの相手がわからん」
「何しに行くんよ」
「何かあるやろ」
そして松口は“とりあえず進まんと何も始まらへん”と言うと、さっさと小屋を出て行った。
大上は松口が正常に戻った気がした。戻ってないとしても普通に会話出来る今が嬉しかった。
ハリガネロックはかすかに見える海をめざし、坂道を降りていった。
実は、2人は自ら最大の分岐点に入っていく事になる。


つづく

743 :シフクノタネ:2005/10/19(水) 23:59:49
久々に本編投下します。パンクブーブー&どんぴしゃ編。


パシャッ パシャッ

波打つ水に、光が反射する。
そんな波打ち際を、男が2人歩いていた。

「この海、綺麗やね。どこの海か知らんけど…」

赤い眼鏡をかけた男、黒瀬純(パンクブーブー)はぽつりと呟いた。
前を歩く男、佐藤哲夫(パンクブーブー)は振り向くことなくそのまま歩を進めた。

「純、疲れたから休むか」

「え?俺、そんなつもりで言ったんじゃなか…」

「俺も疲れたけん、休む」

持っていたバッグを下ろし、佐藤はテトラポットに腰掛けた。
急な行動に慌てた黒瀬も、とりあえず隣に座ることにした。

744 :シフクノタネ:2005/10/20(木) 00:00:49
同じ頃。

「うぁー…うぁー…っ、いだいー……」

民家だったと思われる建物の中。
片腕のない男が、畳の上でのたうち回っていた。

「いだい、いだいー……峯さん…っ」

「森本、しっかりせんか!!」

傍らに男がもう1人、肩口を縛ってやり止血を施すも、意味をなさない程の出血に辟易していた。
「お前も九州男児じゃろうが!!ちっとは我慢せんか!!」

そう言って励ましはするものの、このケガはきっと自分にも耐えることはできないだろうと、赤峯康一(どんぴしゃ)は思っていた。
ちょっと目を離した間に何かの爆発に巻き込まれ、痛い痛いと言いながら帰ってきた相方、森本徳久(どんぴしゃ)の姿には、正直目を被いたかった。
右腕だけでなく、破片でも刺さったのか、右目も痛がっていた。

745 :シフクノタネ:2005/10/20(木) 00:02:04
「いだいー……」

しかし、赤峯にはどうしてやることもできなかった。
化膿止めや抗生物質はおろか、止血に必要なものや消毒液すらない。
ただ、のたうつ森本を励ます他は。

「………」

自分と組まなければ、こんな目には遭わなかったのではないか。
そう思うと、やりきれなかった。


「み…ね……さ…」

不意に、森本は叫ぶのをやめた。
そして、左目だけで赤峯を見ていた。

「なんね?」

746 :シフクノタネ:2005/10/20(木) 00:03:30

つーっと、一筋の涙が森本の頬を伝っていくのが見えた。
もう、痛みに苦しむことも、のたうつこともないのだ。
全ての苦しさから、森本は逃れていったから。

「森本…?もりもっちゃん…?」

崩れた傷口からは、勢いは落ちたものの出血が続いている。
赤いような黒いような、人間の血。
肌は透き通るように青白く見えた。

「もりもっちゃん、冗談きつか。痛いなら、痛いって言わんか」

赤峯はあくまで冷静を装う。
だが、頭の中は処理能力を遥かに超えている。

彼の、処理能力を超えた頭は、次第に狂気に蝕まれていった。

749 :660@B班 :2005/10/21(金) 17:27:45


丘の下にある河流の音が聞こえるぐらいの静かな夜だった
月は綺麗に出ているし夜空には星空が瞬いているし
全てにおいてこの戦場には不釣合いな程の綺麗な光景が目に入る

ふと向かい合わせで幹に腰掛け膝を立てている同期に目線を送る
几帳面な事にディバックの中身の整頓をしているようだった
同じA型とは思えないぐらい、不思議と自分が怠け者に思えてくる
暫くその様子を観察していたのだが、その視線に気づいてなのか
はた、と手を止めて此方に目線を向けてきた

「…びっくりした…何すか伊藤さん?」
「いや、几帳面だなぁって思って」

然も当たり前かの様に答えて見せる俺の様子に
止めていた整頓の続きを再開しつつも、少し含み笑いを浮かべつつ
困った表情を浮かべる子宝たかの顔が
少しながら参戦以来見掛けていない相方、LLR福田と被る



750 :660@B班 :2005/10/21(金) 17:31:47


「……相方はどうしてるかな」

口を衝いて出た言葉に向かい側に座っていた孝の手の動きも止まる
そういえば孝も相方を探していたんだったなとふと出遭ったときの事を思い出す
お互い幸い正気だった為か何とか此れまで上手い事行っている事に
少しの安堵感と、同時に正気ではない状態への恐れも生まれてくる

「きっと、何処かで同じ様にぼーっとしてますよ、きっと」

急に耳に入ってくる声の主に視線を向ける
最後の荷物の武器である折り畳み包丁を少しの間見つめ、顔を歪めて
遮る様に鞄の中へほおり込んでいた
と、孝は何か思い付いたかのように此方を向くと
にやりと言う言葉が似合う子供っぽい笑みを浮かべ意地悪っぽい表情で一言

「…でも俺の相方、こんな時間に未だ動き続けていたりして」

まさかそんな事は無いだろうと思うのだが、何処だか本当にそんな気もして
思わず声に出して笑ってしまいそうな状態を必死で堪えていた



751 :660@C班 :2005/10/21(金) 17:32:57


夜だと言うのに動き続ける影一つ

さわさわと揺れる草の音と、先刻それなりに近いところで響いた発砲音
そしてその音の性で飛び立った鳥達の羽音
その音を耳で横流しにしつつ早めるでもなく遅めるでもなく歩き続けている
まるで生きる事に無頓着かの様なその動きに暫しの躊躇も求められたりで

「あーもー…暗い割には周り周辺一体的にうるせーなーもう」

悪態を吐きつつずんずんと突き進む影、
右手には支給された武器のジャックナイフ肩にはディバッグ
子宝ゆうまは独り夜の森を相方の読み通り歩いていた
先程の発砲音に耳を貸すでもなく、
それを現実として受け止めていられる事に若干の余裕さえも伺える

「夜にどんちゃん騒ぎは宴会だけにしとけばいいのに…あー酒ー」



752 :660@C班 :2005/10/21(金) 17:34:20


其れなりに大きな声を出しているのに周りに人が居ない性か
逆に安全めいて見えてくるから不思議な光景である
と、ふと足を止め四方八方暗い森の中で
木々達の間の夜空から照り付ける月を見上げた

二、三歩後ろ足で下がりベストポジションで月を見上げる

「暫く見てなかったなぁ、月」

ふと何ともなしに、見上げる視線の先にそんな事を呟いてみる
月明かりの中正確には満月ではないかもしれないけど
満月みたいな真ん丸い月を見つめて自然と笑みが零れる

優しく降り注ぐ月明かりの下で今日の所は眠る事にした



753 :660@D班&E班独 :2005/10/21(金) 17:35:20


遠くから吹き付ける風の性で草の羽音が妙に耳を触る

夜が明けた早朝、早めに起床したからか
未だ日の低い内に草原らしき場所を移動している最中だった
隣を歩くもう中学生こと丸田君に視線を送る
何とも奇妙な組み合わせだなぁと自分でも思ってしまう

未だ、真っ直ぐ前を向いて黙って突き進んでる様子を見ると
何時もあの芸風とは違う雰囲気を感じさせるようで
若干の違和感を感じさせる

「…そういえば」

視線を送っていた張本人から急に声を掛けられて吃驚してしまい
此方を向いた丸田が半笑いで不思議そうな顔をして見下ろしてくる
顔を正常に戻して再度聞き直す

「なに?」
「いや…竹内さんの相方さんって派手な髪の色してましたよね?」
「ジェントル?あー……茶金色…」

呆れた様に呟いて、思い出す相方の顔に心なしか口元が綻ぶ
ずっと会えない間々で居る相方に少しの心配を覚える
あいつ又面倒な事に巻き込まれていないだろうな、ふと考える



754 :660@D班&E班独 :2005/10/21(金) 17:36:38


「…竹内さん?」

声が掛かる。考え込んでいた性か立ち止まっていた様で、
違和感を感じた丸田が歩みを止めて此方を見ていた
思い付く言葉が見つからず曖昧に答え、追いつく様に歩き始める

「……あれ?」

至近距離で聞こえた気の抜けた声に視線を送る
何やらきょとんとした表情で丸田が延々と続く草原を見つめている
その視線の先をたどり目を細めて遠くを見る

瞬間、目を、見開く

傍で視線を送り続けていた丸田が放ったその一言で
自分の視界に飛び込んで来たモノが、
実在するものだと言う事を実感できた、気がした

「あれって……相方さんじゃないですか?」

緑の世界を突っ切って歩いてくる派手な頭一つ
生まれて来て此の方、此れ程までに派手な事に感謝したのは初めてだった



755 :660@E班 :2005/10/21(金) 17:37:40


分かっていた筈だった、分かってはいた筈なのだけれど

日が昇り始めた今でも森は暗く木々も冷たい
その冷え切っている木を背凭れに立ち、周りを見つめる
ふと指の先が冷える感覚を覚え軽く手を握ってみる

軽く首を動かして木に腰掛けた間々の相方の方を振り返る
昨日の受けた銃弾の跡は今は処置した包帯で見えなくなっており
相方はと言うと俯き加減に虚空を見つめている

分かっていた筈だった
一先ず戦場に行き成りほおり込まれて、何とか相方と出会えて
おびただしい量の死体を見て来ていても、急に遭遇した同期と喜びを出来ても
結局の所は、此処は戦場でしかなかった
人が人を殺し合うそんな状況に変わりは無かった

「……桑原、お前これからどうする?」

口を衝いて出てきた一言は此れしかなかった
視界の端では桑原がこちらをちらりと見た気がした
合間に微風で揺られる木々の葉音が聞こえる



756 :660@E班 :2005/10/21(金) 17:38:33


「俺は……殺されるなら殺すがわにまわる、かな」

びくっと肩が揺れたのが自分でも分かった
まさかあの温厚な桑原がそんな事を言うなんて思っても見なかった
恐怖心や警戒心も生まれ固い空気が流れる

「長谷川は?」

そう聞き返されて言葉に詰まる
この返答一つで自分の行く先が決まる様な気がしたからかもしれない
早くなる心臓の音に焦りを感じながらも
視線を桑原に向けて、告げる

「…俺は、最後の最後まで殺せないかもしれない」

そう言った一言は掠れもしない、普段通りの声だった
その言葉を聞いた桑原は息を吐き何時も通りの微笑んだ表情で

「良かった…」

一言柔らかい声色でそう告げると、
負傷した肩を庇いつつゆっくりと立ち上がり此方を向き
はにかんだ様な表情を浮かべて口を開く



757 :660@E班 :2005/10/21(金) 17:39:16

「もしも俺が人を殺したとしても、お前は最後まで殺すなよ」

眼を見開いてその顔を見つめる
口は開けど言葉は出てこなかった

衝撃と言うのだろうか、何かが身体に突き刺さる感覚
そんな状態の俺に構わずに直ぐに視線をそらした桑原は
傍らに置いておいた荷物を手に取る
呆然としていた自分もその様子を見て
自身の足元に放置していた荷物を同じ様に持ち、傍まで少し歩く

「少し、移動しよっか」

普段通りの声に間の空気も解れる
先程の衝撃は数秒経っただけだと言うのに緩和していた

心地よかった

土を踏む音も、
微かに聞こえる草の葉音も、
周りを覆う木も、
僅かに吹き付ける風も、皆


to be conted

759 :B9:2005/10/22(土) 13:07:36
>>前スレ265続き

「劇場」という響きに心動かされたのか、はたまた単にテンションが上がっているのか、
すっかり昂奮しきった様子の本坊は嬉しくてたまらないと云わんばかりに軽やかな
足取りで建物の中へと入っていった。
……まぁ、「劇場」という場所がそうさせる気持ちは町田も少なからず理解できる。
理屈ではなく経験として。
どこからか舞い込んだ風がふわりと本坊のシャツの裾をたなびかせ、その勢いに
乗るかのように先へ先へと進んでいく。
「あんま先々行くなよ」
「わかってる!」
返ってくる調子のいい返事。
町田はすっかり距離が開いてしまった本坊の後姿を眺めながら深い溜息をつき、
やれやれと云わんばかりに唇を結ぶと置き去りにされないよう後を追った。

760 :B9:2005/10/22(土) 13:08:30
閑散とした館内。薄っすらと埃の積もった手すりや床。
どことなくひび割れの目立つ壁には、まるで二人をいざなうかのように入り口で見たのと
同じポスターがズラリと等間隔に並んで貼られている。
その光景――あるいは、そこに流れる空気は一種独特なものがあり、本来人が
集まるべき場所に誰も居ない……という気持ち悪さと合い混じって、町田を
落ち着かない気分にさせた。
だが、彼が本当に落ち着かないのはそれだけが理由ではない。
館内に入る前に感じたあの「ぞわり」とした気味の悪い感覚。
一度ほどいた糸をもう一度巻きなおしたような、そんな歪な気持ち悪さの残る鬱懐。
もしかしたら磁針を狂わす小さな磁気がどこかで生じているのかもしれない……という
妄想に囚われると、彼は苛立ちを隠せない様子で無造作に伸びた髪をかき回した。
そして『それでなくても本坊っていう爆弾抱えてんのに俺まで方位失ったらどこに
行きつくねん』と想像し些かゾッとして、でもそんな事は考えても仕方ないことだと
思いなおすと『ま、どうでもええけど』となかば強引に終止符を打って有耶無耶なまま
終らそうとした。けれど、それは「見つけた!」という弾んだ声によって中断される。

761 :B9:2005/10/22(土) 13:09:44
別に考えたくもないようなことを考えていたのでいいのだけど、それでも億劫そうに
町田が顔を上げると数メートル先で本坊が劇場特有の重たそうな見た目に反して
緩やかに開く扉の前で嬉しそうな顔をしているのが見えた。

本当はそこで止めるべきだったのかもしれない。
けれど本坊はそんな隙を与えず、なんの考えも躊躇もなく、不用意とさえ思える唐突さで
「どーん」と云うと勢いよくドアを開き、次の瞬間、急激に表情を失くしてゆく。
町田の中で危険信号がともる。ぐわんぐわんと頭の中で音がする。
床が抜けたのではないかと疑うほど急に足場が不安定になりそのまま逃げ出したくなる。
それでも動かないわけにはいかなくて……彼は茫然と立ち尽くす本坊を押しやると、
その肩越しに中を覗き込み、そして小さく息を呑む。
狭隘なハコ。狭いわりに横に長い舞台。かつて拠点としていた場所を髣髴させるソレ。

――そこには天津 向清太朗の死体が転がっていた。

766 :シフクノタネ:2005/10/24(月) 23:27:19
>>746の続き

黒瀬は、ぼんやりと海を眺めていた。
どことなく福岡の海に似ているこの場所に、様々な思いをはせていた。

バレッタを解散し、佐藤とパンクブーブーを組んで早2年。
東京での生活やルミネにも、ようやく慣れてきた。

「福岡も楽しかったよな…」

佐藤は勿論、黒瀬も多少難の残る解散をしたままの上京。
しかし、今思えば、当時がつまらなかった訳ではない。

本当に取り留めのないことだった。

767 :シフクノタネ:2005/10/24(月) 23:27:57
この殺伐とした状況の中で、黒瀬は佐藤にとって唯一の救いだった。
1つ年上の後輩。
小さな体をめいっぱい使ってつっこむ、パワフルな男。
反面、天然なことは否めないけれど。

(お陰で、この状況でも俺は罪を犯すことがないのかも)

モンスターズを解散し、黒瀬と組んだパンクブーブー。
交友関係が広がったのも、ほとんど黒瀬のお陰だった。

「凱旋するためにも、こんなとこでくたばれねぇよ」

佐藤は、黒瀬の肩を軽く叩いた。

768 :シフクノタネ:2005/10/24(月) 23:28:55
泣くことも、叫ぶことも、忘れてしまった。
自分の中にあるのは、怒りと憎悪と殺意。

「もりもっちゃんは、ズルか」

赤峯が家中を家捜ししたところ、来客用と思われる、綺麗な布団が出てきた。
葬式の作法なんてものはよく知らなかったが、とりあえず森本を北枕に寝かせた。

「寂しがりとか言うんに、1人で行くんか」

すっかり血の気が引いた顔は、二回り程小さく見えた。
天然でぼーっとしていて、しかも年上の後輩な相方。
年上なのに、年下の赤峯にどんなことをされても怒らなかった。

「やっぱり、寂しかろ?仲間、連れていくけん、待っててな」

民家を出た赤峯の耳に、微かな潮騒が聞こえてきた。

772 :シフクノタネ:2005/10/27(木) 23:54:18
>>768

そのまま、どのくらい海を眺めていただろうか。
潮騒の中を、時折殺戮の音がする。

潮騒すら叫び声に聞こえ、思わず黒瀬は耳を塞いだ。

「純は、俺と東京に来たことを、後悔してるか?」

「え…っ?」

突然の佐藤の質問に、黒瀬は目を見開いた。

「福岡におったら、こんなとこ来なくて済んだかもしれんよ」

「てっちゃん、俺は」

「俺は後悔しとる。お前みたいなヤツを失うのも惜しいし、手放すのも惜しい」

「だから、」

「純」

かつんと音を立て、足下に小石が転がってきた。
やや回転の遅い黒瀬の頭も状況を理解した。


―――――敵が、迫っている。

773 :シフクノタネ:2005/10/27(木) 23:55:16
(てっちゃんは、俺を逃がそうとしてるんだ)

確かに佐藤は黒瀬の先輩だ。
その関係に甘んじて、いつも頼ってばかりだった。

(こんなときくらい、年上ぶってもいいよな)

「俺は、てっちゃんと組んだことを後悔してないよ」

黒瀬は精一杯屈託のない笑顔を作った。
そして、ありったけの力を込めて、佐藤を海に突き落とした。

「純!?」

不意に海に落ちた佐藤は、着ている服のせいもあり、もがけばもがく程沈んでいった。
泳ぎは苦手ではないのに、不思議と浮力は働かない。

「純!!」

「てっちゃん、またね」

水中に沈む佐藤が最後に見たのは、黒瀬が笑顔のままテトラポットの上に倒れる場面だった。
その後ろにいたのが、元相方であったことも知らず…。

774 :シフクノタネ:2005/10/27(木) 23:57:16
ふらふらと徘徊していた赤峯が、パンクブーブーの2人を発見したのは、奇跡に近い偶然だった。
全ての元凶である者が、目前に2人。
遣り場の無かった感情をぶつけるには、コマが揃いきっている。

(もりもっちゃんと純は仲が良かった)

ふと、4人とも福岡にいた頃を思い出す。
まだ解散する前、それぞれがそれぞれの相方と上手くやっていた頃。
今となっては懐かしい以外の何ものでもない、遠い『過去』。

(哲夫に、俺の味わった気持ちを教えてやらないけん)

勘のいい佐藤は、既に存在に気付いてるはずだ。
そして、如何に黒瀬に悟らせずに逃げるかも考えているだろう。

黒瀬の目の前で佐藤を殺してもよかったのだが、それでは面白味がないと赤峯は考えていた。

――――――カツン

足下の小石が転がり、テトラポッドに当たる。
一瞬、赤峯はしまった、という表情になったが……


バッシャーン!

黒瀬がいきなり立ち上がり、佐藤を海に突き落とした。
まるで、後ろから敵が来ていることを予見していたかのように。

(何や純、俺に気付いたんか)

キツネにつままれたような気分になったが、予定通り用意していた木の棒で黒瀬を殴り気絶させると、担いで森本の待つ家へと戻っていった。

775 :B9:2005/10/28(金) 01:52:34
>>761続き
「なんでなん?」が最初の言葉だったように思う。
そして「どういうこと?」「なにそれ?」「ちゃうやん」「なんでよ?」と続いていった。
その口調はうんざりしているようにも聞こえたし、あるいは驚いているようにも、
悲しんでいるようにも、困惑しているようにも聞こえた。
本坊はよろよろと足を踏みだすとぎこちない動きで舞台にむかって一歩一歩
近づいていき、向の前まで来ると絶望を湛えた眸でその屍を見下ろし、モゴモゴと
口の中で言葉を錯綜させて今にも死にそうな声でボソリと「これも違う」と呟いた。
「これ?これ……これ?」
自分の吐いた言葉に混乱を見せる。
きっとこれが許容量を越えた瞬間だったのだろう。
次の瞬間、咆哮……いや、咆哮と呼ぶには些か間の抜けた叫びが辺りに響いた。

町田は一歩も動けなかった。一歩も、だ。
単純にどうしていいのか判らなかったし、どうにかできるとも思わなかった。
状況に認識が追いつかず現実から現実味がバリバリと剥がれ落ちていく。
本坊は感情の抜け落ちた死んだ魚のような眼をしばらく向にむけていたが、
不意にその眸に怒りの色が滲むと突然向の胸倉をつかみ殴りつけた。
ガコンという鈍い音が響く。
通常、人を殴った時に出る音とは明らかに違う異質な音。
町田は驚いたがそれ以上に驚いたのが殴った本人で、恐怖と戸惑いに表情を歪めると、
わなわなと震える唇を噛み締め「なんで邪魔すんねん!なんで邪魔すんねん!」と
つかんでいた向の胸倉をグラグラと揺らした。それでも向に反応はない。

776 :B9:2005/10/28(金) 01:53:37
揺さぶる。
揺さぶる。
揺さぶる。
反応はない。
揺さぶる。
揺さぶる。
揺さぶる。
さすがの町田も「おい、止めとけ」と止めに入る。
しかし一度スイッチの入った本坊を止められるはずがなかった。

――そこからはもう滅茶苦茶だった。
説明するのもはばかられる見てられない展開が繰り広げられた。
本坊は「生き返れ!」と云いながら向の頬をバシバシと叩き「なんで生き返らへんねん!」と
云いながらその体を引きずり回した。逆ギレとしか形容できないような理論と荒唐無稽な
罵倒を繰りかえし、仕舞いには細い腕で向の重量な体を投げ飛ばしだす始末。
痩身の本坊は向と一緒に自分も吹っ飛ぶと、受身もとらず頭や腰を強打し、よろめきながら
向のもとへ戻ると「なに笑ってんねん!」とただの”いちゃもん”を吹っかける。
悲悼と呼ぶにはあまりに冒涜的で、悲絶と呼ぶにはあまりに暴力的。
そして、ここからがまたウンザリする話なのだけど、それだけの滅茶をしておいて
「ごめん」と云いながら本坊が泣き出したのだからもうこればっかりは救いようがない。
「うっ、うっ、ぐすっ……ふぅ……ぐっ、んぐはぁ」と、みっともない音を立てながら鼻をすすり
グスグスと泣く本坊を眺め、町田は心底気が滅入った。
「もう止めろや!止めろって!」という制止の言葉も虚しく響くだけで何の効果も持たない。
町田は爪がくいこむくらい強く拳をにぎりしめ、諦めるように瞼を閉じたが酷い現実を前に
悪夢が覚めることはなかった。



777 :B9:2005/10/28(金) 01:55:29
それから、どれくらいの時間が経過したのだろう。
数分しか経っていないような気もするし数時間に及んだような気もする。
町田は苦虫を噛み潰したような顔をしながら、息を乱しゼイゼイと肩を揺らして
ぐったりとしている本坊を一瞥し、その項垂れた背中にむかって
「……満足したか?」と皮肉めいたイントネーションを含ませながら尋ねた。
本坊はその質問には答えず、抑揚のないくぐもった声で「肉の塊なんよ、人間は」と
云うと柔らかく向を突き離した。
苦々しい沈黙と居心地の悪い空気が辺りを舞って静かに沈殿する。
町田は顔を顰め、救いようのない事態をまえに息がつまるのを感じ、小さな咳払いをしたが
喉に停滞する不快感が去ることはなかった。
混沌と混沌と混沌を煮詰めたような顔をした本坊は「疲れた」と零すと緩慢な動作で
立ち上がる。町田はその背中を静かに見守る。
本坊は一度ふらっと蹌踉け、危なっかしい足取りながらも体勢を持ちなおすと俯き、
紫色に変色した手の甲を眺めながら「もう、わからへん……」と云った。
そこには波紋が広がる瞬間にも似た水っぽい揺らぎが含まれている。
そして薄い唇をゆっくりとひらき、まるで呪詛のように、

「こんな世界、壊れてもうたほうがええわ」

……と吐き捨てて、町田のほうを振り返った。
その顔は血の気を失い真っ青で、縋るような眼とは裏腹に口元には本坊らしからぬ
自嘲的な笑みが浮かんでいる。

「そう思わへん?」

町田はぼんやりと本坊を眺め、世界が壊れた方がいいとは思わなかったが
『自分は今この瞬間を多分一生忘れへんやろな』とは思った。



778 :B9:2005/10/28(金) 01:57:19
暗転。そして、明転。

町田は劇場の椅子に深く腰をかけながら舞台を眺めていた。
椅子は薄汚れていて埃っぽく、背もたれの部分が何だかごわごわとして
椅子という機能こそ果たせど座り心地は最悪だった。
舞台上で向の死体を前にゴローンと寝っ転がり、瞼を閉じて「すー…すー…」と
一定のリズムで呼吸を繰り返す本坊を見ながら『皮肉なもんやで』と思うと町田は
立ち上がり、煙草を探してポケットをまさぐるが自分がそんなものを持っていないことを
思い出すと露骨な溜息をつきながら座りなおし苛立たしげに膝を揺すった。

つい先ほど流れた放送が向の死を告げた。
放送で「天津 向清太朗くん」と読み上げられると、本坊は横たわったままスゥと眼を開けた。
この短い時間で、喜怒哀楽をどこかへ置き忘れてきてしまったらしい本坊は物憂げな表情さえ失い、
感情らしい感情もない顔で、いつもより一層深く影を落とし黒く隈取られた眼をしばらく宙に
漂わせると再びスゥっと眼を閉じ、それっきり動かなくなってしまった。
寝ているのか起きているのかも解らない。ただ不貞腐れているだけのようにも見える。
同情の念は否めないが、だからといって何ができるわけでもない。
決して胸が痛まないわけではないけれど。
町田は一部始終を記憶の中に封じ込めるとそっと蓋をした。
そして、元々猫背な背中を丸めると目を閉じる。少し眠りたかった。
こんなものばかり見せられて平然としてられるほど彼も強い人間じゃない。
ウトウトと襲いくる眠気。 ゆるりと心地よい眠りにつけそうな予感。僅かな期待。
『寝よ……』
次に目を覚ました時にはきっと何かが変わってるはずだと、そう信じながら。

785 :心配性 :2005/11/12(土) 00:12:04
>>654から

以前より人間と遭う事がなくなった気がする。
きっともう生き残りも少なくなってきているのだろう。
「このまま、終わってくれないかな〜…」
突っ立ったまま建物の壁に背を預ける田中。細かい砂や灰が服に付いたがそんなことは
もう気にならなかった。
「……ふん、」
山根は冷めた顔で鼻を鳴らし、武器を探すため中から引っ張り出してきた木箱を漁った。
その様子を横目でじっと見ながら、田中は困ったようにゆっくりと瞬きした。
最初はこんな感じじゃ無かった。いつものマイペースの欠片もなく、どうしよう、って
恐る恐る尋ねてきたんだった。ようやく普通に話せるようになったのが、三日前。
元気になって良かった、と思っては居たが…。
「…お前、変わった?」
ガシャガシャと箱の中を物色する音だけが聞こえる中、なるべく平静を装って尋ねた。
「俺は変わんねえよ?何も」
「あっそー。(まあ、そう答えるとは思っていたけどね)」
山根はこの戦いの中で、何かを悟ってしまったのだろうか。
どろどろとした不吉な雲はいつの間にか引いて、久しぶりに“あの頃”と同じ、ただ青い
だけの空が広がっていた。




786 :心配性 :2005/11/12(土) 00:13:10
「おっ、これなんか良いんじゃない?」
山根が取り出したのは掌に収まってしまうくらい小さい拳銃だった。
箱の底の方にその拳銃用の弾と思われるものが幾つも転がっている。少なくとも20発分
以上はあった。

「山根―。もしかして人殺したことあるの?」
それは何気ない質問だった。ただ、山根が何の躊躇もなく拳銃を手にしたから、何となく思っただけ。それだけの話だった。
だが山根は急に怖い顔をして、ばっと田中に目線を向ける。
「どういう意味なん?」
「ど…どういうって…何となくだよ何となく!そんな睨むなよ!」
今にも手に持っている銃を突きつけてきそうな表情に、慌てて弁解する。
それに気付いた山根は気持ちを落ち着けるように深呼吸しながら、片方の手で銃を持った手をぐっと押さえた。
「そう…うん、いや…ゴメン…」
とんでもなく気まずくなり互いに顔を逸らした。ピリッとした、今まで経験したことが無いくらいの息苦しさが漂っていた。

――――何だか、妙な雰囲気……。


787 :心配性 :2005/11/12(土) 00:14:45
と、その時。

ガサガサガサッ―――
木の枝や葉が折れる大きな音がした。続けざまに重い物が地面に叩きつけられる音。
一呼吸置いて、がさっ、と向かいの茂みが揺れた。二人は同時に顔を見合わせて、ゆっくりとその方向に顔を向けた。
「“また”何か落ちてきたみたい」
と、山根が言った。
多い茂った草木の中に茶髪の頭が見える。見上げた所には、崖とまではいかないが急な坂がある。雨が降ったことで地盤が緩み、きっと足でも滑らせて転げ落ちてしまったのだろう。
再び目線を下に戻し、足下で目を回した感じに気絶している人物を見た。
「あ、この人…陣内さんだ。テレビで見たことあるよ」
田中はまじまじと陣内を見詰めた。テレビで見ていた頃よりずっと痩せて、服や顔にはどす黒い血がこびり付いていた。だが陣内の身体は無傷だった。
きっとこれは違う人の血なのだろう。所々色が違うから一人や二人のものではないようだ。大勢の人間の血を浴びながら、この人は逃げてきた。そう思った。
「山根、なあちょっと来いよ!助けなきゃ……、山根?やま……」
少し離れた所に山根は立っていた。聞こえていないのか返事はない。
何かを見ている。目が少し虚ろだ。
彼の足下には、ぎらぎらと禍々しくも妖しい光を放つ一本の長い刀があった。陣内と一緒になって落ちてきた「村正」だ。
山根は何かに取り憑かれたようにその刀を掴む。
「おい……、それ…って…」
「なあ…俺はさぁ、生きたいんだ。その為に…二人で生き残る為には、…此処には邪魔な奴が多すぎる」
少し、いや明らかに口調が違う。
“彼”は色のない目で田中を捉えた。
「お前も……そう、思うだろ?」
その問いに田中が頷いたのかは彼にしか分からなかった。が、確実に何かが狂ってきていた。


797 :番 外編 :2005/11/17(木) 14:24:59
また通りすがりました。こんな話をどうぞ。

−−−−−−−−−−

――――――時は2030年

海の見える丘の上。
そこに1つの墓標があり、子供を2人連れた女性が立っていた。

「パパ…」

その場所に眠るのは、彼女の父。
父親が亡くなったのは20数年前のこと。
記憶はおぼろげにしか残っておらず、知っているのは写真や画面の中で笑う姿だけ。
そしてこの墓の下にも父の遺骨はなく、遺品として戻ってきたネクタイが入っている。

「パパ…私もパパに似てるってよく言われたけど……この子はもっと似てるの」

彼女の父は、目元に特徴があった。
彼女自身も目元は似ているのだが、上の子は顔全体が瓜二つのようである。

「この子は…よく遊びに来たお兄さんに似てるの」

下の子は、彼女にも彼女の夫にも似ていなかった。
が、母に言わせると、『父の親友でよく家に遊びに来た』という青年に似ているのだそうだ。

「きっと、パパとお兄さんの生まれ変わりなのね」

彼女の目から、涙が溢れた。
父にこの子達を見てほしい。幸せな私を見てほしい。
そんな思いでいっぱいだった。


798 :番 外編 :2005/11/17(木) 14:25:58
「ママ、どうしたの?」

「どこか痛いの?」

心配した子供達が、彼女の頭を撫でる。
逆光になった子供の後ろに、父と青年の姿が見えた。
にっこりと微笑み、彼女を励ますように。

「……大丈夫よ。おじいちゃんとお話していたの」

「僕もおじいちゃんとお話する!!」

「ぼくも!!」

2人も彼女の横で、小さな手を合わせ、目を閉じた。





「おじいちゃん、僕はコウジです」

「ぼくはカズユキです」


799 :番 外編 :2005/11/17(木) 14:28:37
最後に出てきた名前のとおり、あの人の娘さんです。
最初「タカシ」「トモタケ」にしようかとも思ったのですが、
後者がまだのような気がしたので、彼らにしました。

本文書きさん方、私も期待していますので、
これからも頑張ってください。

807 :餞の花束 1:2005/11/23(水) 11:38:15
暗闇だった視界が、朝日とともに鮮明に戻ってくる。
地面には大量の血。
先ほどまで生きていた3人の屍と、服に血が付いている一人の男。
昇る朝日を前にして、流しきった涙の線が照らされる。
どこか遠くを見つめている、呆然とした表情を浮かべ、
大切な仲間を失った悲しみは、男の心を蝕んでいた。
嫌でも知っている自分の弱い心。


死にたかった。仲間が居なくなるならいっそのこと死にたかった。
だが相方が最後に言った言葉が、男に生きる事を教えた。


『死ぬな。生きられることを誇りに思え。
 世界では死ぬことでしか英雄になれない者が居るのだから。』



男は立ち、3人の屍を動かして木に寄りかける。
目を閉じさせ、少し湿ったタオルを水で湿らせ顔を拭う。
せめてもの餞。
ひとつ息をつくと手を合わせ、長く天に祈る。
そして先ほどとは違った、何か大切なものを守ろうとする立派な男の表情を浮かべると、
相方から受け取った銀色に光る銃を持ってその場を後にした。

808 :餞の花束 2:2005/11/23(水) 11:38:48
話は数時間前に戻る。

ラフ・コントロールの二人は、森の中で休んでいた。
この死のゲームから逃げ出すように。
逃げられないことは確かなのだが、二人はずっと誰かと出会う事無く島を逃げ回ってきた。
「シ、ゲ……もっ、走れん…って…っ」
「体力無い奴…さっき休んだばかりやろが。……ったく、一時間だけやぞ」
木に隠れるように重岡は森木を座らせる。
重岡と違って、森木は体力も度胸もない。
このゲームには不向きな人間だ。
仮にも森木は相方。見捨てられるか、と問えばきっとノーと答える。
昔から喧嘩をやって、失うものは多少あったが仲間だけは失わなかった。

仲間は守る、敵は倒す。

かといって今まで仲良くやってきた後輩や良きライバルの同期、可愛がってもらった先輩を倒す事など出来ない。
色々悩んでいるうちに、きっとこのような行動に出たのだろう。

「シゲ、もう大丈夫」
「暫らくは休めんぞ。」
「うん。頑張る」
その一言を聞き、重岡は腰を上げる。
木を背にして辺りを見渡し、誰もいないか確認する。

頼む、誰もいないでくれ。

一歩踏み出した瞬間、森木の後ろの方で草ががさがさと揺れた。


809 :餞の花束 3:2005/11/23(水) 11:39:55

重岡が慌てて銃を突きつける。
だが目の前にいたのは、月の明かりで見えた、同期の5GAPの秋本と久保田だった。

「・・・あ、兄貴っ!?」
「い、いきなり銃突きつけるなよ〜…偶然だなぁ、シゲ、森木」
ひきつった笑顔を浮かべながら、兄貴といわれた秋本が片手を上げて挨拶をした。
「もうちょっと休んでてもよかったんだぞ、森木」
「え?いや、長く休んでたら誰かに狙われるかもしれんやろ?だからさ」
森木が楽しそうに二人と話す。が、重岡の顔は曇っていた。

『何かがおかしい。』

重岡の頭では、何かが引っかかっていた。
そうだ、何かがおかしい。
今まで誰にも会うことも無く、後を付けられてきた覚えもない。
なのに何故か、何かがおかしく感じられる。

重岡は銃をおろして腰に差す。疑問ならまた後で考えればいい。
誰かに会うのなんて久しぶりだ。ましてや同期だなんて。
後輩か先輩のどっちかだったら逃げようと思っていたが、目の前に居るのは二択にない同期。
森木も重岡も気軽に話できる仲間だ。
今だけは良いかと思い、重岡も会話に溶け込んでいった。



810 :餞の花束 4:2005/11/23(水) 11:40:34







「……で、お前らは本当に誰にも会ってないの?」
「死体は見たけどな。生きてる人間にあったのはお前らが初めて。」
「…ふぅん。」
時間にしたら約一時間。重岡は腕時計をみて時間を確認すると、腰を上げた。
そろそろ動かなければ。
もう少し話していたかったが、状況が状況だ。
重岡は森木の肩を叩くと、荷物をまとめるよう指示を出した。
「え、もう行くの?」
「まぁな。俺らとお前らはここで別れたほうがえぇ。」
「け、けどさ・・・っ」
腰に差した銃を抜いて秋本に狙いを定め、横にずらして引き金を引く。
木に銃弾がめり込んだ。
「死にたくないならここでお別れや。」

「い、いいのかよ、一発しかこめてないのに撃っちゃって…」

重岡は眉をひそめ、不信感を丸出しにさせた。
そして悟った。この二人は偶然俺らと出会ったのではないと。
二人を見据えたまま、重岡は森木の背中を押しながらその場を後にした。

811 :餞の花束 5:2005/11/23(水) 11:42:21

「ね、ちょっとシゲ…!」
「何や。」
森木の足が止まる。
「何で話切り上げたん?」
やはりこいつには伝わらないか。
と、微かに後ろの方から草木を分ける音が聞こえた。
「走りながら話す。付いて来い」

「いいか。俺があいつらを疑った理由は二つ。
 まず出会ったときに偶然だと言っていたが、そのあと久保田が
 もうちょっと休んでてもよかったのになぁと言った。
 偶然だと言ったのにどうして分かった?」
「それは…」
「簡単や。あいつらはずっと俺らのことを見てたんだよ。
 あともう一つ。秋本が最後の最後で
 いいのかよ、一発しかこめてないのに撃っちゃって、と言った。
 意味分かるか?」
「えっと…シゲが弾をこめるところを見ていた……?」
「当たり。だから俺はあいつらと一緒にいることを止めた。
 まぁ最初から長居するつもりは無かったしな」



812 :餞の花束 5.5:2005/11/23(水) 11:42:52
30分ぐらい走っただろうか。
短い悲鳴を上げて重岡がその場に倒れこんだ。足にはギラリと鈍く光る一本の矢。
後ろを見ればボウガンを持った久保田が居た。
森木は一旦止まり重岡のほうを向くと、戻って体を起こしにかかる。
それと同時にボウガンから矢が発射された。
矢は森木を確実に狙っている。
あと数十センチと迫ったその時、地面のぬかるみに足を取られ森木は派手に転んだ。
その直後にドスッと言う音がして木に矢が突き刺さる。
森木はボーっと矢を眺めていたが、はっと我に返り起き上がると重岡の肩に体を入れ、
重岡に合わせるように走り出した。時々うなり声が隣から聞こえる。
横顔を見つつ、我武者羅に走っていると崖っぷちまで来てしまった。
戻ろうと体を翻すと、森木の胸にボウガンの先が突きつけられた。

813 :餞の花束 6:2005/11/23(水) 11:44:53
「ばれてるみたいだから仕方無い。・・・・・・死んでくれ、森木、重岡」
「…ことわ・・・る・・・・・」
重岡が苦しそうに言い放ち、森木も慌てて首を縦に振る。
「・・・なら・・・」
久保田が指をかけてボウガンの引き金を引く

ことはなかった。

ボウガンは久保田の数本の指と一緒に地面に落ちた。
久保田が引き金を引く前に、重岡が早く銃の引き金を引いたのだ。
「うああああぁっぁぁ!!!」
膝を突いてその場にうずくまり、必死で患部を握り締める久保田。
重岡はボウガンを蹴り遠くへ飛ばすと、久保田の頭に銃を突きつける。
「これ以上、争う気は無い…この場から失せろ・・・っ!!」
「あぁぁっ……あっ、ぅ……!」
痛みの所為だろうか、まともに喋れないで居る久保田から視線を離し、秋本に目をやる。
「これ以上互いに怪我はしたくない。・・・久保田を連れてどこかへ消えろ」
「どうせ…どうせここで逃げたって、後で対立する事になるんだぜ・・・だったら、
 だったらここで潰しとかなきゃ、なぁ」



814 :餞の花束 7:2005/11/23(水) 11:45:18


鈍い音がし、重岡が音の方を振り向くと久保田がナイフを重岡の腹部に突き立てていた。
ズブズブとナイフは埋まっていく。
重岡は久保田を殴って吹き飛ばすと、膝を突いてその場に崩れた。
じわりと服が赤に染まっていく。
確認したとたん額に脂汗が広がり、重岡は手に持っていた銃を森木に投げ渡した。
「撃・・・て、森・・・・・・木・・・・・・う、て・・・・・・っ」
最後の方は声にならなかった。
目の前が霞み、瞼が下りてくる。だがこの戦いだけは見守らなければならないような気がした。
そうだ。
森木は、経験して成長しなければならない。
度胸も無い森木を、成長させて強くさせていかなければ。

『俺は保護者か・・・』

重岡は心の中でそう呟くと、はっと鼻で笑いもう一度叫ぶ。

「撃て森木ィ!!!!」
「・・・・・・・・・うわああぁあぁあ!!!」

815 :餞の花束 8:2005/11/23(水) 11:46:39


拾ったと思われる、血の付いた鉈を振りかざして森木を狙う秋本の体に森木の放った銃弾が穴を開けた。
首に一発、腹部に一発。
膝を突いて滑り込むように崩れた秋本の体から、息をするたびに赤い液体があふれ出る。
「かっ、は…………ぁ……」
涙を浮かべ、天を見つめたまま絶命した秋本を見て、森木は怖くなり尻餅をついた。
久保田は秋本の握っていた鉈を取ると、秋本の目を閉じさせた。
「すぐ・・・全員連れてそっち行くからさぁ、兄貴・・・」
「ぁ・・・・・・う、ぁあ・・・・・・」
ゆらりと久保田が立っている姿は不気味で、森木はその所為で完全に立てなくなり尻餅をつく。
鉈を振り上げるのと、森木が目を瞑るのは、同時だった。

が、久保田の鉈が振り下ろされることは無かった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!?」
目の前には首と手の甲に銀の矢を生やした久保田が居た。
鉈が手から滑り落ち、膝を突いて森木と重なるように倒れた久保田は、もう息をしていなかった。
「ひっ・・・!!」
久保田の死体を突き飛ばす様な形で退けると、後ろに下がって大きく早く呼吸を繰り返す。
涙目になりながら重岡のほうを向くと、ボウガンの引き金に指をかけたまま蹲っている姿が目に入った。



816 :餞の花束 9:2005/11/23(水) 11:47:14


「し・・・っ、重岡っ!!」
慌てて駆け寄り抱き起こすと顔は青ざめていて、手からボウガンが落ちた。
「嫌や……死ぬなぁっ!!」
「……なに、人のこと…かって、に殺して…んだよ……」
「やって…やって顔青いし…」
「…なに、泣いてんだよ…」
「だって…だってぇ……」
「気持ち悪ぃよ…俺のことで、だったら…もう泣くな……」
頬を伝って一筋の涙が重岡の頬にたれる。
重岡はもう頬を拭う気力もないのか、そのままの状態で話を続けた。
「森木…・・・…死のうと、思うな………生きられる、ことを……誇りに思え……」
「誇り……?」
「そうや………世界では、死ぬこと…でしか英雄に……なれない者が、居るんやから……」
森木は先ほどから涙を必死に拭っているが、涙は止まることを知らない。
「…もう……お別れや……」
「!」
「お前ならやれる……俺の分まで…生きてくれ……」
最後に柔らかい、優しい笑顔を見せると目を閉じた。



817 :餞の花束 10:2005/11/23(水) 11:47:56
暗闇だった視界が、朝日とともに鮮明に戻ってくる。
地面には大量の血。
先ほどまで生きていた3人の屍と、服に血が付いている森木。
昇る朝日を前にして、流しきった涙の線が照らされる。
どこか遠くを見つめている、呆然とした表情を浮かべ、
大切な仲間を失った悲しみは、男の心を蝕んでいた。
嫌でも知っている自分の弱い心。
それが今になって後悔とともに底から湧き上がってくる。


死にたかった。仲間が居なくなるならいっそのこと死にたかった。
だが重岡が最後に言った言葉が、森木に生きる事を教えた。


『死ぬな。生きられることを誇りに思え。
 世界では死ぬことでしか英雄になれない者が居るのだから。』



森木は立ち、3人の屍を動かして木に寄りかける。
目を閉じさせ、少し湿ったタオルを水で湿らせ顔を拭う。
せめてもの餞。
ひとつ息をつくと手を合わせ、長く天に祈る。
そして先ほどとは違った、何か大切なものを守ろうとする立派な表情を浮かべると、
相方から受け取った銀色に光る銃を持って、その場を後にした。


【ラフ・コントロール 重岡、5GAP 秋本・久保田  死亡】

825 :シフクノタネ:2005/11/27(日) 23:06:22
>>774の続き


薄れかけた意識の中、様々なことが佐藤の脳裏を過ぎっていた。

芸人になった時のこと、赤峯と組んだ時のこと、オンバトに初めて出演した時のこと、解散した時のこと、黒瀬と組んだ時のこと、上京した時のこと、2度目の初オンエアの時のこと、M-1に出た時のこと、ルミネでのこと……

走馬燈のように人生が見える、とはよく聞くが、いずれも芸人としての思いでばかりだった。

(何だよ俺…かっこわりぃ…)

黒瀬はどうしているだろう。
あのまま、後ろに迫っていた敵にやられてしまっただろうか。

(にしても、「またね」ってどういう意味なんだ…?)

何か考えがあっての行動だったのかもしれないが、普段の黒瀬からは想像もつかないような結果がここにある。

――――――真意を確かめたい。

そう思った途端、佐藤の体はゆっくりと浮上していった。

826 :シフクノタネ:2005/11/27(日) 23:07:03
「もりもっちゃん……純を連れてきたっちゃ」

部屋には血の匂いが充満していた。
何となく、生臭く、よどんだ空気だ。

「純はもうちっと痩せとったと思うてたけど、肥えたわ」

太い柱の前に黒瀬を降ろし、自分のバッグの中に入っていたロープで縛り付けた。

古くて安っぽい映画のワンシーンのようだ。

10代と言うには少し老けているが、それでも黒瀬は子供っぽい顔をしている。
そして、有名なアイドルグループのリーダーに似ていると言われる割に、悪人ぽさが否めない赤峯。


「純……お前が憎い訳じゃなか」

思わず、そんな言葉が出た。
狂気に満たされたとはいえ、カケラ程残った理性が暴走をギリギリで食い止めている。

「ただ…もりもっちゃんは…俺だけじゃ嫌なんだと…」



不意に、黒瀬は目を覚ました。


827 :シフクノタネ:2005/11/27(日) 23:07:38
「いってぇ……」

うっすらと開けた目に最初に飛び込んできたのは、泣いている先輩芸人だった。
ぎょっとして目を見開くが、先輩は顔を上げなかった。

「あの…峯さんでしょ…?」

赤峯がゆっくりと顔を上げる。
『ツッコミの鬼』として後輩から恐れられていた先輩の面影は、最早なかった。

「峯さんが、俺を殴ったの?それとも別の人?」

「………」

「てっちゃん襲おうとしたの、峯さんでしょ?」

「………」

「そこの布団の人は、誰?」

「…………」

血走った目、くすんだ肌、ぼさぼさの頭が異様な雰囲気を出している。
しかし、天然か本気か、黒瀬は飲み込まれることなく自分を保っている。

「何か答えてよ!!」

「……ふっ」

赤峯は目線を下げたまま、口元を緩めた。

828 :シフクノタネ:2005/11/27(日) 23:09:03
そして、黒瀬の傍を離れ、玄関の辺りに置いてあったポリタンクを倒した。
油のすえた匂いと血の生臭い匂いが混じり、黒瀬は顔をしかめた。

「純は、もりもっちゃんと仲ようしてたよな」

「それが?」

「だったら、寂しがりのもりもっちゃんと遊んであげてや」

赤峯の背後で、ボウッと音を立て、勢いよく炎が上がった。
高く上がった火柱に、天井はいっきに舐めつくされてしまった。

「ちょっと!?」

「俺だけじゃ不足じゃけん」

「何で俺なの!?他にもおったろ!?清人とかタイキとかパタママさんとか!!」

木造の家は、すぐに炎に包まれていった。
黒瀬の耳元でも、パチパチと木の燃える音が聞こえる。

「何でかー…それは哲夫にでも聞いてや…」

「復讐のつもり!?見当違いもいいとこだろ!!」

「黙れ!!」

辺りはすっかり炎に包まれてしまった。
森本の寝ている布団にも火がつき、あっという間に見えなくなってしまった。

833 :シフクノタネ:2005/11/30(水) 22:51:06
>>828の続き

「安心せえ。生きてる人間は、焼かれる前に煙で死ねるから」

「………」

「それとも、哲夫が来るんか?こんなところで来たら、それこそ“正義の味方”やな」

「………峯さんは間違ってる」


黒瀬は冷静に赤峯を見つめた。
面食らった赤峯も、静かに見返した。

「…確かに、俺はもりもっちゃんと仲良くしてた。けど、峯さんには敵わなかった」

「俺……?」

「俺はずっと、峯さんみたいな先輩になりたかった。『鬼』なんて呼ばれても、みんなに慕われる先輩に…」

炎は更に勢いを増し、今にも2人を飲み込みそうだ。
酸素も激しく消費するため、立っている赤峯はふらついている。

834 :シフクノタネ:2005/11/30(水) 22:51:53
「福岡では峯さんに敵わなかったから…東京に行こうって思ったんだ…」

「………」

「てっちゃんにその話したら笑われたけど…俺は今でもそう思ってる」

ふらついていた赤峯は、黒瀬の傍に寄った。

「純、もう遅いんじゃ」

『ツッコミの鬼』は、大粒の涙を流していた。
身体を震わせ、嗚咽を漏らしながら…。

その瞬間。


835 :シフクノタネ:2005/11/30(水) 22:52:51
バリバリバリ!



火の回った天井が剥がれ、落ちてきた。

「!!!!」

自由が利かないまま、黒瀬は身をかがめた。
火の粉が容赦なく降りかかり、息をするのが苦しい。


ふと、赤峯を見た。
彼は、黒瀬をかばいながら、ロープを解いていた。

836 :シフクノタネ:2005/11/30(水) 22:54:57
「……もりもっちゃんの相手するんは、俺1人で十分じゃ」

「………」

「後輩に嫉妬するなんて、しょうもないわ」

「峯さん……」

赤峯は、大きく涙を拭った。
そして、『鬼』の表情になった。

「早く行かんか。哲夫が、待っとる」

そして、手を差し伸べてきた。
黒瀬はその手をがっちりと掴み、固い握手を交わした。

「峯さんの分まで、てっちゃんと頑張るから…」

その言葉を最後まで聞くことなく、赤峯は迫った炎に身を躍らせていた。
黒瀬は今にも燃え落ちそうな民家から走り出た。


しばらくして、振り向くと、まだ真っ赤な炎がチラチラと見える。
その炎に向かい、一礼すると、再び海岸の方へ走っていった。


【森本徳久(どんぴしゃ)赤峯康一(どんぴしゃ)、死亡】

862 名前: 857 1/3 2005/12/21(水) 22:57:18


アイラブ矢作?


目が覚めると体育館のような所にいた。

周りには眠っている人がいる。ほかにも起きて隣に寝ている相方を気にしていたり、泣いていたり、笑っていたり。
…小木は?
そう思って隣を見た。ちょうどだるそうに起きあがった小木がそこにいた。
思い出した、自分は殺されたんだ。…小木に。
「え、矢作?ここどこ?」
「俺もわかんねぇよ…」
そうだよ。何で生きてる。あの時死んで無かった?ならここはどこなんだよ。
「おぎやはぎのお二人ですね」
背後から声がかかった。
「え、あ…はい」




863 名前: 857 2/3 2005/12/21(水) 22:58:54

その給食着のような物を着た女性は、自分達の脈をはかり持っていたボードに何か書き込んだ。事務的な行為を済ませると、"失格"とかかれたワッペンをひとつづつ自分達に渡した。
「それを胸にはって置いてください」
「はぁ…」
横にいる小木はだまって胸につける。
状況が全く理解できない。というかできるわけがない。
「…あの、これは何なんですか」
「失格者に渡すワッペンです」
「いや、そっちじゃなくて…」
「何が起こってるかでしょ」
そう、それ。ナイス小木。
「集団催眠実験です」
「はぁ?」
「皆さんを集団催眠の実験台にさせてもらいました。今までのことは夢です。死ねば起きます」
わかんねぇよ。さすがの俺でも許容量超えるよ。死ねば起きるって変な日本語だなおい。
「これ以上はいえません」
そういって、給食着の人は立ち去った。
まだ聞きたい事は残ってたんだけど。



864 名前: 857 3/3 2005/12/21(水) 22:59:51


「…アイラブ矢作、ってなんなんだよ」
とりあえず一番の疑問を聞いた。
「え…はは…」
気まずそうに笑う。
「別に…、怒ってないから、俺のが悪いし」
俺は小木に殺されたけど、多分それは、俺を助ける為、に。あの時の自分は狂ってた。狂ってたよ。
「だから、」
今、普通でいられるのも、
「ごめん。ありがとう」
小木がいたから。


「…やはぎぃ」
「泣くなって、きめぇよぉ…」
俺も泣いてるし。本当になぁ、夢でよかったよ。
泣きやんだら、謝りにいこう。
許してくれなくても、謝らなくちゃいけない。
でも、顔をふせて泣いている相方を見ると、涙は止まるのは当分先になりそうだった。



866 名前: 心配性 2005/12/23(金) 11:49:51
>>787

「それ下ろせよ、危ないだろ」
静かに、諭すように手を差し伸べる。
「何でよ」と冷たい返事が返ってきた。
「俺はお前を守ってやるって言うとるんよ」
「そりゃあ、死にたくないと思うのは悪い事じゃないよ。でも、人殺しだけはしないでくれ」
「今更!」
山根が感情を露わにして怒鳴った。
急に態度の豹変した相方に、田中の思考は追いつかない。

確かに自分は弱い。そのうえ気も弱い。
背だけ異様にぐんぐん伸びる一方で、おまけにこの容姿の所為で周りから気持ち悪がられろくにバイトにも就けなかった。
そんな中やっと自分の存在を主張できる仕事を手に入れた。
自分によく似た相方も一緒だ。
生きてて良かった、と心から思った瞬間でもあった。


それが何故、こんな事に。
何処で歯車が狂ったんだろう。こんな事これっぽっちも望んでないのに。



867 名前: 心配性 2005/12/23(金) 11:51:05

「それ、捨てて。頼むよ!」
いつもの余裕のない喋り口調が更に酷いものになる。
「うるさい」

田中は咄嗟に、小銃を拾い上げた。
村正に気を取られたときに、山根がうっかり落としてしまったものだ。
ぎこちない手つきで銃を構える。

「…撃つ?」
「撃つよ」
酷く短い、会話とも呼べない会話。


「…い、おい、そこのでかいの」
弱々しい声が、背後から聞こえた。
気絶していた陣内が上半身だけ起こしている。
「…そいつは、お前の相方か?」
「はい」
振り返らずに、銃はしっかり手に持ったまま、答えた。
「もうそいつは諦め。お前の知ってる相方やない。…殺されるで」
その刀は…、そう言おうとした瞬間。何の前触れもなく村正が振り下ろされた。


868 名前: 心配性 2005/12/23(金) 11:52:29

「あっ!」
短い悲鳴。ぶしゅっ、という血の吹き出る音が耳に入った。
「おい、お前っ!」
陣内が上ずった声を上げる。

うめき声を上げてうずくまったのは、田中だった。
何が起こったのか分からず、目を白黒させている。腕が赤黒く染まる。
右腕の肘から先は、少し離れたところに転がっている。その手は、しっかりと銃を握っていた。

「うう、あ、あ…」
がたがたと身体が震える。現実を受け入れたくなかった。
「何よ」
山根は返り血を浴びた顔を田中に向けた。
「…あ、…」
「何って聞きゆうやろ」
「やま…、…」
「はっきり言いよ!」
また叫んだ。今度はどこか焦っている様な、悲しそうな声だった。
村正に取り憑かれ相方の腕を切り落としたことで、山根の頭の中は混乱しきっていて、パンク寸前だった。
側に置いてあったバケツを感情の赴くまま蹴り上げる。
盛大な金属音を立て、へこんだバケツはガラガラと転がっていった。中に入っていた釘や木屑が散乱した。


869 名前: 心配性 2005/12/23(金) 11:53:21

「お前…、」
ゆっくりと、田中が言った。腕の痛みや痺れが酷い。
だが、今度ははっきりした大きな声だった。
一瞬何かを躊躇った素振りを見せるが、次の瞬間、叫んだ。

「お前っ、お前もう、生きてる意味ないよ!!!」

風が止まった。その場が水を打ったように静かになった。陣内は二人を交互に見比べ、目を丸くしている。


「…――――、……」
山根の声は、次の瞬間大きく吹いた風に攫われて消えた。


873 名前: 名無しさん 2005/12/27(火) 00:38:01
先輩を待つ、ある芸人の話。
−−−−−−−−−

俺がこっちに来て、何年経ったんやろか。
いや、何年、なんてもんやないな。
何十年、何百年……何千年も経ったんかもしれんわ。
けど、今の俺には、今がいつかなんて関係ない。


「健太郎さん、まだいたんですか?」

「……うん」

「いい加減生まれ変わって下さいよ。アンタ、予定通りに“死んだ”んですから」

「……うん」

この場所は、あの世とこの世の間。
ここの端っこには門があって、それをくぐると新たな命をもらって生まれ変わる。
ただし、自殺したヤツは、予定のリミットがくるまで向こうには行けないらしい。

あの『殺し合い』の中で、自殺したヤツは随分いたようやな。
ストリークさんやママレンジさん、ババリアもおった。
次課長の井上さん、後藤秀樹さんは結構最近までおったような気がする。

けど、あの人はまだ来ない。
俺を殺した、あの人。

「復讐でもする気なんですか?」

「……まさか」

874 名前: 名無しさん 2005/12/27(火) 00:38:47
そりゃ、俺かて生きたかった。
あの人を尊敬してたし、信じてた。
裏切られた時は何とも言えない気分やったけど……それでも尊敬する先輩。
俺を救ってくれた人やから。

井上さんも言うてた。

『俺は先に行くけど、あいつのこと信じたって。ほんで、また一緒にゲーセン行こうな』


井上さんがあの人の心を開いた。
『サイボーグ』なんて呼ばれてたあの人は、次課長の卒業イベントで号泣してた。
井上さんがしたように、あの人は俺の心を開いた。
楽屋の隅で、話の輪に入れず、孤独だった俺。
同じ歳やのに、かなりできた人間。

今度は、俺があの人に恩を返す。
返さな、生き返る意味がない。


「シャモ兄、早うこっちにきてな」



その声は、微かな風となり、地獄まで届いた。

882 名前: 446 2005/12/29(木) 02:25:15
自分以上に大事なものなんてあれへんよ。
他人を庇って死ぬなんていうのは綺麗事であって、本当にそんな事ができるならそいつは優しさとか通り越してただの馬鹿や。
俺は生き残るって決めた。
自分の為に。
でもな、俺かて人殺すのに躊躇いがない訳ちゃうから。
最初にこの中で一番、俺が殺すのに躊躇いそうな奴を殺すことにしたんよ。
……せやから、死んでくれや。




そう言って、山本は樅野の頭に銃を向けている。
「…山本らしいわ」
そう、自嘲気味に言う樅野の声は震えていた。
樅野の武器は遠隔操作可能なプラスチック爆弾。抵抗しようもない。
少しでも動けば鉛玉が体を貫くだろう。
樅野は策を講じるように銃口を睨み付けていたが、諦めてふっ、とため息を吐いた。
「……俺の分まで頑張らんかったら承知せえへんからな」
「……うん、分かった」
「……はよう、楽にして」
ぐ、と引き金に力が籠もる。
それを引こうとした瞬間、樅野が山本に飛び掛かった。
反射的に引き金を引く。

パァン!

鳴った銃声は2発だった。

883 名前: 446 2005/12/29(木) 02:26:26
湿った地面に叩きつけられた山本は混乱していた。
樅野が抵抗したのか?
もう一発の銃声はどこから?
腹の上には樅野がのしかかっている。
状況を把握しようと起き上がると再び銃声が鳴った。
パァン!

弾は山本の頬を掠めて地面にめり込んだ。
掠めた箇所がじわじわと熱くなる。
「樅野さん!」
弾の飛んできた方向から聞き慣れた声がした。
「……藤田?」
そこには銃を構えた藤田が立っていた。

888 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:00:05

―――今、俺は何を言った?

山根のあの顔。きっととても酷いことを言ってしまったに違いない。
ああ、もう駄目だ。もう終わりだ。
俺たちの関係は、完全に壊れてしまった。
片腕のない状態のまま、ゆっくりと立ち上がると、赤黒い血がどろりと溢れて地面に染みこんだ。
失血気味なのか、少し目眩がした。何とか体勢を立て直し、踏みとどまる。

風が吹くとすっぱりと切り落とされた部分がひやりとした。痛みはもう感じなかった。
銃を堅く握っている右腕を拾い上げ、冷たくなった指を一本ずつ引きはがしていく。
骨と皮しかないと思うほどの、ごつくて骨張った長い指に大きな掌。
自分の手はこんなにも大きかったのか。
なるほど、こりゃ気持ち悪がられるのも無理はないか。と他人事のように思った。

残った左手で再び銃を構える。
山根は相変わらず村正を握っていたが、その様子は先程と一変し、なんとも情けない顔になっていた。


889 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:01:16

「生きてる意味がない」という完全な不意打ちの言葉に山根の狂気は一気にはれていった。

「さっき、「今更」って言ったよな…お前が、やったのか?テツトモさんも、中島さんも」
そうだよ、と震えた声で山根が返事した。
「だましたな」
「やって、俺もう、お前以外の人のこと信じれんかったのよ」
段々と困ったような表情になっていく。
まるでゲームが始まった当初に戻ったようだ。
なんとも嬉しいことだった。たった一人の相方は、仲の良い芸人でも、先輩でも、他の誰でもなく相方である自分を選んだのだ。
もしかして彼にとって自分は特別な存在なんじゃないかと、そう思えた。


「ありがとう、山根。でも遅いんよ、もう」
対照的に田中はいつもの調子で。
腕を触る。切り落とされた部分は血の気が完全に失せ熱を持ち、変な紫色に変化しつつあった。


890 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:02:36

「…俺は、もうお前を信じない」
はっ、と山根の目が見開かれた。
かまわずに銃を向ける。地獄で詫びろ、殺人者め。

「…そーか…」
薄く笑いを浮かべて、山根は項垂れた。

「あっちで、みんなに謝れよ…」
……あれ?何かおかしいぞ。
さっきと形勢が逆転している。

山根じゃなくて、おかしくなったのは俺?
どうかしているのは、俺の方?

「な、何…?急にどうしたんお前ら…!」
陣内は動けずに、固まったまま二人の様子を見ていた。
今なら逃げられる。だがそんな思考とは裏腹に、体が動かなかった。
まるでこの二人の最後をを見届ける為のように。



891 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:04:27

「…分かった?山根」
コレが、夢を捨てた人間の末路。希望を失った人間の行く末の光景なんだよ。

引き金に指を掛けた。山根は再び元の形相に戻り、刀を構え直した。
ただ一人信じた者からあれだけ酷い言葉を浴びせられたのだ。
彼の頭の中はみるみるうちに悲しみから殺意へと変化していった。

頭の中で僅かに残った理性と本能が戦っている。
撃つな。
撃て。
撃つな。
撃て。
撃つな!

―――撃て!
「「死ねっ!」」

お互いにそう叫んだ瞬間、山根は村正に引っ張られるように田中の腹に刀を突き刺した。
全てを捨てた人間だけが持つ強い力。
刀の刃は内臓を突き破り背中から紅い刃が飛び出した。完全な串刺し状態だった。
「うっ、ぐ…、」
と、くぐもった声を漏らした。一瞬、息が止まった。唇の間から唾と混じって血が流れ落ちてくる。


892 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:06:03

喉の奥から逆流してくる血液に耐えられず吹き出すと、それが山根の顔にかかった。
彼の目から赤い滴が顔を伝って地面に落ちていった。
もしかしたらそれは、涙だったのかも知れない。
お互いの震えるような吐息の音しか聞こえない。一秒一秒がとんでもなく長く感じた。

力を振り絞って山根の腹を蹴ると、二、三歩後退した。それと一緒に刀もずるりと抜ける。
ごほっ、と咳をするとまた血の固まりが出てきた。

かまわずに、銃を構える。今度は、絶対だ。
無防備なその体に向け、戸惑うことなく引き金を引いた。


ドン。ドン。ドンッ―――。

山根は糸が切れた人形のようにゆっくりと倒れた。
目を閉じたままぴくりとも動かない。既に事切れている。
即死だった。
きっと彼は自分を恨みながら死んでいったんだろう。

山根は自分に隠れて、嘘をついて何人も人を殺した。
だが、最終的に悪者になったのは自分だった。
酷い言葉を投げつけ、撃ち殺した。
今思えばそんなことをしなくとも、もしかしたら、止められたのかもしれない。
相方が人間不信に陥って心を閉ざしてしまうのを。



893 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:09:21

銃を撃った衝撃で、傷口がますます開き、止めどなく血が流れ出てくる。
突然、視界が反転し体全体に打ち付けられたような大きな衝撃が走った。
倒れたと気付くのに少し時間がかかった。
「………、…」

声も出ない。目も見えない。もう死を待つだけの体。
痛い、怖い、寒い、悲しい…。

何をやっても俺には嫌なことばかりがつきまとう。
目を閉じた。口の中に残っている血の味しか感じない。


……………眠い。


「おい、……?」
やっと動けるようになった陣内が、フラフラと歩み寄ってきた。

血だらけになった二つの死体を見る。

共通している所は、一人は心臓付近と目玉に計4つの穴を開け、もう一人は右腕が無く腸がはみ出し、お互いに惨い死に様だった事と。
二人とも泣いていたことだった。






894 名前: 心配性 2005/12/30(金) 11:10:39

ふと、山根の手からガラン、と所有者を失った村正が転がり落ちた。
「こんなもんの所為で、こいつらも、川島も、みんなが…!」
陣内は立ち上がり村正を蹴り飛ばした。
村正はカラカラと地面を回りながら5メートルほど飛ばされた。

「……また死に損なったわ…」
生まれ持ってか、自らの『運の良さ』を恨みながらぽつりとそう呟き、陣内は立ったまま暫く動かなかったが。

―――― 一時間後、その場から彼の姿は村正ごと消えていた。



森の中の小さな広場に、二人の魂を攫っていくかのように緩やかな風が吹いていった。
二人の目から、再び涙が流れることは。

ついに無かった。


【田中卓志・山根良顕(アンガールズ) 死亡】
【陣内智則、再び行方不明。村正所持?】


904 名前: 名無しさん 2005/12/31(土) 21:16:35
>>882-883の続き

「…山本さん、樅野さんから離れて下さい。」
銃を構えたまま、静かに藤田が言った。声が震えている。
腹の上で倒れたままの樅野を見て、山本はようやく状況を理解した。
山本が樅野に向けて撃った弾。
藤田が山本に向けて撃った弾。
2発の弾は―――両方とも樅野に命中していた。
肩と鎖骨辺りから血を流す樅野はひゅう、と擦れた呼吸を繰り返している。
「……離れて下さい」
「……お前、樅野さんをどうする気やねん」
「……守ります」
「何から」
「今は…あなたから」
山本は藤田の目をじ、と見据えてからゆっくり樅野から離れた。


905 名前: 名無しさん 2005/12/31(土) 21:18:11
藤田が樅野のもとへ駆け寄り、肩を抱くように泣き崩れた。
最も尊敬する先輩。その人が死の淵に立たされている。
その一因は他でもない…藤田自身だ。
「…何で!何で山本さんを庇ったんですか!?俺は樅野さんを撃つ気なんてなかったのに……!」

―――庇った…。そうだ、どうして。
自分を殺そうとした、相手を?

「樅野さ…」
「……動かないで下さい!」疑問を投げ掛けようとした山本に、藤田が素早く銃を向けた。
「……何で、どうして樅野さんを殺そうとしたんですか!」
許さない、と呟いて涙を拭い、銃を構え直す。
悲愴と怒りに満ちた目で山本を睨み付けた。
「……ふじ、た……」
藤田のジーンズにしがみ付くようにして、樅野が起き上がった。
「山本……殺す、ん…?」
ひゅうひゅうと苦しげに息を継ぎながら呟く。
目は焦点が合っていないように虚ろで、傷口から流れる血液はシャツをぐっしょりと赤く染め上げている。

906 名前: 名無しさん 2005/12/31(土) 21:18:59
……きっともう、樅野は助からない。
「……はい」
「そ…か、藤田……」

ごめんな。

そう言うと樅野はとても瀕死の人間とは思えない力で、藤田を思い切り突き飛ばした。
山本のいる方向とは反対側へ。
「樅野、さん……?何を…」
驚きのあまり軽い放心状態の藤田に、樅野は言った。
「山本、は…殺させへん……」
ごめんな、もう一回呟いて樅野は手に持っていたスイッチを押した。
耳を劈くような爆音が響く。
樅野が藤田のジーンズに付けたプラスチック爆弾。
それが弾けた音だった。



【トータルテンボス藤田死亡】


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