ホーム・チームの2人は開始直後に落ち合った後、
そのまま崖の上の木の陰に身を潜めていた。

「なあ、どうしよっか。」
「どうするって…。わかんないよ。」
与座は膝を抱え、俯いたまま答えた。
「与座、人、殺せる?」
「馬鹿!殺せるわけないだろ!!?」
「わかってんだろ。生き残るには、自分以外を殺さなきゃいけないんだよ。」
「ああ…。」
しばしの沈黙。
それを破ったのは檜山の優しい低い声だった。
「俺、与座の事殺せそうにねぇからさ。」
与座は驚いた。
まさかコンな状態に陥っているというのに、
自分を見る檜山の目は、いつもと同じように優しかったからだ。
「お、俺もに決まってんだろ!!檜山の事、殺せないよ!!」
「じゃあさ、一緒に死んじまおうか?」


「俺で良ければ。」


と言うと、与座はにっこりと笑った。


【 ホーム・チーム(与座・檜山)死亡 】


   ――――――――――


麒麟川島は暗い森の中をゆったりと進んでいた。
血のヌルヌルした感触がいつしか心地良くなっていただけではなく
それが乾くことを異常に恐れるようになっていた。
川島にあるのはただ漠然とした憎悪。
しかし、不思議なほど心は研ぎ澄まされ穏やかだった。
漆黒の闇。身を切るような風。
川島の鋭い目は氷のように冷たく、
更なる血を流すべき愚民を求めていた。


遠くの方に何やら大勢集まっているのが目に入ってきた。
それぞれノートと双眼鏡を持ち、
熱心に何やら話し合っている。
NSCの生徒。
どうやら見学に来ているようだ。
引率は、、太平シロー?

「太平司郎さんではないですか」
川島は表情を変えることなく
低くつぶやいた。
「江川卓のように契約の盲点を突き松竹から吉本入り、
紳助竜介解散の時「サブローシロー、ダウンタウンにはかたれへん」
とまで言われたサブローシローの太平司郎さんこと伊藤博さんではないですか」
一団の方へと進む川島の歩が早まることは無かった。
「NSCの引率とはね・・・」
どこかで派手な殺し合いが起こっているのであろう
川島が接近に気づくものは皆無だった。


「・・・・・・・・・・しょうもな」


【 太平シロー、NSCの生徒大勢 死亡 】


そして川島は少し笑った。


   ――――――――――


「はぁ〜、柳原のヤツ、何処におんねん…。
まだ放送には出てきてへんからええけど…。」
アメザリ平井は一人で森の中を歩いていた。
武器は「竹刀」。
どう見ても中古品で柄の所に「3-C斉藤」とマジックで書かれている。
「こんなんでひと殺せへんやんか…。っちゅーか、斉藤って誰やねん…。」
ガサッ
『誰や?』
平井は素早く身を隠すと物音のした方を見た。
『中川家のアニキの方や…。』
その先には、キョロキョロ周りを見回しながら歩いている
中川家・剛が居た。


『どないしよ…そんなに関わり無いし…。
そや、とおりすぎるのを待ってるのが一番や。』
しかし、平井は木の枝を踏み、音を出してしまった。
「誰ッ!!?」
「…あ、どうも…。」
平井は両手を頭の上にのせ、安全だと言う事をアピールしながら出た。
「アメザリの…平井君やな。」
「ども。」
「相方探してんのん…?」
「まぁ…。剛さんは?」
「俺?俺も相方探しや。」
「でも、礼二さんは…」
平井は次の言葉を飲みこんだ。
剛の目には、涙が浮かんでいた。
「俺は礼二をみつけるんや。絶対に…。」


【 中川家・剛、アメザリ平井、合体。 】


   ――――――――――


「ふぅ〜っ、やっとあいつらいなくなったわ」
神社に監禁されていたおさるは、数日ぶりに外に出ることができ
、木陰に隠れながらおもむろに筋トレを始めた。
「いつ、誰に襲われるか分からんし、鍛えとかないとな
だいたい俺の武器、コアラの人形ってなんやねん。
こんなもん役に立つか。ドアホが…」
腹筋、腕立て、スクワット、ランニング…と
いくつかのメニューをこなし1時間程経とうとした頃、
ようやく汗をふき、境内の階段を下りようとしていた。
右手に持ったコアラの人形を見て、彼はふと元相方を思い出した。
「コアラもこの戦いに参加しとるんかな〜…」
そう言って解放された街に向かい、森の中を歩き始めたその時、
「ガサガサガサッ!!」
木の影から誰かが急に飛び出してきた


「うわ〜ッ!!!」
バンバンバン!!!
その男は拳銃をおさるに向けて数発打つと
「殺さないでくれ〜ッ!!」そう言いながら
また森の中に隠れていった。
「田代まさしも参加しとるんか…」
田代の撃った弾はおさるのかなり上、見当違いの方向に向けられていた。
突然の出来事に少し驚いた様な表情でつぶやいたあと、
再び街に向かっておさるは歩き出した。
すると、ずいぶん遠くの方から何やら人影が見える。
「…?」誰だあれ!?
いつ襲われてもおかしくないこの状況におさるは
構えながら、目を細めてその人物を確認しようとしていた。
その人物はカバンを引きずりながら確実にこっちに近づいている。
やっとその人影が誰だか確認できる距離になった頃、
その相手がおさるに話しかけた。


「あら〜、おさるさんじゃない!?」
一見女性のようなその口ぶりは
吉本の藤井隆だった。
藤井は大きなカバンから手を離し、言葉を続けた。
「あら〜、誰とも一緒じゃないの?」
敵意がないと悟ったおさるは
「ああ…高木ブーと加藤茶の奴らに監禁されてて…
でも木が加藤を殺しながらどっかに転がって行ったわ。」
(ここらへんで仲間作っといた方がええやろ)
そう考えたおさるは藤井を仲間として誘おうとした
「な?お前も1人なん?だったら…」
言いかけたおさるの言葉を遮る様に
藤井は微笑みながらおさるに言った
「ね。いいもの見せてあげましょうか」
「?…ああ。」


そう言って藤井が持っていたカバンを覗き込んだ、
そこには見たことのある奴らの生首が数体入っていた。
「うわっ」
逃げ出したかった。でもあまりの出来事に
おさるはその場から数歩下がるのがやっとだった
木に寄りかかったおさるを笑顔で見つめ、藤井は言葉を続けた
「おさるさんの武器ってまさかそのぬいぐるみ?」
私の武器は、こ・れ♪」
藤井は背中に担いでいた鎖鎌を取り出した。
「さっき私を仲間に誘おうとしたの?でも私は1人でいいの
邪魔な仲間なんてどうせ私の引き立て役にすぎないんだから…」
自分が殺されるであろう事を予感し、おさるは
藤井が振りかざす鎖鎌から目をつぶった
(体鍛えてもこんな時は役にたたんな…)
死の淵でおさるはそう考え、永遠の眠りについた。
藤井はおさるの頭部を自分のコレクションに加え、
カバンを引きずりながらまた歩き始めた。


【 死亡者:おさる、島田(号泣)、石野(Over Drive)
    斉藤(あばれヌンチャク)竹内(あばれヌンチャク)
    岡崎(華丸大吉)吉岡(華丸大吉)品川(品川庄司) 】


   ――――――――――


ランディーズ中川。
「無理や…高井…何処にいるかなんてわからへん…」
鼻をすすり、周りに目をやりながら、岩の木陰に身を隠した。
「本当やったら、今日はマンダラの収録日や。
 もうできへんねんな。梶も西野も死んだし…。」
武器である、出刃包丁をリュックから取り出し、
刃に映っている自分に微笑みかける。
「‘いちかばちかなんて そうないことさ
  それが今だったら 逃げる手はないだろう?
  負けること誰も 考えたくない
  自分を信じなきゃ 始まらない勝負さ’」
梶原のソロ曲を口ずさみながら、また笑みを浮かべる。
「アホや…。仲間なんてそんなもんやで?高井君。
 出てきーぃや。そこにおんのしってんねんから。」
ずっと後を追ってきていた高井に云った。
「狙ってんの?」
中川は高井と目を合わそうとはしない…。
「狙ってるって云ったら、ターチンはどうすんの?」
高井はそんな理由で後を追っていたわけではなかった。
本当の訳があった。しかし・・・
「其の時は・・・」


「其の時は…なんも考えてない。
 そんなん考えたって無駄や。
 死ぬ時は死ぬねん…。」
中川は徐々に高井に近づいていった。
「ゴメンな…」
中川は出刃包丁で高井の腹部を刺した…。
赤いモノが少しづつ垂れていく…。
風邪の吹く音と共に、黒いちっちゃな影がそこから、姿を消した。

「・・・・・・・」


   ――――――――――


「皆!浜田に気をつけろ!アイツはな、爆弾大量に持っとるぞ!
ほっといたら皆いかれてまうでー!」

突然丘の方から拡声器で大きくしたような、
ノイズ混じりのダミ声が聞こえてきた。
「…ちっ、あの声は鶴瓶やな…
なにゆうとんねんあのボケ…
見つけたら絶対殺したる」

「カ〜〜ッ…ペッ」
街に向かって、うっそうと茂る森の中を
歩いていた浜田はつぶやき、道端にタンを吐いた。
右手はポケットにつっこみ、左手はハリセンを肩にかついでいる。
周り中に警戒の目線を送っているが、
あまりそれは普段とは変わった様子には見えない。
それと言うのも普段からヤクザのようだった彼にとって、
ごく自然な振る舞いである。
と、ふいに木の陰から現れた東野幸治に出会った。
手にはなにか杖のような物を持っている。


「…うわっ、は、浜田さん!?ど、どないしたんですか!?」
「どないした、ってなんやねんボケェ
 お前がどないしてん?」
東野の顔は凍り付き、すでに腰が抜けそうになっている。
「…あのっ、さ、さっきたぶん鶴瓶さんが言ってたんですけど、
 浜田さんが爆弾持ってるって聞いたから…」
「…なんやワレ?…お前ワシを疑っとんのかい?」
「いやっ!!全然そんなことないですよ!!
 僕は浜田さんがそんなことするなんて一言も…」

パーン!!

東野はなにが起こったのか分からない。
なにかで殴られたような…
とっさに右のこめかみの辺りに手をやる。
すると髪の毛が赤い液体で濡れていた。
血?…しかし何が起こったのか…


パーン!!…パーン!!…パーン!!…

連続で殴られている。
「浜田さん…?」
が、しかし何で殴られているのか分からない。
1発1発の威力があまりに強く、気を失いそうになる。
死ぬかも知れない状況の中で素朴な疑問がわいた。
「一体、何で殴られているんだろう…?」
東野はあまりの激痛に顔を歪めながら、浜田のほうに顔を向ける。
すると浜田が鬼のような形相で殴りかかってくる!
しかもハリセンで!!

「全員、皆殺しじゃあ〜!!」


ハリセンに続いて、頭突きがきた。関西で言う「ぱちき」である。
1発、2発、3発…

「…ふんっ、…ふんっ、…ふんっ」

もう東野は痛みを感じていなかった。
ただ浜田の荒い息づかいと、自分の頭から聞こえる
ごつっ、ごつっ、と言う大きな石をぶつけ合わせたような、
鈍い音しか聞こえてこなかった。
薄れていく意識の中で、東野が最後に考えたことは
「やっぱりこの人、ヤクザや…」
だった。

【東野幸治:死亡】


   ――――――――――


「いやー、ドラドラさんと合流できてよかったっスよ〜。」
ロバート秋山は笑顔でそう言った。
馬場は言葉少なに下を向いている。
何か有る。塚地と鈴木は顔を見合わせた。
「痛っ…。」
塚地の傷口は、血の止まる気配はない。
「どうしたんすかー?あ、怪我?すいませんねぇ〜、撃っちゃってー。」
秋山は笑顔を崩さずに続ける。
「あはは、俺ー、結構臆病じゃないっすかー、
マジ、銃とか持ってるとー、すぐ撃っちゃうんですよォ。
俺ー、そう簡単に人とか信じられない性格なんですよー。」
そう言うと秋山は「ははは」と笑った。
「秋山…、あの…」

パンッ


鈴木の頭から大量の血が吹き出した。
それが、秋山に撃たれた為だと塚地が気付くのに、少し時間がかかった。
地面に鈴木の体が打ち付けられた。
糸の切れた操り人形のように。
「あき…」

パンッパンッ


銃声が森に響いた。


「ほらぁ〜、言ったじゃないですかぁ〜、
俺、人を信用できないんですってさぁ。
あー、これで3人目だなー。慣れてきたって言うか、楽しくなってきたかもー。
なぁ、馬場ー?
まさかー、山本が最初に俺に銃向けるとは思わなかったよねー。
いくらビックリしたからってさー、俺に銃向けるなんてさー。
アレ、絶対俺の事殺そうとしたんだぜー?」
秋山は一人でずっと喋りつづけた。
「馬場は裏切らないよなー?友達だもんなー?」



馬場の体には、リモコン式の爆弾が仕掛けられていた。


ドランクドラゴン塚地・鈴木死亡。


   ――――――――――


しばらくして我に返り、後ろを振り返った原田は、自分の視界にパイレーツの
死体を確認すると、ジンジャーから降り、急いでパイレーツの死体の側に近寄
った。
「…またやってしまったのか」
原田は今すぐにでも泣き出しそうな顔をして呟いた。
原田がパイレーツの体に触れると、二人の体はとうに冷たくなっていた。
すでにパイレーツを含めて自分で分かる限りでも5人は殺している。
しかも五人を自分の手で殺したという感覚は原田の中に全くと言っていい程なか
ったのだ。
原田の意識が途切れて、次に原田が正気に戻った時には、首と胴が離れた死体が
自分の目の前に転がっている。
自分で人を殺したことによって良心をさいなまれるのなら、自分の意志によって
それが成されたのであるからまだそれはいい。
しかし、原田の問題は、今の原田には全くと言っていい程その記憶が全く無い事
だったのだ。


現に今のパイレーツを殺す直前にも女を殺す気は全くなかったのだ
が、峰打ちで済ませるつもりが原田の記憶のない内に切り捨ててし
まったのか、二人とも首を切り捨ててしまい、二人の体と首が別々
に切り離されて鮮やかな赤い色に血が流れていたのだ。
もう食料を補給するためにも、太田を捜すためにも、街に行くつも
りでいたのだが、パイレーツとのやりとりであれから20分以上も
過ぎてしまった今ではもう間に合わないだろう。
そう思った原田は、せめて今の『人を殺すのはいけない事だ』と思
える精神状態の内に道路脇に埋めてやろうと少し離れた場所に土を
掘り、パイレーツの二人を静かに首と胴体をつなげたような形にし
てからそのままの形で土の中に埋めたのだった。


   ――――――――――


「…ふぅ、もう死んだやろ…さて、こいつが持ってる杖、
 これってもしかして…」

浜田は東野が手に持っていた杖を手に取り、
さやを抜いてみる。
すると青白く、長い刃が出てきた。

「…仕込み杖…長ドスっちゅうやっちゃな。
 ええもんもっとるやんけ」

「か〜っ、ぺっ」

また道端に唾を吐き、浜田はさらに街へと向かった。


   ――――――――――


「・・・・」
アレ?なんか温かい…。
此処はどこなんやろう?
俺ってターチンに刺されたっけ?解らんわ…。
「おい、大丈夫か、生きてるやろう?」
中川は高井を支えながら、小声で言った。
「へぇ?!」
安堵感たっぷりの声が漏れると、共に涙が流れた…。
「ほら見てみ、これ…。コントの包丁やねん。
 こんなん、武器って云われてもなぁ。」
いつものようにそこで中川は笑っていた。
「ターチン…。」
高井はどうしてこんなことをしたのか尋ねた。


二人はとりあえず、人目につかないように隠れる。
「俺見てんなぁ…。」
「何をやねん」
中川はためらいながらも、高井に話した。
「最初の方で、西野と梶原の放送が流れてたやろう?」
「そうやったな…。あいつら…」
「誰が殺したか知ってる?」
「知らんよ。そんなん、知りたくもないわ。」
「でも、見てもうてん。」
中川の声は段々とちっちゃくなっていく。


   ――――――――――


そこから立ち去ろうとしたその時、
ガサッという音が耳に入った。
後方の茂みからの音か。
川島は顎を少し上げた。
視線をやると誰かが仰向けにひっくり返っている様子。
ガタガタと震え、目は恐怖に見開かれている。


村上ショージ。
先程の様子を目の当たりにしてしまったのであろう。
腰が抜け、動くことが出来ないその男に出来るのは
もはや、血の気の失せた唇を震わせることだけだった。
川島はゆっくりとそちらへ向き直り、
獲物へ向かい進み始めた。
哀れなその男は充血した目をそらすことも出来ない。
川島はショージを見下ろすと
ゆっくりと口を開いた。


「あの人死んだんでもういいでしょう、人頼みだとこういうときに困りますよね」


【 村上ショージ 死亡 】


   ――――――――――


日本に一時帰国し、この戦いに参加していた
空手家の矢部太郎は自分の目を疑った。
死体の中心で正座をしてどっしりと座っている桂歌丸。
江戸むらさき・磯山といつもここからの山田が歌丸に立ち向かった。
その瞬間、歌丸は一瞬の素早い動きで何かをし、
磯山と山田はそのまま倒れ、少し痙攣したあと、
ぴったりと動かなくなった。

【 死亡、江戸むらさき磯山、いつもここから山田 】


   ――――――――――


「庄司…?」
ビックリした。
必死になって、口説き落とし、コンビを組んだ相方、庄司智春は縛りつけられ、
体に無数の穴を空けられ死んでいた。
「嘘だろー…?」
品川はその場に崩れ落ちた。
涙は出なかった。
悲しみより、怒りの方が、強かった。
「俺の不幸もここまで来ると、呪いかなんかかもな…。」
自分勝手。すぐ癇癪を起こす。
そんな自分を「相方」として認めてくれた庄司。
庄司がどう思っていようが、品川にとって庄司はかけがえの無い人間だった。
「最後はつらかったか…?痛かった?」
当たり前だが庄司は答えない。
それがすごく悲しかった。
「なあ、面白いの考えたんだ。聞きたいっしょ?」
品川は庄司の肩を掴んで揺さぶった。
「なぁ…」


ドスッ

「痛ぇ…。」
品川は背中に強い傷みを感じた。

ザクッ
ブシュゥゥゥゥ

次の瞬間、品川の頭は胴体から離れ、
庄司の足元に転がっていた。

「フフフ、話に夢中になっちゃって。
私の事なんて気付いてなかったのねー。
ま、好都合だけど…。」
藤井は品川の首を拾うと立ち去って行った。

ドサッ

何故か、庄司を縛り付けていた縄が解けて
庄司の死体は首の無い品川の上に覆い被さる様に倒れた。


   ――――――――――


「俺・・・これからどないしたらええんやろ・・・。」
シャンプーハット・小出水は独り呟いた。
ナップサックの中に入っていたのは木製のバット。
日頃から暇さえあれば素振りをしていた小出水にとってはなじみの獲物ではある。
しかし、金属バットならまだしも、
木製のものとなると一、二度使えばすぐに折れてしまうだろう。
もし誰かと戦闘になったりしたら・・・。
「あかん・・・誰かを見方につけな・・・。」
誰か。考えるまでもない。相方のてつじだ。
「どこにおるんや・・・てつじ・・・。」


一方そのころ、てつじは木の陰から桂歌丸の様子を窺っていた。
歌丸の周りには屍の山。
「ここはそっとしといた方がええやろな・・・。」
てつじは足音をたてずにその場を立ち去ろうとした。
そろり、そろりと・・・。
しかし足音を潜めるまでもなかった。大きな声がしんとした空間に響き渡った。
「あ〜!!歌丸師匠や!!」


小出水である。
(な、直樹!?)
てつじは声を出すことも出来ずにその場に凍りつく。
「師匠・・・これ全部師匠が・・・!?」
小出水は大きな目をさらに見開いた。
「そうだ・・・。儂の邪魔をするものは皆こうなる・・・わかるな・・・。」
瞑想状態を保ったまま歌丸は言った。
「わかりました。邪魔せんかったらいいんですね。」
幾つもの死体を前にしても小出水のボケはそのままだった。
「やっぱ直樹はどんな状況でも直樹なんやな・・・って違う!!」
てつじが飛び出したのと同時だった。
歌丸がカッと目を開いたかと思うと、強烈な閃光がまわりを包み込んだ。
「うわわわわわーーーーーー!!!」
「直樹!!」


嘘や・・・嘘や・・・なんでこんなことに!?
てつじが小出水に駆け寄ると、小出水は小さな笑みを漏らした。
「てつじ・・・捜してたんやで」
「直樹!わかったからそれ以上言うな!!」
ぼろぼろになった小出水の体の傍らには、
無惨にも焼けこげて半分炭と化したバットがおちていた。
「あ・・・これやったんやな・・・お前の武器は・・・」
「へへ・・・似合ってるやろ・・・」
弱々しく微笑む小出水の頬に、冷たいものがおちてきた。
「てつじ・・・お前泣いてるんか・・・」
「ははははは・・・あははははは」
溢れ出る涙を拭おうともせずに、てつじは笑いながら空を仰いだ。
「やっぱ俺らってコンビやわ・・・。見てみ、俺の武器・・・」
コトリ。
てつじの手からこぼれたのは砲丸だった。
「直樹・・・これで野球できたのにな・・・」
「あほか・・・こんな重い玉でできるか・・・」
にいっと笑うと、小出水は言った。
「お前はこれで室伏ネタ使わんかったら・・・。俺の相方失格やで」


小出水はすうっと目を閉じた。
その瞬間。
第二の爆発が起こり、すべては白い閃光のなかへ吸い込まれていった・・・。


【 小出水・てつじ死亡 】


   ――――――――――


川島の去った後、田村はその場に呆然と立ち尽くしている。

「俺はもう、誰とも別れたくない。離れ離れになりたくないねん。」
「にいちゃん、ねえちゃん・・・・・・・・・・・・・借金残して逃げた親父も。」
「もう一度みんなで一緒に暮らすには・・・
 俺が家族を支えられる人間になんと!その為にはもっと売れて天下を取らんと!」
「それがお前の悲願でもあるやろ・・・川島!人殺しなんかやってても意味ないんや!」
「こんなゲーム、止めなアカン」

川島の現状を知れば共通の敵として皆が共闘し、殺しにかかるかもしれない。
見方になれるのは、そして川島を止められるのは自分だけだ。
自身の危険を顧みず、田村は再び川島を追い始めた。
「川島、俺が必ず助けてやる。」


「・・・しかし、なんで胸にお寺のマークをがかいてあったんやろ?」


   ――――――――――


目をあけるとそこには何も無かった。
「死んでもたんか・・・」
ショージは不安にかられ辺りを見回した。
「しっかし、あいつ物凄い目しとったな、ホンマ」
立ち上がり、歩き出す。
無意識にさんまの姿を探し始めているのであろうか。

「おとうちゃんやめたげて!も言う間無かった、残念やなあ」

いやーん、おとうちゃんやめたげて
いやーん、おとうちゃんやめたげて

背中を丸めブツブツと繰り返しながら
遠ざかるショージ。


   ――――――――――


「街」に来てみたが思った通り新しく開放された地区には人が沢山いた。
知らない芸人やら有名な芸人。様々いたが目当ての斉木+梅垣コンビがいない。
「困ったな〜。どうしよ?とりあえず誰か話せる人探さなあかんな〜。
 お、そこにいるのは…お〜い。今田〜!」
今田と呼ばれた人。そう。あいのりで共演してる今田耕司だ。
「あ、久本さん。ここでなにしてはるんです?」
今田は武器と思われる長い槍をしまいながら近づいてきた。


「あ、そうそう。久本さん。今あいのりスタッフが大変なことになってるんですよ〜」
大変なこと?とっさに私達がいなくなったことかと思ったが、
その程度で騒いでくれる程暖かいスタッフではないこと思い出した。
「ほら〜。デヴィがAVデビューして『この番組はやらせです』とか言っちゃたでしょう?
 あれの対応に追われてるらしいすっよ〜」
あぁあれか〜。と内心思った。もう聞き飽きるほど聞かれたことである。
この事を考えるのはもう嫌なので
「ふ〜ん。スタッフも大変ね〜」
ととりあえずこの話からそらした。
そして「ねぇ?斉木しげると梅垣見なかった?2人で組んで色々殺ってるらしけど」
と今田に聞いてみた。たぶんこいつは嘘はつかないだろうと思ってだ。
「え?あの2人ですか?人が集まりそうなとこにいるんじゃないですかねぇ?
 なんかパチンコ玉やら知能作戦やら色々武器にして戦ってるらしいですから。
 各地で人に聞いてみるのが一番だと思いますけど」
なるほど。ここまで具体的に言ってくれるとは思わなかったが大変役立つ情報だ。


「今田。ありがとう〜!こんな情報くれたんあんただけやで〜。
 あ、そういや東野の殺したのあんた?」
ふいに訪ねてみた。
東野が死ぬときは今田が殺したと思っていた久本に意外な返事が返ってきた。
「え!あいつ死んだんですか!?」
かなりびっくりした様子だ。どうやらこのことは本気で知らなかったらしい。
可哀相なことだ。
もともとコンビでは無かったが同じ名前を持つ者同士仲良くやっていたんだろうに。
沈黙の時間が流れる。この時間がいやだった久本は
「東野死んじゃったけどあんたどうするのー?」と聞いてみた。
この空間でこんな事を言うと逆上して殺されるかと思ったが以外にも冷静に
「仕方ないですねぇ。僕一端街から出て大阪吉本の人探してみますわ。
 …ではまた「生きてて」出会ったらよろしく頼みます」
と言い今田は去っていった。今田の心境は痛いほどよく分かったが
「生きてて」出会うためにも自分もここでのんびりしていられない。
斉木+梅垣を捜すため
「街」で一番人が集まりそうな食糧と薬が置いてる所へ向かっていった。


   ――――――――――


「見つけた…。」
礼二の死体は、文字通り”転がっていた”。
「はー。勝手に一人で死によって。」
剛はかがみこんで汚れた礼二の顔をシャツの袖で乱暴に拭いた。
「最後くらい守らせてよ。俺かて兄貴やねんから。」
「剛さん…。」
「兄貴のくせに守られてばっかで。しょーも無い兄貴でゴメンな、礼二。
ん?そうか、最初っからアテにしてへんか。ヒドイなぁ。」
そう言うと、剛は礼二の手を胸の上で組ませ、
半開きだった目を指で閉じた。
「平井君、はよ逃げや。」
「…え?」
「俺、今から殺人鬼になるから。
君のこと、殺さんって言う保証は出来へん。」
「…。」
「この状況じゃ、誰が礼二を殺したかなんてわからへん。
せやったら、全員殺したる。」
剛の目は、先程の礼二を見つめる目とは一変し、
鋭く、冷たい物になっていた。
「はよ、逃げ。」
「…はい。」

平井は茂みの中へ走って行った。


   ――――――――――


多田(COWCOW)は、小さな岩の穴に隠れて震えていた。
3つの岩でできたこの小さな穴は、暗かったが彼1人を隠すのには充分であった。
ちょうど傍の木とあいまって、回りからは死角になっている。
多田は自分の幸運に感謝した。
しかし、一つ所に長くとどまるのも良し悪しである。飲み水がなくなったのだ。
喉の渇きをこらえる多田の表情は暗い。それはけっして生来の地黒のせいではない。
「それにしても喉が渇いたな。水が飲みたい。」
そうつぶやいて探ったナップザックの中にはボロボロになった乾パンと、
武器らしいビデオテープが3巻。
こんな武器を持って水を探しに出て行くのはあまりにも危険である。
しかし彼の喉の渇きはもはや限界だった。
「しゃあないなあ・・・。夜になってから水を探そう。」
多田はそうつぶやき、
傍らの空になったペットボトルをナップザックに詰め込むと無理やり眠ることにした。
しかし多田はまだ知らない。そのビデオテープに仕掛けがあることを。


その頃。
多田の相方である山田は、ちょうど島の中心を挟んで正反対の位置にいた。
彼の持つ武器は工具箱。
中には機械油で黒く汚れたドライバー、ペンチ、ニッパーなどなど。
「せめて『バールのようなもの』でもあれば武器になったのに。
 何やねんマジで。」
小さく悪態をついた山田は、箱に手を突っ込んでがしゃがしゃとかき回した。
「汚いし、重いだけやし。役に立ちそうなもんだけ持ってあとは捨てよう。」
そして山田は箱の中から一番大きなスパナと
なるべく先のとがったドライバーを選んで、残りは草むらに隠した。
「さてと。相方探しにいかな。」
つぶやいて立ち去った山田の後ろで、
隠した工具箱を草むらから引っぱりだした男がいた。


   ――――――――――


「腹減ったな〜。」
ロバート秋山はその場に寝転んだ。
「支給のパンはもう無いぜ!」
「んー、どーしようかねぇー。…あ!!ナイス。」
「ん?」
「ちょっと待っててー。あ、伏せて静かにしててぇー。」
秋山は草の影に身を潜めると、銃を構えた。
「ジ・エーンドぉ。」

パンッパンッ

血を流して倒れたのはファンキーモンキーの高橋だった。
「ほーらっ!馬場ー、食料さっさと取っちまおうぜぇー。」
秋山は笑いながら少し返り血を浴びた顔で振りかえった。
「あ、ああ…。」

『助けてくれ…だぜ…。』
馬場は心の中で叫んだ。

【 ファンキーモンキークリニック高橋、死亡 】


   ――――――――――


「それ食べたら戦うから」
「え」

ちいさな部屋の真っ白なベッドの上。
おかゆをゆっくりと口へ運んでいた片桐の手が、小林のその一言に、止まる。
「賢太郎・・・?」
「ビーカーで分量ちゃんと量って作ったんだ、おいしくできてると思うんだけどね」
「ちょっ・・・とまって!なに?戦うって何??」
「コント作るんだよ。こんな下らないこと早く終わらせて仕事がしたいんだ。
その為には現状を打破しなきゃ・・・このゲームで、勝つんだ」
「たたかう・・・の?」
「やらなきゃ、殺されちゃうだろう?『攻撃は最大の防御』というからね。
小さいとはいえ、ここは病院だ。幸いなことにここには鋭利な刃物がごろごろある」

手渡された2本のメスはひんやりと冷たい。
その感触と、あくまで淡々とことを進めようとする相方に、片桐は震えた。

【 ラーメンズ 武器補充<医療器具> 合体続行 】


   ――――――――――


うっそうと茂った森の奥深く。
大木の幹に茶髪の男が縛り付けられている。
「師匠・・・やめてください・・・」
男は顔面を血で真っ赤にさせながら、絞り出すような声で懇願した。
「殺されたくなかったら、ワシのモノマネしてみい。」
「え・・・?」
「ワシのモノマネせぇ言うトンじゃ、ボケェ!!」
白髪交じりの髪を7:3に分けた男が茶髪の男を殴りつける。
その手には、メリケンサックが装着されていた。
「グホッ・・・・・・!!」
男は苦しそうにうめいた。
「あと5秒だけ待ってやる・・・ワシはチャカも持っとんのや。はよせんと撃ち殺すぞ・・・」


茶髪の男は、しばらく口をもごもごさせていたが、頭を上げると、目を丸くさせながら、
「いらっしゃ〜い・・・」
と素っ頓狂な声を上げた。
「もう一回、言うてみぃ。。。」
「いらっ・・・」
再び、目の前にいる男のモノマネを試みた太平サブローの声は、
メリケンサックの一撃で遮られた。
「会社辞めくさったクセに、人のモノマネだけでメシ食いやがって・・・
 お前はここで死ね!!」
男は、懐から拳銃を取り出すと、サブローの胸に銃口を押し付けた。
「三枝師匠、待ってくださいよぉ〜」
「いや、お前はここで死ね!会社を裏切る奴は、ワシが許さんのや!!」
パンパン!!と乾いた銃声が森にこだまする。
二度と自分のモノマネをすることが出来なくなったたサブローに背を向け、
桂三枝は呟いた。
「ワシの力で、吉本の天下を築いたる・・・他の会社の芸人は皆殺しや・・・」

【 太平サブロー、死亡 】


   ――――――――――


暗闇の中、ライターの炎をたよりに
必死でページをめくっている眼鏡の男。
男の前には何冊もの本が積み上げられて山を作っている。
「え〜と、こいつ死んでもたんか、
集中力っちゅーか根気無いから気ィ抜きよったかな。
こいつは有望株やな、後々まで残りそうや、、」

島田紳助。
どうやら参加芸人について調べているようだ。
必死でノートに書きつけている。

・・・知性派、か
元々そんなんちゃうかったやんけ
変な服着て変な頭してチンピラ漫才やっとったやろ
格好つけんなや。


「・・・・しょうもな」
その声に紳助が振りかえる。

「おっ、お前M−1に出とった奴やな、どうや?残れそうか?
今な、色々分析してたんや。調べてたらな、俺が調べたところによるとな、
こっりゃーあれやで、おもろいで、若手が残るとは限らんな。
しっかし、お前が残ってるとは思わんかったわ、
お前あれやろ、ひ弱そうやしな、
隠れてんの見つけられて真っ先に殺されるタイプや。
せやろ、うまいこと逃げてたんか?せやろ。
俺の手伝いするんやったらかくまったってもええで
なにわ突撃隊のメンバーが回りは固めてくれてるし、安心・・

「殺しました」
その言葉を待たずして、川島が口を開いた。
「は?」
思わず聞き返す紳助。
「だから、殺したんですよ、皆さんね。何とか隊の」
「何言うてんねん、突撃隊、何人おると思てんねんな、そんなわけな・・・・


紳助は絶句した。
暗い中でも川島の後ろに死体があるのが分かる。
それも・・・・一体どころではない。
薄笑いを浮かべ、一歩踏み込む川島。

「こういうときには昔のノリでいかはった方が
 良かったんちゃいますか?無理せんと」

紳助が人生最後に見たものは
赤く爛れた鍵十字、
血に飢えたハーケンクロイツ。



【 島田紳助 なにわ突撃隊の皆さん 死亡 】


   ――――――――――


うって変わって
とある小屋の中。
中には鏡開きをしたらしく
餅を食べる2人の老人の姿が。

「ちょっと聞きたいことがあるんやけどね」
「なんや」
「今日は、何でお餅を食べるんかいな」
「それはな、もう正月も終りました、普段の生活に戻りましょうと。
 こういう意味や」
「でもな、このお餅というのはね、焼くとやっかいやね」
「ほーう、それはなんでや」
「焼いたら機嫌悪してふくれよる」

ほのぼのとした光景。
荒廃した外が信じられないほど
まさに国宝級の。


!
と、突然小柄な方の老人が苦しみ出した
あわてて背中をさするもう一人の老人。
しかし、細いうめき声を上げながら横倒しに倒れ込んだ老人の顔は
土気色に変色し、もはや息をしていなかった。

がっくりとうなだれる
もう一人の老人。
ゴルフと将棋が好きな彼の名は
喜味こいし。

と、いうことは
ここに倒れている小柄な老人は・・・・・・夢路いとし。


【 夢路いとし 死亡(?) 】


   ――――――――――


「ユリさん、ダンディさん見つかった?」
と、トモ。(テツandトモ)
トモの言っていた「ユリさん」とはピン芸人「ユリオカ超特Q」のこと。
彼らは、はぐれてしまった仲間「ダンディ坂野」を探している。
「んー・・・?(辺りを見渡す)いないなぁ。
さっき、町ではぐれてから・・・。」
「もしかしたらもう・・・。」
トモの相方、テツは言う。
「てっちゃん、そんなこと考えない!」
「けど・・・トモ。」
「とりあえず。もうしばらく探してみよう。」
と、ユリオカ。


   ――――――――――


小屋の中で何故か響く金属音。
その音は数日間、聞こえ続けた。

「出来た」
こいし師匠の声が小屋の中に響く。
その顔は少しやつれてはいたものの
目は異様な光を放っていた。
その横には
・・・・いとし師匠?生きていたのか?!


「さあ外に出ような」
こいし師匠は先に立ち外へ出た。
その手には箱のようなものが。
箱からは棒のようなものが2本突き出ている。
その棒のようなものをグイと動かすこいし師匠。
するとギシギシ音を立てながら
いとし師匠の姿が小屋の外へ!

そう、こいし師匠は
いとし師匠をロボットとして生まれ変わらせることに成功したのであった。
SFが大好きだった兄のために。

さあ、こいし師匠といとしロボットの旅が
たった今、はじまったのである。


【 いとしロボット、こいし師匠 参戦 】



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