151 :通りすがればいいじゃない :02/09/20 16:55
前スレ>>436から
コンビニの看板が立っている。随分久しぶりに目にするような気がする。
4人は市街地の入り口に到着していた。
「おおっ!やっと着いた!」
先程までの弱った様子が嘘のように(もっとも嘘だったのだが)上島がはしゃぎだす。
我を忘れて駆け出す上島。
「ちょっ、ちょっと竜ちゃん!危ないって!」
肥後が後を追う。寺門も後を追おうとしたが、志村は動かなかった。
「ジモン、お前は俺と一緒に動くぞ。あの二人とは30分後にここで合流するから」
寺門はくるりと向き直り、素直に「はい」とだけ答えた。
152 :通りすがればいいじゃない :02/09/20 16:56
>>151
駆けてゆく肥後の背中にも、志村は言葉を投げた。
「リーダー!30分したらここに戻れよ!」
肥後は顔だけ振り向き、視線で呼びかけに答えた。
そこで寺門は重大なことに気付いた。
「えっ?あの二人丸腰じゃないですか!?」
「大丈夫だよ。最初に俺に支給されてた銃を持たせてるから」
「なんだ、なら良かった」
安堵する寺門。
しかしいつの間に銃の受け渡しをしたんだろう?
ずっと一緒に行動してきたけど気付かなかったな…。
そうしている間に二人の姿は街に飲み込まれていった。
153 :通りすがればいいじゃない :02/09/20 16:57
>>152
「うぇっ…、ひでえな…」
到着が遅れたせいで、街中のありとあらゆる物資は略取され尽くした後だった。
方々から煙が立ち昇り、建物の窓ガラスは割られ、
足元には血の海と死体の山が累々と積み上げられており、
さながらこの世の地獄といった風景が広がっている。
「竜ちゃん、あんまり一人で突っ走らないでよ。どこで誰が狙ってるかわかんないよ?」
肥後が上島の右腕を捕まえる。上島は肥後のほうを向かずに語りかけた。
「なあ、リーダー。俺たち、生きて帰れんのかな?」
死にたくないのは皆に共通した認識だが、
生きて帰れるかどうかという可能性について考えるのは久しぶりだった。
「さあ…、どうだろ?正直、わかんねぇな」
肥後の言葉が頭に反響する。
元々、浮き沈みの激しい芸能界という世界に身を置く者にとって、
将来のことを思うなど愚かな行為なのかもしれない。
それに加えてこの現状である。
今の自分の問いに対しての模範解答は「分からない」である他にない。
154 :通りすがればいいじゃない :02/09/20 16:58
>>153
「わかんねぇ…、か…」
上島は諦めの感情が染み出してきたようなため息をつき、肥後のほうへ向き直った。
その直後、にわかには信じがたい光景が上島の目に飛び込んできた。
肥後が、リーダーの肥後が上島に拳銃を突きつけているのだ。
「はっ?何だよリーダー。悪い冗談はやめてくれよ。笑えねぇよ、それ」
思わず笑顔が浮かんできたが、腹の底では本能が危険を知らせている。
手足が緊張ですくみ、震えてきた。
肥後もかなり緊張していた。芸人としての初舞台以来の凄まじい緊張感である。
「冗談じゃないよ」
搾り出すように声を出す。
「これは、冗談じゃない。本気だ」
自分を落ち着かせるためにゆっくりと言葉を繋ぐ。
手の汗でグリップが滑りそうになる。姿勢を正しながら銃把を握りなおす。
肥後が平静を取り戻すのと比例して、見る見る上島の顔が青ざめていった。
155 :通りすがればいいじゃない :02/09/20 16:59
>>154
「なななな、何言ってんだよ!?おおお、俺、俺を撃つっての?」
目に見えてぶるぶる震えだす上島。今にも失禁しそうな勢いである。
「そうだ。俺たちの、いや、志村さんの"チーム"に足手まといはいらない」
肥後は台本の台詞を読むように言うと、照準を上島の大きな腹に定めた。
「あ、足手まといって!俺が怪我してるからか!?
でも志村さん、俺のために休憩とってくれたりしてたじゃねぇか!」
「駄目だね。今はともかく、これから先どうなるか分かったもんじゃない」
銃口で足の傷を指し示す。
「その傷から雑菌が入って感染症とか起こしてみろ。それこそ足手まといだ」
「なっ…」
「そんな危険性を孕んだお前を連れて歩くってことは、チーム全体の身動きが鈍る。
そうなると俺らにも危険が及ぶかもしれないってことだ」
上島は呆然とした。自分がお荷物になっていたなんて。
156 :通りすがればいいじゃない :02/09/20 17:00
>>155
「頼むよ!俺、一人じゃ何もできねぇ!」
咄嗟に土下座する上島。命乞いする以外の選択肢は全く思い浮かばなかった。
「後生だ!殺さないでくれ!」
志村の庇護の下にあった時の安心感を捨てることは、上島にとって死に等しかった。
ここで肥後に背を向けチームを抜けるよりも、何とかしてチームに残ることのほうが
生き残る確立が高いと踏んだ上島は必死に懇願した。
「駄目だ。これは、志村さんの、決めたことなんだからな」
上島の言葉を無視し、肥後は噛んで含めるようなものの言い方をした。
引き金を引き絞ると同時に発射の反動が全身を揺さぶる。
パンッ!
銃弾が土下座している上島の後頭部に突き刺さる。鮮やかな血の花が咲く。
上島の肥え太った身体は自らの血の海に沈んだ。
肥後は志村から預かった銃を懐に収め、大きくため息をついた。
「これでいい、これでいいんだ」
口の中でぼそりとつぶやく。
肥後にはもう一つ仕事が残っていた。
【上島竜兵(ダチョウ倶楽部) 死亡】
159 :名梨@初参加です :02/09/20 19:05
>>112
「あっ!黒澤!」
河本は黒澤に気付くと急いで顔の涙を拭った。
「井上さん…自殺されたんですね。」
「聞いてたんかさっきの…。俺、取り残されてもたわぁ。baseのみんな死んでもた…。」
「そうなんですか…。」
…今、今やらなきゃ!
逸る心に押され、黒澤はいきなり拳銃を河本に向けた。
「オ、オイ…なんやねん!ウソやろ?!」
「ウソじゃないですよ。あたし、何がなんでも生き残りますから。」
微かに声が震える。本当は恐くて仕方がない。
しかし、死に対する恐怖が黒澤にそうさせていた。
「ええ加減にせぇや黒澤!!」
「………」
声が聞こえているのかいないのか、黒澤は無言のままじりじりと歩み寄る。
160 :名梨@初参加です :02/09/20 19:07
>>159
「ちっ…畜生ぉぉぉ!!どいつもこいつもぉぉぉ!!」
河本は涙目でポケットからバタフライナイフを取り出し、それで切りかかろうとした。
“死にたくない、死にたくない、死にたくない”
「うわあああぁぁぁぁ!!!!」
パンパンパンパンパン
我を忘れ、何度も何度も引き金を引いた。
河本の体は胸の至る所から血を吹き出し、そのままペシャンと前へ倒れた。
「…とりのこ…され…んでよかっ…た…。」
最後にそうつぶやき、河本は瞼を閉じた。
161 :名梨@初参加です :02/09/20 19:11
>>160
黒澤は拳銃を構えた姿勢のまま、呆然と佇んでいた。
自然と笑みがこぼれてくる。
自分は人を殺したというのに。
黒澤はゆっくりと倉庫を出た。
【次長課長 井上(自殺)・河本 死亡】
167 :名無しさん@書き手見習い :02/09/20 21:11
>>147の続き。
NGKの4階、吉本興業本社。
たどり着いてはみたものの、建物はすべてシャッターが閉ざされ
中の様子を垣間見ることもできそうにない。
二人、建物を見上げて立ち尽くした。
あ、と長田が思い出したように声を発した。
「オレ、こっそり入れるとこ知ってんで。前に堂土さんに教えてもらってん。」
少し得意げに言って見せた長田だったが、自分で出したその名前の主を思い出したのか
表情を曇らせて俯いた。
「堂土さん、大丈夫かな…。福田さんとか田村さんとか…。」
「何しょぼくれとんねん。そんなんオマエ似合わんわ。」
しょーもな、と言うように安田は答える。もちろんワザと。
「オマエは『女、女』言うてればええねん。絶対また皆に会える。
オマエの好きな合コンもナンパも、また皆と一緒に行けるて。」
ありえないことだとはわかっていながらも、次から次へと
どうしょもない慰めが口をついて出た。
168 :名無しさん@書き手見習い :02/09/20 21:15
>>167
勝者は一人。最後の一人になるまで、戦いが終わることはない。
授業でBR法について教えられたとき、先生が言っていた。
『この法律がムチャクチャなのはわかるやろ。こんなん単なるタテマエや。
犯罪者戦わせて、それ見て楽しんでるヤツらがおる。そんだけの話や。』
その先生は、それからすぐに学校を辞めた。
反政府軍とつながりがあったことがバレたとか、今は指名手配となり
地下に潜って活動をしているだとか、風の噂に聞きはしたが
そんな噂はどこまでが本当かわかったもんじゃない。
「こっそり入れる…て、トイレの窓かい。」
窓枠に手をかけながら安田はツッコんだ。
しかも女子トイレ。
何考えてんやろなぁ、あの人も。
オーバーオールに、ありえへん髪型の人物が
頭の中で「ナイショやでー」と微笑んだ。
あの笑顔にも、もう会うことはできないんだろうか。
そんな思考を振り払うように安田は頭を思いっきり振った
169 :名無しさん@書き手見習い :02/09/20 21:16
>>168
廊下に出た途端、イヤなにおいが鼻をついた。
思わず胃液が逆流しそうになるのを、必死で押さえ込む。
嗅いだことはないけれど、なんとなく想像はつく。
内部に人の気配がしないことも、その想像の確信を深めた。
いつもはキレイに掃除されている廊下には、きっと軍隊のものであろう
ゴツイ靴の跡が縦横無尽に残されていた。
「一体、何があったんや・・・」
長田が小さくつぶやいた。
デスクの並ぶ本社フロア。
そこは、血の海だった。
海、とは言ってももうほとんど固まっていたけれど。
赤黒い床、壁やガラスに無数に残る銃弾の跡、そして
ところどころに横たわる、見るも無残な社員たちの遺体…。
「なんで…」
あとは言葉にならなかった。
ゴン、という音がフロア内で響いた。
ビクッとして二人、音のした方へ顔を向ける。
誰もいない。
「誰かいてますかー。」
ゴン。
長田の呼びかけに答えるように、もう一度、
多分デスクの引き出しを叩いてるだろう音が響いた。
おそるおそるデスクの間を1列1列探してゆくと
血と書類で埋め尽くされた床に転がる1つの死体が
手だけを持ち上げ、こっちだと言うように手招きをしていた。
170 :名無しさん@書き手見習い :02/09/20 21:18
>>169
「生きてはる!」
長田が彼に走り寄る。
安田はその後からゆっくりと歩いていった。
彼を見たことはないが、吉本の社員章を襟元につけている。
二人が覗き込むと彼はゆっくりと目を開けた。
「おお、りあるキッズか…」
二人の顔を見て、目を細める。
「大丈夫ですか?」
「見りゃわかるやろ。何で今まで死ななかったのか不思議なくらいや。」
「何で救急車とか呼ばなかったん?!こんなとこで…」
男は首をわずかに横に振った。
「来てくれへんよ。見て見ぬふりされるだけや。」
相手は政府と軍やからな、と笑った。
「どうして、どうしてこんなことに…」
さぁな、と彼は言った。
「いきなり芸人全員差し出せ、言われてな。
抵抗してもムダなんはわかってたけど。
吉本の社員がやで、殺されるてわかってんのにハイどーぞ言うて
芸人差し出せると思うか?
まぁ、中にはあいつらと繋がっとったヤツもいたみたいやけどな。」
いつも口うるさかったマネージャーの顔が浮かぶ。
マネージャーはどっちだったのだろう。
彼の体もこのフロアのどこかで冷たくなっているんだろうか。それとも…。
171 :名無しさん@書き手見習い :02/09/20 21:22
>>170
二人が何も言えずにいると、
男の血まみれの両手がそれぞれ二人の手をつかんだ。
その手の驚くほどの冷たさが何を物語っているかは、理解できた。
彼は最後の力を振り絞るようにして、一気に話し出した。
抵抗したら、このザマや。
でもな、後悔はしてないで。
こんなんは間違っとる。
殺し合いの何がエンターテイメントや。
笑いはもっと、幸せなもんや。
なぁ、おまえらは吉本に唯一残された希望やで?
おまえらでこの国を変えてくれ。
反政府軍入れっちゅーことやないで。
笑いで、正々堂々真正面からこの国を変えてくれ。
普段なら何を夢みたいなことを、と毒づく安田でも
さすがに何も言えず、ただ頷くばかりだった。
涙で男の顔がにじんで見えた。
泣きながら頷く二人を見て安心したのか、彼は満足そうにゆっくりと目を閉じ、
そしてその目が二度と開かれることはなかった。
【ゲーム開始まであと8時間】
178 :通りすがればいいじゃない :02/09/21 12:31
>>156
志村は、かつてドラッグストアだったであろう建物の中を探索していた。
陳列ケースはなぎ倒され、食料や医薬品などの目ぼしい物資は見当たらなかった。
「流石にこれは誰も持っていかねぇか」
紙おむつの詰まった袋を蹴り上げる志村。
「斜向かいに食堂がありますよ。行ってみますか?」
手斧片手に外の様子を見に行っていた寺門が、ドラッグストアに帰ってきた。
「そうだな、まだ何かあるかな?」
志村と寺門が外に出ると、こちら目がけて猛然と走ってくる人影があった。
肥後だ。しかし一緒のはずの上島の姿は無い。
「リーダー!どしたの?竜ちゃんは!?」
寺門の呼びかけには答えず、肥後は二人の目の前で倒れこむようにして膝をついた。
「はあっ、はあっ…、竜ちゃんが、竜ちゃんが、やられた!」
「やられたって!?誰に?」
寺門は体から血の気が引くのを感じた。
「わ、わかんないよ。いきなり、後ろから銃で撃たれてっ…!」
「竜ちゃん死んじゃったの?」
「わかんない。銃声がして、竜ちゃん倒れて、びびって逃げてきちゃったんだよ!」
真っ青な顔をしながら、噛み付かんばかりに肥後が叫ぶ。
179 :通りすがればいいじゃない :02/09/21 12:32
>>178
「ひょっとしたら、まだ息があるかも…。志村さん、俺見てきます!」
寺門が走り出そうとする。
「待て。襲ってきた奴がまだそこにいるかもしれないぞ」
一瞬躊躇する素振りを見せたが、志村の言葉を振り切り寺門は肥後が来た方向へ走っていった。
寺門の後姿を見送った後、肥後は志村の顔色をうかがった。
志村は僅かに逡巡したが、すぐに寺門が走っていった方向を顎でしゃくった。
二人で寺門の後を追っていった。
180 :通りすがればいいじゃない :02/09/21 12:33
>>179
肥後の自作自演の大芝居はうまくいっているようだった。
寺門は上島の遺体の傍らに跪き、筋肉の張り出した両肩をわなわなと震わせている。
「お荷物を処分しろ」
志村からそう言われて拳銃を手渡されたとき、肥後は大きく動揺したが、
決断を下すまでにさして時間は必要なかった。
我が身の可愛さと、何より志村から銃を預けられるほどの信頼を勝ち得ることができたことの喜びが、
上島殺害を決断させたのだった。
「お荷物」の処分が済んだら、チームの結束が乱れぬよう、寺門には「上島は何者かに殺された」と一芝居うつ。
全て志村の描いた段取りどおりに進んでいる。
181 :通りすがればいいじゃない :02/09/21 12:34
>>180
志村はイングラムを構え、周囲を警戒するふりをしている。
そもそも襲撃者などいないのだ。志村もまた芝居をしているのだ。
肥後は震える寺門の肩にそっと手を置いた。
「もう、行こう」
寺門は肥後の手をゆっくりと、しかし力強く払いのけた。
「連れて行こう」
「はっ?」
「竜ちゃんも、連れて行こう」
「でも…」
「俺たちは、3人でダチョウ倶楽部なんだから」
寺門は本気だった。上島を見つめる眼差しがそれを物語っている。
肥後と志村は何も言わなかった。
肥後が視線で志村に『どうします?』と問いかけると、志村は小さくうなずいた。
寺門がどこからか持ってきた、大きな布団袋に上島の遺体を収めた。
小豆色の袋の底が見る見るうちにどす黒く変色していく。
上島の身体から、いまだに流血が続いている証拠だ。
自分の殺した死体を引きずって歩くなど、決していい気分ではないが、
ここで強硬に反対すると不信に思われるかもしれない。
肥後は志村の意向に素直に従い、寺門とともに布団袋を引きずり歩き始めた。
184 :名梨@初参加です :02/09/21 17:30
>>161
黒澤を探すため、雑木林の中を歩いていた村上はピタッと足を止めた。
そして振り返り、後ろにいる大島と顔を見合わせた。
「今の音聞いた??」
「うん。この奥の方からした。」
「地図見たらこの奥に倉庫があるみたいだけど。もしかしたら、そこにいるかも…。」
「じゃあさっきの銃声何なんだよ。」
「なんでそんな変な事ばっかり言うのよ!けど、ちょっと様子見に行く?」
二人は倉庫へ向かって走っていった。
185 :名梨@ :02/09/21 17:32
>>184
大島と村上は銃声のした方に向かって全力で走っていた。草をかき分け、木の枝に引っかかりながらも走り続けた。
胸に大きな不安を抱きながら。
二人がやっと雑木林を抜けた先には野原が広がっていた。
そこには一軒の倉庫が建っており、そのすぐそばに立ち尽くす一人の女の姿があった。
紛れもなく黒澤だった。
その顔は真っ白で空を見上げ、どこか遠くを見つめている。
「…くっ!黒澤ぁ!!生きてた!!」
「よかった…死んじゃたかと思ってた!」
大島と村上は喜びに満ちた声をあげた。
191 :用無し始末屋 :02/09/22 04:50
ハリガネ編
雑草を分け入ってひたすら道を進んだ。
暑さか緊張か、足を踏み出すたびに額には汗が滲む。
右手に銃を握り締めると、硬い銃身にへばりつく手の平が汗で滑りそうだった。
街の端が目に入ってきて、大上は歩を止めた。
こちらの道が街へ通じる正解だったのか。
どこまでも道が続くような気持が安堵に変わり、と同時に不正解である、
街へ通じていないほうの道へ向かった松口が気に掛かった。
腕時計に目をやると、彼と別れてから既に40分が経過していた。
戻らなければ、そう思って振り返ろうとした瞬間、前の木の枝が風もなく揺れた。
松口から預かった銃を揺れた木の箇所に向けた。
安全装置を震える指で外す。
唇が妙に乾いた。
「出てこいや、こっちからは何もせぇへんから。」
長距離戦ならこちが断然不利なのは明らかだ。
「絶対撃つなよ、大上。」
聞き覚えのある声で呼ばれた名前、再び大きく揺れた木の枝の下、姿を現したのは。
192 :用無し始末屋 :02/09/22 04:52
「檜原。」
比較的、仲の良い同事務所の先輩。
「よお。」
彼は軽く両手を上げて、肩をすくめてみせた。
「相方はどうしてん、誰かと一緒なんか?」
銃は下ろさずに、至近距離から額に向けたまま。
「黒田は知らん、あいつのことやから生き残っとるやろ。」
「相方やのに、探してないんか?」
訝しげな調子で彼に問うと、彼は嘲笑でも呆れでもなく、
幼い子供に向けるような笑みを浮かべた。
馬鹿にされたようで、自分の神経がちりちりと音をたててささくれ立った。
「それ、下ろしてくれや。そんなん突きつけられてたら話もできんわ。」
彼は顎でしゃくって、俺が突きつけたままの銃を指した。
ゆっくりと、伸ばした腕が固まってしまったように、ぎくしゃくと銃を下ろした。
「お前らはどうやねん、松口は?」
彼は安心したらしく、溜息を吐いて手を下ろした。
「別行動中や。」
そうか、と檜原の一言の後、沈黙が二人を包んだ。
檜原が煙草を咥え、火を付けながら聞いた。
「お前ら、誰か殺したか?」
そういえば、このゲームに入ってから一度も煙草を吸っていないな。
胸ポケットを探ると、マイルドセブンライトが手に当たった。
193 :用無し始末屋 :02/09/22 04:54
「やってない。」
おそらく。
相手に疑惑を与えるような言葉は飲み込む。
自分が意識のない空白のことは知らない、神経が過敏になっている相方の不安な行動が頭を掠めたが、
松口はやっていない、そう思いたかった。
煙る紫煙が彼の顔を遮った。
「そっか、ようここまで生きてこれたな。」
また、子供を褒めるような言い方。
神経に障った。
彼の足元には小さめの黒いアタッシュケース。
あれが彼の支給された武器だろうか。胸ポケットからマイルドセブンライトを取り出そうとして、やめた。
「やったんか?」
誰も殺さずにここまで生き延びてきたことに感心する彼は、誰かを殺してここまで生き延びてきたのだろうか。
銃を持つ手に力が入る。
「やりようがないわ、俺が持たされたんはこれや。」
俺の猜疑心に呆れたのだろう、少々不機嫌そうに彼は足元のアタッシュケースを軽く蹴った。
「何?」
俺の問いに、彼はアタッシュケースへと手を伸ばした。
「撃つなや?別に危ないもんちゃうから。」
そんなに俺は不信を明らかにしているのだろうか、
カチリという音と共にアタッシュケースが開いた。
194 :用無し始末屋 :02/09/22 04:56
「何なん?」
アタッシュケースの中身は手術器具のようなものが一式。
「エンバーミングセット。遺体保存の用具や、ご親切に説明書まで入っとるわ。」
檜原はわざわざ目の前で薄い本のような説明書を振ってみせる。
「ふざけとるやろ、死ぬことを前提にこれ持たしとんねん。
一応、治療器具としては使えるけどな。」
彼はアタッシュケースを元のようにしまって、担ぎ上げた。
大上はようやく力が抜け、だらりと腕を下げた。
檜原は人を殺していない、殺す気もない。まぁ、おそらくだが。
「どうすんねん、これから。」
武器はなく、相方の行方も分からない彼を置き去りにして、
自分だけがさっさと松口と合流する気にもなれなかった。
もちろん、彼の思うところなど全く解らないのだけれど。
「どうしようもないわ。ずっと隠れとったけど、だいぶ人も居らんようなったからな、
最後の一人にはどうせなれんやろうしな。」
投げやりな言葉に心が動く、大上は少し迷ってから、檜原に合流を持ちかけた。
「来るか?松口と海岸で待ち合わせとんねん、あいつもきっと喜ぶわ。」
松口のほうが檜原と交流もあり、親しい。
陣内と別れ、松口を自分だけで支えられるのか自信がなかった。
檜原と会って分かった、自分もかなり追い詰められている。
信頼できる者なら大勢で居る方が安全だ。
「お前らは、何しようとしてんねん。」
煙草を踏み消して気のなさそうに檜原は聞いた。
命を賭けて行動する相手に聞くにしては気が抜けている。
「街に居るはずの今田さんに会う、それからは分からん。」
かなり、適当なこれからのあらすじ。
自分にはとにかく今田に会うということしか分からない。
松口の中にこれからのプランがある。
「行くわ、どうしようもないし、ここまで来たらお前らに引っ付いてくのも悪ないやろ。」
檜原の言い分に苦笑しながらも、大上はその足をもと来た道に向けた。
196 :用無し始末屋 :02/09/22 05:05
うっわ、メッセンジャー會原でした。
最悪だ、名前全部間違えました全て訂正。
檜原→會原
本当にすいませんでした(鬱
200 :名無しさん@お腹いっぱい :02/09/22 18:26
>>始末屋さん
大上は松口と別行動となった後、COWCOW多田と
出会って話をしている最中だったのですが多田は
どこへ行ってしまったのでしょうか・・・。
それと、本人には告げていないものの大上は松口が
ルート33増田を殺す所を陣内と共に目の当たりに
した筈ですが、忘れてしまったのでしょうか・・・。
201 :名無しさん@お腹いっぱい :02/09/22 18:46
ルートの増田はいつ死んだの?
202 :用無し始末屋 :02/09/22 18:47
ハリガネ編。
すいませんでした、とにかく平謝りです。
自分で引き継ぎたいと言い出しておきながら間違いだらけで本当に申し訳ないです。
勝手なのですが、この話は捨てるということでお願いします。
>>まとめ人コモさん
>>191〜>>194はまとめの方に載せないでください。
逝ってきます。
207 :名無しさん@書き手見習い :02/09/22 23:19
りあるキッズの話を書いている者ですが、
すいません実は>>96-100の大滝話を書いたのもHN違いますが私でして、
りあるの方の話が詰まってしまったので、大滝の方を進めてみました。
で、>>96-100でミスをやらかしてしまったのですが
大滝さんは桑原さんのことを「桑原さん」ではなく「貞さん」と呼んでいるらしく(多分)
あと、桑原さん実際はビミョウに関西弁でした。
すいませんがそこらへんは、脳内変換して読んでください;
208 :名無しさん@書き手見習い :02/09/22 23:20
白川から取り上げた銃を弄びながら、
桑原はゲームが始まってからのことを思い返していた。
何百人という芸人が集められたホールから追い出され、
まず探したのは先に外に出された相方の姿だった。
普段仲の良い芸人たちも最初のホールにいたはずだ。
それでも外に出て最初に頭に浮かんだのは今村の顔だった。
なぜ、と聞かれてもきっと答えられない。
でも無条件で信用できるのはヤツしかいないと思っていた。
しかしその相方の名前は、とうに死亡者として放送された。
結局ここに来て一回も顔を合わせることはできなかった。
不幸中の幸いで合流できた親友・山崎が放送を聞きながら心配そうに
こっちを見ていたけれど、「死にました」と言われて「ハイそうですか」と
理解できるほど自分にとって死は身近なものではなかった。
あれだけ近くにいたはずのあいつの顔が、なぜか今は思い出せない。
その時。
パァン、と空洞内に銃声が響いた。
ハッとして顔を上げると、大滝のかまえた銃からは細く煙が上がっていた。
一瞬遅れて硝煙のにおいが鼻をつく。
煙たなびく銃口の先を目で追うと、スローモーションのように
後ろに傾いてゆく白川がいた。
209 :名無しさん@書き手見習い :02/09/22 23:21
>>208
「白川っ!!!」
どさり、と背中から倒れた白川の体をあわてて抱え起こす。
「白川!!」
弾が彼の体を貫通したのだろう。
抱え上げた体の胸からはドクドクと血があふれ、また、
彼の背中に添えた腕にも、重く湿った感触が伝わってきた。
白川は目を見開いたまま「あ」とか「う」とか言うような
言葉にならない声を発してから、わずかに口角を上げた。
それはまるでやっと山崎のところへ行ける、とでも言っているような。
そして、その体からは急速に力が抜けていった。
白川の最後の「笑顔」を見た桑原は、何も言うことができなかった。
そっと彼の体を地面に横たえると、ゆっくりと後ろを振り返った。
大滝は白川を撃った体勢のまま、そこに立っていた。
桑原は無言のまま立ち上がり大股で彼に歩み寄ると、その胸ぐらを乱暴につかんだ。
「どういうつもりや。」
桑原の怒りに満ちた声が、低く岩壁に反響した。
「…どうして俺を撃たないんですか」
質問に答えることなく、大滝の目は白川の体の横に放り出したままの銃を見ていた。
「どういうつもりなんか聞いてるんや!!」
桑原は堅く握った拳で彼の頬を殴りつけた。
大柄な彼の体が、後ろによろめいた。
210 :名無しさん@書き手見習い :02/09/22 23:22
>>209
「死にたいやつは、死ねばいいんです。」
大滝は血液混じりのツバを吐き出すと、ハッキリとそういい切った。
その言葉に桑原はもう一度拳を振り上げたが、
「死にたいと思ってるやつが生き残れるほど、甘いゲームじゃないでしょう?」
大滝が続けたその言葉を聞いた途端体から力が抜けるのを感じ、
振り上げた拳をガクリと下ろした。
「貞さんに血が飛び散らないように、頭じゃなくて心臓狙ってあげたんですよ」
大滝は射的が命中した小学生のように、無邪気に言った。
たしかに白川の頭を撃っていたとしたら、この至近距離だ、
血どころか頭の中身までが飛び散り、桑原に降り注いだだろう。
しかし、そういう問題ではない。
「お前、狂ってるよ…」
桑原のその言葉に、大滝は嬉しそうに笑った。
【ノンキーズ・白川 死亡】
225 :通りすがればいいじゃない :02/09/25 18:41
>>181
夕焼けが山の麓に沈んでいく。
この島に来てこの夕日を見るのは何度目だろうか。
開け放たれたガレージの扉からの景色を眺め、肥後はぼんやりとしていた。
志村、肥後、寺門の三人は市街地から引き上げ、民家がちらほらと並んだ住宅地にいた。
ガレージの奥では志村がいびきをかきながら眠り込んでいる。
向かいに座った寺門は、夕景には目もくれず頭を抱えてなにやら考え込んでいる。
そして足元には上島が入っている袋がある。
結局、市街地での収穫はスナック菓子が2袋と、ミネラルウォーターのボトルが3本きりと、
大の大人3人の腹を満たすには程遠い、惨憺たる結果だった。
それに加え、かつて上島だった肉の塊という手土産までついてきた。
正に「お荷物」と化した上島をさっさと処分してしまいたかったが、なかなか寺門に切り出せずにいた。
226 :通りすがればいいじゃない :02/09/25 18:42
>>225
「ねえ、リーダー」
寺門が喋りだす。だが顔は俯けたままだ。
上島の処分をどう切り出そうかと考えていた肥後は不意をつかれ「うぇっ?」と間抜けな返事をした。
「いやー、あのさー、こんなこと言うのもなんなんだけどさー」
言いにくそうにもじもじする寺門。告白する直前の女子中学生かお前は!
「竜ちゃん殺ったの、リーダーでしょ?」
内心でバカなツッコミをしていた肥後は、二発目の不意打ちにかなりのダメージを受けた。
「な、ななな、何を言ってんの?そんな…、バカなこと!」
動揺が思い切り顔と態度に出てしまう。誰が見ても肯定しているようにしか見えない。
「いや、いいんだよ」
227 :通りすがればいいじゃない :02/09/25 18:44
>>226
そこでやっと寺門が顔を上げる。その顔に怒りは含まれていないようだった。
「アレでしょ、志村さんに言われたんでしょ?」
声のトーンを落し、いびきをかく志村をちらりと見やる。まさかそこまで見抜かれるとは。
「竜ちゃんには悪いけど、やっぱ死にたくないもんね」
怒るどころか、寺門の表情にはどこか慈しむような色が含まれている。
「何で、分かった?」
肥後はそう言うのがやっとだった。
「いきなり後ろから撃たれたって言ってたじゃん?でも竜ちゃん、膝曲げたまま死んでたんだよね。
だから座ってたところを真上から撃ったんじゃないかと思って」
「ああ、そうか…」
寺門を見くびっていたようだ。号泣しながらもそんな洞察力を持ち合わせていたのだ。
「竜ちゃんの死体をずっと運んでたらさ、その内耐え切れなくなって白状してくれると思ったんだけど───」
後ろ頭を掻きながら、照れたように笑う寺門。
「俺のほうが我慢できなくなっちゃってさ。でも俺はリーダーを責めるつもりはないよ」
228 :通りすがればいいじゃない :02/09/25 18:45
>>227
「寺門…」
「俺はもうこの"チーム"を抜けるよ。志村さんが寝てる今のうちにね」
まだ志村は呑気に寝ている。
「リーダーはどうするよ?」
「俺は…」
寺門と目を合わせていられない。視線を外して口の中でもぐもぐと言葉を発する。
「まァ、いいや。俺は独りで行くよ」
足元に転がしていたザックを拾い上げる寺門。
「また会えたら…、イヤ、会わないほうがいいのかもね」
蒼白になった肥後の顔に向けて、寺門が歯をむいてニッと笑いかける。
229 :通りすがればいいじゃない :02/09/25 18:46
>>228
「そうか、じゃあお前はたった今から敵になるわけだな」
肥後と寺門はぎくりとした。寺門の背後にいつの間にか志村が立っていたのだ。
さっきまで寝てたはずなのに、いつの間に!と気付いた瞬間にはもう遅かった。
志村が横薙ぎに振りぬいた手斧が、寺門の頚動脈を分断した。
かつて観た映画「椿三十郎」の如く、鮮血を吹き上げる寺門。
寺門の屈強な肉体が足元に崩れる様を、肥後はただ呆然と見ていることしかできなかった。
【寺門ジモン(ダチョウ倶楽部) 死亡】
248 :下手な物書き :02/09/28 13:16
陣内さん、受け継ぎます。
陣内は歩き続けた。ハリガネと別れ、山下の死に対面し、その他のいろいろな
死体を見て・・・。
“もう・・・つかれた・・”
しかし、そんな陣内を励ましていたのは今はもういない先輩・後輩だった。
みんな死んでしまった・・。自分をかばって死んだ者も、仲間を信じて安らかに
死んだ者も、狂い何人もの命を奪って最後を迎えた者も、みんな、みんな・・。
陣内は歩き続けた。何かを見つけるために・・。
289 :ロボ二号 :02/10/05 17:02
ハリガネ編、自分なりの解釈で続けさせていただきます。
矛盾があったらご指摘お願いします、なんとか辻褄合わせるようにしますので。
290 :ロボ二号 :02/10/05 17:03
雑草を分け入ってひたすら道を進んだ。
暑さか緊張か、足を踏み出すたびに額には汗が滲む。
右手に銃を握り締めると、硬い銃身にへばりつく手の平が汗で滑りそうだった。
街の端が目に入ってきて、大上は歩を止めた。
こちらの道が街へ通じる正解だったのか。
どこまでも道が続くような気持が安堵に変わり、と同時に不正解である、
街へ通じていないほうの道へ向かった松口が気に掛かった。
腕時計に目をやると、彼と別れてから既に40分が経過していた。
戻らなければ、そう思って振り返ろうとした瞬間、前の木の枝が風もなく揺れた。
松口から預かった銃を揺れた木の箇所に向けた。
安全装置を震える指で外す。
唇が妙に乾いた。
291 :ロボ二号 :02/10/05 17:04
「出てこいや、こっちからは何もせぇへんから。」
長距離戦ならこちが断然不利なのは明らかだ。
「絶対撃つなよ、大上。」
聞き覚えのある声で呼ばれた名前、再び大きく揺れた木の枝の下、姿を現したのは。
「曾原。」
比較的、仲の良い同事務所の先輩。
「よお。」
彼は軽く両手を上げて、肩をすくめてみせた。
「相方はどうしてん、誰かと一緒なんか?」
銃は下ろさずに、至近距離から額に向けたまま。
「黒田は知らん、あいつのことやから生き残っとるやろ。」
「相方やのに、探してないんか?」
訝しげな調子で彼に問うと、彼は嘲笑でも呆れでもなく、
幼い子供に向けるような笑みを浮かべた。
馬鹿にされたようで、自分の神経がちりちりと音をたててささくれ立った。
「それ、下ろしてくれや。そんなん突きつけられてたら話もできんわ。」
彼は顎でしゃくって、俺が突きつけたままの銃を指した。
ゆっくりと、伸ばした腕が固まってしまったように、ぎくしゃくと銃を下ろした。
「お前らはどうやねん、松口は?」
彼は安心したらしく、溜息を吐いて手を下ろした。
「別行動中や。」
そうか、と曾原の一言の後、沈黙が二人を包んだ。
292 :ロボ二号 :02/10/05 17:05
曾原が煙草を咥え、火を付けながら聞いた。
「お前、誰か殺したか?」
そういえば、このゲームに入ってから一度も煙草を吸っていないな。
胸ポケットを探ると、マイルドセブンライトが手に当たった。
「やってない。」
自分は。
相手に疑惑を与えるような言葉は飲み込む。
自分が意識のない空白のことは知らない。
大量の食料と武器を手に入れていたことやルートの増田との一件も、
松口が覚えていないのだから、わざわざ言って疑惑を与えなくても良い。
煙る紫煙が彼の顔を遮った。
「そっか、ようここまで生きてこれたな。」
また、子供を褒めるような言い方。
神経に障った。
彼の足元には小さめの黒いアタッシュケース。
あれが彼の支給された武器だろうか。
胸ポケットからマイルドセブンライトを取り出そうとして、やめた。
「やったんか?」
誰も殺さずにここまで生き延びてきたことに感心する彼は、
誰かを殺してここまで生き延びてきたのだろうか。
銃を持つ手に力が入る。
293 :ロボ二号 :02/10/05 17:08
「やりようがないわ、俺が持たされたんはこれや。」
俺の猜疑心に呆れたのだろう、少々不機嫌そうに彼は足元のアタッシュケースを軽く蹴った。
「何?」
俺の問いに、彼はアタッシュケースへと手を伸ばした。
「撃つなや?別に危ないもんちゃうから。」
そんなに俺は不信を明らかにしているのだろうか、
カチリという音と共にアタッシュケースが開いた。
「何なん?」
アタッシュケースの中身は手術器具のようなものが一式。
「エンバーミングセット。遺体保存の用具や、ご親切に説明書まで入っとるわ。」
檜原はわざわざ目の前で薄い本のような説明書を振ってみせる。
「ふざけとるやろ、死ぬことを前提にこれ持たしとんねん。一応、治療器具としては使えるけどな。」
彼はアタッシュケースを元のようにしまって、担ぎ上げた。
大上はようやく力が抜け、だらりと腕を下げた。
曾原は人を殺していない、殺す気もない。まぁ、おそらくだが。
「どうすんねん、これから。」
武器はなく、相方の行方も分からない彼を置き去りにして、
自分だけがさっさと松口と合流する気にもなれなかった。
294 :ロボ二号 :02/10/05 17:09
もちろん、彼の思うところなど全く解らないのだけれど。
「どうしようもないわ。ずっと隠れとったけど、だいぶ人も居らんようなったからな、
最後の一人にはどうせなれんやろうしな。」
投げやりな言葉に心が動く、大上は少し迷ってから、曾原に合流を持ちかけた。
「来るか?松口と海岸で待ち合わせとんねん、あいつもきっと喜ぶわ。」
松口のほうが曾原と交流もあり、親しい。
陣内と別れ、松口を自分だけで支えられるのか自信がなかった。
曾原と会って分かった、自分もかなり追い詰められている。
信頼できる者なら大勢で居る方が安全だ。
「お前らは、何しようとしてんねん。」
煙草を踏み消して気のなさそうに曾原は聞いた。
命を賭けて行動する相手に聞くにしては気が抜けている。
「街に居るはずの今田さんに会う、それからは分からん。」
かなり、適当なこれからのあらすじ。
自分にはとにかく今田に会うということしか分からない。
松口の中にこれからのプランがある。
「行くわ、どうしようもないし、ここまで来たらお前らに引っ付いてくのも悪ないやろ。」
曾原の言い分に苦笑しながらも、大上はその足をもと来た道に向けた。
295 :ロボ二号 :02/10/05 17:15
待ち合わせ場所に戻ると、松口が背を丸めて不安そうに座っていた。
大上がへらへらと笑って、よお戻ったで、と話しかけると一瞬顔を輝かせ、慌てて不機嫌そうな表情を取り繕った。
15分遅れの大上に罵声を浴びせた後、松口は曾原のとの合流を素直に喜んだ。
大上の行ったほうの道が街に繋がっていることや、互いにそれぞれの道のりを説明し、
その後、松口の提案で一時近くの民家に身を隠し、これからの計画を話し合うことにした。
296 :ロボ二号 :02/10/05 17:16
「この後どうすんねん。今田さんに南の廃校に来いいわれてたらしいけど、
合流してもどうなる訳でもないし、街には生き残ってる奴が集まっとるかもしれん、危険は増す。」
あまっていた食料を食べ、一通り落ち着くと、曾原が話を切り出した。
「いうても、俺らだけでどうしようかないし、かなり生き残りの数は減ってきてる。
今田さんは松本さん達を追ってるらしいんや。」
「追ってる?なんでや、一緒に居るんやないんか?」
「理由は分からんけど、合流してるわけやないらしいねん、ちょっとしか話してないし・・・。」
「ちょお待てやお前ら、その前にどうやって話したんや。
直接会ったんならそのまんま付いてけば良かったんちゃうんか。携帯はもう使えんはずやで。」
「俺の支給されたもんやないけど、拾った武器の中にトランシーバーがあって、
それが今田さんと繋がってた。それでや。」
曾原は頷き、無言で話の先を促した。
297 :ロボ二号 :02/10/05 17:18
「松本さん達・・・おそらく松本さんは木村さんと一緒に行動しとるんやろ
・・浜田さんは放送聞いてても分かるように、一人で殺しまくっとる。
・・・今田さんは直接一緒に居るわけやないけど松本さんとは仲ええ、
松本軍団の一人やからな。吉本の先輩も少なくなってきてる、
そんなかでも味方になってもらえるような人はほとんどおらん。
そこでや、木村さんとは面識もある、松本さんもいきなり殺すようなことは
せんやろ、今田さんと一緒やったら殺されんだけやなくて仲間にしてもらえるかもしれん。
松本さん達と一緒やったら殺される確率は低い。
浜田さん、たけしさん・・・松本さんを殺そうとするんか合流するんかは分からん、
それでも、俺ら単体でおるよりも
松本さん達とセットになってるほうがなんぼか可能性が高くなる。」
298 :ロボ二号 :02/10/05 17:20
松口は一気に喋るとペットボトルを掴んで口に水を流し込んだ。
「やから、とりあえず第一に今田さんと合流さしてもらうんや。」
ペットボトルのキャップを閉めながら松口はにやりと笑った。
「お前、計算高いなー。」
「もちろん、全部上手くいくとは思ってへん、そこらへんは臨機応変で頼むわ。」
松口と曾原が掛け合いをしているのを眺めていた俺を、松口が見咎めたように言った。
「お前もちょっとは何か言えや、さっきから何も喋ってへんやんけ。」
「いや、よう考えてるなぁ思て。」
「当たり前や、命かかっとんねん。」
もっともな言い分。
「まぁ、そうやけど・・・あー・・。」
「なんやねん。」
「ちょお便所行ってくるわ、外。」
「さっき食うてもうだすんか。」
「うっさいわ、消化がええんや。」
曾原の茶化しを背中に受けながら、大上は古びたドアを閉めた。
299 :ロボ二号 :02/10/05 17:21
大きく息をつき、ドアの横の壁により掛かる。海岸には死体が散らかる。
「みんな、命なんかかけるからおかしなっていくんや、何で俺らが殺しあわなあかんねん・・。」
呟きは遠くの波音に消され、ドアの中からは久々に聞く相方の楽しそうな声が聞こえる。
浮かない気持のまま、大上はもう一つの待ち合わせへ重い足を向けた。
300 :ロボ二号 :02/10/05 17:23
待ち合わせの相手がまだ居る可能性はかなり低かったが、
それでも会い、聞いておかなければならない。
二時間ほど前、さっさと進んでいってしまった松口を見送った後、
死体に擬態していた多田を見つけた。そこで聞いた空白の時間。
「どういうことや、あいつがなんかしたんか?」
松口と多田が接触していたなんて話は知らない。
自分の空白の時間を知っているらしい多田を問い詰めた。
多田は卑屈にも見える上目づかいをさまよわせ、怯えたように口を開く。
「大上さんが居なかった時、俺・・・松口さんに銃突きつけられて、
武器とか食料とか取られて・・・。」
あの大量の武器と食料はそういうわけか。
視線の定まらない多田は大上の手に納まっている銃を気にしながら説明を続けた。
松口の殺意のこもった視線のこと、大上が倒れていたこと、その横で死んでいた二人の男のこと。
「松口が殺したんか?」
「分かりません、僕は・・。」
時間が気になった、街までどれだけあるのか分からないが、ここで無駄にしていてはいけない。
301 :ロボ二号 :02/10/05 17:24
「ちょお待て、この後松口と待ち合わせしてるから、その後に続き聞かせてくれへんか?」
「あ、でも、・・」
「ええやろ?」
多田がどこに行こうとしているのか知らないが、そんなことは気にしない。
実際に待っている可能性はかなり低くても、一応は約束を取り付けておかなければ。
こういう時にこそ活用せなな、吉本の縦社会。
「・・・はい、でも俺も危なかったら逃げますから、追ったりせんといてください。」
「じゃあ、あの岩場でな。」
指差したのは波で削られ、入り組んだつくりになっている岩場。
相手がもし襲ってきたとしても身を隠す場所は多い。
こちらを信用していないだろう多田を信用はできなかった。
そういって別れ、道をしばらく進み振り返ると、こちらを値踏みするような多田と目が合った。
俺に気付かれたことに気付き、慌てて去っていった多田の後姿に、話を鵜呑みにはできないと感じた。
306 :名無しさん@お腹いっぱい。 :02/10/05 20:33
今、この場で自殺しちゃえば楽だろうな…
銃だったら、苦しまずに死ねるだろうし…
「……ああっ、くそっ!」
渡部建(アンジャッシュ)は、頭を振ってそのろくでもない誘惑を振り払った。
これで何度目だろうか。
相方の名前が放送で告げられた時、彼は即座に自殺を考えた。
しかし、せめて最後に、気心の知れた人間に会いたい。そして別れを告げてから死にたい。
そう思い直し、疲労困憊の体に鞭打って、
当初の目的であるゲバルト一族メンバーの捜索を続行した。
しかし、歩けども歩けども、
くりぃむしちゅーにも後輩アンタッチャブルにも遭遇できなかった。
それに、
(あの時の西尾さんの顔…)
洞窟で会った西尾秀隆(×−GUN)の表情が忘れられずにいた。
307 :名無しさん@お腹いっぱい。 :02/10/05 20:34
笑福亭鶴瓶を蜂の巣にしたあと、恍惚とした表情でマシンガンを眺めていたあの表情。
「もしかして…ゲバルトの皆も…」
こんな限りなく非現実的な世界で、正気を保っていられる方が難しい。
「いや、あいつらに限ってそんな事あるわけない…」
しかし確か放送では、アンタッチャブルが「本部のヘリを撃墜した」と告げられていた。
普通、そんな事をすれば本部から狙われるのは目に見えている。
もしや、正常な判断すら出来ない状態なのでは…
「ええい、もう!」自分の頬を手で思いきり張った。
「考えるな、考えるな、考えるな!」
大きく溜息をつき「…ちょっと休むか。食料も尽きかけてるし…」
彼は横手に見えた自動車整備工場へと歩いていった。
308 :名無しさん@お腹いっぱい。 :02/10/05 20:35
「うっ……………………!」
開けっぱなしになっていたドアに近付いた瞬間、
強烈な血の匂いが鼻腔を突いた。
明かりが落ちているため、遠目ではよく見えないが、中にいくつか死体が転がっている。
すぐにその場を離れたかったが、食料の事を考えるとそうもいかない。
それに、考えたくはないが、
あの死体が探しているゲバルトメンバーである可能性もある。
外れている事を祈りつつ、渡部はゆっくり足を踏み入れた。
「………………何これ?」
それは、桐畑亭(熊本キリン)、古坂和仁と小島忍(底ぬけAIR−LINE)の死体だった。
既に放送で名前を聞いていたとはいえ、共に舞台に立った盟友の死体を目の当たりにしたのだから、もっと驚いてもよさそうなものだが、
渡部は死体自体よりも、それが置かれている状況の不可解さに首を捻っていた。
桐畑の死体は、両腕が無かった。
底ぬけの2人は、大爆笑を顔に貼り付けたまま、全身蜂の巣になっていた。
そして、3人とも、ある筈の首輪を付けていなかった。
「…………意味分かんねぇよ」
309 :名無しさん@お腹いっぱい。 :02/10/05 20:36
「ん?」
その時、テーブルの上に置かれている物が目についた。
アタッシュケース位の大きさの箱に、アンテナとダイヤルとイヤホンがつけられている。
「何だろこれ…」
ダイヤルを適当にガチャガチャ回してみたが、
時折人の声が混ざった雑音が聞こえるばかりで、どうも調子が悪いようだ。
よく見ると、側面には弾痕らしき穴が開いていた。
「ラジオ……か?
にしてはちょっと見た事ない形してるけど…まぁいいや。壊れてるし」
テーブルの上には、もう1つ機械があった。
そのノートパソコン状の機械のディスプレイには、この島と思しき地図が映っており、
各所で人名付きの赤い丸が点滅している。
「これ…レーダーじゃん!
よっしゃ!これさえあればあいつらの居場所も…」
その時、ラジオらしき機械から、絶叫が聞こえてきた。
やがてそれは、身も世もない慟哭に変わった。
「……………柴田?」
ようやく渡部は、ラジオだと思っていた物が盗聴器である事に気付いた。
渡部のよく知っている男が、
かつて1度も聞いた事のないような声で泣いていた。
【次で再びアンタッチャブル編にシフト&完結です】
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