778 :奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo :03/01/04 13:01
>777
2辺りで泰造に差されてお亡くなりではないかと。
念の為にトリップ付けましたと呟きつつ、>>752からの続き。
後、私には何が出来るだろう。
光代は思った。
あ、ピーちゃんのパソコン! ノートパソコンのG4!
太田が物の中で一番大事にしている物の名前を思い出した。
あのパソコンの中には、太田が仕事上でやりとりしている各出版社の
メールアドレスが全てその中にある筈だと思いついた後、若手ベテラン
全ての芸人の妻を集めきり、更に芸人の妻以外にもこの件には同調して
いない人間も芸人の妻以外にもいる筈であり、それを集める為にも、太
田がエッセイなどを連載している複数の出版社もこのまま優勝者が決ま
るまで血を血で洗うバトルロアイヤルを静観していられる訳がないのだ
から、それで人を集められないかと光代は考えた。
779 :奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo :03/01/04 13:08
更にここまで大がかりなのは、私1人だけでは絶対無理だけれども1人
が2人になり、2人が3人と繋げていってこれを全国的に止めようと運
動を繰り広げれば、最終的にこのBL法を決めた政府も考え直すのでは
ないかと続けて考えた光代は、今考えた事を実行に移そうと手にメモ帳と
ペンを持ったまま太田の書斎まで階段を駆け上がった。
ピーちゃんのパソコン……。
ピーちゃんが私の許可無しにアダルトサイト見て、腹が立つからとピー
ちゃんを何度か殴った後で叩いたりして壊れるからとあわてて止めようと
したピーちゃんを無視して八つ当たりをしたあのパソコン……。
あった!
光代は目の前にある、使っている主がいないが故に少しホコリがかぶっ
ていたPC、PowerBook G4を見た後で自分はそのパソコンの
使い方は分からないけれど、とにかく今はこれを使わなければと、今いる
人間で事務所の事務員以外にPCを使える人間が誰もいない以上、このパ
ソコンが壊れてもいいから出版社のメールアドレスだけは調べ上げなけれ
ばと目の前のPCの電源を入れると、OSXの画面が見えた。
目の前で高崎が太田にその使い方を教える為に指導していたその場にい
た光代は、必死になってその使い方を思い出しながらタッチパッドを必死
に触ってカーソルを移動させ、右クリックに当たる右側のトラックパッド
を触ってからメールソフトの画面を開いた。
もう少し、メールアドレスさえ開いてそれを全部開いてメモして、事務
員に文面作ってもらってそれさえ出版社等に送ってもらえば……。
分からないままに光代はそのメールアドレス、太田のツテのある出版社
10数社全てをメモに引き写してPCの電源を切ってから、長井の妻と夏
美が家に来るまで1階の居間で待った。
794 :名梨 :03/01/08 01:35
涙でくしゃくしゃになりながら雑木林の中を駆け抜けていく村上。
頭の中は真っ白で、逃走本能だけが足を動かしている。
ただ前を見て走り続ける。
その時、
「あっ!」
足が窪にはまり、村上はバランスを崩した。
そして、そのままドシャッと勢いよく転倒してしまった。
「っ…うう…」
すぐに村上は立ち上がろうとしたが、足に力が入らない。
「は、早く…早くっ…」
心では必死に立ち上がろうとしても、体が言うことを聞かない。
腕はガタガタと震えている。
「早く…逃げなきゃ…」
焦る村上の脳裏にあの情景が浮かびあがった。
ほんのついさっきの出来事。
銃を向ける黒澤。
倒れる大島。
795 :名梨 :03/01/08 01:38
>794
大島と村上は黒澤の方へ走りだした。
しかしこちらを向いた瞬間、黒澤は銃を向けた。
「!?」
二人の体が一瞬にして固まった。
相方が自分に銃を向けている。
信じがたい、信じたくない光景。
辺りは気味が悪いくらいに静か。
「……おい…何やってんだよ」
大島が低い声で尋ねる。
村上は出したくても声が出ない。
「……ら。」
黒澤がボソボソと小さい声で何かを言った。
「はあ?!」
「生き残るんだから!!あたし、絶対生きて帰るんだから!!!」
黒澤の声が響きわたると、辺りはまた静まり返った。
「じゃあ、お前はよ、平気で人殺せるのかよ。」
「…当たり前じゃん。生き残ろうと思えば何だってできるんだから。」
「じゃあできるんだったらやってみろ!!!」
796 :名梨 :03/01/08 01:41
補足です。抜けてました。スマソ。
794は>>185です。
813 :新人@あけおめです。(遅 :03/01/12 12:49
>>475 の続きです
“随分とかっこいいじゃないですか?オザーさん。”
ああ、本当にこれは漫才のようだ
ひとつのマイク、板張りの舞台、10分足らずだが客の目を独占できているという快感
混ざって、ぐちゃぐちゃになって、井戸田(スピードワゴン)の脳髄を侵食し始めていた
引き金を引け!
殺せ、殺せ
殺すんだ
相方を、そして自分自身を
それがお前と、この国の芸人全てに課せられた試練だ
日本中全ての人間が、お前とその相方の死を期待しているんだ
芸人冥利に尽きるだろ?ほら……やれよ
頭の中に響く声……少し癖のかかった…誰だ?
嫌な笑い方をしてやがる
自分たちの漫才で、会場全ての人間を…いや、このちっぽけな島国の住民の全てを笑わせる
それが自分たちの夢であり、目標であったはずなのに…。
それを可能とする舞台を目指して、一歩一歩ながら着実に歩いてきたはずなのに…。
それが、何か…いや、とんでもなく違った形で達成されることになるだなんて…
814 :新人@あけおめです。(遅 :03/01/12 12:50
「くそっ……」
右手が細かく震える。
小沢の心臓を狙っているはずの冷たい鉄の筒は、あまりにも頼りなく目標を求めるように彷徨うばかり
それが、井戸田の心理をそのまま投影しているようで、小沢にはとても滑稽に見えた
「…なに躊躇してんだよ…」
なんの恐れもなく井戸田の方へゆっくりと近づき、銃身を掴んで自分の胸へと引き寄せる
「いいか」
―最後まで芸人としてお茶の間に歪んだ笑いをお届けする。っていうのも一つの死に方だ
でも、このまま一芸人として死ぬか、敗者復活戦で這い上がるか…
それを選ぶ事だってできるってことぐらい、自分の頭で考えろ
何をやったかってことなんて重要なんじゃない、やろうとしたかしなかったかが重要なんだよ
ふふん。と小沢はまた笑って見せた
「こっから先は、自分で選べ」
いつものような笑みをもちながらも、なにか芯のようなものを据えている
今までに見たことのない、小沢の顔だった
822 :蟹座 :03/01/13 17:19
>>739の続き
黄昏刻。
ビートたけしの縄張りの境界付近で、
内村と南原、そして清水の3人は最後の打ち合わせをしていた。
既に必要な準備を終え、時計を合わせ決行の時を待つ。
「防弾チョッキはおまえが着ていけ」
「でも、」
南原が差し出す防弾チョッキを受け取ることに内村は躊躇した。
これは盾となる南原の方にこそ必要なのではないだろうか。
「おまえがたけしさんに会いたいんだろ?」
南原が内村の目を見る。
「オレは付き合うだけなんだから、おまえが着なきゃ、意味がないよ」
南原は防弾チョッキを内村に押し付けた。南原の目を見て内村は黙って頷く。
「その代り、オレはこれを持っていく」
南原が手にしたのは有田が置いていったブーメランだった。
「とにかく、時間を稼がなきゃならないからな」
用意したのは近隣の民家から物色してきた金物のバケツに
お湯の入ったペットボトル数本、
そして内村がザックから取り出したのはダイナマイトだった。
823 :蟹座 :03/01/13 17:20
>>822
「こいつを使う時が来るなんてな…」
内村は複雑な思いでそれを見る。ダイナマイトは内村に支給された武器だった。
2本まとめて縛り付け、それを清水に渡した。
「いいかい、ミッチャン。絶対に無理しちゃだめだよ?」
「導火線に火を付けたらその場からなるべく遠く離れて、
絶対に戻って来ちゃだめだぞ」
内村と南原が念を押すのに清水は頷いた。
「うん、わかってる」
「じゃ、オレたち行くわ」
ザックを背負い南原が軽く手を振った。
「じゃあね、ミッチャン。気をつけて」
内村の笑顔が遠ざかる。
別れはあっけないほどだった。
ダイナマイトを握り締め、清水は二人の後ろ姿をじっと見送った。
ウッチャンナンチャンのこの姿をその目に焼き付け、生涯忘れることのないように。
そして、30分後――――。
運命の導火線に火が付けられた。
825 :蟹座 :03/01/13 17:21
>>823
どおぉん!
という地に響く突然の爆発音に、建物の中にいたたけし軍団は色めき立った。
「何だ、今の?!」
「南の方に煙が見えるぞ、近い」
「山火事になってるとまずい。様子を見にいくぞ」
万一に備えグレート義太夫と松尾伴内、そして負傷して床についている
ラッシャー板前を隠れ家に残し、そのまんま東、ガダルカナル・タカ、
ダンカン、つまみ枝豆、井手らっきょが外へ駆け出していく。
偵察隊の姿が全員見えなくなるのを確認して、辺りに身を潜めていた
内村と南原は行動を開始した。
窓のない建物の東側に簡単なカマドを作り、金物バケツにペットボトル
の湯を入れて沸騰させる。多少乱暴だが足止めに熱湯を使おうという作戦
だった。使いきったペットボトルには近くの小川から予備に水を補給しておく。
偵察隊の一番手が帰ってくるまでは、山道で傾斜があることを考慮しても
往復せいぜい10分弱。それまでに準備を終えなくてはならない。あとは
戻ってくる時間差を利用して一人ずつ倒す算段だった。
826 :蟹座 :03/01/13 17:22
>>825
バケツの湯が沸騰した。
内村と南原は互いの目を見る。
そして、どちらからともなく無言で頷いた。
内村が南に面した建物の入り口に向かう。2階の窓から見張りをしていた
松尾伴内と目が合った。建物の中で何かをわめく声。階段を降りる音。
松尾が入り口から出てきた。内村が脇から飛び出し、鳩尾の辺りに膝蹴り
を入れる。倒れたところを南原が押さえ込んだ。
「早く、行け!」
南原のしかめっ面がチラリと視界を掠めたが、それには構わず内村は
建物の内部に向かって突進した。
後ろは振り向かない。あとは南原がなんとかする。
それは18年間培ってきたお互いに対する信頼の証だった。
832 :通過@19 :03/01/14 17:54
...俺は...。
撃たれた時の痛み。
けれどなにより、薄れていく意識の中で
ぼやけてく視界の中で見えたあの顔の方が自分をもっと苦しめる。
なぜかあの時、あの顔だけははっきり見えた。
ヒデ...。
完全に目を覚ます瞬間
夢と現実の狭間で松下がつぶやいた名は
紛れもなく相方・升野の名前だった。
天井?
目が開いて最初に視界に飛び込んできたのは
なぜかどこかで見たことのある懐かしい天井だった。
ゆっくりと起き上がってやっとここが体育館だということを知る。
おかしい。
なんでこんなところにいる?
俺は死んだんじゃないのか?
ここが天国?そんな馬鹿な話あるわけがない...。
836 :書き手見習い :03/01/14 21:16
>537
「俺が久仁さんを殺したんです。」
大滝のその言葉は、予想していたとはいえやはり桑原に大きな打撃を与えた。
言葉がすぐには出てこない。
「俺が、殺したんです。」
大滝は言い含めるように、もう一度ゆっくりと言った。
「なんで・・・。」
それだけ言うのがやっとだった。
「どうせ死にかけだったんですよ。だから楽にしてあげた。
フイ打ちだったから苦しまなかったと思いますよ。」
死んだことにも気づいてないかも、と大滝は少し笑った。
「・・・。」
大滝の言葉に受けた衝撃の後、桑原には不思議と何の感情も湧いてこなかった。
感情の回路が麻痺してしまったのかもしれない。
実際、今。この時に。一体どのような感情が正しいというのだろう。
怒り?悲しみ?どんな感情も、この非日常を表すには足りない気がした。
「ねぇサダさん。俺、いい事したでしょう?」
そう言った大滝の笑顔が、桑原にはなぜか痛々しかった。
837 :書き手見習い :03/01/14 21:18
>836
「・・・ありがとな。」
さんざん頭を働かせた挙句、桑原の口から出てきたのはそんな言葉だった。
他に何が言えるだろうか。
「あいつ苦しんでたんやろ。楽にしたってくれて、ありがとう。」
嫌味ではない。本気でそう思っていた。
しかし大滝はひどく裏切られたような顔をした。
「俺のこと恨まないんですか?」
「あいつにとって、それがいちばん良かったと思う。」
「・・・。」
「なぁ、聞いてええか?」
大滝は視線だけをこちらに向けた。
「久仁人は、何で死にかけてたん?」
知らない可能性もあるが、聞くだけはと思い尋ねた。
「・・・原田さんに切られたって言ってました。」
「原田って・・・泰造か!?」
大滝が頷く。
「他にも何人か原田さんに切られたみたいでした。
久仁さんが言うには、原田さんはもう頭おかしくなってるって。」
838 :書き手見習い :03/01/14 21:21
>837
もう事実は桑原の理解の範疇を超えていた。
「泰造が・・・」
力なく呟く。
もう、たくさんだ。
こんなゲームさえなかったら・・・。
誰もが一度は思ったであろう、無力な仮定が頭に浮かぶ。
こんなゲームさえなかったら誰も死ななくて済んだはずだ。
久仁人も山崎も白川も死ななかったし、泰造も人を傷つけるような奴ではなかった。
そうだ、目の前に立つ大滝だって、ひねくれていて毒舌ではあったけれど
そのくせ純粋で根はまっすぐで、相方を大切にする、そんな人間だったはずだ。
このゲームが全てを変えてしまった。
そこまで考えて、桑原ははたと気づいた。
「なぁ、ズミはどうしたん?」
桑原が出したその名前に、大滝のまとう空気が急に張りつめたのがわかった。
840 :名無しさん@外の世界 :03/01/14 21:26
吉本新喜劇 それは吉本の古い歴史の中でも多大な功績を残してきた。
そのせいか否か、お笑いバトルロワイヤル以前に吉本によって
新喜劇劇団員は芸人から俳優のカテゴリーに替えられていた。
しかし、石田靖や山田花子といった新喜劇以外のタレント活動も盛んだった劇団員は
強制的に参加していた。
「おはようございます。川畑さん。」
「ウッス 小薮。 お前 次の公演の練習してきたか?」
「・・・・・・」
新喜劇はギャグなどのお笑い要素を薄めた形に変化していた。
それでも台本には政府のチェックが入り、公演中も監視員がついていた。
「川畑さん、知ってはりますか?」
「なんや。」
「知り合いの構成作家に調べてもらったんですけど・・・・
内場さん亡くなりましたよ。」
841 :名無しさん@外の世界 :03/01/14 21:26
「!?」
「ほんまか?小薮?」
他の劇団員達が集まってくる。
「内場さんだけやない・・・辻本さんも未知さんも・・・ヒロさんだってめだかさんかって
みんな死んでしまったんですよ!」
顔を伏せたまま小薮は声を張り上げた
「そんな・・・」
泣き崩れる劇団員達
呆然と立っている川畑に向かって小薮は続けた
「川畑さん・・・。ほんまに俺らこのままでいいんですか?
内場さん達の仇とらなくてもいいんですか?」
「そんなこと言うたかて・・・今の俺らに何が出きるっていうんや?」
川畑は小さく呟いた
「川畑さん。俺らは芸人や。俳優やアイドルなんかと違う。
笑いで勝負してるんや。笑いで飯食ってるんや。それのなにがいけないんですか?
どうして内場さん達は理不尽に殺されないとあかんのですか?
どうして俺らは笑いで勝負する事ができないんですか?」
全てを言い終えた後、小薮はうずくまり、泣いていた。
「小薮・・・・」
劇団員の間には重苦しい空気が漂っていた
844 :通過@19 :03/01/15 13:49
>>832続き
バカリズム・松下敏宏さんですね」
あきらかに場違いな明るい声で女が話し掛けてきた。
白衣を着た、まるで給食当番のような格好をしている。
戸惑う松下のことなど気にもとめずに
女はすぐにいくつかの問診を始めた。
「...はい結構です。お疲れ様でした」
問診が終わると、男は松下に「失格」と書かれた
ワッペンを渡した。
今まで松下が見てきたこと
体験してきた事全てを否定するかのような女の
明るい笑顔が余計に松下を混乱させる。
「あの...、これ、どういうことですか?」
「これは集団催眠実験なんですよ。芸人さん皆さまに参加していただきました。
これ以上はあまり詳しく言えないんです」
それだけ言うと女は立ち去ってしまった。
845 :通過@19 :03/01/15 13:51
>>844続き
あまりにも説明が足りない。
俺が体験してきたついさっきまでのこと
それが全部催眠?俺が見せられてた夢?
どういうことなんだよ一体。
立ち去る女の後姿を見ながら、松下はなんとか全てを理解しようと試みた。
そして挫折した。
もう怒る気力もない。
ただ体中にひどい疲れが残っただけだった。
あれは全て夢。
催眠実験とかで見せられた幻。
けれどあまりにもリアルで
撃たれたあの感覚がまだ少し身体に残っている。
そして、あいつ...。
ふと自分の横を見ると、あの顔があった。
自分を真っ先に殺しに来たあいつ。
静かに、まるで死んだように眠っている升野を
見ているうちに、再びあの記憶が蘇った。
憎しみに支配された感情。
それを表すかのような、自分の身体を突き刺すほどの鋭い目。
顔は無表情だったが
あきらかに松下に殺意を抱いていた。
けれど松下は升野に怒りを覚えることはなかった。
ヒデ...。
848 :通過@19 :03/01/15 15:14
>>846改正版から
振り向きざまに見た、死ぬ直前に見た升野の顔。
あの顔、あの目は
憎しみのほかに
もっと別の感情が入り混じっていたことに
松下は気付いていた。
俺はなんて事をしたんだろう。
そう、撃たれて、体中の力がなくなって
意識が吹っ飛ぶあの瞬間にも
確か同じことを思った。
誰かを殺すことでしか生きる権利を得られないあの状況の中
一人はつらくてつらくてたまらなかった。
スタート時にしたかったこと。
それは仲間を求めることだった。
誰かと合流したかった。
その気持ちを抱いたのは、俺だけじゃない。
「待ってください」
音のない体育館に松下の声が響き渡る。
女がその声に振り返る。
このままじゃ終われない。
終わらせちゃいけない。
どうして俺は、あいつを信じられなかったんだ。
もう一度行かなきゃ。
あの場所に。あいつの所に。
「もう一度催眠かけてもらえませんか」
849 :通過@19 :03/01/15 15:16
>>848続き
まさか再びあの世界に戻ろうなんて
考える奴がいるわけないとでも思っていたんだろう。
松下の声を聞いた女は、驚いた顔でこちらを見ていた。
「...あの、それはちょっと...」
「無理なこと言ってるのはわかってます。
でも、もう一回だけできませんか?」
「えっ...いや、あの....」
困り果てる女に、なお松下は頼み込む。
「生き返らせろって言ってるんじゃないんです。
ただ話ができたら、こいつと少しだけでも話を
させてくれるだけでいいんです」
850 :通過@19 :03/01/15 15:26
>>849続き
普段こんなに熱くなることなんてなかった。
強く、強くこうしたいっていう考えを持つ事なんて滅多になかった。
ネタもあいつが書いてくれた。
俺は全部あいつに任せていた。
それだけ俺は、あいつの才能を認めてて、信頼していた。
なのに...。
「だめですよ。話なら彼が失格になってから...」
「それじゃ遅いんですよ!お願いします。
向こうでこれが催眠実験だったなんで絶対ばらしたりしませんから」
「.....」
女は眉間に皺をよせ、大きくため息をつく。
「誰がこれやってるんですか?会わせてください。
僕が直接頼みますから」
「あっ、いや、んー、ちょっと、ちょっと待っててもらっていいですか」
主催者に会わせるのはさすがにまずかったのだろう。
女はその場にとどまる松下を確認すると奥へと消えて行った。
851 :通過@19 :03/01/15 15:35
>>850続き
「向こうに行っても、生き返ってもう一度参加なんて出来ませんからね」
戻ってきた女の最初の一言で
松下はもう一度升野に会えることを知った。
「ありがとうございます」
「意識だけを飛ばすような...なんていうんでしょう。
催眠をかけられてまたあの世界に行っても、あなたは
死んだことになってますからね。肉体はないと思ってください」
「全然いいです。話ができればそれで」
催眠というものを信じるか信じないか。
この実験は一体何のために行われたのか。
考えれば考えるほどいろんな疑問が思い浮かぶ。
けれど今はそんなことはどうでもよかった。
俺はあいつに言わなきゃいけないことがある。
やらなきゃならないことがある。
「ホント特別ですからね。本当は絶対認められない
ことなんですからね」
あきらかにイラついている女は
松下を軽く睨み付けると、目隠しを付けた。
「ちょっと待っててください」
それからのことは松下自身何も覚えていない。
ただ確実にわかるのは、この意識が
残酷に変わり果てた相方・升野の元へ届いたということだ。
857 :奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo :03/01/15 21:37
>>779の続き。
説明文がないから、読むのは多分楽だと思いたいのですが。
ピーンポーン。
「はーい」
チャイムの音がなったので光代は玄関に出た。
「社長、取りあえず裕ちゃんがメモしてある住所、全部持ってきました」
帳面になってるかと思ったら、殆どメモ帳に走り書きみたいになって
ましたけど……。
走って光代の家に戻って来たのだろうか、少し息切れをさせて夏美は
言った。
「田中だから、ひょっとしたらアウトだと思ったけどあって良かった…
…」
光代はほっとした顔で夏美の顔を見返した。
「社長、お茶でも入れますからゆっくり座ってて下さい」
勝手知ったるはと夏美は台所の棚から二人分のコーヒーを出そうとした。
「あ、ちょっと待って、夏美ちゃん」
「え? 何でですか社長」
夏美は不思議そうな顔をして光代を見た。
「ミナちゃん、呼んでいるから、もう1人分。 そうそう、夏美ちゃん
聞きたいんだけど、ウチの事務の子って、パソコン使えるかしら」
「ウインドウズでしたら使えるみたいですけど……」
「じゃ、その子にも電話掛けてもらえる? その間にお湯沸かしているから」
「分かりました」
夏美は返事をした後で、事務所の事務員に電話を掛けた。
858 :奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo :03/01/15 21:39
光代が自分の家に来させたことがないのは分かっていた夏美は、その大
まかな道順を説明した後に車を走らせて光代の家に来ますからと事務員
から確認を取った後、そのまま電話を切った。
「事務所の子、もう少ししたらここに来るからって言ってました」
「ありがとう夏美ちゃん。みんな揃ってから私達だけではなく、同じ考
えをしている人たちを増やすにはどのような連絡を考えた方がいいか相
談した方がいいかしらね」
「そうですね。1人よりは2人、2人よりは3人とやっていけばいいで
すものね」
「でも、あんまり人数多くなると隠密行動をとるには動きにくくなるで
しょうから、主だった行動を取るのは私と、夏美ちゃんと、ミナちゃん
と、事務所の子。この4人で行きましょう」
先を考えながら光代は言った。
「分かりました。少なくてもミナちゃんと事務所の子が来るまではお茶
を飲みながら待った方がいいですね」
「本音言うと、同じお茶を飲むなら映画のことを話しながら太田と田中
と、私とあなたの4人の方が良かったわね」
「それさえも、あれのせいで──」
夏美は言葉に詰まった。
859 :奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo :03/01/15 21:41
「時間は戻せないから、せめて最悪の事態は避けたいわね」
「これ以上最悪の事は私も考えたくないです」
同じ事務所内で主だった芸人では、自分の夫は幸いにも現時点で生き
てはいるが、それでも夫のあの性格を考えると真っ先に死んでもおかし
くないのに今時点では生きている。
それでもいつ何時どうなるか、一寸先は分からない。
誰よりも愛する夫を失ってしまって誰よりも先に泣き崩れてしまいそ
うな社長が、必死にこらえて少しでもこれ以上最悪の事態は避けようと
その先を一生懸命考えている。
だからこそ、例え微力でも光代の役に立とうと夏美は考えた。
871 :小蠅 :03/01/18 01:17
スレ4 >>94 (フォークダンスDE成子坂&坂コロ松丘 組)の続き
村田の背後からその正面へと歩み出てきた桶田の姿は、出て行った時よりも
多少汚れた感じとなっていたけれど。
別に何処かに怪我を負ったとか、そんな感じは見受けられなかった。
まずは、その事に村田は素直に安堵する。
「どこまで行っとってん、お前。」
「ン、待たせて済まなかった。ようやく仕込みが終わってね。」
村田の言葉に応じるというよりも、独り言に似た調子で桶田は言って松丘の方を向いた。
辛うじて桶田に視線をよこしてきていた松丘の瞳は薄く充血したままで。
頬を伝った雫の痕はまだ乾いてもいない。
「・・・・・・・・・・・・。」
ライブで自分らのネタの順番が近づくにつれ、緊張から涙ぐむ癖があった事から
松丘の泣き顔自体は桶田や村田も随分見慣れていた筈だったけれど。
さすがに今回に限ってはどう声を掛けていい物か、思案した十数秒の沈黙と刺さる視線を察して。
松丘の口元が微かに動く。
「・・・僕は、大丈夫ですよ。別に・・・汗が目に入っただけやから。」
872 :小蠅 :03/01/18 01:24
>>871
明らかに震えている声と、無理に笑おうとしているのだろう強張った表情。
そんな訳あるか、と思わず村田は言い返しそうになった。
いや、桶田が先に「そうか。」と呟いていなかったら、確実に村田は言葉を放っていた事だろう。
「そう、大丈夫なんだ。」
改めて呟いて、桶田は松丘の目前でしゃがみ込んだ。
やつれてもなお、変に肉付きの良い松丘の顔を、
そして虚ろに目の前の物を映すだけの大粒の瞳を覗き込んで。桶田は小さく、他意なく微笑む。
「信じて、良いんだね?」
桶田の言葉に、コクッと松丘の頭が縦に揺れた。
まるで幼子のような松丘のリアクションと、それを促そうとする桶田の態度に
村田は少し、言い表しようのない違和感と不安を覚えた。
「ち、ちょっと待てや、何考えとんねん、お前。」
違和感の正体もわからないまま、まずは制止を、と村田は口を開いたが。
その声は桶田の耳に届かなかったのか、それとも無視されたのか。
「それは良かった。じゃ、行こうか。・・・確か、車、運転できたよな。」
「・・・・・・あぁ。」
桶田は松丘の手を取って立ち上がらせて。村田を残して一緒にどこかに向かおうとしだしていた。
大人しく置いて行かれるのも何なので、慌てて村田は立ち上がり、桶田らの後を追う。
車の運転云々言っていたあたり、遂にあの廃車を動かすのだろう事は予測できたが。
873 :小蠅 :03/01/18 01:25
>>872
「おいおい、人の話聞いとるのか? 勝手に話進めるなや。」
数歩ほどのダッシュで何とか二人に追いつくと、村田は桶田を見上げて言った。
チラ、と見やったゾンビか何かのようなおぼつかない足取りで桶田に従う松丘に思わず顔をしかめて。
強い語調でさらに村田は問いかける。
「お前、一体・・・何をやろうとしとんねん。俺にも教えられれへん事なんか?」
さすがにこれは無視しきれなかったようで、桶田はようやく村田の方を向いた。
しかし、すぐに視線を村田から逸らしてしまう。
「・・・・・・いずれ、わかる。」
そしてポツリと応じられた桶田の答えは到底村田の納得のいく物ではなかったけれど。
経験上、こうなったらこれ以上の事は聞き出せない事もわかっていたから。
村田はもう口をつぐむより他に、何もできなかった。
874 :奥様は社長 :03/01/18 11:52
BR法を制定して数年後(現在進行形)の首相官邸。
先に書きますが、言い回し並びに内容が…スマソ。
首相官邸の一室で革張りの椅子に座っていた小泉首相は、目の前にあ
るプラズマテレビを見ていた。
コンコン。
ノックの音がしたのに気付いた小泉は、
「入りなさい」
ノックの音の主に部屋に入るように促した。
「首相、失礼します」
「安部君か、入りたまえ」
ノックの音の主は、安部副官房長官だったが、振り向いて言うその返
事通りにその部屋に入り、小泉の座っている椅子の後ろに立った。
「この画面を見たまえ、安部君。芸人バトルロアイアルもかなり盛り上
がっているようだな」
「そうですね、首相」
安部はテレビを見たまま喋っている小泉の言葉に納得しながらうなず
いた。
「このBR法が私が首相になる前のおととしの年末に制定されて以来、
マスコミなどもBR法関連に注意が行って、制定しにくかった消費税1
6パーセントへの増税、保険料の実質値上げなどBR法制定以前ではマ
スコミがうるさくてやりにくかった事が国会内でも進めやすくなったと
いうのはいい事だな」
875 :奥様は社長 :03/01/18 11:55
言い終えた後で小泉は阿倍の立っている方向に椅子ごと振り向き、ま
あ、椅子に座りなさいと側にあった椅子に安部を座らせた。
テレビ画面に映っている、自分が生きる為だけに次々と芸人達が仲間
を殺し合っている所を今まで見ていた小泉は、国家の累積赤字も積もり
に積もって会社でいう所の、倒産ギリギリの状態であるこの国を生かす
という大義名分の前では、何か物を作って売るという生産性がないに等
しい人間である芸人を最後の1人になるまで殺すなど小さい事だと、側
にあった椅子に座っていた阿倍の顔を見つめていた。
「首相、お笑いバトルロアイアル実施が半年前に受理され、今年の1月
から実施に移っているこの数ヶ月間、マスコミや庶民も芸人達に対する
掛け金(オッズ)や、そうでなくてもバトルロアイアル関連のダイジェ
クトや名画面のビデオやDVDグッズ関連絡みで金を出して国も潤おう
し、マスコミからファックスやEメールで送られてきたデータによると、
芸人バトルロアイヤル関連の番組は全て視聴率上々で、私達に逆らおう
とする物などいないし、庶民も、マスコミも北朝鮮と同じように情報操
作すればその通りに従う。いたって単純な生き物だと思いませんか」
安部の話し方は丁寧ではあったが、その顔は庶民を騙す事など情報さ
え操縦出来れば簡単だと言っていた。
876 :奥様は社長 :03/01/18 11:57
「そうだな、安部君。例えば血の中にある、人間が極限の状態にある中
での感動、友情、その他の感情がテレビではっきりと分かるのは人間と
して素晴らしい事だと思わないかね」
小泉は側にあった椅子に座っていた安部に言った。
「その通りです、首相。彼らがお笑いという枠組みの中で庶民を笑わせ
ている事自体が、かりそめの事。現実の辛さ、悲しみ苦しみを忘れる事
が罪悪だと私は思います」
現実を忘れる物全てが悪いのだというように安部は返事をした。
「そうだな。私はお笑いという現実逃避自体が罪悪であり、生産性もな
い物だから、いっその事この世の中から無くなるべき物だと考えている
んだよ安部君」
「首相、大分人数が絞られてきたみたいですよ」
現在生き残っている芸人の名前がテレビの画面に出てきている中、安
部は小泉首相にテレビを見るように促した。
880 :名無し太郎 :03/01/18 20:27
863です。三拍子書かせていただきます。
このゲームに強制参加させられてからどれだけ経っただろうか。
そして、解放される時は来るのか。
彼は憔悴しきっていた。
顔色は悪く、トレードマークの笑顔も全く見られない。
ゲーム開始直後からとにかく誰にも会わないように行動してきた。
こんな状況で他人を信じる気にはとてもなれなかったからだ。
幸い死体を見ることも、生存者に見つかることもほとんどなく
今まで生き延びてこれた。
・・・運がいいんだか、悪いんだか。
独り言をつぶやき、ポケットの中のナイフを握りしめた。
折り畳み式の小さなナイフ。しかし支給された武器はこのナイフではない。
彼に支給されたのは歯ブラシだった。
鞄を開け、これが出てきた時はもうだめだと思ったが、
道に落ちていたこのナイフを運良く拾うことができた。
かといってこのナイフですすんで人を殺そうとは思わないし、そんな度胸もない。
しかし、自分の命を守るためならこのナイフを使おうと心に決めていた。
やはり、死ぬのは怖い。
881 :名無し太郎 :03/01/18 20:29
何度目かの放送がなった。その放送をぼんやりと聞きながら、
自分の相方、高倉の名前はまだ呼ばれていないことを思い出した。
このゲームが始まってからまだ高倉の姿は見ていない。
無事でいるのだろうか。少しだけ心配した。
しかし会いたいかといえばそうでもない。
むしろ一番会いたくない人物だった。
彼は普段から高倉の事が苦手だったのだ。
表情、リアクションに乏しく、何を考えているかいまだにわからない。
あいつなら自分が生き残るために表情ひとつ変えずに人を殺すくらい
やってのけるであろう事は容易に想像できた。
ふと怖くなった。もし、あいつに会ったら。あいつは俺を殺すだろうか。
882 :名無し太郎 :03/01/18 20:29
喉乾いたな・・・。
そういえばしばらく飲み食いしていなかった。
人間飲まず食わずでも或る程度は生きられる。
しかし彼にとってはそろそろ限界だった。
幸い前方に物置小屋が見えた。きっと水道があるだろう。
小屋の中に誰かいるかもしれない、ということが頭をかすめたが
喉の乾きには勝てず、彼は小屋に向かった。
小屋の外壁にはやはり水道があった。蛇口をひねってみると水が出る。
彼は我を忘れて水を飲んだ。
ガタン
小屋の中から物音がした。
!!
その音で彼は一気に現実に引き戻された。小屋の窓の中に人影が
揺れたような気がした。
迂闊だった。
さっきは水道を見つけたうれしさに負けて気がつかなかったが、
今思えば自分が蛇口をひねる前に水道の周りのコンクリートは濡れていた
ではないか。
この近く、もしくはこの小屋に人がいる可能性はかなり高いというのに。
883 :名無し太郎 :03/01/18 20:30
ここにいるのは危険だ。小屋の中の人物が出てくる前に逃げよう。
反射的に小屋に背を向け、走り出したその時
「待てよ!」
「まさか会えるなんて思ってなかった。」
聞き慣れた声がした。
「久保、ひさしぶり。」
小屋の中から現れたのは、もっとも会いたくなかった人物だった。
何日ぶりかに見る相方は、自分と同じように憔悴しきっているようだった。
目の下の隈がいつもより濃く、目に力がない。
少しふらふらとした足取りでこちらへ歩み寄ってくる。
「まだ名前呼ばれてなかったからさ、どっかで生きてんだな、
怪我してないかな、って心配してたんだ。
元気だった?・・・なわけないか。顔見りゃわかるね。」
そういって高倉は少し笑った。
「俺、ずっとあの物置に隠れてたんだけどね。
なあ、お前の武器何?俺はこれ。」
そう言って高倉が出して見せたのは、幼児が砂遊びで使うような
プラスチックのスコップだった。
「な?ふざけてるだろ。あの物置にも肥料や土しかないでやんの。
ついてないねー、俺。」
そういってまた笑った。
884 :名無し太郎 :03/01/18 20:31
・・・そういうことか。そうやって『俺、丸腰だよ』みたいに油断させて
隙をついて殺そうってわけだ。物置小屋に肥料や土しかない?
そんなわけねえじゃん。何か武器になる物あるだろうよ。
第一怪しいんだよ。普段愛想ゼロのお前が何でこんな時だけ
そんなに笑って沢山しゃべるわけ?
そっか。そういうつもりなんだ。
「何で何も言ってくれないんだよ。・・・そんなに嫌いか?俺のこと。」
さっきから黙ったままの久保に、高倉は少し不満そうにつぶやいた。
「そんなことねえよ。俺も会えるなんて思ってなかったからさ、
会えて嬉しくて、驚いてただけ。久しぶりだな。」
久保は精一杯笑顔を作って、やっと言葉を発した。
「ほんとか?」
今の演技上手いな。本当に嬉しそうだ。
「ああ、みてくれよ。俺だってこれだ。使えねえよな?」
そう言って歯ブラシを見せた。もちろんナイフの事は黙っておく。
だってそうだろ?お前も何か隠してるんだ。
「へえ、俺らコンビでついてねえな。」
「ああ、そうだな。」
885 :名無し太郎 :03/01/18 20:32
「・・・なあ、俺と一緒にいてくれない?やっぱずっと1人じゃ寂しくてさ。」
そらきた。やっぱりな、言うと思った。
「ああ、良いよ。俺もずっと1人だったんだ。」
承諾した。断ってこの場で逆切れされても嫌だし。
「マジで?やった〜!じゃさ、そろそろ暗くなってきたし、
あの物置に戻ろうぜ。水道もあるし。」
「おう。」
とりあえず素直に従う。
「誰かに発見されないように、電気はつけないから。足下気をつけろよ。」
そういって高倉は壁にもたれかかって座った。
小屋の中はうす暗くてよく見えなかったが、確かに肥料や土が入っていると
思われる袋が積み上げてあった。
「それにしても凄い偶然だったよな。」
そう言いながら高倉の隣りに座る。
「俺もう喉乾いて仕方なくてさ、そんで水飲むために寄った小屋に
お前がいたなんて。」
努めて明るく話しかける。自分の考えに、ポケットのナイフに気づかれては
いけない。
「ああ、そうだな。ほんと俺もびっくりした。」
886 :名無し太郎 :03/01/18 20:33
しばらくいろいろな話をした。このゲームに関係ある話、ない話。
「・・・なんか眠くなってきたな。お前は眠くない?」
そうしているうちに高倉がこう言った。
例え眠くても、この状況で寝られるわけないだろ。
「俺は大丈夫だけど。何、お前眠いの?」
「うん。」
寝たふりしてこっちを油断させようってことか。
そんなのにひっかかるわけないのに。
「じゃあ寝ろよ。朝になったら起こしてやるから。」
「頼んだ。お前も無理するなよ。寝たくなったら起こせ。
代わってやるから。」
そう言って高倉は目を閉じた。
・・・今しかない。ポケットからナイフ出し、握りしめた。
俺は自分の命を守るためにこれを使うんだ。そう自分に言い聞かせた。
そして、震える手でナイフを2回、高倉の腹に突き立てた。
887 :名無し太郎 :03/01/18 20:34
手に伝わった嫌な感触。耳の奥に響いた嫌な音。
冷や汗が止まらなかった。仕方なかったんだ。
やらなければ自分が殺されていた。だから、だから・・・
「・・・ぅ・・・。」
「・・・!!!」
高倉は死んでいなかった。
「くぼ・・・?」
恐怖がわき上がってきた。まだ危険は去っていなかった。
「・・・やっぱり、ね。」
絞り出すように言葉を発する高倉。
「何が、何がやっぱりなんだよ?」
震えが止まらない。
「お前が、俺を信じてくれるなんて、思ってなかった。
きっと、俺を疑って、殺すだろうな、ってこと。」
888 :名無し太郎 :03/01/18 20:34
え・・・?
「お前はどうなんだよ!俺を殺すつもりだったんだろ?」
「・・・お前、こわかったんだな。俺のこと。しらべてみな。
武器なんて、何もねえから。」
高倉の服、鞄、肥料や土の後ろ。調べられる所は全て調べたが、
武器らしき物は見つからなかった。高倉の隣りに戻って元通り座った。
「・・・なかったよ。でも、手で首絞めることだってできるし、
肥料や土の袋で押しつぶしたり殴ったりだって・・・」
「・・・そこまでするかよ、ばか。どうしても、俺を殺人鬼にしたいのな。
人殺してまで生き残ろうなんて、めんどくさいことおもわねえし、
おまえに会えて、すげえうれしかったのは本当。
まあ、日頃のおこないがわるかったのかな、俺。じごうじとく、ってやつ?」
高倉は口元を歪めて自嘲気味に笑った。
何だよ、それじゃあ俺馬鹿みたいじゃねえか。
勝手にお前のこと誤解して、先走っただけかよ。
何だよ、何なんだよ・・・・。
「高倉、俺・・・。」
「・・・くぼ。ひとつだけ、たのみごとあるんだけど。」
「何?」
ナイフを握ったまま震える俺の手を握り、それを俺の胸に持っていく高倉。
「いっしょに、きてくれない?
やっぱ、ひとりじゃさみしくてさ。」
やっぱりな、言うと思った。
【三拍子 高倉 久保 死亡】
899 :蟹座 :03/01/21 18:13
>>826の続き
軍団が三々五々爆発音の聞こえた場所に駆け付けると、そこには
誰の姿もなく、ただ大地に穿たれた大きな穴と微かな煙、そして辺り
に立ち込める火薬の匂いが残されているだけだった。
「いったい、何だったんだ……?」
一番先を歩いていたつまみ枝豆の姿が不意に消えた。
「冷て! なんだこりゃ?!」
落とし穴のようだった。かなり深い。枝豆が脇下まで埋まっていた。
中はどういうわけか水で満たされている。
「これは罠だ、オレのことはいいから、早く殿のところへ戻れ」
「そうだな」
枝豆の言葉に他の軍団が頷く。
「じゃあ、先行くわ」
枝豆を残し、軍団が急いで元来た道を戻って行く。その姿を見送って、
枝豆は穴から這い上がろうと、手にした武器を一端手放し、大地に両手を
突いて水面から伸び上がった。その刹那、
ガツン、と後頭部に衝撃があった。
勢いで地面に顔面を打ち付け、反射的に頭と鼻を押さえながら、わけが
わからないまま水中に落下する。酸素を求め水面に顔を出した枝豆が目に
したもの――。
それはペットボトルを手にした清水ミチコだった。
900 :蟹座 :03/01/21 18:14
>>899
「行かせないわ」
相手に疑問を口にする余地さえ与えず、
清水は足裏で枝豆の後頭部を押さえ付けた。枝豆の顔が泥水に沈む。
もがき苦しむその姿を見て清水が妖しく笑った。
「それ、ほとんどはそこの小川の水だけど……」
清水は押さえ付ける足を休めた。泥水をしこたま飲んで咳き込む枝豆に、
空のペットボトルをかざしてみせる。
「ちょっと水道の水も混ぜといたから」
枝豆の目が驚愕に見開かれる。そこへ今度は顔面に靴底で蹴りを入た。
そのまま枝豆を力任せに泥水の中に沈める。清水は哄笑した。
「絶対行かせない」
これが自分にできるせめてものあの二人への手向けだった。
容赦なく相手を責め続ける清水の頬を、我知らず涙が伝う。
泥水の中、枝豆が血反吐を吐き、次第に水が赤く染まっていくのを眺めながら、
清水は笑い続けた。
生け贄の命が尽き、惜別の涙が枯れるまで。
辺りに哄笑が響き渡る。
【つまみ枝豆 死亡】
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