76 :書いていいですか :02/04/04 20:42
>>32
「俺は」
松口が口を開く。
「俺は、竹若さんの気持ち無駄にせん意味でも、今田さんと合流したい」
「じゃあ別行動や」
陣内がいつもの、柔らかい口調で言う。
「あかん、それは危険や、陣内死んでまうで」
大上が言うが、陣内は考えを変えなかった。
「俺、ずっと思っとったんや。生きなあかんのは分かってる、コバのためにも、
竹若さんの為にも。けどな、みんな、生きなアカンやんか、って」
二人の目を見て、自らが頷き、続ける。
「もし死んでても、ええ先輩を、簡単に弔うことぐらいはしたいから」
「川島は、どうすんねん」
松口の怪訝そうな表情に陣内は答える。
「それは今田さんとこ行っても一緒やわ。危険はつきもんや。
だから、そのトランシーバーを、俺に渡すってどうや」
「竹若さんの状況見てから、今田さんと合流してる俺らんとこ来るってことか」
陣内は大上に向かって頷いた。
77 :書いていいですか :02/04/04 20:43
>>76
「こうなったら、賭けしかないやん?」
陣内は立ちあがる。
「武器は?」
止められないと感じた松口は、陣内に聞く。
「無いわ。どうしよもないな、俺」
「落ちとったもんやけど…無いよりマシやろ」
松口は陣内にバタフライナイフを渡す。
それから大上はトランシーバーを陣内に持たせた。
「じゃあな。あ、言うとこ、この分裂、後悔せんこと!な?」
最後になるかもしれない同期で頑張って来た二人に向けて言う。
その言葉は、お笑い界に来たこと自体を後悔するな、という風に聞こえた。
【 ハリガネロック・陣内智則 分離 】
78 :書いていいですか :02/04/04 20:44
>>77
「もう、会えん気がするなぁ」
松口の囁くような声を、大上は敢えて無視をする。
「お前、ほんまはヘタレやってんな…なんか立場違うくて笑えるわ」
大上のいつもの調子の声。ここにいつもなら松口が、アホか!とつっこむはずなんだが。
「大上おってよかった」
松口の声は今にも消え入りそうで。
「大上もケンコバもおらんかったら、俺、自殺しとった」
相方の意外な一面を見せ付けられる大上。
「大上、死なんとってな、絶対」
自分よりは背が低くても決して小柄じゃない松口が、小さく見えた。
「もう誰も死なへん…。…行くで、はよ」
確信など無い。けど、前に進むしかなかった。
79 :書いていいですか :02/04/04 20:44
>>78
俺、こんなに強い人間やったんかなぁ…
陣内は足音に気配りながら、元来た道を戻った。
はっきり言って正確な方向はわからないが、カンというものを信じた。
ほんまに、俺、これでええんかなぁ…
―なぁ、コバ?
がむしゃらに走って来た道なので、景色に見覚えがない。
何処に川島が潜んでいるかもわからない。竹若が生きてるのかさえ。
コンビを解散してから、いつも一人でやってきた。寂しいときもあった。
ただただ、竹若が生きてることだけを願う。
今の陣内にはそれぐらいしか出来なかった。
寂しいから、こんなことしてるんかもしれへん。
希望を捨てたくないねん、だから、ええやんな?コバ―
考えないようにしても、いくらアタマの中で切り替えても。
何度もコバを頼りにしてしまう。
陣内は泣きながら歩いた。
80 :書いていいですか :02/04/04 20:46
前スレの元ジャリズム等と、竹若の続き。
「あかん、笑えん状況になってまっせ、あっち…」
千原Jrは元ジャリズムの二人に目配せした。
Jrの真剣な眼差しに、少し緊張してその先を見た。
「あいつ、誰?」
渡辺が顔をしかめた。
「覚えてへんのか?M-1出てたやん…麒麟の、川島や」
元相方の山下が答えた。
「アイツ、やばい刀もっとるなぁ…」
その川島の影から見えたのは、変なパーマのかかった人影。
四つん這いになって周りは血だらけになっていた。
「…竹若!」
Jrは何も考えずに飛び出していた。
飛び出してもどうなるわけでもないのに、ただ同期の竹若を助けたかった。
何度も一緒に舞台をやった、大好きな友達で。
それはジャリズムにとっても同じだった。
81 :書いていいですか :02/04/04 20:47
>>80
「ボケ!来んな!」
竹若は有りっ丈の力をだして、二人に叫ぶ。
(山下は一人、しげみの中に隠れていた…)
「お前武器も無しか?何でこんな無謀なことするんじゃ!」
Jrは、移動中に拾ったマシンガンを肩にかけていた。
誰のものなのか知らないが、おそらく、もう所有者はこの世に居ないだろう。
川島は先輩であろうがなんだろうが知ったことではない。
さっきまでなら少しは理性を保っていたが。
村正を持ってから更に、自覚も記憶も完全に飛んでいた。
一緒にテレビに出た先輩であろうが、この世界に入る前からテレビで見ていて
憧れていた人だろうが、相方だろうが、関係無かった。
言葉を一言も発さずに、川島は村正を一振りした。
びゅっ、と縄跳びの時のように軽快な音が、竹若の耳元で聞こえた。
同時に何処にそんな血があったのだろうか、というぐらいの背中からの出血。
82 :書いていいですか :02/04/04 20:47
>>81
「逃げ…」
うつろな目をして竹若が言う。
川島は、苦しそうに喋る竹若の顔を見て、笑みを浮かべていた。
渡辺がJrの横で言った。
「俺がやるわ、貸して下さい。竹若さん助けなあかん」
Jrは震える手で、渡辺にマシンガンを渡す。
別に渡辺だって怖いわけじゃない。けど、やるしかなかった。
映画なんかで強盗犯がよく使ってるやつだ。
構えもなんとなくそれでいいはずで。
ただ、狙いが定まらなかった。
距離があったし、第一、竹若に当たってしまったら意味が無い。
渡辺の引きがねを引く指が震える。
83 :書いていいですか :02/04/04 20:48
>>82
「よッ…」
川島が何度も何度も切りつけた体を竹若は起こした。
一発で殺さんかったのが運のツキやな、この極サド男。
竹若は思った瞬間に川島に前から抱きついた。
最後の力を振り絞り、川島の動きを制限するように。
「お前!」
川島が怒り狂い、何度も腕や背中を切りつける。
痛みなんかさっきからずっと一緒だ。痛い、我慢出来ないぐらいに。
それでも離さなかった。川島が消えればそれでいいはずなのだ。
自分にはさっきから消える覚悟は出来ているのだから―。
「撃て、渡辺!」
84 :書いていいですか :02/04/04 20:49
>>83
渡辺は一瞬の、いや、相当の躊躇いがあった。
同じ舞台、何度も一緒に笑いあった、先輩。尊敬出来る友達。
昔っからバッファロー吾郎が好きやった。竹若さんが好きやった。
毎日のように家に行ってアホな話をしたこともあった。
自分が東京に行けたのも、構成作家が出来たのも全部全部。
もしかしたら竹若さんのお陰かもしれへんのに。
俺の手で命を絶ってしまってええんか?
しかもこんな形で。俺、直視出来るんか?死んだ竹若さんの姿―。
…けど、如何にも竹若さんっぽくない?
ぱらららららららッ。
85 :書いていいですか :02/04/04 20:49
>>84
竹若の体から血しぶきが噴く。
何度も何度も、体の至る所から。
川島は防弾チョッキのお陰で体には外傷が無いらしく。
それでも竹若の体と一緒にゆっくりと、崩れて行く。
竹若を下にした体勢で二人共動かなかった。
「これで川島死んでへんかったら…俺…」
渡辺は小さな声で言った。
川島の様子を見る。
動きは無い。
「竹若さん、有難う―」
渡辺は一歩一歩確実に、竹若と川島に近づいていった。
Jrはすくむ足を未だ押さえていた。
俺ってヘタレやな、渡辺すごいわ―
そう思った視線の先の渡辺が。
気絶しているのか、もう死んだのかわからない川島の首を一生懸命に締め上げていた。
竹若一人の死が、渡辺をここまでに怒らせた。
さっきまで笑顔で冗談を言ったりしていたのに、その時の顔が懐かしくさえ思う。
Jrは思っていた。
温厚で笑顔の耐えない渡辺の顔が笑顔じゃなくなったとき、
このゲームがどれだけ怖いか思い知らされるだろう、と。
まさに今その時で。
「渡辺、さん…?」
86 :書いていいですか :02/04/04 20:50
>>85 ダラダラ長くてスマソ…
いつもの無造作ヘアーはどうしてん、とつっこみたくなるぐらいの
このゲームに至極似つかわしい姿で、陣内がJrの目に飛び込んできた。
「渡辺さん…」
何度も声をかける。
それでも、渡辺は川島の首を絞め続けた。
横の竹若の死体が何より、その行動の原因を証明していた。
「陣内、ほっとけ」
そう声をかけられて、初めて、Jrの存在を知った。
陣内が一番仲良くしていた先輩のうちの一人。
東京に千原が行ったときに、迎えに来て下さいと約束した人。
もう叶わないかもしれないけど、そのことを考えて一生懸命大阪で頑張った。
千原の一人は死んでしまったが、そうだ、Jrはまだゲームの最中だったのだ。
「弔いましょうよ、ジュニアさん、渡辺さん…山下さん…?」
その言葉が言い終わるか否か、川島の村正の手が動いた。
渡辺の首は勢い良く宙に飛び、噴水のような血しぶきが上がった。
87 :書いていいですか :02/04/04 20:50
>>86
その血が陣内の顔や服にかかる。
陣内にとってはもう、見なれた、血の色で。
「陣内!」
Jrは川島に向かって突進した。
わざと切られに行くように。
「これ持って行け!松本さんに会うんや!はよ!」
Jrが陣内に向かって指輪を投げる。
どういう意味かはわからないが、ただ、わかるのは。
また、自分の命を少しでも長くしてくれる先輩が目の前で死のうとしていること。
「いッ、一緒に行きましょうよ!」
びゅッ。
Jrの胸から渡辺の時のように血しぶきがあがる。
公園にだって、動物園にだって、二つも噴水が並んでる場所は無いのに。
足元に、まだ暖かい渡辺の首が転がってくる。
渡辺には似つかわしくない鬼のような形相で。
その横の竹若の死体の腰、拳銃がささっていた。
あと数秒早く気付いていれば良かったのに。
陣内は咄嗟にその拳銃を抜き取る。
川島は苦しむJrの姿を見て低い声で笑っていた。
今しかない。
88 :書いていいですか :02/04/04 20:51
>>87
パンッ。
距離が近かった。射的が下手な者でも簡単に『狙える』距離だった。
川島の額が爆発したようになり、中身が倒れた千原Jrの顔に降りかかる。
長身の川島の体がゆっくりと前に倒れた。下敷きになったJrが、うっとうめく。
「やッ、ってもうた…」
陣内の撃った拳銃から、煙は一筋上がる。
「じッ…」
川島の細い体の下、Jrが虫の息で、それでも必死に言葉を発する。
「ジュニアさん!俺、もっとはよ気付いたら―」
陣内はかけより、また泣き顔になる。
何度、知った人の、大好きな仲間の死に直面しただろうか?
「ええねん、まぁお前が生きてるゆーのも奇跡やし…もうちょい夢見さしたる」
Jrはふっと笑う。
いつもならもっと大きな声で、がはは、と笑うはずなのに。
いつもなら自分も、もっとつっこむはずなのに。
いつもなら、Jrが死にかけている瞬間なんかに直面するはずないのに。
89 :書いていいですか :02/04/04 20:51
>>88
「俺、コバも、竹若さんも、みんな、俺のために死んで…」
「よ、かった、な。ピンのく、せに、お、お前のこと、思ってたやつ、
結構おった、んやで。へ、ヘタレげいに、んの、くせに」
「もう喋らんとって…もうええです、もう、もう…」
「む、迎えに行けんかっ、て、すまん、な。もう、つい、て来、んなよ」
Jrは大きな深呼吸をし、呼吸をしなくなった。
陣内は周りを見渡す。
山下は何処かに姿を消していた。
首の無い渡辺、脳みそと血が入り混じった頭の川島、体がボロボロになった竹若。
全員吉本。全員同じ舞台で騒いだり笑ったりした仲間。
今までピンをやってきても感じたことない空虚な感じ。
さっきまで、自分がゲームに参加しなくてはいけないのが芸人だったから、
だから芸人なんかになるんじゃなかった、と思っていた。
しかし、今は、好きだった仲間が狂い、死にすぎていて。
その状況を見たくなかったから、芸人なんかになるんじゃなかった、と思った。
90 :書いていいですか :02/04/04 20:52
>>89
握ったままの竹若の拳銃。陣内はモデルガンなんかにも興味がなかったし、
ホンモノなんか勿論初めて握ったし、さっき初めて使った。
コバのときと同じ場所に、自分の頭に拳銃を向ける。
ハリガネの二人なら大丈夫だろう。
ごめん。
陣内は引き金をさっきのように、ぐっと引いた。
カチッ。
何や、死ぬんって意外に痛く無いんやなぁ。
ゆっくりと目を開ける。
まだ目の前には、さっきの惨劇の場所が広がる。
心臓に手をあてる。いつも通り、どくどく、波打っていた。
死んでない?何でや?
何度も引き金を引く。カチ。カチ。と乾いた音。
弾切れ?何でや?
カチ。カチ。
みんなは死んでるのに、何で?
カチ。
何で俺だけ死なれへんねん…!!
【 バッファロー吾郎・竹若、麒麟・川島、千原兄弟・千原Jr 死亡 】
91 :$ :02/04/05 13:16
>> 前スレフォークダンスDE成子坂と坂コロ松丘の話から
桶田と離れてどれくらい経っただろう。
その間に松丘も散歩と言って何処かへ行ってしまった。
しかし不思議とこの辺りで殺し合いは起きていない。
更に禁区エリアにもなっていない。
異様に普通なこの場所に聞こえてくる銃声が
このゲームの進行を教えている。
俺がしてたことと言えば放送を細かくチェックし、二人の帰りを待つだけ。
「どないしたらええねん・・・」
寂しさや不安、情けなさを感じ溜息をこぼした。
そのとき、ふと人の気配を感じた。
ゆっくり振り返ると
いつの間にか、小さな木の根元に松丘が座っていた。
「松丘、おま・・いつからそこにおった!?」
村田は松丘がふざけているのかと思った。
「・・・あぁ・・・・」
そんな村田に松丘は視線だけをよこして力なく答えた。
92 :$ :02/04/05 13:20
>>91
魂が抜けた
っちゅう表現がぴったりやな。
何かあったんか
そう聞こうとしたとき、
松丘の首に赤くはっきりとした手の跡があるのに気付いた。
「お前、どないしたんや、その首!?」
松丘は今度は目を合わせようともしなかった。
松丘の返答の代わりに放送が流れる。
多くの死亡者の中にあった名前
「林・・・」
93 :$ :02/04/05 13:22
>>92
村田は言葉が出なかった。
「なんやぁ、結局ダメやったんかい」
松丘が代わりに呟き、その目からは小さな涙がこぼれた。
何のことだかわからないが
二人の間に何かがあったことくらいは察しがつく。
そんな松丘に村田は何も言ってあげられなかった。
何を言ってあげればいいかわからなかった。
桶田だったら気の利いたことを言ってやれるんだろうな。
このゲームが始まってから自分が桶田に頼り切っていたことを
改めて痛感した。
「ま、気付いたん初めてちゃうけど・・」
あの時もそうだった。
自分にとって桶田の存在はなくてはならないモノだった
いなくなって初めてそれがわかった。
94 :$ :02/04/05 13:23
>>93
もう戻ってこないんじゃないか
そんな思いすらよぎる。
気が付くと座り込み、頭を抱えこんでいた。
「ホンマに・・・どないしたらええ・・?」
「どうした?坊主。株でも暴落したか?」
背後から懐かしい台詞が聞こえた。
「桶田!!」
(続く)
【 フォークダンスDE成子坂、坂道コロンブス松丘 再び合体 】
95 :三つ目が通る :02/04/05 23:00
《スレ移動が終わってからパート3の方にUPした内容の続きです
本スレとは少し時差があります。》
福田がたむらにかけよる。
多田は藪の中から福田が去るのをじっと待っていた。
福田がすさまじい勢いで走り去ったのを見届けると
小屋に行き、入る限りすべての食料をリュックに詰めた。
このまま、この小屋で待っていたらハリガネロックの2人が来るのは間違いない。
奇襲攻撃をして殺すと言う手もある。
僕は生き残りたい。相手は2人。さあ、どうする・・・!?
悩んでいる暇はない。逃げるなら今や。
正直、知り合いころすんは気が引けるし。
多田は小屋をあとにした。
道を歩きながら多田はさっき自分がたむらを殺したことについて考えた。
自分は生き残りたい。だから殺した。何が悪い。
そう自分を正当化してみても知り合いを殺したという事に対して
良心が傷付いていることは変えれなかった。
それでも生なあかんやろ。もうたむらさんまで殺してしもてるねんし。
96 :三つ目が通る :02/04/05 23:08
道はどんどんせまくなりまるでけもの道のようだった。
いや、けもの道だったのだろう。
道は崖にぶつかり行き止まりになっていた。
崖といっても「急な坂」程度の崖で
斜面は赤土がむき出しになっている。崖崩れした後のようだ。
もがき苦しみ、やっとの事で崖を登りきった時、
多田は自分の目を疑った。
そこは先ほどまで自分が居た場所・つまり小屋のすぐ近くだったのだ。
どうやら自分は小屋の周りを一周してきただけのようだ。
(これはひょっとして、たむらさんを供養しろってことかな)
たむらを供養する事で自分の心が少しでも楽になるのなら。
そう思いたむらの遺体のあるところまで行くと
ハリガネロックの大上と2人の男が倒れていた。
2人の男は完全に死んでいたが大上はまだ生きていた。
たむらの遺体はすでに埋葬されていたので
代わりに2人の男の埋葬をしてやることにした。
埋めおわり腰を上げた時、松口が自分に銃口を向けている事に気付いた。
97 :三つ目が通る :02/04/05 23:20
松口は竹内力ばりの声で「どけ!」と言った。
その目は常人のモノではなく、にらまれただけで氷か石になりそうだ。
普段から人とは違うオーラ、威圧感を持っている松口だが、
今の松口は普段の比ではない。
多田はしばらく松口の威圧感に圧倒されていたが
松口が「どけ」といったのをやっと理解すると
リュックを拾い、転がるように走り出した。
ところが食料でパンパンにふくらんだ多田のリュックを見た松口が
「待て」と一言。
多田の体は凍りついた。
「そのリュック、何はいってんねん?」
「た・たべものとその辺で拾った武器です!」
多田は高校生にかつ上げにあっている小学生のように答えた。
「置いていけ」
「え?」
「置いて行け言うとるねん」
「は・はい」
多田はリュックを投げると風のようにその場から去って行った。
98 :三つ目が通る :02/04/05 23:22
多田のカバンの中には大量の食料と銃2丁、そしてトランシーバーが入っているのだ。
もう一つのトランシーバーは多田のポケットに入っていた。
多田は全力疾走で森を駆けた。
心臓が高く、早くリズムを刻む。
こわい・・・あんなこわいもんはじめて見た。
森を抜けて河原に出た。多田は立ち止まった。
風が頬をさすり熱をうばっていく。
落ちつけば落ちつくほど、松口への恐怖が肥大して行く。
松口は本物のスナイパーのようだ。と思った。
99 :三つ目が通る :02/04/06 21:15
>>98
多田の呼吸がやっと落ち着いてきた。
「多田?多田やろ?」
多田が振り向くとそこには今田が立っていた。
「今田さん・・・」
「自分、今、もっそ(ものすごい)勢いで俺の前通っていったやろ。
ほんで、俺、これは絶対後から誰か追って来るわー思て
ずっと隠れとったんや。せやのに誰もけえへんがな。
なんで走っとってん?」
「松口さんから逃げて」
「松口って・・・ハリガネロック?なんかあったんかいな?」
「大上さんと2人の男が倒れてて、
2人の男が死んでたから埋めてあげてたら
松口さんにピストル向けられて・・・」
「松口は大上を倒したんお前や思てんな。」
「え!?そうですか?」
「何驚いてるねん、そうに決まってるやろ。
「松口さんの雰囲気、尋常じゃなかったから。」
「そりゃ、相方殺されかけてたら誰でもおかしなるって。」
本当にそうだろうか・・・。
多田は今田が言ってるようには思えなかった。
100 :三つ目が通る :02/04/06 21:39
>>99
「いや、それにしてもお前、元気そうで良かったわ。
俺、ちょっとはお前の事心配しててんぞ。
昔、今田に似てるやつが大阪に居るって聞いた時から気にかけとったし。」
「僕に会うたび、その話するのやめてくださいよ。
今は反省してますから。」
「別に怒ってへんって。お前が俺の名を語ってナンパしてたことなんて
全然気にしてないから。」
「めっちゃ気にしてるやないですか。その言い方。」
「本まに気にしてないって。
なんか他人って気がせんのよな、多田は」
「ほんまですか〜?」
今田と話をしているとどんどん落ちついてくる。
今は笑う余裕まで出てきた。
101 :三つ目が通る :02/04/06 21:41
>>100
「今田さんはこれからどうするんですか?」
「決めてへんけど・・・お前は?」
「僕、戦います。生き残るために。
でも近場の目的は山田と2チョケンの2人の遺体を捜したいです。」
「そおか。」
今田の顔が一瞬くもる。
「武器は?持ってるんか?」
「いえ。さっき松口さんに全部取られちゃいました。」
「これ(長槍)持っていけ。手ぶらよりかはましやろ。」
「今田さんは?」
「俺はエエんや。別に。
生きることにも死ぬことにも未練ないからな。」
多田はポケットの中にトランシーバーが入っていることを思い出した。
「じゃあ、これ、使ってください。」
「これは?僕もようわからんのですけど、なんかの役に立つかもしれんでしょ。
その槍と交換ってことで。」
「じゃあ、元気でな」
「今田さんこそ元気で」
そう言って2人は別れた。
112 名前:新参者@お腹いっぱい。 :02/04/16 23:39
>>58の続き
ユリオカと別れてから、長井はまた歩いていた。
この『ゲーム』に参加させられてから、ろくに
休んでいない…(田中達と合流した時は休息をとった
ものの、やはりこんな状況では体が休まるという
感覚はなかった)。食糧は、もう少しだけあるが…。
もうどれくらいの時間が過ぎただろう。たくさんの
犠牲者が出ている。もう、開始時から半分ほどには
減ってしまっているだろう。
先ほどのユリオカのように、信じられる人間に遭遇
する可能性は、きっと低い。もし今見付かってしまったら、
容赦なく殺意を向けられてしまうだろう…と長井は思った。
しかし、長井は先ほどの自分の選択は間違っていなかったと
思っていた。ユリオカに迷惑をかけたくない。その気持ちから
出たウソの言葉を、彼は後悔していなかった。
(しょうがねえよな、あの場合は)
長井は少しだけ笑った。苦笑い、という表現が合っていた
だろうか。
これから彼は、孤独とも戦っていく…。
118 名前:ヒマナスターズ@久々 :02/04/24 02:29
>>69の続き
「あ、あ、あ…」
突然、小林が頭を抱えて苦しみ出した。
後頭部を押えつける筋張った両手には不自然なほど力が込められ、
薄く血管が浮き出ている。
大きな体が縮こまらせ、カタカタと震えている様子は
明らかに尋常ではなく、三人を驚愕させた。
「な、何?どうしたんだよ!?」
「…やだ…やだ……」
慌てた今立が肩を揺らしたが、小林は頭を左右に振るばかりで
何も答えようとはしない。
誰一人として事態を理解することはできなかった。
三人はなすすべもなく、小林の様子を茫然と眺めていた。
小林は迫り来る記憶の洪水を必死にせき止めようとしていた。
しかし、それはもはや歯止めの利かない程のすさまじい勢いで
怒涛のように脳の中へと流れ込んできた。
それは得体の知れない恐怖であり、
小林が目を背けていた真実に繋がるものであった。
119 名前:ヒマナスターズ :02/04/24 02:31
>118の続き
──しなやかな白い手が蛇口を捻り、半分に切られたキャベツを軽く洗うと
側にあった包丁を手に取る。
母親は視線を手元に向けたまま喋りかけている。
『それ、いつだったかお父さんにも聞いてなかった?』
『うん』
手際よく刻まれていくキャベツの欠片を眺めながら問いに答えた。
さくさくという小気味良い音に、自分の高い声が重なる。
『おとうさんはね、かみさまのところへいくんだよっていってた。
でもよくわかんなかったんだもん』
包丁の動きが止まる。
母親がくすっと笑い、こちらを向く。
裏読みの仕様もない柔らかく優しい微笑は、それとは似つかわしくない程の強い力で
今から放つ言葉が揺るぎない事実であることを裏付けている。
『人は死ぬとね……』
嫌だ、
────その先は聞きたくない!!!
120 名前:ヒマナスターズ :02/04/24 02:32
>119の続き
彼方で聞こえる鶫のさえずり。
救急車のサイレン。
いのちをあたうる 主よ、とどまりて、
われらのこころを とこ宮となし、
あしたにゆうべに いのりをささげ、
たたえのうたをば うたわせたまえ。
子供たちがはしゃぎまわる声。
通り過ぎる車のエンジン音。
……この事故で他に3人が重軽傷を負い、病院で手当てを受けています。
警察ではスピードの出し過ぎが原因とみて……
千切りにされたキャベツ。
蛇口から滴り落ちる水。
『人は死ぬとね、眠ったまま二度と起きなくなるの。』
勢いを増す湯気。
吹き零れる泡。
消え入るコンロの火。
悪寒。
121 名前:ヒマナスターズ :02/04/24 02:33
>120の続き
…それからずっと、夜中に目を覚ます度
人の寝顔に死を想うようになった。
父親。母親。弟。
いつかは分からない、しかし確実に訪れる
逃れられない運命を感じ、その度に胸が潰れそうになる感覚を覚えた。
”人はこうして死んでいくんだ”
巨大な不安に襲われ、寝息を立てる頬に手を当てては
暖かい体温を確かめて、ほっと息をついていた。
「まだ生きている」
そう確認できたことが
涙が出るほど嬉しかった。…
だけど一度だけ、
幾度頬を触っても氷のような温度を保ったままだったことがあった。
記憶がぼやけてはいるけれど、夢ではなかったはず。
あれは誰だっただろう。
母親の寝顔に、それとは違う
硬く目を閉じた人物の顔が重なる。
ずっと一緒にいたような気がする。
でも思い出せない。
これは誰だ?
122 名前:ヒマナスターズ :02/04/24 02:34
>121の続き
『見て見てこれ!今度のアッパーズに載せるやつ』
──何これ?
『携帯。ほら、ちゃんと使えんの』
──随分デカいな。凄え…うわ、重っ!
『うん。ちょっと粘土つけ過ぎたかも。
ポケットに入んなくなっちゃった』
──携帯の意味ねえじゃん……
『そうなんだよ〜。でもさ、かっこいいだろ?
世界に一個しかねえんだぜ?こんなの』
──……うん、そうだな。
『あ、やっと笑った』
──え?
『だって今日の賢太郎ずっと怖い顔してるんだもん。
キゲン直った?』
──…………。
『どうしたの』
──…お前ってすごいな。
123 名前:ヒマナスターズ :02/04/24 02:35
>122の続き
傷つけるつもりなんて毛頭なかった。
むしろいつだって大切にしたいと思っていた。
けれど、矛盾と混沌で複雑に入り組んだ自分から放たれる愛情は
あらぬ形に歪んでいて、気付けば結局傷つけてしまっていた。
自由な彼が羨ましかったし、心から尊敬していた。
そんなことは許されないと解っていたはずだったのに、
知らず知らずのうちに、彼を支配しようとしていた。
それが彼にとっての足枷でしかないことも承知していたが
どうしても止められなかった。
そんな自分がたまらなく嫌で仕方なかった。
本当はちゃんと謝りたかった。
こんなはずじゃなかったんだ。
124 名前:ヒマナスターズ :02/04/24 02:36
>123の続き
”俺が心を殺してしまったのは誰だった?”
いつものように真っ直ぐな目でこちらを見つめて、
俺の手に冷えたメスを握らせた人。
そうすることで今までの苦しみを訴えてきた人。
透き通った涙をこぼしながら、意識を失う間際
自分を殺した相手に笑顔を向けた人。
最後の最後まで、純粋無垢だった人。
あの時、眠るように瞼を閉じたのは、
床と同じ冷たさで横たわっていたのは、
タイルの幾何学模様を赤く染めた血の主は、
仲間で、相方で、大切な存在で、
「……じ、ん…」
糸が解けるように、断片的だった記憶が一本の線に繋がった。
体の震えが止まり、ゆっくりと顔が上がる。
半開きだった口が小さく動いて、微かに言葉を発した。
三人は目を見張った。
「仁……」
(続く)
132 名前:新参者@下働きでいいんです :02/04/27 23:29
>>112の続き
歩く。
歩く。
歩く。
単純作業の繰り返し。
ひとり。
ひとり。
ひとり。
誰も、側に、いない。
一歩間違えば気が狂いそうになる状況下に置かれても、長井はまだ平静をなんとか
保っていた。
『ゲーム』開始時に比べ芸人の数も減ってしまった。序盤に比べて銃声や爆発音が
聞こえなくなっていたのがその証拠であった。放送から、数多の芸人が
この『ゲーム』に参加させられ、そして死んでしまったのが理解できた。
人の死に慣れてしまった自分の感覚に少しだけ鳥肌が立つ。
しかし、今人道的なことは言ってられない。
生きなくては。
何のために?
きっと、本能の赴くままなのだろうが…。
しかし今はそんなことを悠長に考えている暇はなかった。
生きなくては。
そんな根拠のない使命感が、心にあった。
(疲れたな…。ちょっとだけ、休むか…)
歩き疲れていた長井は、近くの大木に腰掛けた。
133 名前:新参者@下働きでいいんです :02/04/27 23:31
>>132の続き
ひとりのため、迂闊に眠ることはできない。
いざ誰かに見付かったら、格好の標的になることは目に見えていたからだ。
少し、少しだけ、歩くのを止めよう。
長井はそう判断したのだった。
芸人という職業柄、あまり体を鍛えるということはしていなかった。
ただ当てもなく歩きつづけるのは酷だと感じたが、立ち止まっていることすら
許されぬ状況だったので仕方なくそうしていた。
しかし、そんなに体力が持つわけではなかった。
それでもここまで歩きつづけられたのは、『生きる』という意志と、『死んで
たまるか』という意志があったからであった。
肉体が、精神を超えたと表現できるくらい、彼の意志は強いものになっていた。
(誰にも見付からずに休めればいいんだけどな…)
それでももう真の休息は得られないだろう、と長井は思っていたのだが。
134 名前:新参者@下働きでいいんです :02/04/27 23:32
>>133の続き
どれ位時が過ぎたのだろう。
長井は疲れを取るため、少しだけ大木に凭れていた(疲れを取る、といっても
取れないのは知っていたが『疲れを取った』という自己暗示をしたかったのだ)。
(ここでずっと座っててもしょうがねえしな…。誰かに見付かったらやばい)
とりあえずここから移動しようと思った矢先のことだった。
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