853 :新人@半角でエンター押してしまった… :02/09/10 02:53
藤井川島編、投稿しました。
浜田松本合体により、大変なことになりそうな予感がしますが…。
えー。さっそく訂正です。
今回投稿した話は>>717-720の続きです。
ロバート秋山に殺されるはずの川島省吾
私の脳内では全く違う死に方になっていることに今気づきました。
慌てて修正作業に入りたいと思います。
873 :新人@書き手さん募集中!! :02/09/11 23:59
>>852 の続きです
回想が、現実に引き戻される…。辺りはすっかり暗闇に支配されていた。
一時たりとも油断の許されない中、藤井(飛石連休)は今までのことを思い出していた。
鳥居との遭遇、岩見(飛石連休)との離別、川島(劇団ひとり)との合体…
そして今、鳥居は新たな獲物を探して彷徨い、川島は手負いの自分を気遣って
この軒下に自分を隠したまま、ログハウスに救急道具を探しに行っている。
川島と一緒に行動すると決めた当時は、感覚がマヒしていたのかあまり痛みを感じてはいなかったのだが
こうやって落ち着いてみると、疼きに似た…それよりきっぱりと痛覚といえる痛みが続いていた。
しかし、それよりも今重要なのは、鳥居と岩見のことだ。
…もし二人が遭遇するようなことがあれば、間違いなく岩見は持っている銃で鳥居を撃ち殺してしまうだろう
その場に自分がいることでそれをどうにか回避したい、誤解を解きたい…という思いとは裏腹に
身体は心なしか重くなってきていた。
「藤井さん!ありましたよ、救急箱!」
軒下がライトで照らされ、川島が自分のところに滑り降りてくるのが見えた
その明かりで自分の腕時計を見ると、あれから30分ほど経過していたことに気づいた。
「随分と時間、かかったんやなぁ…」
「ええ。前に中に誰かいたみたいで、随分と荒らされてたんですよ…」
と、川島は包帯とガーゼに消毒薬を取り出すと、藤井に上着を脱ぐように促す
上半身裸になった藤井の胸には大きな筋が二本、くっきりと走っていた
「染みますよ」
「わかってるよ…」
肉が裂かれ、血が流れている自分の身体を見ても、不思議となんの感情も起きなかった
ただそこに傷があり、川島がそれを治療している。という情景をあたかも客観的に見るように
874 :新人@書き手さん募集中!! :02/09/12 00:00
「…ん〜…」
「あ、痛いですか?」
「まあ、痛いけれども…、なんていうんかなぁ…」
「はい?」
「……死ぬのが恐い恐い言うてても、どっかで自分はいつか死ぬっていうことを受け入れてるんかな?」
「………」
それに答えることのないまま、川島がてきぱきと応急処置を進めていく
(といっても消毒を施し、ガーゼを傷口に当て、包帯で巻いていくという素人の行なうものだった)
そして救急箱を閉めると同時に、中で見つけたという上着を一枚差し出した
「これ……。藤井さんには悪いですけど、今夜中にカタをつけるつもりですから…」
その言葉の真意を藤井はすぐに理解した。
睡眠をとるためにこれ以上の厚着をすることはない。今夜中に全て終わる。
藤井は了承した証しとでもいうように、笑顔を返した
「さ…遅れを取り戻さんとな…」
「ええ…」
二人はゆっくりと立ち上がった
今朝見た朝日が最後になるのだ。という実感の湧かない事実を確認しあうようにひとつ目配せをして
876 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 01:02
>>874 の続き
岩見(飛石連休)は登れそうになかった崖を迂回して、
緩やかな坂を大回りしながらも登り続けていた。
木を2、3本過ぎるごとに木に身体を貼り付け、前方を見回す
今まで何度も続けてきた作業を行なおうと同じように隠れた木すれすれを
なんの前触れもなくピシュン、という音と共に銃弾がかすめていった
驚く間もなく、次はその木に銃弾が刺さる。
その衝撃を木に手をつけていた岩見は直に感じた。
もし隠れるのがこの次の木であったら、命の保証はされなかっただろう。
自分からも1、2。と撃っていくが、何しろ先に攻撃を仕掛けてきたのは向こうだ。
銃口がどこから向けられているのか見当もつかない
3、4…何処だ、何処にいるんだ。
自分でも信じられないくらい、思考がどんどん流れていく
緊張して張りつめた糸が切れそうになって、チキチキと嫌な音を上げているのがわかる
5…と、頬の先を、銃弾がかすめた。
つつ…と映画のように血が流れていく。何故かその血はとても冷たく感じた
877 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 01:03
装填された弾は全て撃ち尽くした
慌てて薬きょうを取り出し、震える指で新たに5発装填する
これで…合計10発。ポケットの残りは5?…いや、3発か
1、2、3
頭の中でキリが良くなるように計算でもしたのか、ポケットに残っている分と同じ数の銃弾を
顔を出さずに銃口だけ向けて撃ち出した
これでお守りの中に入っている銃弾2発の分を差し引き、使用できる弾は残り5発…
丁度一回で撃ち尽くせる分しか残らない。
自分もこれ以上は限界だ。と思った瞬間、草を騒がせて相手が逃げていく音が聞こえた
どうやら戦況は自分の方がやや有利だったらしい。相手側の方が一足早く行動に移しただけのことだ
この3発がなかったらきっと、軍配は向こう側に上がっていたか、こう着状態のままだっただろう。
と、そう思ったと同時にどっと疲れが押し寄せる
「ぁっ…ハァッ…」
がっくりとうなだれる、手首に慣れない痛みが今更襲ってきた
撃った分の薬きょうを取り出し、残りの3発を新たに装填した。
これを撃ち尽くしてしまえば、お守りから弾を取り出している間に天国に飛ばされるだろう。
戦闘で使用できる残りの弾は、この5発になってしまった。
頬の血を拭おうと、自分のシャツの袖を顔に持ってきた瞬間、
岩見は硝煙の臭いに顔をしかめた。
そしてそれが自分の武器である銃から飛び散ったものであるという紛れもない事実
自分はもう、この“殺人ゲーム”に参加してしまっているのだ。
878 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 01:04
自ら課した自分の目的…相方と会い、そして彼を命の限り守ること
その『守る』という項目の中に、自分から進んで誰かを殺すこと…例えば
藤井に傷を負わせた鳥居を手にかけることが含まれるのかどうか、ずっと岩見は考えていた。
もし藤井が死んでいたとしたら…それは鳥居を殺す理由になるのだろうか?
守る。ということはどういうことなのだろうか?
人を殺してまで自分が生きることとは?
誰かを守ることとは?
自分が死ぬことの意味は?
誰もが頭の中にこの質問を浮かべておきながら、答えを見出せずに死んでいくのだ。
ここに集められた芸人たちは、“知能を持ったゲームの駒”でしかない
生き残るであろう人物に人々は自分の資金を投資し、経過を固唾を飲んで見守る
『駒』にそんな葛藤や疑問が付きまとうことを、人々は『オプション』としか受け取らないだろう
今まで自分達が築いてきた信頼関係であるとか、友情といった類のものは全て『不確定要素』であり
芸人が殺し合いをする中で、支給された武器や体力面の他に
結果がどのように転ぶかわからなくなる。という面白さをプラスするためだけのものなのだ。
…もちろん、自分達の戦う意味など知らない岩見や藤井を含めた芸人たちは
自分達が史上最大の賭け事に巻き込まれていることなど、知る由もないが
879 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 01:05
岩見は腕時計のライトをつけ、時間を確認した
デジタル時計は19:00、と数秒示して光を消した
と、薄ぼんやりと浮かび上がった光の中、一瞬ではあったがはっきりと
岩見の目にある人物が映った
黒い衣装、白い羽、白い肌
間違いない。
残念ながら、携帯電話の充電は、福田との通信は、約束の確認は
今後永遠にすることはできないかもしれない。と岩見は無意識のうちに感じていた
岩見の、そして彼を取り巻く3人の芸人にとって
長い夜が始まろうとしていた
880 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:06
雲が晴れていく
鮮やかな満月が月明かりを落とし、鳥居の白い肌を照らし始めた
俯いていた顔がゆっくりと上がる。
そこには涙をボロボロと流したままでかすかに微笑を浮かべる鳥居みゆきがいた
「…なぁ。藤井くんのこと、どないしたん?」
硬い表情のまま、岩見は鳥居に直接疑問をぶつけた
鳥居の表情は崩れない
「…ふじい?だ〜れ?それ」
と、どこから出したのか鳥居は
何度も鋏の入れられたキャラクターぬいぐるみの頭を撫でながら笑ってみせたのだ。
881 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:08
「うふふ…かわいい…」
彼女の武器であるはずの高枝切り鋏は、もう彼女の手元にはない
ぬいぐるみを傷つけることで、それ自体から興味を失ったのか、誰かに奪われたのか…
「答ええや!」
岩見が銃口を向けても、まだ鳥居は笑っていた
時折頬擦りしながらぬいぐるみを愛でる姿は、同世代の女の子というよりももっと…
「かわいいでしょ?…うふふっ…」
その姿に、岩見はある種の恐怖すら覚え、引き金に指をかけた
…この状態を引き起こした原因が、もしかしたら藤井を殺したことにあるかもしれない…
そう思うと、恐怖と怒りが上ってきた
藤井を、自分の相方を殺したのはこの女なのか
「鳥居っ…」
今まさに、照準を鳥居の額に定めて
引き金を引こうとした瞬間
「岩見!あかんっ!!!」
聞き覚えのある声が、岩見の手元を狂わせた
882 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:12
S&W チーフスペシャル38口径から吐き出された銃弾は
鳥居の頬より10cmほど左…丁度頬擦りをしているぬいぐるみを直撃した
「あーあっ、バクハツしちゃったー」
と、鳥居はクスクス笑いながらこちらを見やったのだが
藤井の後ろに立っていた川島に気づくと
「あ……」
と今までの態度を一変させた
まるで悪戯が見つかった子供のような表情で、逃げようとする鳥居
「待て!鳥居!」
「いやっ!!」
鳥居は自分が歩いてきた方向に向かって一心不乱に走り出した
それを追いかける川島を目で追いながら、藤井は呆然としている岩見のもとへ駆け寄った
「岩見、大丈夫か?」
「藤井くん…鳥居は…?それになんで川島さんが…」
「…それは後で話すわ…」
鳥居と川島を追いかけながら、藤井は今までのこと全てを岩見に話した
鳥居に殺されそうだったところを川島に助けてもらい、ずっと行動を共にしていたこと
川島が言うには、鳥居は覚醒剤を使用しているということ。
そして、今…川島は鳥居を救う為にここまでやってきた。と藤井は言った。
それを静かに聞いていた岩見に、ある疑問が浮かんだ
883 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:16
川島は、何度も見失いそうになりながらも、鳥居を追って走り続けていた
やがて、藤井が岩見を突き飛ばした崖よりも随分と高台に出た
夜の帳の中、解放されていた街の明かりが見える
街自体には特に変わったところは見られなかったが、問題はその周辺だった
時折光は点滅を繰り返したり、大きなものも何度か見えた
恐らく、物資を調達した人間を襲って略奪をしたりしている人間がいるのだろう。
銃であったり、爆弾であったり。こうしている間にも幾つもの命が消えていくのだ
ようやく川島が鳥居を追い詰めたと思ったとき、
鳥居は意外にも崖すれすれ数メートル手前で座り込んだのだった。
「鳥居……?」
ゆっくりと振り返り、時々ひくっ、としゃくり上げながら
小さな声で鳥居は言った
「……綺麗…花火みたいなの…」
884 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:20
覚醒剤の効果がまだ続いているうちは、小さな光でも花火のように見えることがあるという
常習犯であれば、逆に使用していない時ににフラッシュバックという効果で花火のようなものが見えるらしいが
「花火…」
この小さな光の点滅を、鳥居は確かに“花火”だと言った
それは本当に薬のせいなのだろうか、それとも死んでいく芸人一人一人の命の輝きを花火と形容したのか…
川島にはもう、なにもわからなかった。ただ、頭の中で必死に鳥居を救う方法だけをずっと考えていた
「…なんで逃げたんだ?俺から」
「だって、怒ると…思ったから…」
「怒らないよ…怒らない」
本当?とそれこそ子供のようにぱっと表情を変え、何度も川島に確認の言葉を繰り返す
「嘘じゃない」
と、同じように何度も答える川島に、鳥居はやっと安堵の表情を浮かべた
理由はわからないけれど、薬を使用したことで叱られると思った。と鳥居は言った。
885 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:28
「…なんか……疲れちゃった…」
「………」
薬が切れかけてきているのか、正常な思考が復活し始めると同時に
極度の疲労感が彼女を包んでいるらしい。
頬を汚していた涙を、川島は自分のハンカチで拭うと
…麻酔銃を打ち込むなら今だ。と川島は腰に手を伸ばした
しかしそこへ、岩見と藤井が追いついたのだった。
「川島くん!」
藤井が血相を変えて飛び出してくる
「藤井さん…」
自分の目的は果たせそうだ。と藤井に感謝の言葉を述べようとした川島だったが
岩見の言葉によってそれは遮られることとなった
「川島さん……ひとつ教えてぇや…なんで鳥居が覚醒剤使ったって、わかったん?」
先ほど岩見の頭に浮かんだ疑問
鳥居自身すらその薬の中身を知らなかったと言うのに、何故、川島が
アンプルの中身を『覚醒剤』だと断定できたのか
強い疑問が、岩見の頭には残ったのだった
886 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:36
「…川島くん…説明してや…」
藤井の言葉に、岩見も頷く
川島はというと
手をぶらん、と伸ばし
目を瞑り、なにかを考えるような表情をしたかと思うと
数秒、沈黙し
そして、行動に出たのだった
「………――」
何かを喋ろうと口を開いた瞬間
藤井と岩見に、思ったとおり一瞬の隙が出来た
それを川島は見逃さなかった
すぐ取り出せる状態にあった麻酔銃を取り出すと、無防備な二人にそれを打ち込んだのだった。
パシュン、パシュン。と空気の抜けるような音が二発、岩見の耳に聞こえた
一発は鳥居の胸元、もう一発は藤井の首筋に命中した
鳥居はすぐにとろんとした目つきになると、ゆっくりと身体を前に倒し始めた
それを支えるように膝立ちになり、川島が銃を崖下へと投げ捨てた
「藤井さん…あなたにいくつか嘘をついていました…」
川島は笑った
確かに笑ったのだった。
887 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:41
「どうせ寝ちゃうでしょうから、全てについて説明はできませんけど…ひとつだけ」
藤井はその言葉を今にも途切れそうな意識の中で聞いていた
体が前に倒れる。その衝撃で傷口か開いたような気がしたが
眠い。強烈な眠気が彼を襲っていた
「…麻酔銃は『2回』使えたんです」
あの時の説明は嘘だった…川島が捨てたという説明書には、もっと他のことが
しかも詳細に書かれていたのだろう…
でも、そんなことはもう藤井には関係がなかった
ただ…ずっと付きまとっていた恐怖から逃れられる、という安心感が
彼の全てを支配しようとしていた
「…かわし…ま…」
すっかり眠りについた鳥居の肩を抱えると、川島はわざとゆっくりと
藤井たちのほうに向かって歩き出した
888 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 02:49
「藤井くん!」
いつの間にか銃を構えていた岩見が、何度も自分に呼びかけてくる
さっき、鳥居たちを追いかけているときに
自分の銃を見せ
『これで藤井くんのこと、守ったるから』
と、強い瞳で言っていた、相方
その光は失われてはいないが、確かに川島に対する恐怖に怯えている
そんな岩見を見て、自分はまだ眠りにつくことはできない。と藤井は思った
「あかん……」
瞼が重い
どうにかして…目を覚まさなくては…
思ったとおりに動かない手でポケットを探ると、金属の柄が手に触れた
「…ほら、岩見くん…」
一歩、一歩岩見に近づいていく川島と鳥居
「藤井さんをこんな目に合わせた僕のこと、恨めしいだろ?」
「あ……」
「…殺して下さい…僕を、鳥居を…」
その言葉が、決定的なものになった
889 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 03:08
岩見が、1メートルの距離に迫った二人を撃つのと
藤井がポケットの中に入っていたペーパーナイフで自分の脇腹を刺すのは
ほぼ、同時だった
鳥居のぬいぐるみに撃ちこまれた1発
そして、残りの4発の銃弾は
2発ずつ、綺麗に鳥居と川島の身体に吸い込まれていった
カシン、カシン。と空打ちする音が響く
川島は一発目で鳥居を解放すると、二発目の衝撃に身体を預けて
崖下へと転がり落ちていった。
その瞬間、鋭い痛みによって醒めた藤井の目にははっきりと
川島が呟く様子が見えた
あ り が と う
身体はその瞬間息絶えたが
落下の衝撃でポケットから落ちたハンカチは、秋山(ロバート)の浴びた返り血を拭うことになる…
カシン、カシン、カシン…
「僕……藤井くんを守るって…言ったから…」
膝からガクリと座り込み、涙を流しながら何度も何度も繰り返す
岩見の大きいとはいえない身体には、支えきれない重圧が限界以上に乗っかっていた
890 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 03:09
「な…にが、『ありがとう』やねん…」
鳥居を救いたい、とか言っておいて
自分も誰かにこの恐怖から救ってもらおうなんて…
「ずるいで…川島くん…」
ペーパーナイフが柄の部分まで刺さった傷口からは
殆ど血は流れてこなかった。
岩見にも、藤井にも
終わりの時が近づいていた
「…藤井くん…」
「ごめん…起き上がれそうにもないわ…」
「…刺し損やね」
「……大きなお世話や…」
藤井を起き上がらせ、大きな木に背中を預けさせると、
岩見はお守りを自分の首から外した
逆さまにして振ると、2発の銃弾がチャリンと音を立てて順番に出てきた
891 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 03:12
「これ…」
「……なに?」
「…本当は、僕が藤井くんのこと…殺そうと思っててんで」
「ほぉ…」
「……こんな風な状況になったら…僕がとどめを…って考えててんけど」
「…ええよ、俺がやる…」
下半身には、既に感覚は残っていなかった
このまま自分が死んでしまうことで、岩見をこの世に留めさせるわけにはいかない
藤井は震える手で、岩見が新たに銃弾を装填した拳銃を握った
「…痛くないんかなぁ?」
「死んだことないから…わからんよ」
「あ〜あ、福田くんと約束してたのに…ディズニーシー、魚釣り…」
「………こんなこと、言いたないけどな………」
「わかってるよ、福田くんもすぐに来るはずやから…」
「………」
「…ちゃんと、藤井くんのこと仲間外れにせぇへんよ?」
「……あほ…か…」
「コンビニのバイトもせぇへんでいいし、ディズニーシーがあるかはわからんけども…」
892 :新人@担当芸人終盤戦 :02/09/12 03:14
「岩見…そろそろ俺、限界や……」
藤井の顔からは、血の気がどんどん無くなっていく
それは岩見にも一目でわかったが
それでも、自分にとって一生にただ一人の相方に
絶対に言わなくてはならないことがあった。
「…藤井くん…」
「…なんやねん…」
「僕から無理やりやったのに、コンビ組んでくれて、ありがとぉ」
「…遅いわ…言うの…」
「向こうでもやろうや、漫才」
「………ぉう……」
こめかみに、ひやりと冷たいものが触れる
願わくば、もう一人の友人も含めて同じ場所へ
お守りを強く握り締めると、岩見はゆっくりと瞳を閉じた
【鳥居みゆき 川島省吾(劇団ひとり) 岩見欣正 藤井宏和(飛石連休) 死亡】
898 :隊員名無し :02/09/12 15:43
>>646
「うわあああああああああ!」
悲鳴と慟哭。
会場内が騒然となる。
後ろの方の群衆は、突然巻き起こった混乱が把握できず、狼狽えていた。
目の前で繰り広げられた惨事を見つめ、壇上のたけしに視線を移す。
薄笑いすら浮かべず、冷めた瞳で蠢く”烏合の衆”を見下ろす彼。
嘲っている。ノウナシドモメガ。
「…芸人らしいリアクションでも求めてたんか?」
松本は1人小さく苦笑を浮かべ、
何故か、自分でも驚く程冷静に現実を受け入れた。
899 :隊員名無し :02/09/12 15:45
>898
『じゃあルール説明すんぞ。よく聞いてろよ』
たけしの一言で、ピタ、と面白いくらい場が静まりかえる。
全員、今までとは目の色が違った。
自らの死を間近に視た恐怖。凍りついた表情がそれを如実に物語っていた。
『まず、主旨は単純に”殺し合い”だ。この中で最後の1人が生き残るまで
ひたすら殺し合う。例外は無ぇ。簡単だろ?
…この期に及んでまーだドッキリだろとか思ってんのは、そいつの自由だけどな。
ま、そういうのは大概直ぐ殺されっちまうから、せいぜい早く現実を直視するこった』
提言された、単純明快な。そして、最も残酷なゲーム。
『んじゃ、あと詳しい説明は”ゲストサマ”にお任せするから。
芸人魂見せろよ?じゃねえと彼奴らに食われっちまうぞ』
手に収まる程小さな拳銃をくるくる弄びながら、嗤う。
そう言い残し、たけしは壇上から消えた。
「あいつら?」
その瞬間、会場の照明が一斉に消えた。
色とりどりのサーチライトが縦横無尽に走る。
けたたましい音楽が、劈くように鳴り響いた。
900 :隊員名無し :02/09/12 15:46
>899
青い稲妻が僕を攻める 炎 カラダ 焼き尽くす GETYOU♪
「スマップ?」
隣の、名も知らぬ若手芸人が戸惑ったように呟いた。
ぱあん。
たけしの居なくなった壇上の両脇に上がる白い閃光。
『はい!こんにちわー!』
場違いな明るい声と共に現れたのは、随分見知った”人物”だった。
901 :隊員名無し :02/09/12 15:47
>900
『こんにちわー皆さん!…あれ?返事がないなぁ。コンニチワー!』
「…中居?」
壇上に立っていたのは、ジャニーズの中居正広だった。
以前ドラマで共演し、プライベートでもよく会っている。
『えっとおー、この度はこのように記念すべきイベントで説明役という
大役を務めることができてー感激してますう』
にっこり。計算し尽くされた中居の完璧な”ジャニーズスマイル”
未だに鳴り続ける音楽に合わせ、バックで踊る沢山の影が鬱陶しい。
あのわさわさした軍勢は、ジャニーズJrと言ったか。聞きかじった豆知識。
そんな事、今はどうでも良いのだけれど。
『じゃあ早速説明しますね。まずー、これから数人づつ名前を呼びます。
この建物には出口が5カ所あるので、それぞれ別の場所から出て下さい。
出口で1人1つ。食料、水、ランダムな武器の入ったディパックが渡されまーす』
にっこり。茶色のディパックを持ち上げ再度頬笑む”生粋ジャニーズ中居君”
三十路男め。恥ずかしくないんかあのボケは。
しかし、なんで寄りによってこんな人選なんだ?
…皮肉か。芸人への。
902 :隊員名無し :02/09/12 15:52
>901
『ディパックを手渡されたら、3分以内で速やかにこの建物から50M以上離れて下さい。
もたもたしてるとー、皆さんの首に付けてる首輪が自動的にボン!と爆発しますので。
そんな美味しくない死に方、したく無いデショ?』
その台詞に、松本含めその場にいた全員、一斉に首に手をやった。
他の事に気を取られ、気付いていなかった固い感触。
気絶してる間に装着されたのだろうか。
『あ、そうそう!ここは日本圏内に浮かぶ、普段は人の住んでる島ですが
このイベントの間は無人になってます。島内は幾つものエリアに区切られていて
一日数度の島内全域放送で”危険エリア”が時間毎、認定されます。
指定された時間にその危険エリアにいると、これも首輪の爆発対象になってしまうんで
気を付けてくださいねえ。島の地図はディパックに入ってますう。
それと、無理にその首輪外そうとするとこれまた爆発しちゃうんでぇー』
気を付けてね?
中居が間延びした語尾で付け加えた言葉に、周囲の何人かが
弾かれたように首輪から手を外す。
『それでは皆さん腰を下ろして。僕に名前を呼ばれた方は立ってください』
ふ、と音楽が消えた。
潮が引くように滑稽な衣装のバックダンサー達が両脇にはける。
俄に、静寂が訪れた。
『まずは-------- 』
903 :隊員名無し :02/09/12 15:53
>902
何人かの名前が呼ばれる。
呆然とした表情で立ち上がった中に、見知った顔もあった。
『…はい、今呼ばれた方はあちらの出口より外に出て下さい
えー通路が別れますので、あとは兵隊さんの指示に従ってもらいます』
それじゃあねー、と手を振る中居の嘘くさい笑顔に見送られ
数人の”駒”が会場を後にした。
彼らの行方を想像する暇も無く、早々と次の名前が読み上げられた。
『--------山田隆夫、浜田雅功、…』
ハマダマサトシ。
その名に、身体が自然に反応した。
そして直ぐ近く。数メートル先の人垣の中から、立ち上がる怠そうな後ろ姿。
何十年も近くで見てきた、その背中。
…こんなに近くに居て、お互い気付かなかったのか。相手の存在に。
これが現実なのだろう。運命的なドラマのように上手く行くはずもない。
人生なんて得てしてそんなもんだ。と、俺はいつも主張してきた。
何だかちょっと可笑しくなって、松本は微かに笑みを浮かべた。
その時。
904 :隊員名無し :02/09/12 15:54
>903
浜田が何の前触れもなく振り返った。
何を探す風でも無く、何気ない視線。
しかしその目は、松本を一直線に捉えていた。
憐れむような、慈しむような、悪戯を企む子供のような、
狡い大人のような、何も見ていないような、一つしか見えていないような、
憎むような、愉しむような。
そんな、色々なものが綯い交ぜになった瞳。
鏡がないから分からないが、
きっと、自分もそんな目をしていたのだろう。
浜田の背中が扉の向こうに消える。
『グッドラック』
こうして、全てが始まった。
910 :名無しさんお腹いっぱい ◆BXpGyuyc :02/09/12 19:15
「・・・伊藤たち、まだ来ないな。」
テツこと中本哲也は後ろを振り向きつつつぶやく。先を行っていたテツ、トモ、鈴樹志保。
彼らは鈴木志保の仲間・・・松井、入山、杉林、石田のケンカを止める為にその「ケンカの現場」に向かって歩いていた。・・・のだが入山達の仲間である鈴樹が肝心の「ケンカの現場」をすっかり失念してしまい
このため、とりあえず辺りを歩き回ってみることにしたのだ
「ああ・・・。伊藤が虻川の事を思い出して座り込んで・・・。」
と、トモこと石澤智幸。
「どうする・・・?このまま田上たちを待つか?それとも・・・。」
「テツさん、今は先を行ったほうがいいです。
このままここで動かないでいると入山さんたちのケンカが・・・。」
と、鈴樹。
「…そうした方がいいな。」
テツは田上、ユリオカ、伊藤のことを案じつつ歩き出した。
911 :名無しさんお腹いっぱい ◆BXpGyuyc :02/09/12 19:15
「あいたたたた…」
あろうことか森の中の窪に落ちたピン芸人ダンディ坂野。先ほどから姿がないかと思えばこんなところにいたのだ。
なんとか窪から脱出し森の地面に立つ。
「トモ〜!テツ〜!鈴樹さ〜ん!」
辺りを見渡しつつ、仲間の名を呼ぶ。しかし、彼らはもうケンカの現場に向かった後。
「・・・・・。」
無言状態で突っ立つダンディの間に風が吹く。
「それはいいんだけど・・・」
ゆっくり口を開くダンディ。
「・・・鈴樹さん、場所思い出せたかなあ・・・。」
ダンディには鈴樹がちゃんと迷わずにケンカの現場に行けたかどうかという他にももうひとつ気がかりを抱えていた。それは、伊藤のことであった・・・。
「どうすればいいんだろ・・・。」
まだ泣き続ける伊藤の姿を見、田上はつぶやく。
「伊藤の記憶から『あの事』・・・相方を目の前で殺された事を
完全に消し去るのは簡単な事じゃないのかもな・・・。」
と、ユリオカ。
「・・・・・・・。」
ユリオカの言葉を聞き、黙り込む田上だった・・・。
(続く)
914 :新人@感想とてもとても嬉しいです。福田編 :02/09/12 19:59
[ただ一人、芸人でありながらお笑いバトルロワイヤルに参加しなかった芸人の話]
『眠れない』
看護婦にそう繰り返した。何度も、何度も
人工的に眠りへと誘う錠剤が支給されるまで
少し大きめのガラスの薬瓶がいっぱいになるまで、あと何日?
飲んだふりをして瓶に錠剤を落としていっては、あの日交わした言葉を頭の中で繰り返す
『死ぬなよ』
『うん』
岩見…お前は大嘘つきだ
それでも、放送の時に一緒に名前が呼ばれたということは
二人は最後までコンビとして生き続けていたのだろう
自分がどうあがいたところで皆そっちへ行ってしまうのであれば
早めに自分も切符を手にした方が良い、向こうで捜すのは少々大変そうだ
915 :新人@感想とてもとても嬉しいです。福田編 :02/09/12 20:04
今日もまた、瓶の中に白い粒がひとつ、ふたつと増える
それは遠い昔に何度か出演した番組の、金属製のバケツとゴルフボールを連想させた
545を記録する前に、僕は我慢できずに飲み干してしまいそうだ…
そう呟いて福田は苦笑した
一日がとても長く感じた
病院内にいても自由に動くことなんてできないし
自室以外で見るテレビには、必ず他の入院患者の憶測が付きまとう
あいつはそろそろ死ぬんじゃないか
優勝候補のあいつはどうなった
そんな『声』は部屋にいても廊下を往来する人々から聞こえてくる
福田は泣き、そして笑った
この馬鹿げた“ゲーム”に参加している芸人のことを思って大泣きし
この馬鹿げた“ゲーム”を観戦している人々のことを思い切り嘲笑してみせた
916 :新人@感想とてもとても嬉しいです。福田編 :02/09/12 20:05
この馬鹿げた世界から旅立ち、愛すべき芸人が多く住む世界へ早く行きたかった
そこでは生きている間に覚えた苦しいしい感情なんて全て忘れて
みんなで馬鹿をやっているに違いない。
本当の意味で、『馬鹿なこと』をやって、きっと一日中笑って過ごしているんだ
福田は次の世界にそんな希望を抱かずにはいられなかった。
そして、何日か後…
それはもしかしたら、全ての決着が着いた後だったのかもしれなかったが
福田は今の世界のことについてはもう、なにも興味を示さなかった
岩見、藤井さん、みんな
僕はもうそろそろそっちへ行けそうだよ…
福田はやっと口のあたりまで白く埋まった瓶を満足げに見ながら
真っ白な世界の中、痩せた頬で優しく笑った
【福田哲平 死亡】
923 :side: :02/09/14 20:28
スピーカーを通した女の声が聞こえ、増田は自然と足を向けた。
展望台の上からスピーカー越しに変声された、聞き覚えのある声で叫ばれる台詞に微かな希望を抱いて。
924 :side:Masuda :02/09/14 20:29
しばらく茂みの中を進むと、次第に声が大きくなっていき、展望台が姿を現した。
その直後、その展望台に向かう人影を見つけ、増田は近くの茂みに身を隠した。
正直、恐ろしかった。
既にスピーカーからは死亡者の名前が放送されており、この悪夢としか思えないゲームは確かに始まっているのだ。
いくつもの覚えのある名前が消されていき、それだけ、このゲームにのった者が居るという事だ。
人影が展望台に近づくにつれ、それが自分の相方の岡田だと確認でき、増田は思わず安堵の溜息を漏らした。
良かった。
相方が生きていたこと、
一人ではなくなったこと、
このゲームに岡田がのっていなかったことに。
岡田が展望台で光浦と合流したことを確かめ、増田は茂みを抜け出し自らも展望台へと駆け出そうとした。
925 :side:Masuda :02/09/14 20:31
そのとき、背後からいきなり肩を掴まれ、増田は驚きと恐怖で息を呑んだ。
頭の中が真っ白になって、とにかく突然の恐怖から逃れるため、増田は
めちゃくちゃに腕を振り回した。
「ぐっ。」
どさりと倒れる音がして、増田は恐る恐る振り返った。
痛いなぁ、と頭をさすりながらも浮かべているのは強烈な笑顔。
倒れていたのは松竹のトップ、笑福亭釣瓶だった。
「すんません釣瓶師匠、びっくりしてもうて・・。」
「ほんっま、気ぃつけぇよ。」
「あ、師匠も展望台行くとこだったんですか?岡田も今入ってったんですよ、
俺も行こう思ったとこで。はよ行きましょう。」
「アホ言え、わざわざそんな死にに行くアホどこにおんねん。」
「え?」
「あんなもん・・・ほら、来おったわ、お前も見とれや。」
そう言って、釣瓶が指差したのはもう一人の展望台に向かう人影だった。
増田はしかたなく、釣瓶に習って再び茂みに隠れ、様子を伺っていた。
死にに行く?
当たり前のように放たれた言葉が引っかかる。
まさか、光浦が罠を仕掛けているとでも言うのだろうか、それなら岡田を連れ戻さないと。
増田が慌てて立ち上がったとき、パラララ、と乾いた音がとどいた。
926 :side:Masuda :02/09/14 20:32
釣瓶は笑った。
貼り付けた笑顔をより一層楽しそうに歪ませて。
人形のように体を躍らせる岡田と光浦を見て。
二人に弾を撃ち込む森永を見て。
自分の横で、打たれる相方を凝視しながら固まっている増田を見て。
「おもろいなぁ。増田、見てみぃ、お前の相方アホやで。」
釣瓶の声は増田の耳に入ってこなかった
増田は叫ぼうとした、走ろうとした、岡田を助けようとした。
しかし
足を踏み出せなかった、手が動かなかった、歯が震えた、怖かった。
倒れた岡田と光浦に歩み寄り、岡田から銃を奪って、森永は姿を消した。
森永からは距離も離れ、茂みに隠れていた増田と釣瓶は見えなかった。
増田はその間ずっと突っ立ったままだった。
927 :side:Masuda :02/09/14 20:34
釣瓶が、お前も走っていったら面白かったんにな、と肩を叩いて茂みの中へ歩み去っていった後、
増田は震える足を踏み出して、展望台へと向かった。
森永がまた戻ってくるとも限らないし、新しい襲撃者が現れるかもしれなかった。
それでも、岡田に謝りたい一心で恐怖を押し殺して歩いた。
928 :side:Masuda :02/09/14 20:35
「ごめんなぁ、ごめんなぁ岡田、岡田、ごめんなぁ。」
服に幾つもの穴を開け、床に血を溜まらせる相方へ近づき、その横に膝をついた。
力なく投げ出される手に恐る恐る触れてみると、まだそれほど時間がたっていないからだろう、
生きているように温かかった。
「俺のせいやな、ごめんなぁ。」
彼をこの世界に無理やり引き込んだのは自分で、
この世界に入っていなければ当然、彼はこんなことに巻き込まれなかった。
死んだりしなかった。
あのまんま、平凡にサラリーマンを続けて、幸せな家庭を作って、今ものんびりと生きていたはずで。
こんな冷たいコンクリートの床で、こんな体中を穴だらけにされて死ぬはずなんかなかった。
929 :side:Masuda :02/09/14 20:36
「いっつも偉そうなことばっか言うとるくせに、俺、怖くて動けへんかった。」
どうして走り出さなかったのか。
自分は目の前で打たれる相方を眺めていた。
最初に岡田を見つけた時に、すぐに自分も行けばよかった、止めればよかった。
そうすれば・・・。
岡田を殺したのは自分だ。
「ごめん・・・。」
両手で握り締めていた岡田の手が、痙攣するように動いた。
「・・・なんであやまっとるん。」
うっすらと目を開け、自分の手を握りしめて号泣している相方を見て、
岡田は痛みに顔を引きつらせながらも微笑んだ。
「おかだ、生きとった・・。」
驚きと喜びの入り混じった顔で、岡田の体を起こそうと背中に手をやり、
ぬるりとした感触に目を見張った。
そんな相方の反応を見て、岡田はまた、少し困ったように笑った。
「・・やーもう、無理やわ・・ごっつ痛いなぁ・・・痛いわー・・・。」
岡田が二、三回辛そうに咳をすると、赤い華が薄汚れたコンクリートに飛び散った。
触れる手の体温は徐々に冷めていき、呼吸は弱まっていく。
930 :side:Masuda :02/09/14 20:37
「ちょ、待てや。まだ、まだ・・。」
混乱する頭の中でいくつもの言葉が浮かんだが、喉につっかえたように出てこなかった。
まだ、『死ぬな』
「おか・・・」
「最後まで世話掛けっぱなしやなぁ、増田ごめんな。」
岡田の手は増田の両手をすり抜け、ゆっくりと増田の肩に置かれた。
「ありがとうな。」
その言葉を境に、肩に置かれた手は急激に冷たくなっていき、その口が二度と余計なことを言うこともなかった。
展望台には、しばらく押し殺した泣き声が響いた。
931 :side:Okada :02/09/14 21:46
薄れる意識の中、近づく足音が聞こえた。
足音は自分のすぐ横で止まり、何かが手に触れた。
―――めんなぁ、ごめんなぁ。
十年以上も聞きなれた相方の声。
めったに聞けない謝罪の言葉。
痛いほど握り締められる手に落ちるのは、涙だろうか。
―――いっつも偉そうなことばっか言うとるくせに、俺、怖くて動けへんかった。
実はへタレなん知ってるわ。
生きてたんや、良かった。
932 :side:Okada :02/09/14 21:47
悪夢のようなゲーム開始を告げられ、強制的に荷物を持たされて建物の外に押し出された。
建物から出るのは時間差があった上に相方がどこにいるのかも分からなかった。
出てくるのを待っていようか迷ったが、ためらいなく武器を手にする同業者達に
恐怖を覚えて逃げ出した。
息も途切れ途切れに座り込んだ森の中、開けた鞄の中にはの中の銃。
手に収めてみると、ずしりとした重さに安心した。
同時に、恐怖に襲われた。
自分以外にもこんなものを持っているやつがそこらじゅうに居る。
死にたくなかった、殺されたくなかった。
けれど、けっして殺したくもなかった。
誰かを殺すのは殺される以上に怖かった。
途方にくれて隠れていたころ、声が聞こえた。
933 :side:Okada :02/09/14 21:48
「皆〜、戦うのはやめて〜っ」
ゲーム開始から多くの銃声が響いて、幾人もの断末魔が耳に届いた。
どちらの立場も嫌だ。
ならば、戦うのはやめよう。
光浦とさして親しいわけではなく、不安はあった。
しかし、この呼びかけに増田は応えるのではないかという希望に後押しされて
展望台へと走った。
そして、光浦の涙を見た時、自分の選択は間違っていなかったのだと確信した。
「俺もこんな戦いはあかんとずっと思うてました。一緒に探しましょ。」
なんで、殺し合いせなあかんねん。
昨日まで笑っとったくせに、なんで皆殺しあわなあかんねん。
そんな、芸人なりたかったわけちゃうけど、十年やっても相方に頼りっぱなしやけど、
笑わすのが仕事やのに、だあれも笑うっとる奴おれへん。
なんで憎みあわなあかんねん。
こんなん、おかしいやろ。
「俺ら殺そうとする奴がきても、これで光浦さんを守りますわ。」
全然守れへんかったけどな。すんません、光浦さん。
銃も取られてもうたし、最後の最後までから周りやったなぁ。
934 :side:Okada :02/09/14 21:51
「最後まで世話掛けっぱなしやなぁ、増田ごめんな。」
ネタも考えんし、時間に遅れるし、ボーっとしとるし、
インタビューもそんなうまいこと答えられへんし。
迷惑ばっかかけて、なんで増田があこまで俺を相方にしたがったんか、
今でもあんま分からんし、まさか看取られるまでするとはおもわへんかったけど、
ほんまに世話かけっぱなしやな。
「最後まで世話掛けっぱなしやなぁ、増田ごめんな。」
誰に聞くんか知らんけど。
もう、あと一言だけ、ええですか?
何回もコンビ組もう言うてくれて、この世界誘ってくれて、ずっと漫才やってくれて。
お前と居って楽しかったわ。
「ありがとうな。」
お前は生きろや。
【ますだおかだ岡田死亡】
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