お笑いバトルロワイアル〜vol.9〜

1 :かつての書き手 :04/09/23 14:09:09
お笑い芸人を題材とした、バトルロワイアルパロディスレッドです。
ローカルルールや過去ログ・関連スレッドは>>2以降を参照して下さい。

■ログ等まとめサイト(コモさん管理)
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Bay/5098/
■お絵かき掲示板
ttp://w2.oekakies.com/p/warabato/p.cgi



2 :名無しさん :04/09/23 14:10:47
■ローカルルール■

○書き手用○
・どのレスの続きかを必ず明記する事。文章の最初に >>レス番号 をつける。
・文中で芸人が死亡または同盟を組んだ、仲間になったなどの場合は、最後に必ずその旨を明記。
・文章が長くなる場合は、一度メモ帳やエディタで作成、確認してから連続コピペを推奨。
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨。
・これから書こうと思う人は、必ず過去ログに目を通す事。
 ※専属の書き手がいる芸人は無闇に動かさない。
 ※専属芸人の続きを書きたかったり、自分の話と繋げたい場合は、スレ内で呼びかけ確認を取る。
 ※長期間放置されたままで、明らかに前の書き手がいないと思われる場合は、新たな書き込み可。

○読み手用○
・コメント、感想、励ましメッセージ、注文などはsage進行で。
・書き手に過度の期待は厳禁。書き手さんだって、書けない時もあります。

○共通用○
・死んだ芸人は原則として復活禁止です。
・「あくまでもここはネタスレッド」です。まったりと楽しみましょう。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


3 :名無しさん :04/09/23 14:12:19
■過去ログ・関連スレッド■
お笑いバトルロワイヤル
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1009/10099/1009967966.html
お笑いバトルロワイヤル vol.2
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1011/10111/1011108578.html
お笑いバトルロワイアル vol.3
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1011/10116/1011624868.html
お笑いバトルロワイアル vol.4(html化待ち)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1016703885/
お笑いバトルロワイアル vol.5(html化待ち)
http://corn.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1020393595/
お笑いバトルロワイアル vol.6
http://tv3.2ch.net/geinin/kako/1031/10318/1031834240.html
お笑いバトルロワイアル vol.7(html化待ち)
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1043249595/
お笑いバトルロワイアル vol.8
http://tv6.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1069244110/

お笑いバトルロワイヤル感想・要望スレッド
http://tv.2ch.net/geinin/kako/1011/10111/1011122064.html
お笑いバトルロワイヤル感想・要望スレッド2(html化待ち)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1011833052/
お笑いバトロワ感想・要望スレッド3(html化待ち)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1018708636/


6 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:41:56
新・集計屋さんが集計してくれたものをコピペします。
vol.8 >190あたりまでのものです。


◇現時点で確認出来る生存者状況説明(50音順/予約分は含ず)◇
 <※付はコンビ・グループの未出の方>


あ行

浅草キッド 水道橋/玉袋 (ビートたけし追跡中・爆問太田の遺志を継ぐ?・3以降放置)
アメデオ 森枝 (フラット森と行動中、オレンジジュース前田発見・靴下所持)/ 大河原 ※
今田耕司 (DT松本一行尾行・ハリガネ待機中・トランシーバー所持・現在地E-5)
オジンオズボーン 篠宮/高松 (もうすぐ禁止エリアとなる場所で偶然再会・合流)
オレンジジュース 前田 (アメデオ森枝、フラット森と合流)/ 村上 ※

7 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:42:53
か行

COWCOW 多田 (仕掛けつきビデオテープ3本と今田から貰った長槍所持・
  ハリガネ大上を刺した後、中田カウス・ボタン一行に発見される・生死不明)
カリカ 林/家城 (磁石佐々木と行動中・普段通り変わらぬ様子・家城はチェーンソー所持)
カンカラ 入山/石田/松井/鈴樹/杉林 (男メンバー4人喧嘩中・
  鈴樹、元居た場所を思い出しテツトモを残し先に向かう)
木村祐一 (DT松本・田中と行動中・3で浜田に攻撃され右腕負傷・日本刀所持)
K2 堀部 (DT浜田と接触し正気を取り戻すが浜田に献上する為の食材探索中に
 幻覚・幻聴に襲われ再び発狂・出刃包丁所持・村田渚と対決 )
ココリコ 田中 (DT松本達と行動中)
五番六番 猿橋/樋口 (爆問田中達と行動中)
コント赤信号 石井 ※ / 小宮 ※

さ行

ザ・ドリフターズ 志村 (ダチョウ倶楽部肥後と行動中・銃器所持・チームを抜けようとした寺門殺害)
ザ・プラン9 難儀/ヤナギブソン (森の奥にあるログハウスに潜伏中・武器は小型銃と荒縄)
佐野ただひろ (元ピテカンバブー・桶田亡き後、村田と共に彼の遺志を継ぐ)
磁石 佐々木 (カリカの2人と行動中・未だ姿を確認できない相方を気にかける)
磁石 永沢 (正当防衛だが人を殺めたという罪の意識に苛まれている・土壁の横穴に潜伏中)
自転車こぐよ ゆうき ※
清水ミチコ(UNの死後行方不明)
18KIN 大滝 (S&W M36、ナイフ所持・感染症により
 命幾許も無いピートム桑原から自分を殺してくれと懇願される)
陣内智則 (麒麟川島(死亡済)の奇襲で共に居た千原等仲間達は全て死亡・
 一人生き残った空しさから自らも死を選ぼうとするがそれも叶わなかった・
 仲間達の死んだ場所に戻ったそこで川島の所有物だった妖刀村正拾得・頭の中で誰かの声が)
せんたくばさみ 能勢/加藤(感想・要望スレ3にて合流)/吉本 ※

8 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:43:36
た行

だいたひかる (ハマカン神田の殺戮現場を目撃・虫除けスプレー所持・ハマカン浜谷&モジハン肖田を尾行中)
ダウンタウン 松本 (キム・ココリコ田中を引き連れ南の廃校へ・
  「生き残れ 南にある廃校で待つ」と書かれたメモ所持)
ダウンタウン 浜田 (日本刀所持(切れ味は鈍っている)・食材を探しに行った堀部待機中)
たけし軍団 井手らっきょ/ガタルカナル・タカ/グレート義太夫/そのまんま東/
 ダンカン(顔に熱傷)/松尾伴内/(3から途中参戦・UN(死亡済)の襲撃で皆負傷している)
ダチョウ倶楽部 肥後 (志村けんと行動中・志村に命じられ上島殺害)
田上よしえ (ダンディ、ユリQ、北陽伊藤と行動中・喧嘩中のカンカラ男メンバー達を仲裁しに
 行く途中・虻川の死から完全に立ち直れていない伊藤を気遣う・ヨーヨー所持)
ダブルブッキング 川元 (元箱男・武器は細菌・人間不信)
ダブルブッキング 黒田 (ビーム吉野、マイマイカブリ高橋と行動中・武器はアイスピック・
 逃げてきたことで相方から受けるかもしれない復讐が怖い)
ダンディ坂野 (田上達と行動中・テツトモ達と先にカンカラメンバーの元へ向かっていたが
 窪に落ち置き去りにされ戻って来た・存在を忘れられがち)
テツandトモ テツ/トモ (カンカラ鈴樹から元の場所を聞く・田上達待ち)
電撃ネットワーク ダンナ小柳 ※
電通マン佐藤 (1でひたすら自分の未来について悩んでいた・その後放置)
友近 (中山功太(死亡済)と落ち合う約束をした小屋で彼を待ち続けている・
 修道院から逃亡途中、追ってきた天津向(死亡済)に襲われ腕と顔負傷)

な行

中田カウス・ボタン (ハリガネが去った後、カウス・ボタン対決?)
南海キャンディーズ 山崎 (ノンスタイル石田(死亡済)を武器の地雷で負傷させた後失踪)
ネゴシックス (地雷で片足を無くし瀕死のノンスタイル石田(死亡済)を手当て後
何処かへ消えていった・スケッチブック、ラジカセ、救急箱所持・いい人)
ネプチューン 名倉 (爆笑田中(と、憑依した太田)と一時接触・
 プログラムを終わらせるべく総元締めのいる本部を探索中・「正宗」所持)

9 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:44:47
は行

爆笑問題 田中 (太田憑依中・田中本人は気付いていない・
 立川談志(死亡済)を看取った後再び五番六番、冷中達と行動中)
ハマカーン 神田 (ヒロシ、ホリ殺害・武器は槍と金槌・時々意識が途切れる状態が続く)
ハマカーン 浜谷 (モジハン肖田と行動中・確証は無いが、相方が他に危害を
 加える側の人間となったことを知る・しかし信じたくはない)
ハリガネロック 松口/大上 (中田カウス・ボタン&メッセンジャーから分離、今田の元へ向かう・
  松口の記憶は依然戻らず・大上はCOWCOW多田に刺され腹部負傷)
ハローバイバイ 金成/関 (ハマカーン浜谷と一時接触・神田が他芸人を
 襲っていた現場を目撃したらしい・2人で共に行動中らしい)
ビートたけし (表向きのこのゲームの主催者・3から途中参戦)
ピーピングトム 桑原 (感染症による死の間際、大滝に自分を殺してくれと懇願)
ビーム 今仁 (武器は生卵1パック・怪力・マイマイカブリ五十嵐と行動中)
ビーム 吉野 (ダブルブッキング黒田と行動中・武器・ホットプレート)
130R 板尾 (千原jr.(死亡済)と接触後再び単独行動中)
冷やし中華始めました 高橋/能海/鈴木 (爆問田中と行動中・現実世界では解散)
フラット 森 (アメデオ森枝と合流・武器はでかい石)/ 船場 ※
プロペラZ キー坊/岩澤 (佐野に命ぜられ北回りルート巡回中)
ブロンクス 中岡/野口 (野口の仇を討ち、小屋に戻った中岡だが
 眠りから覚めた野口は記憶喪失+多重人格となっていた)
ヘッドライト 和田 (ブロンクス中岡&野口と分離、相方町田を探す・拳銃所持)/ 町田 ※
北陽 伊藤 (田上達と行動中・虻川の死から立ち直ったように
 振舞うもやはり無理をしている・刀所持)

10 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:45:36

ま・や・ら・わ行

マイマイカブリ 五十嵐 (ビーム今仁と行動中・武器・緑色をした煙草の箱・現実逃避気味)
マイマイカブリ 高橋 (武器・マッチ一箱・服用した謎の飴玉の効能で空に浮く・こちらも現実逃避気味)
マギー司郎 (審司と行動中・自分の秘密を知る長井を殺す為、攻撃を仕掛けるも返り討ちに遭う)
マギー審司 (司郎と行動中・一度死んだが師匠(司郎)の力によって復活(…))
村田渚 (自らの思い込みで桶田(死亡済)を手に掛けてしまうが
 坂コロ松丘の遺品の携帯と、今際の際の桶田の口から伝えられ真実を知る・
 佐野の説得で桶田の遺志を継ぎ計画を遂行する決意をする・K2堀部と対決?)
メッセンジャー 會原/黒田 (中田カウス・ボタンの対決を止める?・
 會原はエンバーミングセット(遺体保存の用具)所持)
モジモジハンター 肖田 (ハマカン浜谷と行動中・拳銃所持)/石井 ※
元ブラジル代表 小林/大渡 (佐野に命ぜられ東回りルート巡回中)
森三中 大島/黒沢/村上 (6-185で合流・6-794で黒澤、大島を銃撃(?)・村上逃走)
ユリオカ超特Q (田上達と行動中)


計99名(たぶん)

◇番外◇
小薮千豊 (元「ビリジアン」・バトロワで命を落とした仲間たちの仇を討ちたい・りあるキッズ保護?)
りあるキッズ (何者かの手により、ゲームのリストから外された・
 何故か新喜劇小藪の元へ2人ともかなり弱っている様子で辿り着く)
太田光代 (爆問太田(死亡済・田中に憑依中)夫人で事務所社長・このゲームを一刻も早く
 終わらせたい・芸人の妻達に連絡を取りバトロワの是非を問う、出版社に協力を得ての
 国会議事堂に入ってのデモ記事掲載などの計画を練る)
田中夏美 (爆問田中夫人・太田光代と共にゲームを終わらせるために行動を起こす)
長井美奈子(長井秀和夫人・光代に呼ばれ太田宅へ・バトロワ中止計画に賛成)
由香里(タイタン事務員・光代に呼ばれ太田宅へ・バトロワ中止計画に賛成)

11 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:46:24

◇本編未出芸人の一部◇

(若手系)
アンガールズ/キャン×キャン/さくらんぼブービー/チャイルドマシーン/
チャップメン/チョップリン/T・K・O/ニブンノゴ!/ハレルヤ/パンクブーブー/
ブラザース/ペナルティ/名刀長塚/ラバーガール/ラフ・コントロール

(中堅・大御所系)
大橋巨泉/チャーリー浜/野沢直子/間寛平/
歌丸・楽太郎・山田くん以外の笑点メンバー (円楽/小遊三/好楽/木久蔵/こん平)


よかったらどうぞ。キラー役から死体役まで(w

外の世界でもいろいろ動きがあるようなのでこんなのも載せておきます↓

◇プログラム参加芸人たちと近い場所に居る元・芸人その他◇

オークラ:元「細雪」。解散後はTVや舞台の構成作家に。ごく稀に自らも舞台に立つことも。
原田専門家:大阪NSC11期生(中川家、ハリガネ、陣内と同期)。
 卒業後、芸人・2丁目劇場進行を経て現在はCG・イラストデザイナーに。
 舞台やTV番組のポスター・チラシなどを作成する。主にうめだ・baseで活動中。
森詩津規:元「シンドバット」。解散後は舞台の構成作家に。Vol.3あたりで既出。
元「−4℃」上嶋祐佳(旧姓):96年、ますおか岡田との結婚を機にコンビ解散・引退。
 (当時の相方・松本美香はピンで活動。バトロワ未出)


ひょっとしたら何か力になってくれるかも。

12 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:48:33
◇現在判明している設定◇

−プログラム開始日−
・【2002年1月2日】(一応、初代スレが立ったのがその日なので)。
 結成/デビューがそれ以降の人たちを出させると年月的に
 矛盾が生じてしまうので書き手さんたちはお気をつけて。
 baseよしもとはうめだと分離前。現・卒業組のフジワラもハリガネも
 次長課長もこの話の中ではまだ在籍しています。

−プログラム参加者について−
・日本で活動する芸人全て。
・しかし福田哲平のように、本人の身体の事情で参加を免除されたものもいる。
・既に芸人を引退した者も本人の希望等で参加者の中に交じっていたりする。
・参加者には本部から食料・水・島の地図・筆記用具・
 そしてそれぞれ異なった武器の入った、リュックが支給されている。
・参加者全員に架せられた首輪は、無理やり外そうとしたり立ち入り禁止エリア※
 に踏み入ると爆発する仕掛けになっているが強力な電圧を加えて内部の回路を破壊すれば外せられる。
 しかし外した事が本部に知れるとその芸人は兵士たちに処分される(底ぬけA-L話参照)。
 (※時間が経過するごとに立ち入り禁止エリアは増えて行く)
 加えて、発信機が内蔵されていて本部が芸人たちの位置を確認している。
・死亡者発表は午前午後の6時と12時の1日計4回。

13 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:49:16
−舞台について−
・元は人が住んでいた、現在は無人の島。緑が豊か。
・しかし遊園地やスキー場といったレジャースポットなどがあったり
 住人も多く、割と栄えていた場所だったらしい。
・島の中央には昔の噴火の影響で生まれた火口跡がある。
・現在、故・元フォークダンスの桶田がプログラムを破壊すべく指揮を取り、故・坂コロ松丘や
 佐野ただひろに起こさせた疑似噴火による地震、そして山火事が続いている。
・携帯電話は、プログラム開始時には使えたが途中で本部に基地局を破壊され現在は使えない。

−舞台裏について−
・このプログラムは島の各所に設置されたカメラでTV中継され、
 各芸人には優勝者を賭けたオッズが付けられている
 (中には何十億単位の金額が付けられている者もいる)。
 これは国家ぐるみのプログラムであり、痛みを伴う改革のテスト、そして経済復興が目的である。
 そしてそれらは参加者たちには知らされていない。
・島には芸人たちの他、本部側が派遣した大勢の兵士たちも居て芸人たちを監視している
・しかし火山の小規模噴火(実際は桶田の仕組んだ疑似噴火)を見た総本部は
 大規模な噴火の起こる可能性を恐れ、島からの撤退命令を出した。

14 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:49:58
−妖刀村正・正宗について−
・「正宗」と「村正」はその刀を作った刀工の名に由来しており、正宗は村正の
 師匠だったが村正の作る刀があまりに禍々しかった為、破門したという伝説がある。
・村正を所有した者は刀に宿った魂に支配され殺人鬼と化し
 人を斬る度に理性を保てる時間が短くなる。切る相手が居なくなると最終的には刀の魔力で
 所有者が自殺する。解放されるには誰かに殺されるしか今のところ方法がない。
・村正に宿っている魂・女の精は持ち主が人を殺すことで美しく長らえているらしい。
・「負」の力を帯びた村正と「正」の力を帯びた正宗は互いに惹かれあうと言われている。
・これまでの持ち主の遍歴
 村正:ネプチューン原田→麒麟川島→陣内智則
 正宗:TAKE2深沢→ネプチューン名倉

たぶん他にもあると思います。間違ってる可能性もあるので
見つけた方は補足・修正よろしくお願いします。

Vol.6-769〜Vol.8-200あたりまでの死亡者
(過去ログからの再掲・時間を遡って書かれた話等、既に死亡者として
名前の挙がっている参加者分、本編とは別Ver.と認識されるものなどは省いております。)

足軽エンペラー 西田/山里、ウッチャンナンチャン 内村/南原、魚でF 須藤、
坂道コロンブス 松丘、三拍子 久保/高倉、自転車こぐよ あつし、末高斗夢、
ストリーク 山田/吉本、スピードワゴン 井戸田/小沢、ダーリンハニー 長嶋/吉川、
ダイアン 津田/西澤、高田文夫、千鳥 大吾/ノブ、つまみ枝豆、天津 木村/向、
富田哲平、中山功太、NON STYLE 石田/井上、ババリア 溝黒/三浪、ヒロシ、
元・フォークダンスde成子坂 桶田、ブロンクス 唐戸、ホリ、ママレンジ 健太/公平、
ラッシャー板前、ランチ 田口/風藤、レギュラー 松本、笑い飯 哲夫/西田

Vol.1からの死亡者総数 418人+α

15 :竿手ゴロゴロ :04/09/23 15:51:32
◇専属書き手さんのいる芸人◇

・カリカ、磁石、ハマカーン、モジモジハンター、
 だいたひかる、(予約・タカアンドトシ):挙動不審 さん
・パラシュート部隊(予約):雪乃丞 ◆h//D5xSzUA さん
・アメデオ森枝、フラット森、オレンジジュース前田:@不法投棄 さん
・オジンオズボーン:ななせ さん
・ブロードキャスト(予約):>>154さん
・粋なり(予約):名無しさん@胃潰瘍。 さん

・太田光代、田中夏美・長井美奈子・由香里:奥様は社長 ◆XVUp.wHBSo さん
・爆笑問題 田中、五番六番、冷やし中華はじめました:久々です さん

 爆問田中一行とタイタン妻話の書き手さんは別の方です。
 (田中一行の方の書き手さんは久しく姿が見えない状態ではありますが)

18 :名無しさん :04/09/24 12:15:42
>>17東京ダイナマイトはまだ出てないぞ。

新・集計屋さんではないが、>>5〜15の補足
前スレ200以降から前スレ終わりまでで新たに登場した人達(生存)

か行

カンニング竹山(武器は大振りのスコップ。カンニング中島、どーよの2人と行動中。
        波田陽区(死亡済)の日本刀とヒロシ(死亡済)の拳銃も所持?) 
カンニング中島(武器は日本刀。カンニング竹山らと行動中。)
キシモトマイ(だいたひかる殺害後放置。武器は拳銃。女芸人を執拗に殺している。
       すでに数名の無名女芸人を殺害済み。) 

た行

どーよテル(武器はロバのぬいぐるみ。カンニングらと行動中。)
どーよケンキ(武器は俳句セット。カンニングらと行動中。)

19 :名無しさん :04/09/24 12:16:43
>>18続き
合体・分裂した人達
ソラシド水口、大浦梶大浦、けもの道中立→合体
カンニング、どーよ、ヒロシ→合体→ヒロシ脱退(脱退後死亡済)

新たな死亡者
自転車こぐよ(現ヒデヨシ) ゆうき
だいたひかる
T・K・O木下/木本
なすなかにし那須/中西
波田陽区
村田渚

新たな書き手さん
カンニング、どーよ:釜飯さん

放棄・キープ解除など
タカアンドトシ タカ/トシ
ネプチューン名倉
ダウンタウン浜田
森三中黒澤

抜けているのがあったらすみません。

23 :名無しさん :04/09/26 16:23:11
集計乙です。
新たな志望者の欄にオジオズ・篠宮が抜けています。
あしからず。

24 :18:04/09/26 17:17:21
>>23ご指摘ありがとうございます。
よくよく確認したら抜けてる人まだいた・・・orz
>>19の合体、死亡者の修正です↓

合体・分裂した人達
ソラシド水口、大浦梶大浦、けもの道中立→合体
カンニング、どーよ、ヒロシ→合体→ヒロシ脱退(脱退後死亡済)
板尾創路、今田耕司→合体

新たな死亡者
オジンオズボーン篠宮
オーバードライブ石野/緒方
K2・堀部圭亮
自転車こぐよ(現ヒデヨシ) ゆうき
だいたひかる
T・K・O木下/木本
なすなかにし那須/中西
波田陽区
元ピテカンバブー佐野ただひろ
村田渚

26 :18:04/09/29 17:33:31
生存者の間違い発見orzオオスギダ
>>18訂正 
カンニング中島(武器は包丁。カンニング竹山らと行動中。)


125 :B9@新生base:04/11/27 14:20:47
前スレ>>743続き。

悲劇は突然やってくる。絶望はじわじわ心身を蝕む。そんな話。

不機嫌な唸り声を上げながら寝返りを打ち、それでもなお退く気配のない重圧に
睡眠を妨げられると僅かな息苦しさを以って目が覚めた。
寝起きのせいで微睡む意識を覚醒へと持っていくため体を起こし、ぼんやりと
虚ろな視線を宙に漂わせるが辺りはまだ薄暗く、夜があけていないのは一目瞭然である。
しかし、時間の経過とともに進む目の暗順応に周りのものがおぼろげながら見えてくると
水口は自分が目を覚ます一因となった体にかかる違和感の正体に苦笑いを浮かべた。
それは腕。だらしなく放り出された腕だった。
恐らく横で寝ていて寝相の悪さゆえにここまで転がってきた大浦のものだと思われる。
(補足・結局あのあと水口は田中と和解し、廃墟の中で最も老朽化がマシな大きめの
部屋で中村を見張りにたて(交代制)ドアに近いほうから田中・中立・大浦・水口の順に
並んで寝ることになった)
遠慮の欠片もないその腕に「もう……しゃあないな」と呆れた様子で呟いて、
しかしその口調とは裏腹に殺し合いなんてピリピリとした非現実的な現状から考えると
随分微笑ましい『寝相が悪い』という後輩の無礼は悪い気はせず、むしろ少し心休まる
エピソードとして楽しむように彼はその腕を元の位置に戻してやろうと持ち上げ……凍りついた。
手の平から硬く冷たい感触が雪崩れ込み、ぶわっと鳥肌が全身を駆け抜ける。
その腕は思いがけない質量で持ち上がった。
そしてソレは水口がつかんでいる部分を軸として天秤のようにゆらゆらと
揺れると切断部分から固まりきっていない血が一筋「とろーん」と垂れて滴った。
そう、その腕は腕のみで存在し、そこから先……在るべき人間がついていなかった。

126 :B9@新生base:04/11/27 14:21:55


悲鳴は声になったのか?はたまた声にさえならなかったのか水口には判らない。
分かることと云えば掴んでいた手を慌てて離したことで支えられていた力を失い、
林檎が木から落ちるようにボトリと嫌な音をたてて落下したソレが肉体から
切り離された人間の腕であろうことだけだ。
落ち着け。落ち着け。落ち着け。そう自分に言い聞かせ、震える手で床を探り
バッグを探し当てると中から懐中電灯を取りだし光を点す。
そしてその瞬間、全てが決定的なものとなる。
ある程度……覚悟はしていた。腕だけが落ちているという事は必然的に腕が
欠けている身体がそこに転がってる可能性くらい想定出来る。
だけど現実はもっと無残で残酷で……。
「おお…う…ら?」
懐中電灯で照らされたライトの中……大量の血で小さな池をつくり、
その血溜まりに身を沈める彼に声をかける。無論、返事はない。
なぜなら死んでいるからだ。なぜならもう生きていないからだ。
決して懐中電灯の明かりのせいではない色を失った肌。
ナイフを突き立てられた背中。
深く切り裂かれたわき腹。
そこから垣間見ゆ光沢を放つ臓器の一部。
うつ伏せの状態で首を曲げ、瞳孔の開いた瞳で水口の方を恨めしそうに
眺めながら大浦登令は死んで……いた。

127 :B9@新生base:04/11/27 14:22:47
「あ……あ………」
ぐわんぐわんぐわんと反響する酷い頭痛。
何が起こっているのか解らない。展開についていけない。
奇妙な喉の渇き、口内は不快な粘り気を帯び……襲いくる吐き気、嘔吐感。
心臓はバクバクと音をたて、痺れにも似たピリピリとした感覚が頭から
胃にかけてストンと落ち、そのまま恐怖に搦め捕られそうになる。
「なんで……」
そう呟いたきり動けなくなって、ただ呆然とする他なくて、しかし突如彼は
「ハッ」と息を呑むと手にしていた懐中電灯を上げ、神経を張り巡らすように
体を強張らせ警戒心を強める。
大浦を殺した人間がまだ闇に身を潜めているかもしれない、そして今まさに
自分を狙っているかもしれない……そう思ったのだ。
しかし、そんな心配をよそに震える手のせいでユラユラと落ち着きなく揺れる
懐中電灯の灯りをグルリと一周させてみるが人がいる気配はない。
杞憂であったことにホッと息をつく。けれど所詮そんな安堵は水口を逃してはくれない。
それどころか更なる不安へと叩き込む。なぜなら、

人 が い る 気 配 が な い な ん て あ り え な い か ら だ。

だって、そこには田中とけもの道がいているはずで……。
そもそも考えてみれば何故これだけ声を張り上げたり懐中電灯の光を
ちらつかせているのに誰一人起きないし異変に気付かないのだろう?
普通なら「どうしたんですか、水口さん?」という言葉の一つや二つかかっても
いいんじゃないか?さぁっと血の気が引いていく感覚。嫌な予感。

128 :B9@新生base:04/11/27 14:23:52
……確かめるしかない。ガクガクと震える足で立ち上がり、大浦の死体を
なるべく見ないようにしながら器用に避け、よろよろと危なっかしい足取りで
一歩一歩扉のある方へと近づき中立と田中が寝ているはずのそこにライトを当てる。
しかし……「あれ?」
そこには誰もいない。
誰も、誰も、中立も、田中も。
ひょっとして殺された中立と田中がそこに転がっているかもしれないという事を
危惧していただけにとりあえず胸を撫で下ろすが何の解決にもならない。
消えた?なんで?どこに?
水口の脳裏に田中の『参加して欲しい』という言葉がよぎる。それはコレのことを
指していたのだろうか?しかし田中が人を殺せるような人間だとは思えない。
いや、逆にああいうタイプの方が危なかったりするのか?
そんなことを考えながら振り返ったところで水口はさっき気付かなかった
大きな痕跡に気付く。

大浦の死体。
その背中から天井に向かって一直線に伸びているナイフ。
血に濡れる銀色の刃と茶色い柄……水口はそのナイフに見覚えがあった。
彼は自分のカバンからナイフケースを取り出し、慌てて中身(自分のナイフ)を確認する。
一本足りない。当然。なぜならそれは今まさに大浦の背中に突き刺さっているそれに
他ならないからだ。額に浮いた冷や汗が頬を伝って一直線に下ると床へと落ちる。

「なんやねん…俺が…俺が殺ったみたいになってるやん……」

それは明らかに水口に対する挑戦であり挑発で、しかしそれでさえもまだ序章に
過ぎない……彼は見つけてしまう。見てしまう。

129 :B9@新生base:04/11/27 14:24:46
さっきまで死角になっていた大浦のもう一方の手の行方に絶句する。
もう一方の腕。それは在るべき部分にきちんと付いていた。
しかし、だらしなく伸びた手の先は人差し指だけが立てられ、そこには血で
文字が書かれている。
それが推理小説などで見るダイイングメッセージと呼ばれるソレであるという事は
容易に想像がついたが問題はそこに書かれている【 水 口 】の二文字。


「だからそんなん書いたら俺が殺したみたいになるやんけ!」


引き攣った顔で声を荒げると水口は懐中電灯を床に向かって叩きつけた。
その衝撃で懐中電灯から電池が飛びだし辺りは灯りを失い真っ暗になる。

「ち、違う……俺は殺してへん!俺は殺してへんぞ!バトロワや!
殺し合いや言うてんのに何で俺のせいにしようとすんねん……意味がわからへん。
えええ……ちょっと待って。バトロワちゃうやん。こんなん完全に嫌がらせやん」

髪の毛を掻き毟り、下唇を噛みしめる。
わからない事だらけで、もどかしさと焦燥感があぶくのように発生して莫大に募って
そんなあぶくに喉を塞がれ絶望の淵に立たされる。

130 :B9@新生base:04/11/27 14:25:33

もう嫌や。頭おかしいやん。なんで大浦が死んでるんかわからへん。
なんで俺のせいに見せかけて殺されてるんか、けもの道がどこに消えたんか、
田中が何企んでんのか……全然わからへん。
わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん
わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん
わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん
わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん、わからへん
わからへんわからへんわからへんわからへんわからへんわからへんわからへん

押し寄せる混乱の波。頭の奥でプツンと小さな音がして思考は一気に弾け飛んだ。



【大浦梶・大浦 死亡】

131 :B9:04/11/27 14:27:10
今日はここまで。
途中ですが少し長くなるので一旦ここで切らせてもらいます。
前回レスをくれた方々ありがd。
待ってると云ってくれてた方々ごめんなさい(´・ω・`)

175 :おされ泥棒 ◆odQ7elWo.Y :05/01/17 03:03:24
大浦の死亡が判明した頃、宇宙ネズミの2人は仲間を探していた。
「おい、宮田!」花野が宮田を呼んだ。
「どうしたんや?何か食料でも見つかったんか。」宮田は呑気な事を言った。
「ちゃうわ!それより、人がおったんや。」花野は人が居そうな小屋を見つけた。
「お!仲間になりそうな奴なんか?他の奴らは死んだからな。」宮田は心が躍り始めた。
そこに平安京999の勝山が現れた。
「自分ら何しとんの?」勝山は宇宙ネズミの2人を見て不思議そうな目をしていた。
花野は説明した。
「だから、俺らは仲間を探して行動しとんねん。」仲間がいれば散策などにも役に立つと説明をした。
勝山は「へぇー、面白そうやな。もう出てきてもええよ。」と奥に隠れていた人間を呼び出した。
そこに現れたのは平安京999の黒田と多治見だった。
「よく聞いて見れば仲間を探していたのか。面白そうやん。」黒田は興味津々だった。
一方、多治見は「戦いになったら大丈夫や!俺にはこれがあんねん。」とショットガンを見せた。
宇宙ネズミの武器は「コンバットナイフ(宮田)」と「手榴弾(花野)」のみだった。
多治見を除いて黒田と勝山の武器は「ライフル(勝山)」と「斧(黒田)」これで武器は出揃った。
「これで何が出ても怖くはないぞ!」と全員誓ったのだ。

宇宙ネズミ(花野・宮田)&平安京999(勝山・黒田・多治見)合流

229 :B9@新生base:05/02/17 21:28:30
>>130の続き。

Q.目を覚ますと後輩の死体がありました。
  どうしますか?
A.わかりません。わかりたくもありません。


生温かく停滞する空気と血の匂い。
静まり返った小さな空間で、水口はポツンと佇んでいた。
大浦の死体。それに伴ういくつかの事象は彼を、混乱・困惑・恐怖・呆気・
疑問の坩堝に叩き込むに充分だった。
湧き上がる「理解できない苛立ち」とその末に聞こえた『プツン』という音。
それは確かに何かが切れる音だったと思うし、あそこで何かが壊れていても
おかしくなかったと思う。
しかし、幸いにしてその『プツン』という音は何かが切れると同時に防衛本能が
働く音でもあったようで、それを証明するようにさっきまであれほど乱れ、
錯乱していた意識や感情が今は不気味なほどひんやりと奇妙な落ち着きを見せている。
それどこか今や訳が解らない苛立ちは限界点を越えただの疲れへと成り下がり、
眼下に広がる凄惨な場景も一種の「慣れ」や「麻痺」によって次第に現実味を失いつつあった。

大浦が死んだ。田中とけもの道が消えた。
そして大浦は水口が殺したかのように仕立てられている。
どうしてこんな事が起こるのか、何故自分がその渦中にいるのか、
わからないし理解も出来ない。でも……

「わかる必要あるか?」

疲れきった様子でボソッとそう呟いた瞬間、水口は自分の中で急激に現状に
対する関心が薄れてゆくのを感じる。
正しくない答えが導かれる予感。しかし、偽善を振りかざして抗うほどの気力も
残っておらず『もうええんちゃう、それで』と彼の中で妥協と諦念が勝ると、

230 :B9@新生base:05/02/17 21:29:30
『だいたい全部理解するんなんて絶対無理やし、言うたら巻き込まれただけやん。
一泊したら出て行くつもりやったんやし、大浦は可哀相やけど今さらどうこう言うても
しゃあないし、大浦を殺したのが俺じゃないことは自分が一番解ってる。
それやったらもう早くここ出て、本来の目的の相方探しした方がええやろ?』

……という思考がするすると流れて集約されてゆく。
そんな、どこか後ろめたさは残るものの一応体裁の整った答えが用意できると
「えずき」は止まり、僅かに残っていた足の震えもすっかり治まった。
虚勢だって繕えば一応それなりのものには見えるものだ。
噎せかえるほど酷く生臭い血のにおいが漂うなか酸素を求めるように
荒い深呼吸を繰り返し、埃と土で汚れた服をぽんぽんと払う。
そして、何事もなかったかのように振舞うと出口へと向かった。


しかしその力は継続しない。
扉に手をかけた瞬間、『逃げるのは簡単や。でも、ホンマにこのまま無関係装って、
大浦の事とか、田中の事とか、けもの道の事とか曖昧にしてええんか?』という疑問が
ふっと湧いて、最初インクを一滴こぼした程度の小さなものだったそれは見る見るうちに
肥大すると、あっという間に抱えきれない大きさにまで膨れ上がる。
余裕のなさが生みだした応急処置的な考えや方法で現状を受け流そうとしても、
人一人……後輩一人の死はそう簡単に拭いきれるものではない。
誤算。そして、最悪なことにこういう事は一つ綻びができると、そこからどんどんどんどん
解れて、縺れて、こんがらがる。そうなるともう一歩も動けない。
『ああ……そういえば、あの時もそうやったな』
迷いが蔦となって絡みつき、脱出を躊躇う自分の足を見下ろしながら水口は
ぼんやりと思い出す。――麒麟が死んだという放送を聞いたあの日のことを。

231 :B9@新生base:05/02/17 21:30:27

麒麟とは同期だった。
田村とは楽屋で喋ったりたまに格闘の技をかけあったりという程度だったとは云え、
川島とは本坊ほどではないにしろ昔一緒にバイトをしたことだってあったし飲みに
行ったりもしていたし交流もあった方だ。
だから放送という形でその死を知ったときは腹立たしくて、『くそっ、誰が殺してん!』と
心の中で怒りの呪詛を山ほど吐いて、『俺は何もできんかった』と悔いにも似た感情で
いっぱいになった。でもそれが100%の悲しみだったかと言えばそうじゃない。
8割は確かに田村と川島の死が心から純粋に悲しかった。
だけど残りの2割は「麒麟 田村」「麒麟 川島」が持つ「意味」が損なわれる事に対する失望だった。
それに気付くのが怖くて、そんなものを彼のプライドが許せるはずがなくて、紛らわすように、
かき消すように能動的に怒り、そして悔いた。
けれど何かを誤魔化すための感情と行き場をなくした場違いなプライドほどスカスカなものはなく、
目的が摩り替わって倒錯的になって仕舞いに何故自分が怒っているのか解らなくなって、
混乱して、結局考えることを止めてしまった。≪考えること≫を止めてしまった。

232 :B9@新生base:05/02/17 21:33:01

『死にたくないんすよ!』『臆病のなにが悪いんですか? なにがいけないんですか!?』
『えっ、わかってます? 死ぬんですよ!』『僕らの日常ってそんな幻想じみたもんでした? ねぇ?』
『死ぬんすよ! 何も残せないまま……殺されて死ぬんすよ!』

可哀想な大浦。死を恐れ、死を厭い、そんな悲痛な叫びも届かず殺された大浦。

『水口さんにこの怖さが分かるんですか!』

今、この質問をされてあの時と同じ返答が出来るのだろうか?
考えても考えても答えどころか言葉も出てこない。
鬱々とした感情が沸々とわきあがり、後ろ髪引かれる思いで振り返る。
闇に飲みまれた大浦の輪郭はハッキリ捉えることは難しく、血の広がりだけが
キラキラと僅かな月明かりを反射して皮肉にも憐れみを誘って美しく映る。
水口は大浦に引き止められて此処に泊まろうと決めた事を思い出した。
しかし、今さらそれを思い出したところで余計に気を滅入らせる以外の効果は得られない。
「もう死んだろかな……」
突拍子もなくそんな思いがふっと湧いて口に出してみる。
ヤケクソとも云える感情ではあったが大浦の死体を前に此岸と彼岸の境界さえ
曖昧になりつつある今なら自ら命を絶つことだってそんなに難しいことじゃないように思う。
あれだけ拒絶したって結局のところあっさり殺されるなら、いっそ自分も一思いに
楽になったっていいような気がした。
嫌でも耳に入ってくる知ってる人間の死、見渡す限り死体死体死体死体死体死体、
そんなのにももうウンザリしていたし、自分のナイフが使われていたことや
隣で殺されていたのに暢気に寝ていて気付かなかったことなど、大浦の死に対しては
罪悪感や責任めいたものも少なからず感じている。

水口は上着の中に手をいれると革のホルスターを指でなぞり、柄を握るとそっと引き抜いた。
懐から現れる確かな鋭さを持った銀色の刃。
ぼんやりとそれを眺めながら矛先を自分のほうへと向け、それを首元に添えたところで
タイミングを計ったかのように――カチャ、と扉が開いた。

233 :B9@新生base:05/02/17 21:35:02

「あらら? あの……えっと、自殺しはるんですか?」

扉を開けて入ってきた男は素っ頓狂な声を上げると、大袈裟に驚いたリアクションをとった。
しかしそんなキャラクターでもないので、その動きは下手な三文芝居のようになってしまい
本人もそれに気付いたのか、甲斐性のない情けない顔をする。
それは残念なほど格好のつかない登場だったが、それを補うかのように水口が
「田中!?」と驚きの声を上げたので、扉の前に立つ男……マラドーナ田中は満足そうに
唇を歪めてニヤッと微笑った。
「困りましたねぇ。あまりに遅いんでお迎えに上がったんですけど、まさか自尽の途中だとは
思いませんでした。フフッ。でも、自殺は止めて下さい。命を粗末にしたら怒られちゃいますよ」
「…………………」
「それに、自殺なんかしなくても貴方はもうすぐ死にます。
馬鹿とクズ、おんぶ。そういう運命に遭遇して死にます。だから、もう少し待ってください。
どうやら楽しくなるのはこれからのようですし」
「意味がわからへん」
「わからなくていいです。どうせ死ぬんですから」
田中はまるでそれが当然であるかのように、必然であるかのように、宿命であるかのように、
一切の戸惑いも淀みもなく水口が死ぬことを断言した。
云っている事はえげつないが、物腰は柔らかいので不思議と恐怖は感じない。
しかし、その穏やかさこそが田中の不気味さを際立てているのもまた事実である。

234 :B9@新生base:05/02/17 21:37:14

「それより自殺は思いとどまってもらえました?」
「…………………」
「じゃあ、僕は水口さんの命の恩人ですね」
バツが悪そうにナイフを下ろした水口を見て田中はフフッと笑った。
本当に嬉しそうに、笑った。
そして、ふっと視線をおとし大浦の死体を一瞥すると困ったような顔で口を開く。
「それにしても嫌になりますよね。状況が狂ってるから認識も狂うんだと云われてしまえば
その通りなのかもしれませんけど、この島に連れて来られて死んだ人たちの「死にざま」は
どこか変で可笑しくて滑稽にしか見えないんですもん。
人が死にすぎているのにそれが何一つ実を結んでる気がしません。
人が命を落としているのに、何も救われない。それは尊い犠牲ですらないんです。
それに憤りを感じるのは、あるいは、一人一人の死に何か意味を見出したいなんて
幻想でしかないんでしょうか。悲しい話です」
「大浦を……大浦を殺しといてよくそんな事が……」
「大浦を殺したのはアナタです、水口さん」
「…………っ!」
絶句。水口の脳裏に浮かぶ、瞳孔の開いた大浦の恨めしそうな眼。ナイフ。
ダイイングメッセージ。
驚くほど冷たい田中の眼が静かに水口を見据えている。
「ち、ちがう! 俺は……俺は……」
「違いません。大 浦 を 殺 し た の は ア ナ タ で す 。
でも、同時に僕が殺したとも云えますけどね。憎むのなら憎めばいいんです。
もう、そんな事はどうでもいいんです」
田中は本当にどうでもよさそうにそう云った。
水口は前髪をくしゃっと握ると下唇を噛みしめて俯く。
返す言葉が見つからない。完全に田中のペースに飲まれている。

235 :B9@新生base:05/02/17 21:39:06
「そんな顔しないでください、水口さん。僕は貴方よりソレがよく解ります。
逃げたくて逃げたくて逃げたい気持ち。逃げてきて逃げてきて、此処に来て
逃れられない気持ち。逃げ癖のしみついた腐敗していく自分を眺めながら、
どこで間違えたんだろうと頭を抱えて塞ぎたくなる気持ち。辛いですよね」
「ちがう! 一緒に……」
一緒にするな、違う、違う、そんなんとは違う、これは、この感情は!
しかし、水口の言葉を遮るかのように、田中は眉を八の字にさせてやんわりと、
どこか情けない笑顔を作ると「早く本坊さん見つかるといいですね」と云った。
水口はかき乱された感情をすかされ、一瞬呆気にとられ、それでも「ありがとう」と
答えると、その返答がひどく的外れだったことに気付き、気まずそうに視線をそらした。

236 :B9@新生base:05/02/17 21:41:08

「さようなら、永遠に」

それが最後の言葉だった。
田中はそれだけ云い残すとひらりと身を翻して、扉を抜けて闇へと消えた。
「待って! お前にまだ聞きたいことが!」
水口はすぐさま後を追う。廊下は月明かりが届かないせいか部屋より闇が色濃く
広がっていて今さらながらに懐中電灯を叩きつけてしまった事を後悔する。
しかし取りに戻る気はさらさら起こらないので、暗闇をかきわけながら田中の
消えた方向にむかって突き進んだ――と、その時、突然背後で影が動いて傾斜する。
それと同時に「ブゥン」と蜂の羽音に似た音がし、続いて響く「ガコン」という鈍い音。
「えっ?」
水口は前のめりに倒れると膝をついた。
後頭部が……痛い。痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
頭を襲う金属的な痛み。しかし、抵抗どころか理解する間もなくもう一発、今度は
横から強い衝撃を受けると水口の体は跳ね飛ばされ、その場に倒れこんだ。
かすれる視界。薄れゆく意識。『ここで気失うのはやばい』と思うが脳に強烈なのを
2発もくらい体が言う事を聞かない。
遠ざかる意識の中、楽しげに笑う声を聞く。
褐色の髪にそって赤い血がつぅーと流れ、床を汚し、世界が白く薄い膜に覆われると、
劇的な速度で音が遠退いていった。

……あれ? いや、ちゃうがな……。

237 :B9:05/02/17 21:42:32
今日はここまでです。前回、感想レスをくれた方々有難うございました。

251 :名無しさん :05/02/22 00:56:36
このゲームが開始されてどの位経過しただろう。
ワッキー(ペナルティ)は森でひとり佇んでいた。
「みんな死んでったなぁ〜。オレも死ぬのかなぁ」
ワッキーはポツリとつぶやいた。

「自殺、か。」

今までに何回この言葉が頭をかすめただろう。
もう確かな数なんて覚えていない。
ただ、ワッキーには自殺したくてもできない理由があった。
それは、
「ヒデさん…無事…ですよね?殺されてませんよね?」
そう、相方のヒデだった。
高校時代からずっと世話になって、どんな時でも隣にいてくれた大切な相方。
ワッキーは死ぬ前にもう一度ヒデに会いたかった。
だから、ここ数日ろくに睡眠も取らずヒデの捜索にすべてを費やした。
しかし、見つからなかった。
どこを探しても見つからなかった。
こんなにも必死になって探しているのに見つからないことでの
焦りや苛立ちはすべて自分自身に不安となって返ってきた。
しかし、ワッキーは諦めなかった。どうしても諦めることができなかった。
ワッキーは微かな希望に全てをかけていた。
「もう一回探してみるか。」
ワッキーは立ち上がり歩き出そうとしたその時
「あれれぇ〜?もしかしてワッキーさんじゃないですかぁ〜?」
能天気な声が後ろから聞こえてきた振り返ると・・・

あべこうじが大きく手を振っていた。

255 :名無しさん :05/02/24 00:22:37
>251続き
「やっぱりワッキーさんだ!まだ死んでなかったんですね!」
満面のウザイ笑みを浮かべながらあべこうじは駆け寄ってきた。
あべこうじは武器らしいものは持っていない。
それにこの笑顔なのだから殺すつもりは無いのだろう。警戒する必要は無いか。
ワッキーはそう思った。
「まだ生き残ってるなんて、ワッキーさんってすごく運がいいんですね!」
あべこうじは妙にハイテンションで言った。
「いや、そうかな?」
「そうですよぉ〜」
この言葉とともに、ワッキーの腹に拳が殴りつけられた。
「ウッ、」
ワッキーはうめき声を上げた。不意打ちだった。完全に不意打ちだった。
ワッキーは崩れるようにその場に倒れこんだ。しかし、それが仇となった。
今度はワッキーの腹と顔面にあべこうじの蹴りが入った。
「さっきね、僕のダイナマイト、全部使い果たしちゃったんですよぉ〜。いや〜、ワッキーさんは本当に運がいい。」
笑顔のままあべこうじは蹴り続けた。


256 :名無しさん :05/02/24 00:34:03
「ち…くしょっ!」
いつもだったらこんな奴、秒殺で倒せるのに。ワッキーは蹴られながら思った。
しかし、今まで体に蓄積していた疲労や睡眠不足、
そして痛みや恐怖でワッキーの体は思うように動いてくれなかった。
「あれれ〜?ワッキーさんってこんなに張り合いの無い人でしたっけ?」
能天気な口調であべこうじは言った。
「じゃあ、もうちょっと頑張ってもらう為に、1ついい事を教えてあげますよ。」
突然、蹴りがやんだ。ワッキーは立ち上がろうと体を起こした。
「僕、さっきヒデさん殺しましたよ。」
ワッキーの背筋が凍った。

257 :名無しさん :05/02/24 01:07:56
「えっ?…」
「さっき、ヒデさんが寝てる所をダイナマイトでどっか〜ん。でも、あの殺し方はつまんなかったな。」

ヒデさんが…死んだ?

嘘だ。ヒデさんが死ぬなんて、

嘘だ。嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、

「嘘だぁっ!」
ワッキーはあべこうじに殴りかかった。しかし、それはあっさりと回避されてしまった。
「嘘じゃないっすよ。ダイナマイトでこっぱみじん。死体も残ってませんよ。」
「黙れ!黙れ!黙れ!」
ワッキーは何度も殴りかかった。しかし、その度に攻撃はかわされ続けた。
「そんなに信じられないなら、自分で見にいったらいいじゃないですか。ここを南に行った所にありますから。」
「うるさい!」
ワッキーはもう一度大きく殴りかかった。しかし、足を引っ掛けられ、ワッキーは転倒してしまった。
「攻撃が単純すぎるんですよ、ワッキーさん。もういいですよ。十分楽しめましたから。」
そう言うとあべこうじは落ちていた大きめの石を持った。その顔からは、既に笑顔が消えていた。
「あの世でヒデさんによろしく言っといてくださいね。」
あべこうじは大きく石を振り上げた。
(あぁ、俺死ぬな。)
そう思い、ワッキーは静かに目を閉じた。

258 :名無しさん :05/02/24 01:18:23
ごぉぉぉぉぉぉぉん。

…ドサッ

鈍い音が森に響いた。
(あれ?俺生きてる?ってか今の音、何?)
ワッキーは目を開けた。
すると、目の前にいたはずのあべこうじがいない。
横を見ると、男が木刀であべこうじを殴りつけていた。
「おめぇ!俺の相方に何してんだよぉっ!」
男が叫んだ。

ん?相方?

っていうかこの声どっかで…

えっ、もしかして…

「ヒデさん!?」
ワッキーは力いっぱい叫んだ。
男が振り返るとそこにはヒデが笑顔で立っていた。

259 :名無しさん :05/02/24 01:20:56
今日はここまででごさいます。
次はいつになるかは分かりません。
最後までどうかお付き合いくださいませ。
おやすみなさい。

261 :B9@町田・本坊ペア:05/02/25 17:20:08
>>236

ゴローンと床に寝っ転がり瞼を閉じて「すー…すー…」と一定のリズムで呼吸を
繰り返す本坊を一瞥し『皮肉なもんやで』と思うと、町田星児はすっと立ち上がった。
煙草を探してポケットをまさぐるが自分がそんなものを持っていないことを思い出すと
露骨な溜息をつきながら座りなおし、苛立たしげに膝を揺する。
けれど所詮イライラしたところで煙草が手に入るわけでもない。
アッサリ諦めると、元々猫背な背中を丸めた。ウトウトと襲いくる眠気。
重い瞼に耐え切れなくなって眼を瞑る。ゆるりと心地よい眠りにつけそうな予感。僅かな期待。
しかし、そこに待ちうけていたのは穏やかな夢などではなく――ただ後味の悪い、…………。


◆◆◆

耐え難い死臭を放ち無残に放り出された身体。
奇妙な方向にこれでもかと云うほどねじれ曲がった腕。
潰れた頭から脳漿を垂れ流し、パンパンに腫れ上がった顔は紫色に変色していて
歪にゆがんで原型を留めいない。それでもなお浮かび上がる死斑。
薄くひらいた口からは、だらしなく気色の悪い舌が垂れ下がって、血とヨダレと
嘔吐物の混ざった液体が糸を引いていた。

目をそむけたくなるほど判然な死。顔をしかめたくなるほど完全な死。
それを前に「これも違う」と残念そうな声を出し、「野菜とかさ、『私が作りました』っていう
写真が貼ってあったら萎えへん?スーパーに並ぶ無個性な野菜にそんなんいらんねんって
思ってまう。なんか判らへんけど、今そんな心境やわ」と云って振り返った本坊は
どこかうんざりとした陰鬱な表情を浮かべていた。

262 :B9@新生base:05/02/25 17:22:05
――そんな顔をするくらいなら死体の観察なんて止めればいい。
そう町田は思うし、実際そう提言したが本坊は「うん、でもあかんねん」と云って
その意見をさらりと流すと、また数メートル先に転がる死体を見つけて走っていく。
もう何度も繰り返されたやり取り。
数日前まで死体を見るだけで怖がっていたのが嘘のような変貌ぶりである。
町田は最初「本坊は麒麟の死体を捜してるんじゃないか?」と思った。
それならまだ理解できるような気がした。でも、どうやらそうじゃないらしい。
随分前の話になるので、覚えてもらえているかどうか定かではないが、
『死体を怖がる本坊がある死体を前に急に静かになって、自ら近づいてゆき
食い入るように見だして、挙句の果てにその死体に向かって手を伸ばし町田が
慌てて止めた』というあの話。
どうやら本坊の中であの出来事がずっと胸に引っかかっていたらしく、ある日突然
「ごめん、引き返すことになんのは解ってんねんけど、もう一回あそこに戻ってくれへん?」と
云い出した。もちろん町田は「なんでやねん? 嫌やわ。なんで死体見るために
戻らなあかんねん」と拒んだが「お願い!」としつこく頼まれ渋々了解するはめになった。
しかし、戻ってみるとすでにそこに死体はなく、ただ赤黒い血の跡だけが生々しく地面に
残っていた。あの迷彩服の男たちに処理されたのだろう。
町田は本坊の我儘を呑んで行った行為が徒労に終ったことに少し苛立ちを覚えたが、
当の本人は「どこ行ったんやろう?」と、まるで死体が歩いてどこかに消えてしまったかのような
表現をして、呆けた顔でぼーっと空を見上げていた。
町田にとっては(本坊と一緒に行動している身としては)取るに足らない、ちょっとしたエピソード。
けれど、その出来事をきっかけに本坊の死体観察癖は始まった。
顔も名前も分からない一つの死体の消失が本坊の何を変えたかなんて町田は知るよしもない。

263 :B9@新生base:05/02/25 17:24:04

またその一方で、水口探しの方もどん詰まり。
当たり前といえば当たり前で、島とは云えそれなりの広さ。
なんの手がかりもなく見つかるはずもなく、それにしても酷い有様で、
「あいつネコ好きやんか。もしかしたらネコ置いてたら寄ってくるかもしれへん」
「どんな能力持っとんねん! いや、あいつやったらホンマに寄ってきそうやけど。
だいたい猫なんかどこにおんねん?」「どこやろう?」
なんて会話が成り立ってしまう程、その捜索活動に前進はなかった。

町田は物事がうまくいかないのは嫌いだ。
また極度のマイペースでもあるのでそのペースを乱されるのも好まない。
しかし、どうも本坊といると調子が狂う。
地軸が僅かに傾いているような、あるいは、愛すべき常識が何の価値も持たないような、
そんな錯覚さえ起こる。(おまけに町田も実はわりとボケたがりなのに相手が本坊では
それも叶わない。←どうでもいい話)
それでも、彼が本坊に付き合っているのは、テンションが上がりすぎてコンパスを
壊してしまうという信じられない失敗をやってのけ、エリアどころか西も東も南も北も
自分が今どこにいるのかも判らない本坊が一人で生きながらえるほど此処は甘い場所ではないし、
そんな場所に本坊を一人置き去りにできるほど彼も非情な人間ではないからだ。
まぁ、云ってしまえば最初から変に噛み合わない奇妙な関係だけに疲れるだけで仲違いもくそもない。
奇行愚行にはハラハラさせられっぱなしだが、本坊に付き合ってやってもいいと思う程度には
町田も寛大だった。


264 :B9@新生base:05/02/25 17:25:45
◆◆◆

「何やろう、あれ?」という本坊の間延びした声が聞こえたのは多分、町田が『あー、腹減ったー。
ポテトチップス食いたい』とか呑気にそんなことを考えていた時のことだったと思う。
「なんやねん?」と億劫そうに顔を上げ、本坊の指差す方向に目をむけた町田は凍りついた。
……と、言っても特筆そこに何かがあったわけではない。
むしろ、そこは殺戮が行われてるなんて嘘のような長閑な風景が広がっていたし、
本坊の指差す先にもただクリーム色のありふれた建物がポツンと建っているだけだった。
それでも町田は『ぞわり』と気味の悪い感覚に襲われると全身がざわざわと総毛立って動けなくなる。
「どうしたん?」という本坊の心配する声が嫌に遠くに聞こえた。
酷く落ち着かない。嫌な予感。まるで、何かが始まり、何かが終る――そんな……。

「町田!」

ハッと我に返った。視線を上げると本坊が困惑と怪訝と恐怖を綯い交ぜにしたような顔をしている。
そして次の瞬間、一気に混乱が打ち勝ったのか本坊は顔を歪ませると「何?何?嫌や!何?
お化け?あかん!わー、あかーん。何?もー、何よぉ!」と情けない声を張り上げた。
どうやらいつも平然としている町田の心の揺れとそれに伴う動揺が彼を怖がらせてしまったらしい。
それにしたって、殺人者がうろうろしていてもおかしくない場所で、お化けの心配よりもっと
心配すべきことがあるだろうと思うが、それはさて置き、人間どうやら自分より動揺している人を見ると逆に
冷静になれるものらしく、町田は淡々とした口調で「うるさい。なんでもないから、とりあえず落ち着け」と
云うと、本坊の背中を軽く蹴り飛ばした。本坊は眼を白黒させながらもとりあえず押し黙る。

265 :B9@新生base:05/02/25 17:28:16

「ビックリするわ。どしたんな?」
「ちょっとボーッとしてただけやのに、それをお前が大袈裟に驚くから大層な事になんねん」
「ほんまか。じゃあ、あれ見に行こうや」

何事もないと判ったらもうどうでもいいのか、早い見切りで打って変わってケロリとした表情の
本坊はふたたびクリーム色の建物を指差した。
一見、図書館か市民会館と見まがう風貌だがそれらに比べるといくぶん「浮いた」印象を持つ奇妙な建築物。
他の建物や民家と比べてもその差異は一目瞭然であろう。本坊の気を引いたのも納得がいく。
近づいて見てみると入り口の横にガラス張りの掲示板があり、そこには【劇団ミツバチ公演 
ライ麦畑でつかまえて】と書かれたお世辞にもセンスが良いとは云えないデザインのポスターと
落研主催の寄席のチラシが並んで貼ってあった。
「なんと、まぁ! 劇場やんか!」
本坊は嬉々とした声を上げると、好奇心いっぱいの目でポスターを眺めてから警戒心なんて
微塵もない様子でその建物の中に入っていってしまった。
町田は本坊の後姿にむかって大きな溜息をつき、口をへの字に曲げると諦めたかのように
ノソノソとその後を追った。

266 :B9:05/02/25 17:37:05
今日はここまで。
前回レスをくれた方ありがd。励みになります。
都合により今回と次回が町田・本坊ペア。次々回からはまた水口氏編の続きに戻ります。
ややこしくてすいません。

270 :あお ◆ySa9Nl7bds :05/02/27 22:59:03
>258続き
「ヒデさんっ!?」
ワッキーは立ち上がり、ヒデに駆け寄ろうとした。
が、立ち上がった瞬間に右足に激痛が走り、ワッキーは転倒してしまった。
どうやら足を引っ掛けられ、転んだはずみで捻挫してしまったらしい。
「おっ、おい!大丈夫か?」
慌ててヒデが駆け寄ってきた。
駆け寄ろうとしたつもりが逆に駆け寄られたことに心の中で苦笑しつつ、
ワッキーはヒデが生存していた喜びに涙を流した。
「生きてたんですね…よかった…よかったぁ…」
「おいおい、泣くなよ。余計に気持ち悪くなるだろ」
「だって…だってぇ…」
子供のように泣きじゃくるワッキーにヒデは優しく語りかけた。
「あいつが、…あべこうじが、ヒデさんを、殺したって、言ってたから、俺、てっきり…」
飛び跳ねる横隔膜に邪魔されながら、ワッキーは途切れ途切れに答えた。
そしてしばらくの沈黙の後、ヒデは口を開いた。

「本当だったら俺はもう死んでたんだけどな。」

271 :あお ◆ySa9Nl7bds :05/02/27 23:50:23
それは30分前に遡る。
ヒデは小屋で壁にもたれかかって仮眠を取っていた。すると、微かな音がヒデの耳に届いた。
ヒデは起き上ると、もう一度耳をすませてみた。

ゴソッ…

「…外に誰がいるな。」
ヒデはつぶやくと、武器の木刀を手にし、窓から外を覗いた。
そこには、あべこうじが小屋の外壁に何かを仕掛けているのが見えた。
何をしているのかは見えなかったが、いつもとは違う何かを感じさせた。
するといきなり、あべこうじは立ち上がり、全速力で森に逃げていった。
「なんなんだ?あいつ…」
そう思いながら窓を開け、あべこうじが居た場所に目を向けると、 導火線の火がダイナマイトに着火しようとしていた所だった。
「うっ、うわぁっ!」
ヒデは急いで窓から脱出すると、持ち前の俊足で小屋から遠ざかった。 そして、

ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!

凄まじい爆音が空に響いた。
木々がざわめき、砂が舞い上がり、小屋はこっぱみじんに消えてなくなっていた。
もし、あの小屋にヒデがいたら間違いなく骨も残らなかっただろう。
「い、生きてる…よな?…」
息を切らしながらヒデは自分の安堵を確かめた。そして…
ヒデはあべこうじが走り去っていった森を凝視した。

           「追いかける?」

突然突拍子も無い考えがヒデの脳裏に浮かんだ。 追いかけてどうなるのかヒデにもよく分からない。
しかし、ヒデの動物的本能の部分が追跡を要求していた。
そして、ヒデは立ち上がると、あべこうじが去っていった森に向かって駆け出した。。

274 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/02/28 15:18:02
メルヘンズ・芝川は、かろうじて自分が座ると身を隠せる
ビルの壁に身を潜めていた。
「ancient・・・・・・・古代の・・・・・」
この悲惨なゲームに怯えているのかと思いきや、
手帳からひきちぎった紙に英単語をガリガリと書いて唱えている。
「betray・・・・・・裏切り・・・・・・
partner・・・・・・・相方・・・・・・・・・・・・あ」
「partner」という単語を唱えた瞬間、相方・吉澤の顔が頭をよぎると同時に
何か寒気がした。
「吉澤くん今何してんのやろ。あー英単語唱えてる場合ちゃうわー。
探しにいかな・・・・」
立ちあがった瞬間、地面に倒れこんだ。長時間地面に座りっぱなしなので
足がしびれている。なんとか起きあがり英単語を書いた紙をグシャリと
手に握り、外へ向かって投げた。
「ぃてっ」
「ヤバッ誰かに当たった!」
芝川が投げた紙が誰かに当たり、その誰かがこちらへ向かってくる。
近づいてくる足音にビクビクしっぱなしだ。イヤな汗が背中をつたい、
人に会うのが怖いなんてたまったモンじゃない。
足音が頭に響く。

275 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/02/28 15:19:02
「すいませんでしたすいませんでしたすいませんでした」
高が紙投げただけなのに心の中で何回もこの言葉を叫ぶ。
「・・・・・おい」
「は、はい!!!!」
思わず声が裏返る。
「すすすす、すいませんでした!!!!ま、丸腰なので許してくださいぃぃぃ!」
「何言ってんのオマエ」
聞き覚えのある声に辺りを見回すが誰もいない。すると上から黒い影が覗く。
「へ?」
「オレだよオレ!!!」
「よ、吉澤くん!!!」
「なんだこんなトコにいたんか。」
極度の緊張感から解放された芝川は足がすくんでしまった。


276 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/02/28 15:30:38
「吉澤くん今までどこ行っててん?」
「いやオマエ探しとった。それよりこれに何書いたの?」
芝川はさっき投げた紙を広げようとする吉澤から紙をうばった。
「あ、ネタだよ、ネタ。」
「ネタァ??えらい余裕やん。」
「あは、あはははははw」
試験用に単語を覚えてたなんて言ったら笑われるどころではなくなると思った
芝川はあえて言わなかった。
「それにしてもよー、なんか・・・・いっぱい殺されとったで・・・・・・。」
「ホンマか。」
「テレビで見たことある人たちの死体がいっぱぃ・・・・・ぃ」
吉澤の顔が曇った。相方を探しつつ草村や木に隠れて、殺されている芸人を
何度も見てショックが隠せない。誰だかわからないけど、とにかく惨い殺され方を
した芸人を見た時はその犯人を追って殺そうと思ったが
そういうワケにも行かなかった。


277 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/02/28 15:56:30
ギリギリ・・・・・ どこからともなく歯車が軋むような音がする。
吉澤は頭を抱え込んでしまった。
「ど、どうしたん!?」
「ハァーッハァーッ・・・・・・」
頭を抱え込んだまま座りこみ、共に涎が口からダラリと出てくる。
「どっか痛いん?!」
「ウルサイ・・・・・ウルサイ・・・・・・・」
いつもと全く様子の違う吉澤に、驚倒した。
「吉澤くん、オイ、吉澤くんってば!!!!!」
ハッ
吉澤は我に返った。芝川は恐怖心から体が震えていた。
「ゴメン・・・・・。」
「いや、別にええけど・・・・・・」
吉澤の中には全く別の人間がいるかもしれないことを、
芝川はすぐに悟った。
「ホンマ、ゴメン」
「ええって。」

ターン

奥の森の方から銃声が聞こえた。
「ヤバイ、誰かがこっちへ来る。」
「逃げるぞ」

吉澤は芝川の腕をひっぱって走り出した。


282 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/03/01 17:35:50
>>277の続き

「ゲーム始まってからどれぐらい経ってるかわからへんけど誰も来へんからな、
ずっとあのビルにおってん。
もう頭ん中高校の期末試験・・・・たぶん追試になるやろうけど、あ、あとネタのコトしか考えてへんかってん。」
「・・・・・・試験?」
「あ」
吉澤は楽観的でええなぁと軽く嘲笑した。
ゲームが始まって以来ずっとあのビルに隠れていても何もされなかった・誰にも会わなかった
故に殺し合いのことなどまったく考えていない―――
芝川は何かとてつもなく長い夢を見ているのではないかと頬を抓るが
現実は現実。
「母ちゃん、ゴメン」
簡単に受け入れることのできない現実故に出てきた言葉がこれだった。
まだ所属する事務所すら決まっていない、ただ道端で頑張って考えたネタを
披露するだけ。酔っ払ったおっさんにバカにされる時もあったり、
女子高生の笑い声がただの引き笑いに聞こえる時もあったり、
彼らがネタやってる隣で歌を歌い出す人がいたりしてネタができない時もあったり。
売れてなくても劇場に出してもらえる芸人さんですら雲の上の存在である。
そんなお笑いとしてまだまだの彼らがバトロワに抜擢されたのか。
運が悪いとしかいいようがないのか。もっともプラスに考えれば、
プロ・アマ関係なくお笑いはお笑いということか。
芝川は激しく困苦した。
そしてもはや試験やネタのことを気にしている場合ではなく、
自分の死が間近に迫っているのかもしれなことを確信した。


283 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/03/01 17:58:02
「よし、これでオッケー!」
困苦していた芝川とは裏腹に何やら愉し気な声をあげた吉澤。
「何してんの?」
「地図だよ地図。どこかしら逃げなと思って。そしたらこの辺が安全ちゃうかな思て。」
「・・・・・・・へー・・・・。ってあかんあかんあかん!!!!!」
「何がぃ」
「自分めっさ方向音痴やろ?!」
「そやけど」
「あかんよ!!!!変なところ行ったらどないしてくれんねん!?」
「だ〜いじょうぶやって。あははははは。」

パン

芝川は吉澤の頬へ平手打ちをした。
「ってぇ・・・・・・・・何すんだよ!!!」
「オマッ・・・・・オマエさっき楽観的でええな言うて笑ったやんか。さっき気づいてん!!!
だからな、そんなな、もうな、あんの・・・・あば・・・・バトロ・・・・・」
もはや芝川は支離滅裂で何を言っているのかわからない。
「いいから落ちついて。」
「そんな、もう殺し合いとかわからへんねん!なんでオレらまで参加せなあかんねん!
そんでな自分の命とかなー!1個しかない自分の命をなー、こんなな、いつ死ぬかわからへん状況でなー粗末にでけへんやんか、ヘラヘラしてる場合とちゃうねんで、うあああオレもう
帰りてぇよ帰らせろよああああ」
吉澤は噎び泣く芝川の肩にやさしく手をやった。
「悪かったよ、さっきは。せやな、生命が危ぶまれてるっちゅうのにヘラヘラするのは
おかしいよな。はいはいもうわかったから泣くなて。」
手渡されたティッシュで鼻をチーンとかんだ。
「でも泣いても喚いてもココから脱出することはできん。だから参加させられた以上
もう何してもええから自分の命を守らなあかんねん。帰りたいとか殺すのがイヤとか弱音ばっかり吐いてたら助からんっちゅうことや。今ここには2つ脳がある。よく作戦を練って2人で生き延びるしかない。」
もっともな吉澤の言葉に、芝川は腕で思い切り涙を拭い「よっしゃあああああ」と意気込んだ。


287 :zorg ◆bV86c93//M :05/03/02 14:38:26
「そ、それはアカンやろ、お前ぇ!ゴホッゴホゴホッ!!」
浜田は咳き込みながら堀部の顔をみる。

・・・なに普通の顔をして俺を見とんねん、こいつ。

「お前なぁ、人間を食べんのは殺しの中でも一番のルール違反やろ。」
「ルール違反?」
「せや!」
浜田は体制を整え、壁にもたれるように座り込むと、日本刀を右手に構え堀部を見上げる。
一見直立不動で浜田に従っているような堀部だが、浜田は最初に感じた殺意をわずかに感じていた。
「納得いってへんようやな。言うてみぃ。」
「人の処理法にルールも何もないでしょう。死んだら魂の入っていない単なるナマモノですよ。
どう処理しても咎められることはないんじゃないですか。ここはそういう場所でしょ。」
「処理法、ナマモンにそういう場所か…。堀部くん、キテるねぇ君。」
「何がですか。」
堀部の目、焦点が定まってない。まるで薬物中毒かのように眼球が小刻みに震えている。

・・・あぁ、アカンわ。もう戻られへん。

浜田は堀部の右手に握られた出刃包丁を警戒しながらもゆっくり立ち上がり、堀部に笑いかけた。

288 :zorg ◆bV86c93//M :05/03/02 14:39:09
「まぁええわ。堀部、メシ作ってくれてありがとぉ。旨かったんはホンマやし、礼ぐらい言っとかんとな。」
「話を逸らさないでもらえま・・・・・・」
浜田は居合い抜きのごとく堀部の顔に一閃引く。堀部の両目から鮮血がシャワーとなって浜田に振りそそぎ、
堀部はその場に崩れ落ちる。
浜田は足下に転がった出刃包丁を拾うと、手探りをしながらもがいている堀部を見下ろした。
「せやけど、人間使うんだけはやめてぇな。」
そうつぶやく浜田の声はきっと堀部には届かなかっただろう。同時に堀部の頭には出刃包丁が刺さり、
そのままうつ伏せに崩れ落ちた。
「堀部、ちょっと服借りんで。」
日本刀に堀部の上着を絡ませ血を拭き取る。何度か拭き取っているうちに視界がぼやけてきた。
「なんでイカレてもうたんや、お前。お前だけはしっかりしとかなアカンかってんで。」
堀部の背中に手をつく。まだぬくもりを感じる。その感触があまりにリアルで怖くなる。
「殺すんにルール違反なんかあるかいな。お前のいう通りや。」

・・・けどな。お前の口からは聞きとうなかったわ。

この島連れて来られた時を思い出す。今回の説明を受け、一人一人外に出て行くのをじっと見ていた時、
部屋の隅にうずくまっている堀部の姿が目に入った。

・・・なんでやねんっ。あいつは放送作家や。ここに来る様なヤツちゃう!

そう思った。芸人として認めていないわけではない。むしろ尊敬さえする。

289 :zorg ◆bV86c93//M :05/03/02 14:41:05
堀部は放送作家だからと理由をつけて逃がしてやりたかった。何も出来んかった。
いつの間にか声を漏らして泣いていた。泣きながらも最後に堀部の顔を見ようと仰向けに転がすと
胸ポケットから万年筆が転がり落ちた。見覚えがある。
「親からもらった言うてたヤツやん」
ガキ使いの打ち合わせで何気なく交わした会話。その場には松本もいた。
「ええよ、わかった。ちゃんとお前の親に届けたる。」

・・・でけへんかっても、松本には必ず渡しとくから。松本やったら何とかしてくれるはずや。

落とさないように靴の中にしまう。気持ちを切り替える。
堀部の頭に刺さったままの出刃包丁を抜くと建物の中に放り投げた。
少しだけ取り戻した体力と精神力を頼りに松本を探すため、森に向かう。
そして、自分を嘲笑するように笑うと、下を向きながらつぶやいた。

「松本ー。俺、堀部殺してもうた。お前はそんな相方ともう一度コンビ組む気あるん?」

【 K2堀部 死亡 】

365 :シフクノタネ:05/03/13 18:00:25
まとめサイトで見たら、まだ成仏してなかったようなので、投下してみます。
『天国編〜後藤秀樹〜』

「ヒデキさん、これはどうすれば?」

「あー…それは後回し!!今日はぎょうさん人が来るらしいから」

自殺によって天国からも地獄からもそっぽ向かれた後藤は、今や扉前の仕事を手伝う立場にあった。
死んでからかれこれ500年、その間に仲間たちは何度か後藤の前を通っていった。

「あー!!ゴトーさん!!」

今日の死者がやってくる。
その中に、見知った者がいた。

「おぉ、スズキ」

「ゴトーさん、まだここにいたんですか?俺、もう7回目やのに」

「しゃあないやん、俺は自殺したんやから」


366 :シフクノタネ:05/03/13 18:07:32
>365

死んで天国へいった者は生き返ることができ、地獄に行った者でもそれなりの懲罰を受ければ
人間界に戻る。
しかし、境目にいる後藤は、生き返ることも出来ないのだった。

「スズキ、今回はいくつまで生きたん?」

「今回は…150くらいかな」

「へぇ。平均寿命、また伸びたんか」

「今は200くらいまで生きる人もざらですから」

自分の知らない間に、人間界はどんどん変わっていく。
だが、この場所ではほんの一時に過ぎず、後藤も30のままだ。

367 :シフクノタネ:05/03/13 18:12:13
「せや、今回こそ久馬に会ったやろ」

「いや、今回も…」

「またかえ!!」

仲間は何人も後藤の前を通っていった。
この鈴木もその中の1人。
しかし、久馬は1度も来ないのだ。
500年の間、ただの1度も。

369 :シフクノタネ:05/03/14 02:52:11
>368 どうもです。頑張ります!!

>>367続き

「だ、大丈夫ですよ!!あと100年くらい待てば、来るかもしれないですよ?」

「……もう気休めはえぇわ」

後藤は深い溜息をつき、その場に腰を下ろした。
鈴木もそれ以上言葉が続かず、黙って隣に座った。

『もう1度、漫才やろうな』

その言葉を支えに、今日まで過ごしてきたのに。
彼は、約束を忘れてしまったのだろうか。
もしかしたら、自分のことを忘れてしまったのかもしれない…
そんな思いが胸を過ぎる。

370 :シフクノタネ:05/03/14 03:23:11
>369

『今から審判を始めます!!今日は人数が多いので、このまま読み上げます。呼ばれた方は、扉の前に整列してください』

後藤にとっては、もう珍しくも何ともない。
ある意味に、日常の一コマだ。
隣で神妙な顔をしている鈴木をよそに、後藤は読み上げられる名前をメモする。

『スズキツカサ』

「スズキツカサ…っと。よかったな、また向こうで」

「あ、はい…」

どんどん名前は読み上げられていく。
最初は手間取ったこの仕事も、今ではお手のものだ。
ただし、生前と変わらず、文字は全て汚いカタカナだが。

『以上です。あ、あとそれからもう1人……』

スピーカーの向こうで、ガサガサと音がする。
何やら、もめているのだろうか。

「やれやれ、またかえ」

後藤にとっては、直前の一悶着もありふれたことだった。
最初は、自分の名前が呼ばれるのではと期待を抱いた。


「ゴトーさん、俺、実はずっと隠してたことがあるんです」

371 :シフクノタネ:05/03/14 03:53:06
>370

鈴木が、意を決して口を開いた。

「隠さなあかんようなことがあるんか?」

「キュウさんのことなんですけど…」


『お待たせしました。最後の方は”ゴトーヒデキ”』


鈴木の言葉を遮るように、スピーカーから聞こえた言葉。
500年間待ち続けていた、一言だった。

「……俺、呼ばれたんやな?」

「…みたいですね。で、話の続きなんですけど…」

「もうえぇって。どうせ会えないんやったら、生まれ変わって忘れるから」

待ち続けた言葉を聞けたのに、心は晴れない。
久馬と漫才が出来ないのなら、後藤がここを離れる理由はないのだ。

「これ、置いてくる。少し、待っててな」

手元の書類をまとめて部下に手渡し、世話になった者たちに挨拶をする。
それでも、後藤は気分が晴れなかった。


372 :シフクノタネ:05/03/14 04:07:54
>371

扉は既に開き、向こうへの道が開かれている。
向こうに至った者もいるだろう。

「ゴトーさん!!キュウさん、向こうで待ってるんです!!」

「…はぁ?」

「だからっ、『入れ違いになったら困る』言うて、ずっと向こうで待ってるんですよ!!」

「キュウマが…待ってる…?」

長い間深い思考をしなかった頭が、フル回転を始める。
事情を整理するのは、時間がかかりそうだった。

「早く行きましょう!!待ちくたびれてると思いますよ」

「………」

「俺も、シェイクダウンの漫才が見たいなぁ…」

「………」

どうしていいか、困惑しているのではない。
1度に起こった朗報が、後藤はまだ信じられないのだ。

373 :シフクノタネ:05/03/14 04:15:54
>373

「ホンマに、待ってんねんな?」

「えぇ、扉入ってすぐの所に」

「……ほな、案内してもらおか」


後藤は1度も振り返らず、扉の前に来た。
向こうはモヤがかかってよく見えないが、誰かが立っている。
こちら側には、もう後藤と鈴木しかいない。

「ほら、キュウさん待ってますよ」

鈴木に背中を押され、後藤は扉をくぐった。
あのヒゲ男は相変わらずの仏頂面だったが、酷く懐かしかった。


『後藤、おかえり』


《『天国編〜後藤秀樹〜』終》

375 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/03/14 10:01:11
>>283
「あーあー、なんかこの人見たコトあるで。・・・・・コンビ名なんやったっけ?」
吉澤は死体の顔の頬をブニブニつついて遊んでいた。そして、生きている時とかけ離れたような肌の感触に寒気も感じた。
「コラ!死体つつくな!縁起悪いやろ!」
「あぁ、悪ぃ・・・・・・」
触った指をズボンのすそでゴシゴシと拭き、「キモ」とつぶやいた。

「オマエ ミテタンダロ?」
「ナンデ タスケテ クレナカッタンダ ヨ」
「ヒトノ コロサレザマヲミテテ ナニモ オモワナカッタノカ?」
「ドウシテ ムメイノ ワカテノ オマエラガ イキテイルンダ?」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
吉澤はまた頭を抱え込んでしまった。
「ど、どうしたんだよ?!」
芝川が吉澤の肩に手を置くとすぐにそれを振り払った。
「来るな!来るな!!来るなぁぁぁ!」
「イテテテテ、イテッ」
吉澤が投げた小石が芝川の眉毛の上に命中し、血が流れた。
暴れる吉澤を、うしろから羽交い締めにした。

「ミテタンダロ?」
「オマエガ バトロワデ1バン?」
「ワラワセルナ」

とにかく吉澤の耳には幻聴しか聞こえなかった。その中で聞き覚えのある声が
自分の名前を呼んでいる。



376 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/03/14 10:02:02
「うるせぇ!黙れ!黙れっつってんだよ!!!」
「いや、オレはとっくに黙ってるよ!!!!おい!おい!吉澤ぁぁ!!!」
「・・・・・・・え?あ。」

自分の名前を呼ぶ声が相方だとわかると正気に戻った。
「っああああーーーーー!ゴ、ゴメ・・・・・・・・。」
「ええよ・・・・・」
吉澤は芝川に土下座した。
「アレか、パニック症候群とかいうヤツか?」
「ちゃうねん、その・・・・・・ほら、オレらって・・・・これが始まってすぐはぐれたやんか。
そんで、芝川くん見つけるまで色んな人が殺されたり殺したりっていうんをたくさん影で
見てきてん。それはもう・・・・・言葉では言い表せないほど残虐で・・・・・・。
オレは知らん人でも殺されたヤツらに何もしてあげられんかった・・・・・・・・。」
吉澤の目からは涙が止まらなかった。そして芝川も。
「影で見てるだけで、何もせんくて・・・・・・そしたらどこからともなく
死んだヤツらからの声がして・・・・・・・・・・。」
「そやったんか・・・・・・。前にも倒れた時はそれやったんか。わかった。
そんな声なんて無視せぇ。無視や。」
「いや無視できてたら今頃困ってへんやん。・・・・・オレ頑張るからさ。」
吉澤は立ち上がって、ひざの砂を払った。


徐々にまた別の廃墟ビルがあるところまでたどりついた。
またしても死体やバラバラになってしまった体の一部などが落ちている。
風で砂埃が舞い、それとともに匂ってくる異臭に時々咳き込む。


377 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :05/03/14 10:16:40
メルヘンズ編、今日はココまでです。
しばらくアク規制にかかってこれなかったので
ちょっとずつでもうpするコトにしました。
ではヘボイ文章ですが・・・・・w


378 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/14 12:30:09
『集団催眠編』 アメザリの平井バージョン。

・・・・お?意識あるんか、俺
気づくと真っ暗で何もなさそうな所に倒れている。
平井は寝返りを利用して自分が今何処にいるのかを確認しようと試みた。・・・つもりだった。
・・・・アカン。ぜんぜん動かれへん。
死後の世界なのだろうか。イメージとは違ったがおそらくそうなのだろう。
平井は動くのを諦め、ただただ考えていた。柳原はどうしてるんだろう。他の仲間は・・・。川島は・・・?
考えるの事さえも面倒になってきた頃、目線のはるか遠くに白い点が浮かんでいるのに気づいた。
と、その白い点が自分めがけて迫ってきた。まるで吸い込まれるかのように、襲われた感覚がした。
平井は驚く時間さえ与えられないまま意識がはじけた。
次の瞬間、平井の目は開いていた。目線の先には天井がある。体育館のようなつくりだ。
・・・・今度はどこに来たんかなぁ。どうせまた動かれへんちゃうの。
試しに首を左に倒す。あっさり動いた。
「うわぁっ!?…あぶねっ、いでっ!!」
平井は漫画のキャラのように飛び跳ねて体を起こした。その拍子に思いっきり肘を床に打ちつける。
まったりした意識の中に飛び込んできたのは相方・柳原の寝顔だった。
・・・・なになに?どゆ事?何?
平井はまだ周りが全く見えていなかった。柳原から目を外す事ができない。

379 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/14 12:30:59
「平井さん、起きはった?」
声のする方へ目線を動かす。少し離れた所から話しかけたのはフットボールアワーの岩尾だった。
「あぁ、起きたよ。・・・いやいや、何?起きたって、何?」
「ボクもあんまわかってへんのですけど、なんや実験らしいんですわ。・・・」
岩尾が説明しようと平井の前に座ったとほぼ同時に給食当番のお兄さんがきた。
「はい、スイマセン。アメリカザリガニの平井さんですね。おつかれさまでした。」
そういって、失格のワッペンを胸に貼ってきた。手にした紙を見ながら質問をしてくる。
気分は?・・・悪くない。痛みは?・・・さっき肘打った。視界は明瞭ですか?・・・それなりに。
「何なん?これは」
「え〜、今回皆さんに『集団催眠実験』と称しまして国家規模のプロジェクトに参加していただきました。」
「ほほう。」
「言える事はこれだけです。」
「・・・意味わからん」
平井のつぶやきが聞こえたのかそのお兄さんはニコッと笑みを見せるだけで平井のもとを離れた。
「わけわからんでしょ。僕もなんです。」
それまで放ったらかしになっていた岩尾が話しかけてきた。
「岩尾くん、相方は?」
「あぁ、もう起きてますよ。さっきまで説教されてましたw」
「なんで?」
「相方殺したんボクなんで。なんで殺すねん!て」

380 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/14 12:31:44
困った顔をしながら笑っている。きっと仲直りはしたのだろう。
「ボク、正当防衛なんやけど、後藤が認めないんです。」
「で、後藤くんはどこにおんの?」
「今、食糧の調達に行ってます。」
「そうか。」
会話が切れたタイミングで2人して同時に柳原の顔を見た。まだスヤスヤと眠っている。
「小学生みたいな寝顔ですね。」
「起きとっても小学生みたいやけどな。」
平井は周りを見回してみた。全てがぼんやりしていて何も見えない。
「あ、メガネ・・・」
つぶやくと同時に胸ポケットに手をやったが見当たらない。どこかで落としてしまったらしい。
仕方なくジーンズの右ポケットに入っていたタバコに火をつける。岩尾がケイタイ灰皿をくれた。
自分が吐いた煙の奥では、ぼんやりながらも相当の数の芸人が寝ているのがわかった。
「今気づいた。こんなに芸人集められてたんや。」
「気づくの遅っw」
岩尾は笑いながら相方が戻ってきたんで行きますわと離れていった。
頭の中ではだいぶ整理がついた。
集団なんとかっちゅう実験で全員で1つの夢を共有する。ストーリーも決められてる。
目が覚めたら実験終了。目が覚めるとはいわゆる夢の中での死をあらわすのだろう。
「俺、早よう死に過ぎたな。」
周りを改めて見回す。まだほとんどが寝ている。頭をかきながら平井の目はあの芸人を探し始めた。

381 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/14 12:32:35
ひとしきり見渡した後、足下に目をやると自分の右に探していた男が寝ていた。
「ごっつい近くにおるし。相方も一緒に寝てんのか。生きてんねんな、まだ。」
しゃがみ込み、顔を眺める。吉本の中ではそこそこのオットコ前の芸人といわれているらしい。
「楽しそうな声しとったな、川島。殺しに夢中にならんと相方探してやれよ。」
平井はニヤッと口の端だけで笑うと後ろで寝ている柳原の左側に座る。
ふと、柳原の右手がキラッと光った。平井は身を乗り出しまたぐような形で柳原の右手に顔を近づける。
「お前が持ってたんか。」
柳原の右手には平井はメガネがあった。取ろうとしたが、柳原の指がガンとして動かない。
力いっぱい握りしめている。そのせいでフレームが歪んでいた。
「寝てるときぐらい力抜いたらエエのに。不器用やな、お前。」
メガネは諦め、またタバコに火をつける。岩尾のケイタイ灰皿・・・。

・・・俺が相方の傍から離れんでもエエように気ィ使てくれてんな。

「しかし・・・、ごっついヒマやん。全員が起きるまで待たなアカンのかなー。」

…はよ起きてこいつのうるさい声が聞きたいけど、夢の中でも死んでほしないからなぁ。

「複雑や」
平井は穏やかに寝ている麒麟・川島を背に感じながら、子供のように眠る柳原の目覚めを待ち続けた。
その頃、夢の中ではまさに今、柳原が平井の敵討ちで川島に近づこうとしていた事は知るよしもなく…。

406 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:36:04
>>381のつづきより。

「こいつ、今どういう状況なんやろなぁ。ごっつ見たいねんけどw」
あぐらに頬杖を付いて柳原を見ていた平井がつぶやいた。
目の前で寝ている柳原が泣いていた。本当に子供みたいで平井は少し笑ってしまった。

・・・俺が死んだ事を知ったんかなー。せやったら悪い気はせぇへんけど、ちょっとキモイわw

すると今度は笑顔になり、またすぐに眉間にしわを寄せ怒ったような、苦しそうな顔をする。
「オモロイなー。」
のんきにぼやく平井の後ろが急に騒がしくなった。後ろ・・・・川島がいる。死んだ・・・?
「おう、平井。お前も早よ死んだんか。」
振り返る前に後ろから声をかけられた。目の前には先輩ますだおかだの増田の顔。
そして増田と共に川島を囲んで談笑している数人の川島の犠牲者たち。
「あ・・・、ども・・・」
平井の全身に緊張が走り、体がこわばる。あの時、増田の死体を発見した時の感覚が蘇える。
「?・・・なんや。えらいよそよそしいやんか。」
「いや・・・。なんでもないです。」
軽く眩暈がした。増田はそんな平井の前にしゃがみこむと兄が弟の心配をするかのように優しく尋ねた。
「エエから、言うてみぃ。」
平井には先輩の無残な姿を見てしまった躊躇いがあった。目の前の増田とオーバーラップする。

407 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:36:53
「俺、増田さんの死体を見てもうて。その後すぐに俺も殺されて。」
「お前も川島か。ホンマ凄いな、こいつ。」
そういって増田は川島の方へ振り返ると、他の連中と川島とのエピソードを話しはじめた。
「あ、そうや。岡田さんは・・・?」
「あっこにおんで。座ってる。」
増田は振り向きもせず、そっけない声で指を指した。あまりにもそっけない増田の態度に頭の中で
「?」を描きながら平井は増田が指した方を見た。岡田が壁にもたれて座っている・・・様に見えた。
「俺ら、いつもと立場が逆になってもうてん。ホンマやったら、ああなってんのは俺の方や。」
平井は増田の口調がさっきとは違う事に気づく。

・・・まさか壊れてもうたんちゃうやろな。

「もしかして・・・何も反応ないんですか・・・?」
「そこまで壊れてへんよ。・・・反応はあるんやどな、なに聞いても『ああ』しか言わんねん。」
どちらかといえば落ち込んだり喜んだり、「喜怒哀楽」の表現を出すのは増田の方で、
相方の岡田はどんな場面でも笑顔をしかみせない。特に「怒・哀」の部分は皆無だ。
傍から見ると冷静で反応の薄い、心が冷たい男のように思えるが、それは全て岡田の計算であり、
感情豊かな増田を引き立てる為、他の芸人と絡んで行くための岡田なりの配慮だった。
増田は平井の方へ向き直ると、相方を見ながらため息をついた。今にも泣き出しそうな顔。

408 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:37:30
「俺、アカンな。・・・相方があんな事なってんのに、なぁんにもしてやれへん。」
「傍にいてあげはったら、それだけでエエんちゃいますか?」
「せやけど俺、岡田のあんな姿、見てられへんねん。辛ぁて。どしたらエエんやろ。」
増田の口調が懸命に涙を堪えている時のソレに変わっていた。平井も返す言葉が見つからない。
2人は無言で岡田を見ていた。周りの雑音が耳に入らないくらい、岡田の姿を見つめていた。

・・・俺はなんで柳原の傍を離れへんようにしてる?相方が寂しがらんようにやろ。
・・・いや、相方の傍におる事で自分も安心したかったんかもしれへん。・・・離れたアカンねん!

「増田さん。」
平井は増田の顔を見る。増田は岡田を見たまま「ん?」と力なく返事をするだけ。
「増田さん。やっぱ今すぐ岡田さんの傍に行った方がエエわ。」
「え・・・。」
「逆の立場やったら岡田さんは絶対増田さんから離れようとせぇへんはずです。
それが増田さんにとって一番良い方法や思うはずですて。」
「・・・うん」
「反応あるんやったら、話しかけてるうちにツッコミはるかもしれへんし。」
「・・・そんなコントみたいに上手い事いけへんやろ。」
あの状態の岡田がツッコミを入れた時は、増田の思いが岡田の心に届いたと言う事じゃないだろうか。

409 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:38:06
「でも・・・。あの状態の岡田さんがツッコミはるて、相当の事や思いません?」
「まぁな・・・」
「ある意味、ボケとしての真骨頂ちゃいます?」
平井はわざとネタ中に使うふてぶてしい笑みを含めて言ってみた。平井にとっては一種のカケだ。
増田は平井の言葉に一瞬驚いた顔を見せたが、おもむろに立ち上がった。
その目は賞取りレースに出ている時の鋭い目に変わっていた。
「真骨頂て・・・自分、オモロイ事言うわ。最初の関門が相方か・・・。オモロイやんけ。」
増田はいつもテレビで見せる自信たっぷりの笑顔を見せると、ほないっちょやったるか!と言いながら
岡田の元へ歩いていった。平井の賭けは見事に成功した。
「あぁ、そうや。平井!」
「はい?」
「この借りは絶対返したるからな。楽しみに待っとけよ。」
「なら俺たち、冠番組持ちたいですわー。」
「アホか。俺らが欲しいわw」
増田は岡田の隣に座ると根気よく話しかけ始めた。きっとここから出る頃にはいつものますおかのはず。

・・・カッコエエ事言い過ぎた。相方が聞いてへんかったんだけ救いやなw

「・・・てか俺、相方ほったらかしやんw」
目の前の柳原はまだスヤスヤと眠っている。向こうではまだしぶとく生き残ってるようだ。
「がんばれや、相方ぁ。こうなったら優勝したったらエエねん。」

410 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:38:36
また後ろがざわつき始めた。今度こそ川島が起きたのかもしれない。起きた=死んだ事になる。
振り向くとそこにはうつろな顔をした川島の相方、麒麟・田村だった。平井は話しかけようかどうか迷った。

・・・何話すねん。お前の相方に殺されてん。とでも言うつもりか。言うた所で傷つくんはこの2人や。

躊躇していると田村の元に藤井隆が駆け寄り、2人して頭を下げあっている。
そして田村の元へ入れ替わり立ち代り川島の犠牲者達が声をかけている。田村の表情が暗い。
その後、給食当番風のお兄さんともいくつか会話を交わし、大方の事情は把握できたようだった。

・・・大変やな、あいつ。

ふいに田村と目が合う。慌てた平井はとっさに右手を少し上げてしまった。何か言わなければ・・・。

「おう。・・・おつかれ。目ぇ、覚めたん?」
「あ、はい。おつかれさまです。なんや、ボーっとしてますわ」
「そうかー」
とっさに出た言葉。「おつかれ」。

・・・何がおつかれなん?大変なんは今からかもしれんへんのに。

とりあえず、気まずい雰囲気から離れるために柳原の方を向いた。田村に背を向ける。
そうしてからどれくらい時が経過しただろう。気づけばタバコを吸い切ってしまっていた。

・・・どないしよ。タバコ吸いたいけど、相方の傍離れるわけにもいかへんし。

411 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:39:18

「逃がさへん!」
穏やかな、まったりとした空間の中で突然響き渡る金切り声。その場にいた全員の心臓がバクつく。
ボ〜っと天井を眺めていた平井もその声が相方のモノだと気づきながらも思わず仰け反ってしまった。
「・・・あぁ、ビックリしたぁー・・・」
ため息をつき周りを見る。ほぼ全員、こちらを凝視していた。周囲はあの声の主に聞き覚えがあるようだ。
「あ、スイマセン。相方の寝言でしたw」
『なんや寝言かぇ』『相変わらずやのー』『心臓に悪いぞ、その声』など笑い交じりの柔らかいツッコミをもらう。

・・・なんや、誰か捕まえたんかいな。それにしてもエライはっきりした寝言やで。

「元気そうで良かったわ。」
平井は安心したように体を後ろ手にもたれさせ、リラックスした。体が生きていることを教えてくれていた。

412 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :05/03/18 12:42:24
長すぎますね。柳原編書いてますとか言ったくせに、いざ書き始めると
他の芸人さんの顔がいっぱい浮かんできてしまって、本編でアメザリと
絡んだ人たちを伏線にしようと考えたのが長くなった原因でした。

>>411 で柳原が寝言言ってます。
この寝言は本編では死ぬ直前なので、次回投下するときは柳原を起こしますw
起きて貰わないと困りますので、頑張ります。

駄文・乱文、失礼致しました。

415 :148@ナダギブソン :05/03/18 23:31:19
ログハウスに逃げ込んで早2日半、
時折聞こえてくる放送でかつての仲間達の名が流れるたびに2人は肩を落としていた。
柳谷は、涙が枯れて無くなるまで泣き続けた。
同じ舞台に立っていた尊敬する先輩、可愛がっていた後輩…皆、
柳谷を置いて彼の前から姿を消して行った。
灘儀もまた、読み上げられる名前を聞くたびに、柳谷に気付かれぬように涙を流した。
劇場でも年長者の部類に入る灘儀にとって、弟のような存在だった後輩達。
そして、同期であるFUJIWARA、千原兄弟、バッファロー吾郎…。

2人にとって、「プラン9」というユニットの繋がりと
再起のきっかけを作った劇場はとても大きな存在だった。
一度は芸人として舞台を去った自分達が、
再び舞台に立つきっかけを作った…大切な仲間。
そして、再び自分の存在意義を見つけた劇場。

「仲間」「場所」「自己の存在意義」何もかもが、
二人の前からどんどん遠ざかって…手の届かない場所へと行くような錯覚さえ覚えた。
絶望という物は、こうも容易く人から様々な物を奪い去っていくのだろうか。

明日さえも見えないこの状況で、2人はただ放送を聴き続けるしかなかった。

涙が枯れてしまった柳谷の口からは、途切れる事のない不安がため息として何度となく表れていた。
灘儀さえも、自分の無力さに肩を落としソファーに腰をかけていた。


416 :148@ナダギブソンショー :05/03/18 23:33:08
そんな中、ソファーに座る灘儀がふと顔を上げる。
遠くで聞こえる物音。周囲の草を掻き分け…そしてログハウスに近づいてくる。

「ギブソン、……お前は、ソファーの後ろに隠れとけ。…歓迎できへん客人がやってきたみたいや」

ゆっくりと起き上がると気配を消して、銃を片手に玄関のドアへと近づいていく。

こちらに向かう足音は1つ。
ガサ、ガサ、ガサ。

その足音は確実に、二人のいるログハウスを目指している。
敵か、味方かさえもわからない。
そっと、玄関の僅かな隙間から外を覗く。
薄暗くてよく見えないが、誰かが近づいてくることだけはよくわかった。

その人物がログハウスの階段の手すりに手をかけた瞬間。
一発の銃声が響き渡る。


417 :148@ナダギブソンショー :05/03/18 23:34:44
…その銃声は、灘儀の手にした拳銃から発せられたものだった。

「灘儀さん!?」

思わず、ソファーの後ろに隠れる柳谷が声を上げる。

「…安心せえ…。これ以上近づいたら、次ははずさへん。最終警告やぞ」

銃声に慌てる人影、だが人影はその場から立ち去ろうとはせずに灘儀に声をかける。

「…灘儀か〜!?俺や俺や、俺や俺や!!」

必死で自分の存在をアピールするが、どこか情けない声。
だけど、何故だか聞き覚えのある…情けない声…。
灘儀の頭の中で、様々な芸人の顔が浮かんでは消えていく。
何度かNGKの通路ですれ違った…覚えのある先輩の顔…。


「…その声、もしかして・・・高山さん!?」


漸く繋がった、パズルの答えに灘儀は素っ頓狂な声を上げる。
慌ててドアを開けると、そこに立っていたのは、ケツカッチンの高山だった。
先ほどの銃声で、僅かに膝がわらってはいたが…。

418 :148@ナダギブソンショー :05/03/18 23:37:18
「灘儀、ほんまに撃つなっ!…俺、こういう状況なんてはじめてやから、
めっちゃ、びびってまうわ!」

足をふらつかせながら、高山は一歩ずつ階段を上がり、
ログハウスの中へ入ってきた。
そのやり取りを聞いた柳谷も、慌てて玄関へやってくる。

「高山さん!?…どないしはったんですか?」
「あー、ギブソンか…」

中に入ると、高山は安心した顔で床にへたりこんでしまう。
2丁目時代に灘儀が見ていた先輩の風格や何もかもが、
今は消えてなくなってしまっているかのように。


419 :148@ナダギブソンショー :05/03/18 23:39:05
「高山さんまで、ここに参加してるなんて…修さんはどないしはったんですか?」

高山を落ち着かせる為に、柳谷がコーヒーをいれ差し出すと、
ぽつりぽつりと、高山は今までの経緯を話し出した。

高山の相方、和泉修は参加して間も無く行方がわからなくなったこと。
気をつけて、毎時の放送に耳を傾けていたが死亡者リストには入っていないこと。
自分も、相方を探した…否、彼が出るときに半ば強制的に
待ち合わせ場所を指定されたが、指定された時間になっても彼が現れなかったこと。


「結局、兄さんはまだ見つかってないねん。…一体どこで何をしてるんやら…
 あの人は、ああいう性格やから拳1つで何とかしそうやけど今回ばっかりはこんな状況や…」


そう呟くと、高山は肩を落とし、俯いてしまう。

希望の光が、見えない人間がまた1人…。
国家の定めた遊戯とはいえ、
自分達の運命を翻弄するこの遊戯にただ3人はため息を漏らすことしか出来なかった。

424 :あお :05/03/19 16:50:08
このゲームが開始してどれくらい経過しただろうか。
ワッキー(ペナルティ)はひとり森で佇んでいた
「みんな死んだなー。俺も死ぬのかな…」
ポツリとそうつぶやいた。
何気なく横を見ると、遠くで誰か倒れているのが見えた。
目を凝らしてみてみると、顔は確認できないがその男の腹はミンチ状に斬りつけられていて、
かなり時間が経過しているのか、ハエが大量にたかっていた。
そういえば、激しく鼻を突く死臭もしている。
なぜ、今の今まで気づかなかったのかが不思議なくらいだ。
しかし、ワッキーは特に何も感じなかった。あらゆる場面で死を直視するだびに、
「死」という恐怖が抜け落ちていった。
(慣れっつうのは怖ぇな。こんなん見ても何も感じないなんて。)
とワッキーはつくづく思った。

425 :あお :05/03/19 16:54:24
「自殺、か…」

ふと、ワッキーはつぶやいた。
今までに何度もこの言葉に頭を支配され、時には魅力的な行動にさえ感じ、
カッターナイフを自分の喉に何度も突きつけ死のうとさえした事もあった。
しかしできなかった。
それは相方のヒデの存在が大きかった。
高校時代からいつも隣にいてくれた相方の顔がいつも自殺寸前に思い浮かび、
カッターナイフを持つ手が下へと下がっていった
そしてワッキーは決意した。ヒデさんと一緒に生き延びよう、と
「まだ呼ばれてないはずだよな。絶対にヒデさんと生き延びてやる!」
ワッキーは力強くつぶやき、ヒデを探すべく立ち上がった。
ワッキーがどちらの方角に行こうか迷っていると、
「あれれ〜?ワッキーさんですかぁ?」
と後ろからやけに能天気な声が聞こえた。
振り返るとそこにはあべこうじが大きく手を振っていた。

426 :あお :05/03/19 16:55:03
「ワッキーさんまだ死んでなかったんですね〜!」
とウザイ笑顔満開で駆け寄ってきた。
ワッキーはその笑顔に一瞬吐き気のようなものを感じたが、
あべこうじが素手であることを確認し、できるだけ冷静をよそおうことにした。
「よかったですよ〜。ワッキーさんまだ生きていて。」
と、笑顔を顔に貼り付けたまま、あべこうじは嬉しそうに言った。
(『よかった?』どういう事だ?ってかなんでコイツこんなに笑顔なんだよ)
とワッキーは眉をひそめた。
「?なんでワッキーさんそんな怖い顔をしてるんですか?」
「え?あぁ、俺人と話すの久しぶりだからさ。それにスゲェ笑顔だから驚いてたんだよ。」
ワッキーもぎこちなく笑顔をつくりながら話した。
「あぁ〜、そういえば僕もちゃんと人と話すの久しぶりだな。」
あべこうじは宙を見ながらつぶやいた。

「見つけ次第、即殺してたから」


427 :あお :05/03/19 16:56:13
「えっ?」
そっけないその一言にワッキーの背筋が凍った。

『殺される』

直感的にそう感じたワッキーは素早く後ろを向き、思いきり地面を蹴った。
森の中で一度逃げてしまえば、木が邪魔になり見つかりにくくなるだろうという考えがあったからだ。
しかし、それを嘲笑うかのように、次の瞬間凄まじい爆音と爆風が炸裂し
ワッキーの体はあっけなく後方へ投げ飛ばされたしまった。
「ってぇ…なんだよ…」
全身に痛みが走るのをこらえつつ、ワッキーはあべこうじの方を見てみた。
すると、あべこうじの手に手榴弾が握られているのが見えた。
「くそっ、汚ねぇ…」
「あ〜、死んでなかったか。余計に痛い思いさせちゃってごめんね。
あべこうじはまるでネタのように明るい口調で話した。
(こいつ…人を殺すの楽しんでやがる…)
「次は苦しまずに殺してやりますよ。」
不敵な笑みを浮かべながら、あべこうじは二発目の手榴弾に手をかけた。
「死ぬ」と思ったワッキーは硬く目を閉じた。

428 :あお :05/03/19 16:57:36

ズタァァァァァン

と一発の銃声が森に響いた。
目を開くと、そこにはあべこうじが倒れていて背中から血を吹き出していた。
少し遠くに目をやると、そこには
「ヒデさん!?」
ヒデが笑顔で立っていた。

430 :148@ロザン宇治原集団催眠編 :05/03/19 22:56:50
…遠くで声がする。懐かしい、劇場のざわめきが…。
…楽屋で出番を待ち焦がれていると進行係が、自分達の出番を告げてくれた…

…だけど…体中がギスギスと痛んで…
…舞台に立つどころじゃないと、菅を見ると菅は笑いながらこう言った…。



「舞台に立てないんやったら、お前はもう相方やないわ…用無しって事や」




自分は用無しではない。まだ、舞台に立ちたいと思っていた。
だが、宇治原の体は一向に言う事を聞かなかった。
それでも声の続く限り、遠ざかる菅に何かを伝えようとした…。


そこで、映像は途切れた。


慌てて目を覚ましあたりを見回すと、ランディーズ、キングコングそして、
劇場での馴染みのある先輩芸人や後輩達が心配そうに自分達を囲んでいた。
「宇治原、お前に託したのに早々に起きやがって〜」
頭上からの声に見上げると、そこにいたのは先ほど自分の目の前で息絶えようとしていた
ランディーズの高井がいた。
先ほど自分が見た高井とはうって変わって、いつもと何ら変わりの無い…
相変わらず元気そうな高井がそこにいた。

431 :148@ロザン宇治原集団催眠編 :05/03/19 22:58:04
「お前、途中まで珍しくめっちゃカッコよかったのになぁ〜」
そう言うのは、ランディーズの中川。
彼もまた、先ほど自分が見た時には高井と同様血に塗れ、
今にも息絶えようとしていたのに。
「あの、高井さん、中川さん、これ一体…」
今の自分が置かれている状況を把握できずに、再び宇治原は辺りをきょろきょろと見回す。
自分を囲う人ごみが僅かに途切れ白衣を着た女性が目の前に現れた。
「ロザン宇治原さん、大変惜しかったですね。
 菅さんを止められるのはあなただけだと思いましたが…」
「え、あの、これなんですか?」
「集団催眠実験です。これ以上は重要機密となっていますのでお教えできませんが…」
白衣を着た女性は、端的に用件を述べるとさっと宇治原の脈拍や眼球をチェックし、
異常が無い旨を告げると失格と書かれたワッペンを手渡しその場を後にした。
「…実験?…あの、傷の痛みもリアルな映像も…すべて催眠…」
現実主義者である宇治原は女性の言葉を俄かに信じがたかったが、
今こうして自分が生きているという現実をつき付けられている以上、
宇治原は納得せざるを得なかった。

「それにしても、菅さんは一向に起きないっすね〜」
のんきそうに呟くキングコング梶原の声に、
宇治原は忘れかけていた相方の存在を思い出した。
「俺、菅ちゃんにやられてん。あいつ怖いわ〜」
「俺も俺も、菅にやられた。強かったなぁ」
周りを囲んでいた芸人達からも感嘆の声が漏れる。

宇治原達の心配を他所に、まだ菅は隣で眠っていた。
悪夢にうなされている様子も無く、表情はどこと無く楽しそうにも見えた。
一体、彼がどんな夢を見ていたのか…宇治原には知る由もなかった。


437 :シフクノタネ:2005/03/21(月) 16:00:37
前に予告してたアップダウンの天国編を投下します。
またしてもぐだぐだですが

『天国編〜アップダウン〜』

扉の前に、2人の男が立っていた。

「じゃ、先に行くからな」

「おう。…はー、自殺なんかしなきゃよかったな。すぐに向こうに行けないなんてさ」

「ばーか、それなら俺が殺したかもしらないぞ?」

阿部は、竹森を小突いた。
竹森は小突かれたところを押さえながらも笑い、阿部もつられて笑った。

「俺が向こう行ったら、またドラムやってくれる?」

「他に務まるヤツがいるかよ」

竹森はポケットからピックを取り出し、阿部に渡した。

「約束だから」

「約束、な」

ピックを握りしめ、阿部は扉の向こうに消えていった。

竹森は、閉じた扉をしばらく見つめていた。


《『天国編〜アップダウン〜』終》

452 :あお :2005/03/26(土) 11:37:30
「ヒデさんっ!?」
ワッキーは立ち上がり、ヒデに駆け寄ろうとした。
が、立ち上がった瞬間、全身に激痛が走り、ワッキーは転倒してしまった。
どうやら、さっきの衝撃で体のあちこちに骨折や火傷をしてしまったらしい。
「おっ、おい!大丈夫か?」
血相を変えて慌ててヒデが駆け寄ってきた。
駆け寄ろうとしたつもりが逆に駆け寄られたことに心の中で苦笑しつつ、
ワッキーはヒデと再開できた喜びに涙を流した。
「…よかった…よかったぁ…」
「おいおい、泣くなよ。余計に気持ち悪くなるだろ!」
「だって、どこを、探しても、いないから、もう、会えないかと…」
「……」
返す言葉が見つからなかった。
「何言ってんだよ!」
と笑い飛ばす明るさも、
「俺も会えないと思ってた。」
と正直に言える勇気も、今のヒデには持ち合わせていなかった。
ヒデはただ、「よかった」を何かの呪文のように唱える
ワッキーを見守るしかなかった。

478 : ◆gvBXpGyuyc :2005/03/30(水) 11:46:46
Vol.7,>>313の続き。・・って時間かかりすぎ。

 「・・・?」
テツがふと向こうを見る。
林道の向こうから伊藤が歩いてくる。田上、ダンディ、ユリオカも彼女に続く。
「・・・中本さん、久しぶり。・・って鈴樹ちゃんがいないみたいだけど・・・」
田上があたりを見渡しつつ言う。
「鈴樹ならケンカの場所を思い出したとかって先に行った。」
「そっか。なら早く向かわないと。」
そういって伊藤はテツ達をせかす。
「・・・あ、ああ。そうだな。」
突然明るくなった伊藤を見て少々戸惑うトモ。
「それじゃあ、行こう!」
伊藤はそう言いつつ駆け出す。テツとトモも彼女を追いかけ走り出した。
「・・・・・・・。」
田上とユリオカは伊藤の後姿を見、ただただ黙り込む。
「・・・なぁ、田上・・・。」
「どしたの?」
「やっぱさ、伊藤を放っておけない。」
「・・・・ユリオカ君・・・それでも伊藤ちゃんを無理やり立ち直らせてもかえって・・・」
「それでもずっとこうしているわけにはいかない。
・・・・あのまま悲しみを押し込めておいたままではあいつの心に負担がかかるからな・・」
「・・・・・・・・。」
しばらく沈黙が続く。
「ユリオカ君!あんたの言うとおりね!行くわよ!」
「ああ。」
と、ユリオカ。

479 : ◆gvBXpGyuyc :2005/03/30(水) 11:49:14
>>478の続き。
「・・・ねぇ・・ちょっと・・・」
ふと振り返るユリオカと田上。ダンディの表情が暗い。
「どうしたっての?」
「・・・ダンディのジョーク・・・」
「は?」
「ダンディのジョーク・・・伊藤ちゃんに聞いてもらえなかった・・・。」
頭を垂らし、とぼとぼと歩く。まさに絵に描いたような落ち込みようである。
すっかりしぼんでいるダンディを見て田上は半ば呆れて言う。
「・・・・そんなことよりも早く行くわよ。伊藤ちゃんを慰めに行くんだから。」
「え・・ええ??」
「いいから!」
ユリオカにせかされ、ダンディは立ち上がり歩き出した。
「・・・・・ね、大丈夫なの?今の伊藤ちゃんを無理に立ち直らせようとしたら・・・」
後ろからそうたずねるダンディに田上は返す。
「大丈夫だっつーの。」
数分も経たぬうちに田上達は伊藤達に追いついた。
「よしえさん、おそ〜い。」
と、伊藤。
「い・・・伊藤ちゃん・・・。」
伊藤の前に田上が立つ。
「・・・・・本当は、悲しいんでしょ?虻ちゃんのこと・・・」
「・・・・・・・・よしえさん??」
「私、伊藤ちゃんの気持ちよく分かるよ。」
「・・・・・・。」
表情を曇らせ、うつむく伊藤。さらに田上は続ける。
「今の状態を続けていたらきっと辛いと思う。辛さを無理やり押し込む必要はないから・・・」
「・・・・よしえさん・・・」
伊藤はしばらく、田上に抱きついたまま泣き続けた。

480 : ◆gvBXpGyuyc :2005/03/30(水) 11:52:11
>>479の続き
数分後。過去から吹っ切れた伊藤が皆をせかす。
「みんな、早く行こう!」
「そーね!早くしないとあの4人が大変なことになるわね!」
と、田上。他の面々も力強い表情をしている。
「・・・・・・。」
そんな中、ダンディは1人落ち込んでいた。
「ダンディ、どったの?」
「ジョーク〜・・・・・。」
まだダンディはジョークのことを気にしているようだ。
それほど自信があるジョークだったのだろうか。
「だあああああっ。ダンディ、あんたって人はっ!」
一喝。田上はダンディの頭を平手ではたいた。
「いたーい。」
涙目で訴えるダンディ。
「とーにーかーくっ!全員出発!」
田上の掛け声で全員は一斉に海岸に向かって走り出した。
「結構時間食ったわねっ!」
「ああ。手遅れにならないうちに・・・海岸に急ごう!」
ユリオカと田上。走りながら2人は話した。
時刻は午後6時近く。次第に周りの空は暗さを増していた。


486 :名無しさん :2005/03/31(木) 00:11:19
>>479の続き
お、どーもです。そこでこちらで書いた分を。間違ってるトコとかないかなあ(^ ^;)。

翌日―その日は朝から雨が降っていた。海岸のとある廃墟の屋上に、北陽・伊藤の姿
があった。今朝早くこの場所にたどり着いた一行は手分けしてカンカラメンバーを探す
事にし、伊藤はそんな中1人でここに上がってきたのだった。
「ここなら見晴らしいいから、早く見つかるかもね」
降りしきる雨に濡れるのを気にする様子もなく、そんな事を考えながらあたりを見回す
伊藤。とその時、後ろに人の気配を感じた。振り向いてみると…そこにいたのは
陣内智則だった。
「あ、陣内さ…  !? 」
しかし、何か様子がおかしい。鬼気迫る表情、体全体から立ち上る妖気。そしてその手に
握られた、禍々しい刀。ただならぬ気配にとまどう伊藤に、陣内は無言のままいきなり
斬りかかってきた!
「 ! ! 」
伊藤はそれをかわしつつ、自分も刀を抜いて応戦する。が、陣内の容赦ない攻撃に
よって次第に屋上の端に追いつめられていく。追いつめられた伊藤に、じりじりと迫る陣内。
伊藤は両手で頭上に刀を構え、眼前の陣内めがけて振り下ろす…が、次の瞬間!

487 :名無しさん :2005/03/31(木) 00:12:19
>>486の続き

ドンッ!
陣内の刀が一閃すると、軽い衝撃と共に刀を構えた伊藤の両腕が、そのままの形で
血しぶきと共に宙を舞っていた。そして間髪を入れず、
ドスッ!
次の瞬間には伊藤の胸に、陣内の刀が深々と突き刺されていた。
「じ…陣…内さ……」
刺さった刀が抜き取られると同時に、伊藤の胸と口から大量の血があふれ出す。そして
伊藤はそのままバランスを崩し、屋上から落下していく。少しの間の後、あたりに「ドサッ」
という物音が響いた。

静寂の中に、雨音だけが響く。地面一面の血溜まりの中に、伊藤は力なく横たわっていた。
次第に遠のく意識の中、眼前にはただ灰色の雲だけが広がる―とその時、ぼんやりと
浮かび上がる人影。それは―虻川の姿だった。こちらに手を差し出すその姿は幻覚か、
それともあの世からの迎えか―
「あ、虻…ちゃ……ん………」
伊藤は眼前の相方に、震えながら肘から先のない両腕を差し出す。目からはとめどなく
涙があふれ、鮮血に染まった唇は笑みの形に歪んだ。やがてその腕が静かに落ち、
まぶたがそっと閉じられ――伊藤ははそれっきり、二度と動き出す事はなかった―。

【北陽・伊藤さおり 死亡】

499 :名無しさん :芸人降臨2006年,2005/04/02(土) 18:04:22
>>376の続き

それからしばらくの間、メルヘンズの2人は廃墟の中を探索していた。
「それにしても…よーけ死んどるなぁ。ここも死体の山や」
「ホンマになぁ。いくら見てもこれだけは慣れそうにないわ」
そんな会話を交わしながら歩いていると、突然暗い廊下の奥から叫び声と激しい
物音が響き渡ってきた!
「な、なんやぁ !? 」
「行ってみよ!」
吉澤と芝川は暗い廊下をひた走りに走った!
叫び声と激しい立ち回りの気配は数秒でやみ、次いで何者かが走り去る気配が
した後は、すっかり静まり返っていた。
「うわっと !? 」ドターン!
先を走っていた芝川が何かに足を滑らせ、激しく転倒した!
「おい、大丈夫か?」
「……イテテ…とりあえず大丈夫や。それよりなんや?床になんかヌルヌルする
もんがこぼれとるで」
芝川は手で床を触り、目の前にかざしてみた。
「この鉄っぽい臭いは……血や!ここは一面血の海やで ! ! 」
とその時、吉澤が何かに気づいた!
「 ! ! 」
「どうした?」
「あ、あ、あ、あ、あそこ…あそこに、芝川くん ! ! 」
動揺し激しくどもりながら吉澤が指し示す方向には何か大きな「物体」が転がっている…。
転んでぶつけた腰の痛みも忘れて、芝川は「物体」に駆け寄った。
「あ、あんたは !? しっかり!しっかりしてやぁ ! ! 」
…血の海の中、物言わず倒れていたのはドリフターズ志村だった。

510 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/04(月) 17:38:20
>>411 つづきから

崖からのダイブ。落下時の加速と吹き上げる強風のおかげだろうか、柳原には苦痛も恐怖もなかった。
おそらく着水前に意識も飛んだのだろう。

のちに彼はこう言っている。
『あん時な、溶けてくような感覚やってん。映画とかでようあるやん。
吸血鬼が太陽浴びて灰になって散ってくシーン。あんな感じやったわ。』

そんな不思議な感覚を味わって・・・。もう柳原という存在自体が消えたはずだった。
気づくと何処かのスタジオにいた。客が目の前にいる。左右をみると漫才師が並んでいる。

・・・あれ?・・・俺、M-1出てんのや。もう出られへんちゃうかった?

「何ボーっとしてんねん。今から始まんねやで。」
後ろから相方の声がする。
「わかってるわ」
そう呟いた瞬間、パッと目の前が変わった。楽屋?M-1の楽屋。

・・・控え室やん。えっ?今、どういう状況やねん。

「それでは、惜しくも敗退したアメザリの柳原くんに聞きましょか」
リポーターの木村祐一が柳原の前にしゃがみ、マイクを向ける。
「惜しかったですね。あと少しでファイナルやったのに。」

・・・惜しかった?

「あ・・・はい。残念です。」
「どした、柳原くん。放心状態か?」
「いや・・・大丈夫です、ハイ」

・・・負けてんや。また、負けた。

511 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/04(月) 17:39:20
泣きそうになった柳原がうつむいた途端、また目の前が切り替わった。
自分の足が見える。視界には左右と前に白い壁。足下にはイス・・・?
「トイレ?」
顔を上げ、自分がいる場所を確認した。左手に握られている携帯がさっきから何度も震えている。
メールだ。開くと数十件。内容はほとんど同じだった。
「惜しかったな」・・・「次があるよ」・・・「オモロかったで」
適当に流し読みしていた手が止まる。そのメールのタイトルにはこう書かれてあった。

『アンタはまだまだやった』

差出人は柳原の母。

・・・実のオカンが傷心の息子にかける言葉ちゃうやろがぃ。

そう思いながらも内容を読んでいく。メールを打つのが下手で時間がかかるくせに凄く長く書いてある。
息子を叱咤激励する内容の最後を見た瞬間、一気に涙があふれ出た。
「アンタは立派な息子や。お母ちゃん、アンタが天下獲れるって信じてるから。頑張りや。」

・・・オカン。オカン。オカン。

声が漏れそうになるのを必死で堪える。が、高ぶった感情が涙に拍車をかける。
「おーい。何泣いてんねーん」

・・・平井?うわっ、バレた。相方だけにはこんな姿見せたなかったのに。

「うるさい。あっち行っといてくれ。」
「エエやんけ。一言だけ言いたい事もあるし。」
「・・・なんやねん。」

512 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/04(月) 17:40:03
「来年も、また出よな。」
「・・・おう。」
「ほな、控え室行ってるから。早よ、戻っといでや。」
平井が去ったのを気配で確認するともう一度、母からのメールを見ようと左手を目線まで上げた。
「なんや・・・コレ・・・・・・!!」
握っていたのは携帯ではなく、血塗れのメガネフレーム。そのデザインに見覚えがある。
「平井・・・!」
ドクン!!心臓が柳原の体を揺り動かすくらい大きく鳴った。

・・・川島、土田さん、林さん、テレビ、メガネ・・・・・・相方・・・平井・・・死んだ!!!

全て思い出した。

・・・今さっきまでしゃべってた相方。・・・アカン、平井!戻って来い!

なぜ呼び止めなかったのか。蘇えった記憶の重圧に耐えられず気が遠くなり、目を閉じた。


目を開ける。
視界の右半分は体育館らしき天井。左半分には相方の顔。
「平井!」
距離感を無視したように飛び起きた柳原を、覗き込んでいた平井は寸でのところで交わした。
「あっぶな。パチキかますなや。」
ピシィッ!平井はメガネが割れた音を聞いた。
「あ・・・」
平井は柳原の右手に握られている自分のメガネに目線を落とした。と、突然柳原が飛びついてきた。
「やっと会えたーーー!」
「うわうわうわうわうわっ、いだっ!!」
飛びついた柳原共ども後ろにひっくり帰った平井は、さっきと同じ肘を床に打ちつける。

513 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/04(月) 17:40:40
「もぉ〜、キショイから、キショイから。離れろや〜。」
「平井!よぉ聞けよ!俺らの殺し合いはテレビで流れとんねん!賭けに使われてんねん!」
「・・・何言うてんのん、自分。」
「ホンマやねんて!俺、見てんから!」
「それより・・・恥ずかしいからのいて。」
平井のその言葉で柳原は自分の状況に気づいた。相方に馬乗りになっている。
「あ・・・ゴ、ゴメン!」
慌ててどこうとした柳原が止まった。目線は平井の顔のすぐ横。
「かわ・・しま・・・?」
静かに寝ている。横には心配そうに川島を見ている相方・田村が・・・。

・・・アレ?・・・・。なんで川島が寝てんの?なんで平井と会えてん?

「なぁ、平井・・・。ここってどこ?」
「もっと早よ気づけやw」
中途半端に馬乗りの柳原からすり抜けると、すぐ隣にあぐらをかいて2度打ち付けた肘をさする。
「なぁ、どこやねんて!」
「この兄ちゃんに聞いて」
平井がクイっと手首を使って指差した方向に給食当番風の男がカルテっぽいものを持って立っていた。
「アメリカザリガニの柳原哲也さんですね」
「はい・・・」
「おつかれさまでした。」
「あ、どうも・・・」
そのお兄さんはいきなり柳原の左胸に何かを押し付けた。
「え?え?え?何何何?」
服を引っ張ってみてみる。【失格】のワッペンが貼られてある。

514 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/04(月) 17:42:05
平井の顔を見ると、知っているのかニヤニヤと柳原の顔を眺めているだけ。
「平井、お前何か知ってん・・・」
「柳原さん!いくつか質問しますねー」
柳原の言葉を遮り、強引に進めていく。柳原はわけもわからず答えていく。
「以上です。柳原さんご協力ありがとうございました。」
そういって給食当番風のお兄さんはさっさと去っていった。
「・・・何?アレ」
「何や思う?w」
「違うがな、早よ教えてや!」
「あんな、全部夢やってんw」
「・・・お前、説明すんの面倒や思たな?」
「バレた?w」
「当たり前や!」
「でも、ホンマやから。誰も死んでへんねんて。全部架空の話や」
「まだわからん」
「だから、夢。全員で同じ夢を見ててん。なんや国家規模のプロジェクトに参加してたんやて。」
「国家規模?なんで俺らなん?」
「それは知らん。それ以上、教えてくれへんかった。」
「現実ちゃうんや・・・」
柳原は安心したような悲しいような複雑な顔をして俯いた。とある事を思い出す。
「でも・・・お前のメガネ握ってる手の感触はリアルやで!」
そういって右手を2人の目の前に持ってくる。そこには柳原の握力で無残な姿の平井のメガネがあった。
「あ〜あ。ボロボロやん」
「な、リアルやろ?」
「確かにリアルやねw」
「あれ?・・・レンズ入ってるで、コレ。俺が割ってもうたん?」

515 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/04(月) 17:43:52
「さっきお前が起きた拍子にパリン逝ってもうたわ。それよりいつまで握ってんの。血ィ出てるやんか」
「お、おぉ。」
柳原は手を開こうとした。・・・・開かない。
「平井・・・手ぇ開けへん」
「何してんの、自分ー」
平井に手伝ってもらいながら左手で右手の指を開いていく。レンズのガラスが無数に刺さっていた。
給食当番風の人を呼んで、救急箱をもらう。
「おかしいな。確かにレンズは入ってへんかった。フレームだけやった」
「何やねん、さっきからレンズレンズて。何があったん。説明してみいな」

柳原は一つ一つ、丁寧に思い出しながら土田の話から川島とのやり取り、そのあとの夢まで話した。

563 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:37:14
>>515 続き

その間、平井は黙って救急箱の中からピンセットを取り出し、ガラス片を全て取ってやっていた。
「んで、起きたらお前の顔があったから、思わずこう・・・なんや勢いや」
「ほほう。なかなかドラマティックやね。感動するわ」
「全然してへんやんけ」
「してるしてる。やっとわかったわ。せやからずっとメガネ握っててんな、お前」
「お前のメガネ握ったまま寝てて夢の中でお前のメガネを取り返してるって・・・なんや凄ない、俺」
「まぁまぁ偶然にしては凄いと思うけど。」
もっと興味を持って聞いてくれると思っていた。川島とのやり取りなんかはどちらかといえば恥ずかしい。

・・・もうちょっと感動してくれてもエエのと違うか?

「思うけどて、何やねんな」
「んー、何でもないよ。取れたで、破片全部。」
「おう、おおきに」
柳原は自分で包帯を巻きながら川島の方を見た。静かに眠っている。
「柳原。川島を責めたアカンで。」
「わかってるよ。全部夢や。」
柳原は周りを見渡す。かなりの数の芸人。ほとんどが寝ている。夢で関った人、全てに挨拶したい。
が、広すぎてどこにいるのか見当もつかず、逆に迷子になりそうだ。
「なぁ。」
「何?」
「メシとか食べれんの?ここ。」
「何かどっかにあるみたいやな、調達できるとこ。」
「そうか。」
柳原は立ち上がり、田村に近づいていった。

564 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:38:01
「田村くん。元気か?」
「あぁ、柳原さん。手ぇ、どないしはったんですか?」
「メガネのレンズ割ってもうた。たいした事あらへん。それより、ヒマやろ。メシでも調達しに行こうや」
「でも、川島を一人にするわけにはいかないですし。」
「安心せぇ。うちの相方が見ててくれるから。」
柳原は平井の方を見てニッと笑う。
「お前今起きたばっかりやん。俺が行くよ。座って休んどいたら・・・」
「アカン!俺が行く!タバコも買うてきたるから!」
「買うてきたるて。購買部行くんちゃうんやからw」
「銭ないけど、買出しや!田村くん行くで!」
「は、はい。」

・・・また待つんかw ま、あいつ元気そうやし。よかったわ。

柳原が話してくれた夢の一部始終。平井の表情が冴えなかったのは最後の話が心に刺さったからだった。
M-1敗戦の夢。しかもそれは実際に2002年の大会で平井が見た光景。
柳原は敗退の後、トイレで泣いていた。それが夢になってまで現れたのだ。
2004年の最後のチャンスをアメザリは放棄した。出場すらしていない。
2人で決めた事だから後悔していなかった。・・・はずだった。

・・・柳原、やっぱり出たかったんかな。負けたまんま終わりたなかったんやろか。

と、川島が苦しそうな声を出した。うなされている。その様子に周りも気づいたのか川島の周りに
数人が集まってきていた。平井は少し距離を置く。

565 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:38:48
「もう起きんちゃうの?ヤバイな、田村くんいてへんし」
起きるという事は夢の中で川島が死ぬ時が来たという事。
夢とはいえ、たくさんの芸人の命を狩り取ってきた男。

・・・もし、夢ん中で潜在意識が引き出される仕組みになってたとしたら、
・・・川島の潜在意識の中に刻まれている本音・本能・理想の姿はアレや言う事か。

あの時、恐ろしいという気持ちは川島に対してではなく死に対しての漠然としたものだった。
殺された後、おそらく自分の体にもハーケンクロイツが刻まれたのを想像して胸のあたりを
なんとなく押さえる。少しばかり息苦しい。平井は胸を押さえたまま深く俯いた。

「あ、起きよった。」
「おう、どうや?調子は。」
「すごいなー、お前。ある意味大活躍やったな。」
隣が賑やかになった。川島が起きたのだ。周りに群がっていた芸人の声が少しうるさい。
夢の中では1つの大きなストーリーが幕を閉じた。
平井は胸を押さえたまま、上半身だけ起こした川島を見る。気のせいかさっきより胸が苦しい。
ふと川島と目が合った。一瞬、川島の顔が強張った事を平井は見逃さなかった。
2人とも同時に目を逸らす。平井にはその理由がわかっていた。

・・・俺の顔、恐怖でひきつってたな。川島に見られてもうた。

さっき柳原に言った言葉が繰り返される。
「川島を責めたアカン」 「責めたアカン」 「責めたアカン」 「アカン!」 「アカン!」
それなのにたった今、平井自身が表情だけで川島を責めた。一番たちが悪い。

566 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:39:23
「川島!」
2人の後ろから田村の声がした。という事は相方の柳原も一緒だろう。
川島は振り向けずにいたようだが、平井はゆっくりと振り向いた。川島の様子も見ながら。
田村がラーメンやパンを落とさないように器用に川島の前に座る。
柳原は少し遠くからゆっくりと歩いてきていた。麒麟の方を見ないようにして。

・・・あいつも俺と一緒か。苦して見られへんやろ。

柳原は平井が見ていることに気づいて、少し俯き加減で、目の前に座った。
「タバコ、これしかなかった。あと、なるべく米食いたい思てな。エエやろ、これで」
「エエよ。ありがとぉ。」
柳原が黙って食べ始めた。平井はまずタバコに手をつけた。ボ〜っと天井を見つめる。
この苦しさを消すための方法、平井は1つだけ浮かんでいた。違う苦しみで消す。

・・・俺も辛いけど、第3者に対して苦しみを抱くくらいなら、こっちの方がマシや。

「平井、なかなか旨いで。早よ、食べぇ。」
「おー。・・・柳原ぁ、1つ聞いてええか?」
「何をいな。」
「怒れへん?」
「怒れへんよ」
「ホンマか?」
「お前は俺の女か。キショク悪いw・・・わかった。ホンマに怒れへんから言うてみぃ」
平井はタバコを深く吸い、深呼吸をするかのように煙を上に向けて吐いた。
「・・・・・最後のM-1、出たかった?」
天井を見たまま言う。目を合わせられない。なのに柳原の感情・表情が痛いほど想像できる。
「おう!出たかったで!」
ただでさえ高音ボイスの柳原から聞こえた高らかな声。平井は驚き、柳原を見た。

567 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:40:40
「出たかったんはホンマや。せやけど、あの舞台は俺らの色ちゃうねん」
そう言った声はエラく低いトーンで、柳原が自分に言い聞かせるように静かで・・・
「俺らの漫才は3分4分で集約できるモンちゃうねん。1時間くらいあって丁度エエ。
言い訳や逃げや言われたかて、かめへん。楽しんで出来る場所さえあればエエよ。せやろ?」
平井と柳原がマジメな話をする時、柳原は絶対目線を外してこない。それが信念らしい。
逆に平井はいつも目を逸らして話すクセがあった。でも、今は外してはいけない瞬間だろう。
「せやったね。・・・でも、その言葉って前に俺が言うた言葉ちゃうかった?」
「エエやん、俺が言うたかて!その言葉があったから前に進めてんから」
「うん・・・せやったね」
平井は俯き目線を外した。いつの間にか胸の苦しみはなくなっていた。柳原も同様に・・・。
「お前が出えへんて言うて、俺はそれに納得した。納得するだけのお前の気持ちがあったからや」
「・・・・・うん」
「後悔なんかしてへん。ホンマに」
「・・・・・うん」

・・・アカン。泣きそうや。相方の言葉で泣かされるて、実は物凄く恥ずかしい事なんちゃうの

泣きそうな平井に全く気づいていない柳原。平井のいつものくせが役に立ったようだ。
「お前が言うた事やのに、なんで俺がお前に同じ言葉で説教してんねんな」
「・・・・気になってんからしゃあないやん」
「何を?」
「夢に見てんやろ、負けた時の。そんなん言われたら気にしてる思うやん」

568 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:41:16
「あういう夢は時々見るよ。そればっかりはコントロール出来ひんし」
「・・・・」
「でも、生きてこうして再会出来てんから。大事に漫才していこうや!」
「・・・せやな。」

・・・最初から誰も死んでへんけどな。

あえて言葉には出さなかった。柳原に早よ食べと促される。すでに涙は引っ込んでいた。

この後、長時間その場に放置されたいた2人はネタを1本作った。
内容はバトルロワイヤル。・・・のちに彼らの代表作になる事はまだ誰も知らない。

569 :rrr... ◆iiErQ9C0HQ :2005/04/06(水) 17:42:04

終わりです。


スイマセン。最後はなんか尻切れトンボみたいになってしまいました。
でも、終わったのでスッキリしました。
どうも、長々とありがとうございました!

589 :あやや ◆X4xQvMQIE. :2005/04/07(木) 15:47:48
バトルロワイヤルも始まって数日目。
夕日のさして山の端いと近うなりたるに、脳内友近と湖のほとりを駆け巡る灘儀。

『キャハハ、灘儀さん、追いかけてごらんなさい!』
「まてよ、友近、うふ、あは、うはははは〜〜」

友達のエリアからはみ出した青いハイヒールを脱ぎ捨て、湖へと足を浸した脳内友近は
『ウフフ、ほら!』と笑うと、灘儀にパシャっと水をかけた。

「あっ、お気に入りのアニエス・ベーのTシャツがびちょびちょじゃないか、こいつぅ〜〜!
 水でもかぶって反省しなさい!セーラープラネットパワー・メディテイション!」

灘儀の必殺技で、頭から水を被ってしまった脳内友近は『プンプン』と口に出して怒ると
おもむろに脱ぎ捨てたハイヒールを拾い上げ、その中に水をすくって灘儀にバシャリとかけたのだ。

「くさい!!」
秒速で叫び、のた打ち回る灘儀。もちろん脳内友近は大抗議だ。
『そんな事おまへん!おいどんの足は、クサおまへん!』

しかしここで屈する灘儀では無かった。
「いいや、臭いな!友近のハイヒールに溜まった水は臭うで、しかし!」
灘儀がヤッサンばりに叫んだその時であった。

ピカッ、ピカッ

「な、なんや?!」
突然湖の中央がギラギラと輝き始めたのだ。
灘儀は眩しさに目を細めつつも目を凝らし湖の中央を凝視する。
よく見ると湖の中央は、西日に照らされている。
その西日の熱気によって湖水が蒸発しそれが舞い上がり、水蒸気の壁となって聳え立っているのだ。
水蒸気の壁にも西日が当たり、更にキラキラと輝きを増していく。その輝度ったら尋常ではない。

590 :あやや ◆X4xQvMQIE. :2005/04/07(木) 15:49:48

「あ、あかん、これ以上眩しくて、見てられへんで!」
眩しさに顔を歪める灘儀。しかし
「ああ、でもこっちを向くと友近の足が臭ってくるで!」
と、まだ友近を煽る事をやめない。

『灘儀さん、ひどい・・・ひどいわ!!!おいどんの足はクサおまへん!!!!』
友近が叫んだその瞬間、西日に照らされた湖の輝度が頂点に達した。

ビカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

二人は目を抑え、その場に倒れ伏せた。

徐々に光が柔らかいものに変わり、水蒸気の壁が花びらの様にハラリハラリと綻ぶ。
水蒸気の柱の中には、リットン水野が立っていた。

湖に浮かぶホタテ貝の上に立つ水野は、伸びた後ろ髪を前に回し、股間を隠している。
後ろからは眩いばかりの後光がさしている。

『これ…どこかで見た事が…』
「ヴィーナスの誕生や…ヴィーナスの誕生の絵画や!」

水野は、笑顔を称えたままで灘儀に囁いた。

「  煽るんもええ・・・。でも、煽る勇気よりもスルーする勇気や・・・
   ・・・わかるか、スルーや。スルーを制する者は、長州力を超えるで・・・。   」


水野のあり難い言葉に、灘儀は目を覚ました。
「ああ・・・みずのあんちゃん!!あんちゃん!!堪忍!堪忍じゃあんちゃん!!
 ピカが全部悪いんじゃあ!ピカが進次や父ちゃんを奪いよった!!」

591 :あやや ◆X4xQvMQIE. :2005/04/07(木) 15:52:33
その場で小一時間泣き崩れた灘儀は西日で燃えかけて、あわてて湖に飛び込んで鎮火した。

しくしく泣きながらも湖からあがったビッチョビチョの灘儀は、湖のほとりに生えていたアロエを
大量に引っこ抜き、西日で負った火傷に目いっぱい貼り付けた。
ついでに服を脱ぎ、美容の為、全身にアロエをまとった。

ふと辺りを見回すと、脳内友近も水野も消えていた。

「俺は、今まで幻を見てたんや…。俺は弱い男や.。今からは、踏まれても踏まれても育つ麦になるで!」
全裸で悟りを開く灘儀は全裸にアロエのまま走り出した。もう怖いものは無い。今日の僕なら、空だって飛べる。


「灘儀、もうお前に教える事は‥何も…無……  ガクッ」
その横ではスワンボートで湖をぐるぐる回り続けた疲労により息絶えたRマニア中島が居たが
灘儀は空を飛んでいたのできづかなかった。

灘儀のHPが33UPした。灘儀の精神力が12UPした。ファッションが70低下した。


【Rマニア中島ゆたか:死亡        プラン9灘儀武:軽い火傷】

593 :あやや ◆X4xQvMQIE. :2005/04/07(木) 15:56:39
2行目訂正

×夕日のさして山の端いと近うなりたるに
○夕日が赤々とさして、山の端に非常に近くなったとき

667 :釜飯 :2005/04/09(土) 22:15:09
俺らの小屋は沈黙に包まれていた。
「…あの時何としてでも止めればよかったんや!」
手で顔を覆った竹山さんの声が響く。
ヒロシが散歩に行く、と言って出て行って数時間。
未だに帰って来ない。

もう絶望的だってことは分かってる。
今、俺−どーよケンキ−が手に持ってるのはヒロシに支給されたピストルだ。
そう、あいつはこの危険な世界で何も持たずに出かけたんだ。
これをただの散歩と言える?
だけど認めたくない。

さっきまでは自分のすることをしていれば良かったから、何も考えなくて良かった。
することが無いってのは、何て気分が滅入るんだろう。
嫌なことばかり考えちまう。
実際、嫌なことだらけなんだけど。

668 :釜飯 :2005/04/09(土) 22:16:12
てれび戦士のみんなは元気にしてるかな。
突然居なくなった俺らのコト、どう思ってるんだろう?
つーか、全芸人強制参加って政府並みの権力なきゃ出来ないような…
全放送局も関わってるみたいだし。
あれ? もしかして俺、結構重要な事に気づいちゃった!?

もう少しで放送の時間だ。
呼ばれなかったら探しに行くことを提案しよう。
呼ばれたら…その可能性99%だけど俺はどう思うんだろう?
やっぱり? 後悔? 怒り?

「…、ヒロシ、…」

某局のアナウンサーが読み上げる中にその名前はあった。

669 :釜飯 :2005/04/09(土) 22:16:57
バカ、バカだよあいつ。諦めたらそれで終わりやろ! 俺達お笑い界でもしがみついてここまで来たんだろうが! 何で、何で簡単に生きることを諦めたんや!」
竹山さんが涙を流しながら叫んだ。
中島さんは黙ってこぶしを握り締めていた。

次に口を開いたのは相方テルだった。
「この4人は裏切りませんよね。誰も死にませんよね。誰も殺されませんよね。誰も殺し…!!! 駄目だ! 波田陽区殺してる! もう無理! 駄目だ! おしまいなんだ!!」
「バカ! テル! 落ち着け!」
俺は相方の頬を殴る。

マズイ…いよいよ俺達も狂ってきた。
何か普通のことをして気を落ち着けないと。
死体がどこにあるかは分からないからさっきみたいに墓は掘れない。
そういえば戦時中は物を墓に埋めたって聞いたな。
ヒロシの物…ピストル?
これは身を守るのに必要だ。
物はダメだな。
その次に代わりになるのっていったら、名前とか似顔絵とか?
幸いにもここには俳句セットがある。

670 :釜飯 :2005/04/09(土) 22:17:37
テル、これにヒロシの似顔絵描け。遺影にしよう。」
相方は絵が得意。
何か描くのって落ち着くと思うし一石二鳥だ。
名前を書けば位牌にもなる。
戒名って適当につけるとマズイかな〜。

俺ってクール?
ヒロシが死んだのは悲しいけど悲しくない。

あ〜、どうしよ。
もうそろそろ何にも考えないのはどうかと思う。

674 :あお :2005/04/10(日) 14:07:15
452>続き
「とりあえず移動しよう。ココだと…アレだし…」
ヒデはチラリと倒れているあべこうじに目を向けた。
ワッキーは泣きながら黙って頷いた。

2人は洞穴で一息ついていた。
森を移動したいたら、岩場の影に小さい洞穴を発見し、
しばらくそこに身を潜める事にした。
2人はそこで今まであった事を全て話した。
そうして、数時間が経過した時、
ヒデは参加芸人リストを眺めながらポツリとつぶやいた。
「だいぶ人が死んだな〜」
その言葉にワッキーは下を向いてしまった。
みんな死んだ。つい、本当についこの間までは生きていたのに、
死んだ。みんな死んだ。死んだ。死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ……
「もう…」
ワッキーはうめくように呟いた。
「ん?」

「もうどうしていいか分からない」

「脇田?」

675 :あお :2005/04/10(日) 14:08:11
「どうしたんだよ?」
「みんなが死んでいくのさえ、もう何も感じれなくなった自分が怖い。
本当に怖くて怖くて、どうしたらいいか分からない。
自分が自分じゃないみたいで。
もう、全部狂ってる。全部おかしくなってる…」
顔をうずめて、今にも泣きそうな声で、
ワッキーは次々と言葉を紡ぎだしていった。

痛い 怖い 苦しい 辛い 悲しい

     ゛死にたい

死んでこのゲームから逃げ出したい。
ヒデさんと生き延びるって決意したのに、
今は生きれば生きるほど自分じゃなくなっていく。
嫌だ。嫌だ。もう…

「死にたいか?」


676 :あお :2005/04/10(日) 14:09:43
「えっ?」
ワッキーは顔を上げた。
しかし、その質問に答えることができなかった。
正直な気持ちを言ったら、ヒデさんは何と答えるだろうかと考えていた。
そんなワッキーを見て、ヒデは遠い目をして話し始めた。
「俺、人が死んでいくのを見るたびに、理性が失われて
何も感じれなくなっていくのが自分でも凄い分かるよ。
それで、そういう奴は俺とかお前だけじゃない。
多分、ここに生き残っている奴全員だそうだと思う。
…そんな中で人が死んでいっても、みんなその人の事を忘れていくんだよ。
自分が生きていくのに精一杯でさ。
だから俺は覚えている。死んでいった奴がどういう奴で、
どんなネタをして、どれだけ人を幸せにさせたかを、出来る限り全部覚えてる。
死んでいった奴に、花も線香も上げられない俺にとって、
出来る事はこれくらいしかないから。」
ここまで一気に話し終えたあと、ヒデはワッキーに向き直り、こう付け足した。
「お前が死んでも、俺はお前の事を覚えているから、死にたければ死んでもいい。」

「…俺は…」

長い長い沈黙。その沈黙の間に
ワッキーが苦悩しているのが痛いほど分かった。

「生きたい…」
「……」
「生きたい!」
ワッキーはヒデにまっすぐ瞳を向けて、力強く言った。

「だったら全力で生きろ。」

ヒデの目がいつもより力強く見えた。

678 :あお :2005/04/10(日) 15:14:21
「ちょっと見回りしてくるよ。」
ある時、ヒデは突然ワッキーにこんな事を言った。
「えっ!なんで!?」
すると、ヒデは地図を開きワッキーに説明した。
「もうすぐ、近くが進入禁止エリアになるんだよ。
 そうするとココも見つかるのは時間の問題だから、ココを移動したいんだけど、
 移動する前に一度、ココ周辺を見回りしたいんだよ。」
「でも、1人じゃ危険ですよ!俺も行きますから!」
「お前は怪我してるだろ!あまり動き回れないんだから無茶言うな!」
「でも…」
「『でも』じゃない!大丈夫。すぐ戻ってくるから。」
と言い残し、ヒデは銃を片手に外に出て行った。
外は穏やかな天気だった。

679 :あお :2005/04/10(日) 15:14:56
ヒデは見回りをしていた。
前後左右を常に警戒しながら、慎重に歩を進めていった。
しかし、敵はどこにも見当たらない。気配すらも感じなれない。
「…大丈夫だな。…よし、戻ろう。」
とりあえず一安心したヒデはワッキーの所へ戻るため、
走り出そうと1歩を踏み出した瞬間に、
突然、爆音と突風、凄まじい衝撃を背中に受け、ヒデは前方に投げ出されたしまった。
背中の痛みと熱さはあっという間に全身へと広がっていった。
「いっ…てぇ…くそっ…」
少しづつ体を動かし後ろを見るとそこには、
「っ!?」
「みぃ〜つけた♪」
あべこうじが不敵な笑みをして立っていた。

680 :あお :2005/04/10(日) 15:16:17
「どうして…」
「えっ?聞きたい?実は僕、血糊付きの防弾チョッキ着てたんですよ〜超ラッキ〜♪」
あべこうじは笑顔満面でこう答えた。
(くそっ、反撃しなきゃ…銃…どこだ…)
ヒデは辺りを見回した。すると前方に銃があるのが見えた。
ヒデは手を伸ばし、銃をつかんだ。しかし、
「あっ!」
その瞬間あべこうじに手を踏みつけられ、銃を取り上げられてしまった。
「丁度よかった。僕の手榴弾アレで最後だったんですよ〜」
あくまでも明るく言った後、銃の標準をヒデに向けた。
「!?」
「さっきのお返し。」
笑顔は既に消えていた。

ズタァァン ズダァァン ズダァァン

3発の銃声が森に響いた。
ヒデの背中は真っ赤に染められ、動かなくなったいた。
「あれ?死んだのかな?つまんねー。
 ってか、ヒデさんがココにいるって事はワッキーさんも…」
あべこうじはニヤリと笑うと、その場から立ち去った。

「わ…きた…逃げろ…」

ヒデは声にならない声でそう叫んだきり、
もう2度と動かなくなったいた。

【ヒデ(ペナルティ)死亡】

683 :花粉症 ◆X1rbp0TR.U :2005/04/10(日) 17:21:18
待ってくれていた人は居ないと思いますが…とりあえずタカトシの話を落とします。


ゲームが始まって数日後のある日。

タカとトシは数日振りに森の中で再会を果たしていた。
偶然に出合った二人は争い合う事も疑いあう事もなく、お互いの無事を喜んだ。
そして突然放り込まれたゲームについて、今まで見てきた芸人の死体。
仲の良かったコンビ同士の殺し合いの事等を話していた。

「俺、嫌だよこんなゲーム…」
タカは木の根元に座り込み、頭を抱えて呟いた。
「これはゲームなんかじゃない。こんな事があっちゃいけないんだよ」
トシはイライラしたように辺りを歩き回り、悔しそうに拳を握り締める。
「こんなんで生き残ってもしょうがねぇし…死んだ方が」
俯いたままタカはボソボソと呟いた。
「…今俺達は生きてるんだ。死のうなんて考えたら駄目だ」
トシは弱気になって俯いているタカの肩を掴んで真剣な口調で言った。
「そうだよな」
しっかりとしたトシの言葉にタカはぎこちなく笑い返した。
このゲームに巻き込まれて以来、これが初めての笑顔だった。
「とりあえず今は生き残ることだけを考えよう」
もう一度大勢の前で一緒に漫才をやるんだよ、とトシは続ける。

684 :花粉症 ◆X1rbp0TR.U :2005/04/10(日) 17:23:34
「美しいコンビ愛ですね…」
トシの背後からボソボソと聞き取り難い声で誰かが呟いたのが聞こえた。
トシはその声に表情を強張らせ、背後を取られた己の不注意さに唇を噛んだ。
タカはトシの肩越しにその人物の姿を確認しようと立ち上がる。
「馬鹿、よせ!!痛っ…ぁああああああっ!!」
タカの不用意な行動を諫めようとしたトシは突然悲鳴を上げて蹲った。
今まで経験したこともないような激痛。背中を直接火で炙られているような感覚。
だが実際感覚だけではなかった。
謎の液体を浴びたトシの背中は着ていたジャケットとシャツが溶け、
そこから露出した皮膚は皮が剥がれて真皮や皮下組織が剥き出しになっている。
真っ赤に爛れたその背に所々覗く白い物は骨のようだ。
「っぐぁあ――――――っ!!!」
余りの痛さに両腕をツメが食い込む程強く握り、地面に膝をついてトシは叫んだ。
突然の出来事に驚いたタカであったが、
自分もまた相方を気に掛けていられる様な状態ではなかった。
トシの背中にかからなかった液体が、前に立っていたタカの目に入ったのだ。
「ぉ、おい!どうしたんだよ!!…クソっ、目が…」
視界が極端に悪くなり、刺すような痛みが絶えず走る。
痛みに耐えかねタカは目を覆ったまま地面に膝を付いた。
液体は塩酸や硫酸等の化学薬品のようなものだろう。

685 :花粉症 ◆X1rbp0TR.U :2005/04/10(日) 17:24:47
「やっぱコレだけじゃ死なないか…」
二人を襲った人物の声がタカの耳に入る。
何とか目を開け霞む視界で捉えたのは、相方の焼け爛れた背中と風になびく長髪。
「アイツは俺を殺そうとしたのに…」
辛うじて残されていたタカの視界が、相方のうめき声と共に真っ赤に染まる。
目に走る激痛に耐えかね、タカは目を強く押さえた。
そうしている間にも絶えず生温い液体が降り注ぐ。
鼻を突く生臭い臭いで、それが血液だということはすぐに判断できた。
そして勢い良く己の身に降り注いでくるその量が、
相方トシの傷が致命傷になるような傷だということを理解させた。
「悪いな…一緒に、生き…残れなく、て」
ゴボゴボと水の泡が割れるような音がする。
突然の襲撃者によって喉を切り裂かれたトシは最後の力を振り絞って、
目の前に居る内気な相方に声を掛けた。
背中の痛みももう感じることはない。身体の感覚がだんだんと薄れていく。
喉の傷から溢れ出る血液と共に、己の命が流れ出しているのが分かる。
「…あぁ」
トシの死を悟ったのか、タカは暗い声で短い返事をした。
内気で不器用なお前を独り残すのは心配だよ…トシはそう伝えようとしたが、
もう声は出ていなかった。喉の傷から微かに空気が漏れるような音が出ただけ。
「もういいよ、無理すんな…俺もすぐ行くから」
真っ暗な視界の中でタカは音のするほうに手を伸ばし、
相方の形の良い頭に手が触れると別れを惜しむ様にそっと撫でる。
その言葉に小さく頷くと、トシの身体は地面に完全に倒れ付した。

686 :花粉症 ◆X1rbp0TR.U :2005/04/10(日) 17:25:41
後に残されたのは血溜りの中で座り込むタカと、
その横で倒れる相方トシの無残な亡骸。
その光景を数歩離れて見ていた襲撃者は、無言のまま俯き暫くその場に立ち尽くしていた。
右手にはトシの血に濡れたナイフ、そしてもう片方の手には硫酸の入った濃茶色のビン。
「俺も殺すんだろ…早くしろよ、阿部」
名前を呼ばれた襲撃者はその長い髪をナイフを持った右手でかき上げて顔を上げる。
その表情は泣いている様にも、笑っているようにも見えた。
ザッと砂を蹴る音がする。その音でタカは襲撃者が歩き出したことを感じる。
タカは大きく息を吸い、深く深く深呼吸をした。
これがきっと自分の最後の呼吸だろう。身体の力を抜いて覚悟を決める。

だが、いつまで待ってもその瞬間は訪れなかった。
気が変わったのか、自分たちを襲ってきた気紛れな事務所の後輩は消えていた。
「何だよ…殺せよ…俺はどうすりゃいいんだよ」
視界を奪われ、大切な相方を奪われ、森の中に独り残されたタカは独り呟き続ける。
その見えなくなった目にはいつしか、大粒の涙が溢れていた。

845 :名無しさん :2005/04/16(土) 14:54:49
描いて〜。

846 :心配性 :2005/04/16(土) 15:21:08
ド初心者のくせに書いちゃいました。アンガ…頑張ります。


何でこんな事になったんだろう。この間までの平和は何だったんだろう。
目を閉じて、深呼吸し、空を見上げる。

「田中さん」
隣から聞こえてくる相方の声に耳を傾けながら、空を仰ぎ続ける。
山根とは、開始後すぐに出会った。かなりの芸人が参加してるのに凄い偶然。ただ
警戒心とかは別に無かった。だって山根だもん。俺を殺すなんて、そんなことこいつに
出来るわけないじゃん。
「あー…何?」
「いや、これからどうしたらいいのかな」
何それ。超難問だよ…。
「や、どうするって言われても〜…………“歩く”?」
「………はぁ」
「溜息つくなよ!」


二人並んで歩き出す。
手には、華奢な身体には似つかわしくない大きなライフル銃。出来れば使いたく
ないと思いつつも、無意識のうちに自分の手がそれをしっかり掴んで放さない。


何で歩いてんだろ俺ら。何処に行く気なのさ。
あーぁ、分かんないなぁ…。


847 :心配性 :2005/04/16(土) 15:22:32
>>846

「田中さん…疲れたよ。休も〜」
「え〜!?何言ってんの!さっきも休んだだろ!!」
「……………」
「黙るなって!!」

まただよ。さっきからこの繰り返し。ちょっと歩いては休み、歩いては休み…
おかげでほとんど進んでない。
あ゛――もう、イライラするなぁ。いっそ一人の方が良くないか?

「俺、先に行くからな!」
背を向けて歩き出す。冗談半分だったけど、ちょっと可哀相だったかな。泣いちゃうかも。
20メートルほど離れても、山根が追ってくる様子はない。
歩く。歩く。歩く。

(ちょっとは止めろよ…)
振り向くと、山根はまだその場所にいた。さっきと違って、座っていた岩から立ち上がり
奥の茂みを凝視していた。
「何、そっちに何かあんの?」
あ。と言ったのが口の動きで解った。
何かに気付いた様子の山根は、顔だけ田中の方に向け手招きをした。

「何?」
「――…!…――…」 距離がありすぎて声が聞こえない。
「な――――――にぃ――――――!!?」
「――――……!」  やっぱり聞こえない。
「もぉ〜ッ!!」

俺の負けだよ。そのまま全速力で山根の所へ戻っていった。


857 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/17(日) 07:39:52
>>499の続き

「え?!シムラケン?!」
「し、し、志村けん?!?!  あたっ」
志村の死体に慌てふためいて、吉澤も芝川に続き滑ってしまった。
「こんなん・・・・・もうアカンて・・・・・・」
壁には無惨にもひっかかれたような跡のような血痕があちこちについていた。
そして志村の顔の頬には血の手形があり、誰かと死の争いをしたのだろう。
ブラウン管を通して、いつもいつも笑いをくれた志村けんがこんな姿で生で見るなんて
思いもしなかった。
「オレ、ちょお添える花とってくるわ。」
吉澤はすっくと立ちあがり走ろうとしたがやはり滑ってしまった。

「これ。あっこに1つしか咲いてなかってん。殺し合いしとるっちゅうのに元気に且つ
凛と咲いとった。」
吉澤はゆっくりと志村の手に花を握らせた。


858 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/17(日) 07:42:06
>>857

芝川が布で志村の顔の血を拭き取っているとパタパタと足音が聞こえた。
「マズイ、誰か来る!隠れよ!!」
「おう!」
廃墟の裏口から逃げ、こっそり中の様子を伺う。

「Hey!Fuck off!・・・・Is there someone?」
迷彩服を身にまとってダダダダダとライフル銃を連発している男がいる。
「おい!なんか米兵っぽいヤツがいる!」
「ホンマや!!!アイツは敵なんか?味方なんか??」
その米兵らしき人物は辺りを見渡しながら、こっちへ近づいてくる。
「近づいてくっぞ!」
「味方かもしれん!」
「ホンマか!?」
「助かる方法とか教えてくれるかもしれんやん!」
「コラ!相手は銃持ってるんやで!敵や!」
「ほな逃げよう!」
物音を立てないように足早に歩いて去ろうとした瞬間
「Wait!!!」
同時に気を付けし、恐る恐る顔を振り向いた。


859 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/17(日) 07:43:32
>>858

ジパング上陸作戦のチャドである。しかし彼らはチャドの存在を知らない。
「What a fuck are you doin?」
「すすすす、すみません命だけはお助けをー・・・・・」
腑甲斐にも吉澤は土下座をした。
「Shut up!’know watt’am saying?」
「芝川くん!なんつってるかわかんないから訳して!」
芝川は失禁して完全に意識を失っていた。
「HAHAHAHA!やっぱり英語はあかんか」
高揚に笑うチャド。
「え?!に、ニホンゴしゃべっ・・・・・」
チャドはただ米兵になりきっていただけだった。
吉澤と芝川の2人が芸人であるコトを確認すると、チャドも芸人であるコトを話した。
「せやったんですかー。」
チャドは相方を探しているが見つからないという。
そして自分の武器であるライフル銃をこれでもかってぐらいに布で拭き取っていた。


864 :あお :2005/04/17(日) 14:43:08
ペナルティ編投下します。

680>続き
「うああああああ!!!!」
ワッキーは大声で叫びながら森を疾走していた。
もう怪我なんてどうでもいい。
痛みなんてどうでもいい。
ワッキーはただ文字通り無我夢中で走った。

少し前に、放送でヒデが死んだことを知ったときは、
どうしても、ヒデの死を受け入れられなかった。
湧き上がってくるのは漠然とした喪失感。
それが時間が経過するにつれて、どんどんワッキーに大きな重圧としてのしかかってきた。
その重圧を振り払うようにワッキーは走った。
走っても何も変わらない事はワッキーだって分かってる。
でも、何かしないといけない。立ち止まったらきっと自殺してしまう。
何かしなきゃ。何か、何か、何か、何か、何か、…

そして、ひび割れた絶叫と駆け抜ける足音が森を震わせた。
走って、走って、走りまくって、呼吸がままならなくなっても、とにかく走って…
その時、ワッキーは石につまずいて大きく転んでしまった。
しばらく、ワッキーはそのまま動かなかった。
大粒の涙が頬を濡らしていた。

865 :あお :2005/04/17(日) 14:44:25

もし、あの時ヒデを引き止めていたら、
もし、自分が怪我をしていなかったら、
もし、ヒデと再開していなければ、

過去に「もし」をならべる事の無意味さは重々承知している。
しかし、一度「もし」を考え出すととまらない。

もし、ヒデとコンビを組んでいなければ、
もし、ヒデと出会わなければ、
もし…自分が存在していなければ、
ヒデは生きていた。死ぬことは無かった。

        『全力で生きろ』

ふと、ヒデの言葉が頭をよぎった。

「全力で…」

すでに遺言となってしまったこの言葉を、口に出して言ってみた。
と、その時、

「何が全力でなんですかぁ〜?」

と聞き覚えのある声が聞こえた。

866 :心配性 :2005/04/17(日) 15:01:09
続き投下します
>>847

「どーしたの山根…」
「ほら、あそこ…」

山根の指差した先――――何か大きな物がゆらゆらと揺れているのが解る。木や草が覆い茂っているのでそれが何なのかはっきりしない。

「俺疲れてるからさ、お前見て来いよ」
「えー何だよそれ!田中さんが行ってよ」
「何だよはこっちの台詞!たまには言うこと聞けよ!」
「分かったよ…………じゃあ二人で」


凄いよなぁ俺たち。こんな状況下でも脳天気な会話繰り広げて。自分で言うのもなんだけど、ホントにめでたい性格だよ。

山根は田中の手を半ば無理矢理引っ張り「それ」に近づく。
「「あ……」」



人だ。人が木から吊り下がっていた。どうやら背負っているリュックが木の枝に引っかかっているらしい。
何だってこんな状態に?上を見上げると、ぱらぱらと葉っぱや小枝の破片が降ってきた。
…………上から落ちて来たのかな。


867 :心配性 :2005/04/17(日) 15:01:46
「……うっ…」

あ、生きてる。…助けなきゃ。小走りでその男の元へ駆け寄る。
落ちるときに枝で引っ掻いたのか、腕や脚から血が流れていた。うわー痛そう…。

「えっ、助けんの?」
予想通りの山根の反応。その不謹慎さにわずかながら怒りを覚えた。
「手伝えって」

自分に注がれる厳しい視線に気づいたのか、山根は眉をしかめ、罰の悪そうな顔をした。



868 :心配性 :2005/04/17(日) 15:02:31
パキパキ…嫌な音が響く。
ガサッ…メキメキ…  まさか、この展開は…!

「あ。枝が…」
「え〜!?それってヤバイじゃん!もしも〜し!!落ちるよ!落ちますよ〜ッ!!」

山根の制止の声も聞かずに、田中は走り出していた。枝が、完全に折れる。
うわ〜待った待った!!無我夢中で前へ飛んだ。

どすん!

背中に、予想以上の強い衝撃。意志とは無関係に地面にうつ伏せに倒れた。
息が詰まる。目がチカチカして、頭ももうクラクラ。でも…
良かった、何とか無事だ。彼も、俺も。
安堵の溜息を吐き自分の上に覆い被さる様にして気絶している男を見る。

「やー、ナイス田中さん。ヒーローみたいだ」
いつの間にか山根がしゃがみ込んで田中を見下ろしていた。
「え、そ、そう?そう言われると何か調子にのっちゃうな…」
「はは…。……あれ?この人確か…」
「見たことある人?」
上の人物になるべく刺激を与えないよう、もぞもぞと抜け出る。
「あ、」

やっと助けた男の顔を見た。死んでいるかのように眠りこける男―――――
中島仲英(流れ星)が二人の目に映っていた。


870 :あお :2005/04/17(日) 15:22:11
この声…まさか…!?
起き上がり、振り返ったワッキーの目にあべこうじが立っているのが写った。
「なんでっ!?」
ワッキーは絶句した。あべこうじは目の前で殺されたハズなのに。
「どうしてか聞きたい?実は僕、防弾チョッキ着てたんですよ〜」
満面の笑みで答えた。おそらく、言いたくて仕方なかったのだろう。
「じゃ、さっそくですけど、死んでもらいますね。」
あべこうじはポケットから銃を取り出した。
「!?っ、それ…」
「あぁ、これ?さっきヒデさんから奪ってきたんですよ〜」
ワッキーに遅効性の毒のような理解が広がった。
それはつまり、あべこうじがヒデを殺した事を意味する。
「どうして……どうして殺すんだよ…」
ワッキーはうわごとのような呟きをこぼした。
「何言ってんスか。」
あべこうじは口の端をゆるめて薄く笑った。
「ここがどこだか分かってるんですか?殺し合いの場ですよ?
 そんな事が通じるわけないじゃないですか。」
 あの時トドメをささないあなた達が悪いんですよ?」
ワッキーは唇を噛んで、その言葉の鋭さに耐えた。
唇の薄皮がはがれて血の味がした。

871 :あお :2005/04/17(日) 15:24:33
「それにあなたには守るべき人も、信頼できる人も、人を殺せる武器もないんですよ?
 そんな中で生きていったってしょうがないでしょ?
 だったら、僕の手で殺してあげますよ。」
ぬけぬけと言うあべこうじ。
ワッキーはそれが魅力的な案だと思った。
自分には守るべき人もいない。ヒデ以上に信頼できる人がいるとも思えない。
武器だって、カッターナイフくらいしかない。
ここで苦しまずに死ねたらどんなに素敵だろう。
死のう。ここで死のう。死んで楽になろう。

     『全力で生きろ』

また、ヒデの言葉が頭を駆け巡った。
ワッキーはハッと我に帰った。
死んじゃだめだ!全力で生き延びなきゃ!
すると、弾かれた様にワッキーはカッターナイフを取り出し、
あべこうじに胸をめがけて大きく振り下ろした。
あべこうじは、突然の出来事だったので上手く避けきれず、
右手を斬りつけられ、うっかり銃を落としてしまった。
ワッキーは素早くそれを拾うと、カッターナイフを放り投げ、
銃をあべこうじの頭に突きつけた。

872 :あお :2005/04/17(日) 15:25:06
「へぇ、やるじゃん。」
少しも驚いた様子もなく、あべこうじは言った。
「でも、少しビビってるみたいだね。」
「余計なお世話だ。」
「…あんた、ここで人殺してないでしょ。」
ワッキーはあべこうじを強く睨みつけた。
「ないんでしょ?だからビビってるんだ。手ぇ震えてるよ。」
「うるさい!」
「殺せるもんなら殺してみなよ。どうせ出来ないだろうけど。」
あべこうじの声はあくまでも明るい。
「うるさい!うるさい!うるさい!」
ワッキーは銃の引き金を思いっきり引いた。
しかし、銃は乾いた音を立てただけで何も起こらなかった。
ワッキーはそれを弾切れだと理解するまで、少し時間がかかった。

874 :あお :2005/04/17(日) 15:36:15
その瞬間、ワッキーの腹部に激痛が走った。
細い糸のように、鮮血が舞う。
「ね?できないでしょ?」
あべこうじは微笑みながら言った。
ワッキーはそれが、自分が放り投げたカッターナイフによって
あべこうじに刺されたものだとすぐに分かった。
崩れるようにしてその場に倒れこんだワッキーに、
あべこうじは何度も何度もカッターナイフで腹部を斬りつけた。
その度に辺りが赤く染められる。

「ん〜?もう死んだかな?やっぱりこれくらいのやりがいがなくちゃ、
 人殺しも楽しくないもんね。」
程なくして、あべこうじが言った。
その目線の先には、腹からカッターナイフを生やしたワッキーが倒れていた。
「んじゃね、ワッキーさん。結構楽しめたよ。」
そう言い残し、あべこうじはワッキーに背を向けて歩き出した。

875 :あお :2005/04/17(日) 15:45:45
(俺、死ぬのか…)
かすれてゆく意識の中で、ワッキーはそう思った。
死ぬ。終わる。終了する。消滅する。未来が消える。
ここで死んだ人たちのように、忘れられてゆく。
何もかもが「無」になる。
「全力で生きろ」と言う言葉を裏切る。

それは嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!

そしてワッキーは最後の死力を振り絞ってカッターナイフを腹から引き抜くと
立ちあがり、おぼつかない足取りながらもあべこうじの背後に近づき、
大きく振りかぶった。
そこにタイミングよく、あべこうじが振り返る。

876 :あお :2005/04/17(日) 15:58:04
―頭蓋骨の中でもこめかみは最も骨が薄く、
 カッターナイフ程度でも、貫通する事が出来る。―

うろ覚えの情報がここで役立つとは思わなかった。
ワッキーの足元には、こめかみから大量の血を流して死んでいるあべこうじがいた。
鮮やかな深紅が辺りに広がってゆく。

「トドメをささないあんたが悪いんだよ。」

血を流しながら冷えてゆくあべこうじの体を見下ろしながら呟いた。
そしてため息をつくと、フラフラと歩き始めた。
しかし、2〜3歩ほど歩いて倒れてしまった。
ワッキーは、今度こそ死ぬと確信した。

「ヒデさん、俺、全力で生きま…し…たよ…」
口から声とともに血が吹き出る。
そして、急速に死の深淵へと落ちていった。

辺りは嘘のように静かだった。

877 :あお :2005/04/17(日) 16:08:29
死というのは冷たく悲しいものだ。

生きていた頃の暖かみなどほんのヒトカケラもない。

あるのは、突き刺さるように冷たい『孤独』というコトバ。

見るものすべてが色鮮やかに光り放つ。

けれど、思い出す記憶のすべては

色を失い、暗い光を漂わせ、モノクロとなり、瞼に写る。

どんなものを見ても、どんな事を想っても、

結局は悲しみにしか変わらない。

死というものは冷たく悲しいものだ。

今日また増えた三つの屍は他の者の理性を奪い、

また、人一人壊れてゆく。

【ワッキー(ペナルティ)、あべこうじ死亡】

886 :名無しさん :2005/04/17(日) 21:16:10
安田大サーカスを書いた人がいないみたいなので書いてみます。あっさり終わらせ
ちゃって申し訳ないが、まあたまにはこんな話があってもいいかなーと(^ ^;)。
それに彼らにはこういう展開が一番似合いそうだし。
あと>>857-859で、志村を殺ったヤツの事も気になるなあ。>>7からしてやっぱ
肥後あたりか?

「ドンドンドン、ベタベッタ!ドドンドドン、ベタベッタ!」
ここは島の一角の、とある荒れ地。この血なまぐさい場には不釣り合いな、
陽気な声がする。
声の主は、はしゃぎながら練り歩く三人組だった。
先頭を行くのは赤フン一丁の小柄な男。
その脇にいるのは、ポケットから紙吹雪を取り出しつつ撒き散らすスキンヘッドの
強面男。しかしその声は、その容貌からはおよそ想像もつかない甲高い声である。
もう1人の脇にいる男は、ずんぐりとした巨漢。
そんな見るからに個性的な三人組が、この荒れ地で人知れずお祭り騒ぎをして
いたのだった。
「団長、ここには誰もいないみたいですねぇ」
スキンヘッドの男が口を開いた。
「ああ、このまま他の奴らに見つからなきゃいいけどなあ」
「団長」と呼ばれた赤フン姿の男が返す。うまい事このまま生き延びられれば、
あわよくば…そんな考えもあったのかも知れない。
しかし彼らは知らなかった…ここは本部の兵士たちが設置した、対戦車地雷の
地雷原になっていた事を!
カチッ
「ん?何か踏んだ…」
ドッカァァァァァァァァァァァァァァァァァン !!!!!
対戦車地雷をまともに踏んでしまった三人は大地を揺るがす大爆発に呑み込まれ、
わずかな紙吹雪と焼け焦げた団長の赤フンだけを残し消し飛んでしまった。

【安田大サーカス(団長・クロちゃん・HIRO) 死亡】

920 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 10:48:37
カチッ カチッ カチッ カチッ
「へ?!電池切れか?!」
重くため息をつき、電池が切れた懐中電灯を勢いよく投げたジパング上陸作戦の加藤。
そうチャドの相方である。
加藤は偶然見つけた洞窟の中に殺し合いには関わるまいと身を潜めていた。

―何も描いていない 命という白いキャンパスに 黒ばかりが塗り潰されていく

脆く 脆く 消えていく白  深く 深く 広がっていく黒。 

(時折赤も混じる・・・・・・。)

外は くりひろげられる醜い毒蛇の乱舞 あちこちに力尽きた毒蛾の死体

これ以上黒いことはなく ひたすら ひたすら 黒く塗り潰される

「例えば僕がココで死んだら本当に涙する人おるんかな?」
なんて心にもないことを言うが本気か嘘か自分でもわからない。
逃げて、逃げて、逃げて、とにかく逃げて・・・・・・・・。
殺し合いの意義なんて誰にもわからない。
そして「人が人を殺してなんになる!」とかそういうキレイごともバカバカしい。
加藤は肉体的にも精神的にも疲れきっていた。
というか、それ以前にいつもの漫才の時の着物のままだったから
動きにくくてしかたがなかった。



921 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 10:55:14
街が解放された時に慌てて買った大量の乾パンと水と雑誌とガーゼとばんそうこうと毛布。

「なんで肝心の電池を買ってこおへんかったんやろ。あーあ。」
暗闇の中、さぐりさぐりで袋から乾パンを出して食べる。

結構長いこと洞窟の中でひきこもっている。外の状況をまったく知らない。
所持品のラジオのスイッチを入れようとする。
「これか。」

ガーッガーッ ザーッ

「うるさっ!!!!」
電源と音量が一体化してるラジオ。暗いせいでうっかり操作ミスで大音量にしてしまった。
洞窟内に異常なまでのノイズ音が響き渡った。

「あ。ここ洞窟やからラジオなんて聞こえるわけないか・・・・・」
『××××・・・ 発表します!』

「お?ちょっと聞こえるやんけ?なんて?」
次々に発表されていく死亡者。
「多いなぁ。」と苦悶の表情を浮かべる。

『死亡者は以上です。』 ザーッ

相方チャドの名前は呼ばれなかった。
「チャド まだ生きてるんか・・・・・。アイツのコトやから・・・・・・米兵にでも
なりきってんとちゃう。」  そしてまたフンと鼻で笑った。

922 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 11:05:06
ラジオのスイッチを切ると襲ってくるのは孤独と静寂と憂鬱。
でも外に出ようとは思わない。

人はゆくゆくは屍へと化す。

「屍・・・・・。死ぬのは・・・・・・ぶっちゃけあんまり怖くないねんけど・・・・・・
あれやな。人に屍にされるのはイヤやな・・・・・・。ならいっそ自分で・・・・・・・」

加藤は上を見上げた。ただ真っ暗なだけで何もない。
リュックからナイフを取り出し、両手でしっかりと握りしめた。

「ごめんな、チャド。ホンマにゴメン。
結局バトロワじゃ1回も会われへんかったけど
後悔してないで。こんなところまで行動を共にしたってしゃあないやろ。
もう疲れたわ。今どこで何してるか知らんけどチャドはチャドでがんばれよ。」


とまどいもなく自分の喉仏へ向けてナイフを勢いよく刺す。
最後に何か言うこともなく加藤はその場に倒れた。
ハラハラと血が流れていき、その血潮は闇の中へ消えていった。

                    【加藤(ジパング上陸作戦) 死亡】


923 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 11:08:00
ジパング上陸作戦・加藤さん編はここまでです。
そしてミス発見しましたorz 「あちこちに力尽きた毒蛾」
毒蛾じゃなくて毒蛇です。すみません。
それで次は椿鬼奴を予約させていただきます。

932 :新物♯交差点:2005/04/20(水) 18:49:51
「もー…疲れたぁ…」

足を抑えながら大木の根元に座っている男が呟いた。

「アホか!今こんな状況で『疲れたぁ』なんてゆーてる場合ちゃうやろ!?」
若干キレ気味で答えたのは、座っていた男の相方
ジャンクションの下林である。

疲れた、というのは体力の事ではなく精神面のことだろうが、
そんなもの自分だって同じだ。

「…大体お前の武器俺のよりめっちゃええやつやん。
 そんな弱音吐かれてもこっちが困るわ」
「せやけど、俺こんなん持ったこともないし…」
そう言ってジャンクション原田は、手の中に有る「自分が使った事が無い物騒なモノ」の
銃口を空へ向けた。


933 :新物♯交差点:2005/04/20(水) 18:51:41
「俺、これ試してもええ?」
「なぁっ!?」
下林は、自分の武器…ドライバーのゴルフクラブをしっかり握り締めた。
「…誰もお前に撃つとは…」
「な、何で試す必要が…」
「いや…いざという時にこっから国旗がポーンと…」
「出てくるかぁっ!!」
下林はまだゴルフクラブをしっかり握っていた。

原田が黒く光る「それ」を下ろし、大きなため息混じりに、言葉を発した。

「…今までの放送で、先輩とか後輩とかみんな…
 それに…あの時……」

そう。二人は見た。
自分達が、この世界に入るきっかけとなった二人が、あまりにも無残な姿になっていた所を…


937 :名無しさん :2005/04/20(水) 19:03:04
シャープを半角にして、次から違うパスワードにすれば
いい話。みなさん、もちついていこう。

938 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/20(水) 19:04:14
…すいません。ちゃんと半角にしなかった自分が悪かったです。

939 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/20(水) 19:07:48
…というわけで名前変えてやり直し

「…川か?」
さらさらと流れる音がする。
川じゃなくても、水があることは確か。

な気がする。
下林は、その方向に向かって歩き出した。
「下林?」原田がついてくる。
「どないしたん?」
「………多分、水がある」
そういうと、原田は無言で下林の後を追っていく。

暫くして、急に開けた場所にでた。
やっぱり。
水の流れの音が一番よく聞こえてくる。
「なんかあった?」
「見つかったわ、水」
「ほんま?じゃ、ちょっと休憩………」

そして原田は見た。一段下にある川原に、よく見なれた姿があることを。

「うっ…………あ…ああ……」
「え?何?一体…」

原田の指が示した場所に横たわる        もの。

「高…橋……さん………?」
蹲って硬直した状態の

サバンナ・高橋

940 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/20(水) 19:10:45
「高橋さん!!!!」
段差を降りて、下林が駆け寄る。
「高橋さん!!高橋さん!!!!!!!!!」
原田もゆっくり近づいて来る。
ふらふらした歩みで。

高橋の腹部に目をやった。    赤い……いや、赤黒い血が、べっとりとこびり付いている。
どうやら、かなり前に最期を迎えたようだ

下林が「高橋さん……」といったのに対し、
「八木さん……」
原田が震えた声で言った。
同じタイミングだったが、出された名前は別人だ。

そうだ、この人の相方は?

サバンナの場合、コンビ二人で行動するということは、先ずありえない…
が、この場合は一番先に見つけなければいけない人物。
「なぁ原田……とりあえず、八木さん探しに…」

高橋に気を取られていなければ、とっくに気付いていただろう。
相方の震えた声に、恐怖と戦慄が廻っていた事を
「原田、聞いて…」

941 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/20(水) 19:12:43
立ち上がったその瞬間。下林は凍りついた。
目の前には、動けない原田と、腹を撃ちぬかれ変な角度に足が曲がっているなかやまきんに君。

そして。

白目をむき、顔の右半分が吹っ飛んでいる
サバンナの八木だった。

「………………………っ」
目を背けることしか出来ない。
だが、瞼の裏に見えるのは、
サバンナ二人の
残酷な死に様だった。


さっきから、何も考えることが出来ない。
一番慕っていた先輩が。
一番頼りにしていた先輩が。
身体の一部を飛ばされ、死人になっている。

「しもばやしぃ……」
原田が弱々しい声で語りかける。
「せめて…さぁ…埋めようや……二人…」

判っている。判っているつもりだ。
けれど。
下林は立ち上がった。


942 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/20(水) 19:14:27
「行こか」

「は?」

下林は砂をパンパンッとほろう。

「待てやお前」
低い声が、下林の動きを止めた。
「どうすんねんあの二人。あのまま野ざらしか?どうせ武器を試したいヤツの的になるのがオチや。
 ちゃんと弔ってやるのが残された人間のやるべき事ちゃうんかい」

下林はゆっくり振り返り、言った。
「そんなこと、してる場合ちゃうやろ…」

原田の目が、怒りで満たされた。
「お前はあの二人にどれだけのことしてもろうたか…忘れたんやろ!
 せやからそんな冷たいこといえるんや!!
 はよ言えや!あんな二人どうなってもええって!!
 そしたら俺がお前殴ったるから!!
 はよ言え!はよ!!」

握られた拳が相手の顔に当たり、地面に倒れた。

原田が。

943 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/20(水) 19:15:38
「いっ……たぁ……」
下林が、原田を睨みつける。

「あの二人がどうなってもいい?誰がそんなこと言うてんの?
 そんなこと言うやつおったら、真っ先に俺が殺しとるわ」
「けど…お前今…」

「……俺だってな、あの二人ちゃんと燃やして、土に還してやりたいわ。
 ちゃんと花添えて、その上に墓石だって作ってやりたい。
 けどな、今一番せんといかん事は……」

生きること。
「こんなとこでグズグズしてんの誰かに見つかったら一発や」

そういって、落ちていたヌンチャクを拾う。
たぶんこれは、八木のもの。
何故かそんな気がした。

「…また、漫才やりたいなぁ」
「……下林」
「生きて、帰ろうや」
下林が背筋を伸ばす。

原田が口を開く。
「…………約束やで」
「おう」
そして、下林は手の中にあった武器に目を落とす。
『八木さん…高橋さん……必ず戻ります……必ず』
二人は歩き出した。

947 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 20:27:14
「かーとーう!!!」
何度相方の名前を連呼しただろう。
「全然見つからないじゃないっすかー!」
「もう死んでんとちゃいます・・・・・・・・?」
吉澤は冗談混じりに言った。

ガッ

チャドは持っていたライフルを吉澤へ向けた。
「Hey Kiddy!オマエ、冗談でもそういうコト言うなや。」
「すんません・・・・・・・。」

ゆっくりライフルを降ろし、また歩き出して名前を連呼する加藤のうしろで
コソコソと話ながら歩く。
「おい!なんでオレらアイツについて行ってんねん!」
「知らんわ!なりゆきでそうなったんちゃうん?!」
「ちょ、アイツと離れようや!」


948 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 20:28:29
「何話してるん?」
チャドは不意に振り返り、ライフルを向けた。
「あ な、なんでもないす・・・・・ただ・・・・・・・あの・・・・・・・ちょっと・・・・・・・
べ、別行動・・・・・しません????」
「別行動?」
ライフルを向けたまま、チャドは不穏の表情を浮かべる。

「別行動・・・・・ええけど。ほな・・・・・オマエら邪魔やな。」

――え? 邪魔???

ライフルを構えたまま動かないチャドと言われたコトが理解できず固まっているメルヘンズ。

「邪魔や言うてんねん!撃つぞ!」

タン

1発の銃が放たれた。

「あっ!!!」

一瞬のできごとだった。マトリックスの映画でも見ているように倒れていくチャド。

「よ、吉澤っ う、撃ったのか?」

なにかぎこちないポーズで銃を構え、額にはぐっしょり汗をかいている。
口をぽかんと開けたままコク、コクとうなずく。

安定の悪いフィギュアを机の上に置くとすぐ倒れる。
チャドもまたそんなフィギュアのようだった。


949 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 20:29:30
「お・・・・お・・・・おほ・・・・・・」
芝川はなんともいえぬリアクションをした。吉澤が撃った銃は見事にチャドの心臓を
貫いていた。

銃が手からスルリと落ちる。ガシャンと銃が落ちた音と共に吉澤もまた
地面に倒れた。

「吉澤くん!吉澤くん!吉澤くん!おい!」
「は・・・・・。」
「だ、大丈夫か?」
「なんとか・・・・・・・・・・。」
「よかった。」
吉澤は突然身を起こした。
「チャドさんは?!」
「・・・・・・アレ。」
「え!アレ・・・・」
指で自分を指しながら目で「オレがやったんか?」的なことを目配せし、それに対し
芝川は笑顔でうなずく。

いっしゅんでさんげした いっしゅんできえた あはははは

「所詮命なんて・・・・・・」
「ん?何?」
「ああなんでもない」

吉澤は汗をぬぐった。


950 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/20(水) 20:30:53
書き忘れました。【チャド(ジパング上陸作戦)・死亡】 

今日はココまでです。ああ、文章力ないなww

955 :名無しさん :2005/04/21(木) 17:32:54
メルヘンズ投下します!

956 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/21(木) 17:33:37
>>949

チャドと志村けんに合掌をし、廃墟を出た。
まもなく外は夜になりかけていた。

今何を目的に歩いているのですか 今真っ黒な路の上を歩いています
生き残ったら1番になれるんですか 路も、最後も真っ黒真っ黒
何も見えません 足元を照らす月明かりが唯一の救いです



「キレイな星やな。」
「・・・・ああ。いかにもこれまで亡くなった人たちが星になったみたいやわ。」

死臭漂う昼間とはうってかわって、澄んだ臭いのする夜。
サワサワと微妙な風が心地よい。

「やっぱりチャドさんと別行動したいなんてかわいそうだったかな。」
がけに腰をおろす芝川と、ゴロ寝しながら「うーん・・・・」とあいまいな返事を返す吉澤。
「加藤さんがチャドさん死んだなんて知ったら・・・・・・」

「忘れよう。」
「へ?」
「えっとー・・・・なんとか上陸作戦はなんとか上陸作戦。メルヘンズはメルヘンズ。」
「・・・・・・ジパングな。」
「ああ。」
「チャドさん撃ったんはオレや。もっともかわいそうだと思わなきゃいけないのは僕やと思うけど
別に後悔してへんで。だって、そういうルールやもん。」
そう言うと吉澤はグレたようにそっぽを向いた。

957 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/21(木) 17:34:52
「そういうルール?殺し合いなんやと思てんねんドアホ!僕も寝るわ。」

吉澤はツメを噛みながら考え事をした。

カッと照らす太陽に目を覚ました吉澤。
「まぶしっ!」
目を手で覆い、太陽を睨みつけ、「朝か・・・・・」とポツリと呟く。
芝川は横で口を開けて大きないびきをかいている。
「・・・・・・・。おい、朝や、起きろい!」
「ん?あぁ・・・・・・・・。」
芝川は頭をボリボリかきながらゆっくりと起きあがった。
ついている首輪がいつもより苦しく感じた。

「ダメだ、加藤さん探そ!」
「えー!イヤやわ!」
「僕は探しに行くで!」

芝川は颯爽とリュックを持ち上げたったか歩き出した
「僕方向音痴なん知ってるやろー!1人なって迷った時どうしてくれんねやー!
絶対なー、同じ道を4回ぐらいぐるぐる回るねん!6回目ぐらいでどっかで見たことある
道や思ってなーなんか変なヤツに捕まってな、相方どこやとか聞かれてな
「相方は薄情者なので先どっか行きました〜」とかなんとかなってなー!」
支離滅裂なコトをぶつくさ言いつつも芝川のあとを追う。

芝川は途中途中にあるぼこぼこ開いている穴を1つ1つチェックしていた。
自分たちを殺そうとするぐらいだからチャドにとって相方はどんな存在だったんだろう。
とにかく自分たちには責任がある。殺される覚悟もしてある。加藤にあって、土下座してでも謝るつもりなのだ。


958 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/21(木) 17:36:43
しかし戦地は広い、広い。どこを歩いても同じようなところばかりで
吉澤はヘトヘトだった。
「おーいー!疲れたわー。もー。」
「しゃーないな。どこか休むとこ・・・・・・・ん?なんやあのでっかい穴。洞窟っぽいな。あそこなら
涼しそうやん。あっこで休も。な?」
「おう!」
穴の入口までダッシュした。

「暗っ!芝川くん懐中電灯持ってへん?」
「あった。」

電源を入れて洞窟内を照らした。

バサバサバサ

「うぉぉ!ビックリした!コウモリかいな!」
「なぁなぁ!乾パンとか落ちてるで!未開封の!」
「ホンマに?!パクっとこうや!」

それから乾パンや水をかっさらい、腰をおろそうとしたその時
「あだっ・・・・・・」
「どないしたん?」
吉澤が何かにつまづいてこけた。
「なんかにひっかかったで。」
芝川が懐中電灯を照らすと、なにやらヒモのような布のようなものがある。

「へ?何なんこれ!」
懐中電灯をヒモの先へ持っていく。


959 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/21(木) 17:37:28
「うわああああああああああああああああああああ」
芝川はうしろへ這いつくばった。
「どないしたん?」
「人!人や!人が死んでる!」
「え!?」
吉澤は芝川から懐中電灯をとり、照らした。
「わ・・・・・・・。首にささってるやん。しかも・・・・・・自分で?!」
「誰なんよそいつ!」
おそるおそる顔を確認する。
「わ、わからん。」
そしてゆっくり懐中電灯の灯りを顔から下へ照らした。
「・・・・・なんやこれ・・・・・・着物?       ―――着物・・・・?!」
「ききききき着物・・・・・なんで着てるん?」
吉澤はしばらく顔をしかめて、冷淡な口調でこう呟いた。
「加藤さんかもしれん・・・・・・。」
「は?????!!!!!!!!冗談キツイって!」
「チャドさん言うてはった。相方の加藤は着物着ながら漫才するって。」
「だ、だからって加藤さんとは限らへんやないか!」
「ううん、チャドさんが見せてくれた写真の加藤さんと顔がだいぶそっくり。」
返す言葉を失う芝川。なんという偶然だろう。たまたま入った洞窟の中に
加藤がいる。
「結果オーライやろ。加藤さん生きてた方がショックやわ。」
「そらそやけど・・・・・・。」
「大丈夫や。多分あっちで加藤さんとチャドさん、ちゃんと会うてるから。」
吉澤は落ちていた乾パンを開け、「ほれ」と差し出す。

複雑な気分ながらもモサモサと乾パンを食べながら水を暴飲した。


960 :名無し系 ◆SiuiRPyJ32 :2005/04/21(木) 17:42:34
メルヘンズ編、今日はココまでです。ヘボヘボ文章&マイナー芸人ですが
読んで下さってるみなさんありがとうございます。

964 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/21(木) 18:49:02
>>943の続き

あれから、どれだけ歩いただろう。
危うく原田が崖から落ちそうになって。
たまたま下のほうでは、誰かが手榴弾を放って。
運悪くバランスを崩していた原田はその爆風に巻き込まれて。
不幸にも足を負傷してしまった。

これだけ不運な奴を見ると、逆に笑いそうになる。
…目の前にいるのだから、笑えるはずも無いが。
「いたいなぁ」
原田は相変わらず木の根元に座っている。
いつものトーンと変わらない。全く、落ちついているのかいないのか。
「俺、今日の星座占い、多分最悪やで」
「もしそうなら、こんなに反映されるのは、お前だけやって」
心配すんな、おもろかったで。という口調で下林が言った。原田は下林を睨む。

「お前が先頭やからあかんねん」「俺が悪いんかい」
ジャンクションのネタを考えるのはほとんど原田。
下林が意見を言っても「却下」とボツにされるだけだ。
従って、ジャンンクションを動かしているのは原田。といっていいほど。
「お前怪我してるなら必然的にこーなるやろ」
「珍しいなぁ、石が降る、石が」
「…こんな時くらいえぇ格好させろ」
お前いつもカッコつけてるやん、とは言わないでおく。
実際、先輩二人の死体を見た時の彼はかなり男前だったが
……だがまぁ、それ以降こんな調子が続き、プラスマイナスゼロ、といったところか。
「………いや、マイナスの方が勝ってるな」
「え?」
「なんでもない」

965 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/21(木) 18:50:39
どれくらい時間が過ぎただろう。
下林が動いた。

「…………周り……ちょっと見てくる」


「何やて?」
原田が下林の口から出た言葉を理解するのは数秒かかった。

「いつまでもここにいても埒あかんし。…それにお前の足も、そのままやと治らん。
 救急箱とかだれか落としてるかもしれんから」
「せやったらこれ持ってけ」
原田は、手の中の拳銃を差し出す。
「いや、俺がおらん間に誰か来たらそれこそ危ないからな。
 大丈夫、俺にはコレと……コレもある」
そういって、前に川原で拾ったヌンチャクを左手に持つ。

「せめてなんか食えるモンでも拾ってくるわ」
「…………下林」
「ん?」

966 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/21(木) 18:52:29
「行くな」

……………………………………

「行ったらあかん」
「…………………原田?」
様子が変だ。
「いや…とりあえずなんかしとかないと」
原田は何も言わない。
「大丈夫やって、無理やったらすぐに戻ってくるし」
「………ホンマに?」
「うん」
「ホンマに無理しない?」
「心配しすぎ」

……………………………
しばらくの空白。

「わかった」
「じゃ行ってくるわ」
「絶対に戻れよ…」
「ああ」
ゴルフクラブにヌンチャク。二つの武器を持った男が、原田に背を向けた。

「じゃあな」

原田は答えなかった。
感づいてたかもしれない。
二人の会話が、下林の「じゃあな」の一言で、

終わってしまうということを。

967 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/21(木) 18:53:48
「…………ほんまになんもないなぁ……」
下林の独り言。
道中ダガーナイフなど、武器として使えそうなのは幾つかあったが、
一番肝心な、相方の傷を治すものが見つからない。
「せめて小屋かなんかあったら………おっ」
下林は足元に手を伸ばす。
見つけたのは、バンソウコウがはいっている箱。
しかし……

「これじゃあ……なぁ…………」
転んで出来たかすり傷程度だったらなんとかなったものの、原田の足を治すにはとてもじゃないが
力不足すぎる。

「ま、ええわ。途中使うこともあるかもしれんし」
「それは残念ですね……
 もう使えなくなってしまいますから」

木の陰から、愉快な声が聞こえる。
「…誰や」
下林が顔を上げる。

968 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/21(木) 18:55:30
現れたのは、一人の青年。
少なくとも自分が知ってる人間じゃないことは確か。
恐らく、東京の芸人だ。
「ピン芸人さんじゃないですよね…相方さんはどうしたんですか?」
相手は未だ微笑っている。
「知るか相方なんて。
 いきなり目の前で人が殺されて、パニックになってんのに、
 悠々と相方探せる訳ないやろ」
下林は嘘をついた。
相方は後ろの方を歩いていけば居ますよ。なんて言おうものなら、
目の前の人間は嘲笑いながら「あんたの相方は裏切ったよ」等言って、原田を殺すだろう。

自分を、殺した後に。

今自分が出来る事は、相方を死なせないようにすること。目の前の男を止めること。
目の前の男を止めるということは……

ゴルフクラブを強く握る。
下林と原田がこのゲームをやっていて、武器を使ったことは一度もない。
恐ろしいから。
だが、そんなことを思ってる場合ではない。
「ま、いいです。後でゆっくり探してあげますよ」
「あいつをみつけるのは、俺や」
こんな奴に、弱っている原田の場所を見つけさせるには、いかない。

「いきますよ」
男がにやりと笑った。

969 :新物 ◆u7KmgnX9Jg :2005/04/21(木) 18:57:51
今回はここで終了。
東京の芸人さんは…いい人みつかんないんで、誰でもいいです(笑)


975 :おされ泥棒 ◆odQ7elWo.Y :2005/04/21(木) 22:32:10
プロローグ

花鳥風月、このトリオにとんでもない事が起きてしまった。
黒田は山を散策していた。
「おーい、多治見!何かあったか?」黒田は多治見に食材を探すように指示をしていた。
多治見が何か見つけたようだ。
「黒田!何かあったで。こ、これは・・・・・・・。」多治見の声がする。
黒田が駆けつけると、「何や?あ、これはグミやな。」木に実っていたグミがあった。
「これは腹のたしにはならんけど、ええやろ。これを大槻に・・・・・。」黒田は花鳥風月の大槻にあげようしていたのだ。
多治見の表情が暗くなった。
「あいつの事は、もうええやろ・・・・・・。あいつはバケモンになったんや。」
その時、叫び声が聞こえた。
「あはははははは!!どうや、狩られる気持ちの爽快感はどうなんや!」
黒田と多治見が振り向くと、大槻がマシンガンを空に放っていた
「あかん、俺らも殺される!あいつは”ゲーム”を”狩り”と認識してるんや!」
黒田は震えながら言った。

976 :おされ泥棒 ◆odQ7elWo.Y :2005/04/21(木) 22:33:59
黒田と多治見は下の方を向いた。
下にいたのはセコンドアウトだった。
2人とも彼らを知っていた。
NSC23期、そう彼らの共通点である。
黒田は大槻の殺気を感じ隠れるように指示を出した。
多治見は草葉の陰から顔を出していた。

「はぁはぁ、やばい!大槻が来たぞ、逃げろ!」どこからか声が聞こえた。
セコンドアウトの溝田と勝山だった。
「か、勝山!は、はよ逃げな殺される! あいつは本気や。」溝田は怯えていたようだ。
勝山は「わかった、でお前はどうすんのん?」そうこうしてる間に大槻が近づいていた。
「君達ホンマにのろいなぁ、そんなに俺に殺されたいんか・・・・。じゃあ叶えたろうやないか!!」
大槻はマシンガンを構えていた。
溝田は勝山に逃げるように指示を出した。
「もうあかん、逃げろ!勝山、ここは俺にまかせとけ!!」
勝山は逃げた。
大槻のマシンガンが閃光を放ち始めた。
それは時に花のように、それは時に夢のように・・・・・・・。
溝田の体全体に当たった。
「あ・・・・・・・・。」
これが彼の最後の言葉になってしまった。
溝田の体には鮮血で染まった花が咲いた。

【セコンドアウト・溝田死亡】

983 :名無しさん :2005/04/22(金) 18:35:26
そろそろ1000だね。そこで(?)
村正に取り憑かれた陣内さんの小話をひとつ。
番外編として軽く読んでやってください。

984 :983:2005/04/22(金) 18:36:30
ドカッ

陣内はたった今殺した芸人の死体を脚で蹴り飛ばした。
ふん、と鼻を鳴らしその場を立ち去ろうとしたその時、
血で出来た水たまりに鬼のような形相の自分の顔が映った。

「………これ、俺?」

陣内の表情が一瞬悲しげに歪んだ。
しかし、すぐに元の顔に戻ると

「何ちゅう酷い顔や。」
冷たく笑い、ばしゃっ。と水たまりを踏みつけた。波紋が広がり
映っていた顔や景色はぐにゃりと曲がった。跳ねた血が顔に掛かる。

「…何も出来ない奴は、引っ込んでろ。」

陣内のものではない、地の底から這うような声がした。


985 :983:2005/04/22(金) 18:38:17
以上です


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